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ALS患者に「時間稼ぎですか?」の発言 埼玉県吉川市長が謝罪

ALS患者が文字盤コミュニケーション中に「時間稼ぎですか?」と埼玉県吉川市の障がい福祉課の職員に発言され、抗議したのを受け、市長が謝罪と撤回の文書を送付した。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者が文字盤でコミュニケーション中、埼玉県吉川市障がい福祉課の職員が「時間稼ぎですか?」などと発言し、患者から抗議を受けた問題。

中原恵人吉川市長は4月17日付で謝罪の文書を患者に送付し、19日、謝罪コメントをホームページで公開した。

「御本人に対して発言した意図は全くないとのことでありますが、そこに至るまでの経緯や当人の意図は別としまして、不適切な表現であり高田様をはじめ関係者の皆様に大変御不快な思いをさせてしまう結果となってしまいました」として謝罪し、発言を撤回している。

謝罪を受けた患者の高田泰洋さん(43)は、「吉川市に愛着があるからこその抗議でもありました。今後の市政運営を期待致します」と謝罪を受け入れた。

何が不適切だったかには明確にせず

問題となったのは、4月12日、ALSの症状が進行し介護時間の増加を申請した高田さんの介護の必要度がどれほどかを確認するために訪問調査した吉川市障がい福祉課の職員3人のうち、男性職員がした発言。

「今、寝返りはご自身でできますか?」という問いに対して、高田さんが「できない」と答えた直後に「時間稼ぎですか?」と同席した弁護士の顔を見て言った。

これについて高田さんと弁護団は15日付けで市長宛に抗議声明を送り、市長が17日付けで弁護士を通じて回答書を送付した。

市長は、高田さんにあてた文書で、「『時間稼ぎですか』と発言したことにつきまして、心よりお詫び申し上げるとともに、本書にて、当該発言を撤回させていただきます」と謝罪と共に、発言の撤回をした。

ただ、「時間稼ぎですか?」と発言したことの何が不適切だったのか明確にはせず、「大変御不快な思いをさせてしまう結果となってしまいました」と、不快な思いをさせたことへの謝罪の形をとっている。

なお、19日に審査会が開かれ、介護時間の増加について審査される予定だが、まだ結果は明らかになっていない。

ホームページに公開した市長のコメント全文

この度、当市障がい福祉課職員が障害福祉サービスの支給決定に際して訪問調査を実施した際、「時間稼ぎですか」と発言したことにつきまして、御本人様をはじめ関係者の皆様に、心よりお詫び申し上げます。

また、市内外の多くの皆様にご心配とご迷惑をおかけしましたことにつきましても併せてお詫び申し上げます。

当人から発言の真意を確認しましたところ、御本人様に対して発言した意図は全くないとのことでありますが、そこに至るまでの経緯や当人の意図にかかわらず、不適切な表現であり御本人様をはじめ関係者の皆様に大変御不快な思いをさせてしまう結果となってしまいました。

市としましては、関係職員の処分に向けて調査を進めるとともに、再発を防止するため、全ての管理職員に対しまして本件に関する訓示を昨日行い、さらに、今後、市職員としての対応のあり方を考える機会を設け、二度と同様の事態を招かぬ様、万全を期してまいります。

なお、御本人様には、御本人様の代理人を通じて、昨日、謝罪の意向をお伝えするとともに、抗議声明に対する回答を書面にて送付させていただきました。

 平成31年4月19日

 吉川市長 中原恵人

本人のコメント全文

市長からの謝罪、再発防止策をしっかりと読ませて頂きました。吉川市に愛着があるからこその抗議でもありました。今後の市政運営を期待致します。

弁護団のコメント全文

弁護団コメント 「時間稼ぎですか」は高田さんの目の前でなされ、「今のも出来ないように...」と発言は続いています。

発言の態様からは本人のコミュニケーション方法を揶揄する発言としか捉 えようがなく、「本人に対する意図はない」との弁明は不当です。

但し、市長が「意図にかかわらず、不適切」としていること、謝罪文言と再発防止の誓約があったことは一定の評価をします。

今後高田さんを含めた障害ある市民が安心して暮らせる施策を真摯に 実施頂くよう心より願います。