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私の1票、何を基準に選べばいいの?

たくさんの候補者、政党の選択肢がある選挙。何を基準に選べばいいでしょう? 参考にできる情報や、投票の仕方を選挙取材歴20年以上のベテランライターに聞きました。

7月10日に投開票を行う参議院議員選挙。

でも、何を基準に投票したらいいのでしょう?

特に初めて投票する人は、どんな情報を参考にしたらいいのか悩みますよね。

選挙取材歴20年以上のベテランライター、畠山理仁さん(49)に聞きました。

「選挙公報」は全ての候補者の主張をそのまま掲載

——これだけたくさん候補者や政党があると、何を基準に選んだらいいのかわからない人もいると思います。畠山さんはどうアドバイスしますか?

一番便利なのは、皆さんのポストに入ってきた「選挙公報」です。今回の選挙では、選挙区と比例区と2種類入っていると思います。

選挙区であれば、候補者全員の訴えたいことが、みんな同じスペースで書かれています。デザインセンスもわかりますね。新聞には載らない候補者たちの主張も、これで平等に見ることができます。

ただ、これを見るときに気にしてほしいのは、一番下に書かれている注意書きです。「候補者から提出された原稿をそのまま製版の上掲載したものです」と書かれています。つまり、候補者の言いたい放題です。

候補者の宣伝スペースだと思って読まないと、「こんなすごいことをやってくれるのか!」と真に受けても、実現可能性が検証されていない情報です。そこを注意しながら読む必要があります。

選挙公報でだいたいの方向性がわかりますから、消去法で何人か減らすこともできるし、「自分の考えとピッタリだよ!」という人がいるかもしれません。

比例の場合、公報で候補者や党ごとの主張も読むことができます。

党を選ぶには? マニフェストは?

——比例で党を選ぶ場合、選挙公約(マニフェスト)はどうですか?

僕は選挙取材をしますから全ての党の公約を読みますが、一般の人はなかなか読まないですよね。

比例の場合、わかりやすく考えると、今の生活でいいと思っている人は与党、今の生活よりもっと違う方法があるんじゃないかと思う人は野党、という形で切り分けることができます。

各メディアや市民団体が作っているボートマッチやアンケートも参考に

それからメディアの選挙系ウェブサイトで「ボートマッチ」が公開されています。アンケートに答えていくと、あなたにはこの党がマッチしますと示してくれるものです(NHK読売朝日毎日)。

——自分でもやってみるのですが、全然支持できない政党が出てきてがっくりすることがあるんです。

それはありますよね(笑)。その時はもう一度やり直してみる。あとはNHKで放送される「政見放送」でも良いですね。面白くない政見放送は見ていられないです。

——メディアや市民団体が各テーマごとに候補者に質問しているアンケートなどはどうですか?

質問にもそれぞれの色が出てきますが、同じ質問に各政党や候補者がなんと答えているのかは参考になると思いますよ。「みんなの未来を選ぶためのチェックリスト -参議院選挙2022-」は質問の項目も多いので、読んでみると面白いと思います。

——経済とか、環境問題とかLGBT政策とか、自分の関心に合わせて参考にすればいいわけですね。

そうですね。選挙の争点は、メディアが与えてくれるものではありません。自分の1票なので、自分が興味関心を持っていることを最重要の争点にしていいと思います。

気に入らない人を落とすための投票の仕方も

——自分の支持する人を選ぶというよりも、当落線上にある人の中から、自分が当選させたくない人と競っている人を選ぶという戦略もあります。

考え方は人それぞれなので、基本は好きな人に入れるのでしょうけれども、嫌な人を通すよりはより良い人を当選させようという考え方もありだと思います。

自分が応援している人ではないけれど、嫌な人を引きずり落とすことができたなら、その1票も納得のいく1票になる。そういうやり方もある、ということを知っておくのもいいと思います。

——夫婦別姓や同性婚などのワンテーマで、それに賛成しない人を落とそうという運動である「ヤシノミ作戦」なども一つの投票方法ですね。

そうですね。「ああ、こういう作戦もあるのか」と自分の引き出しとして持っておくことはいいことです。色々な方法がある中で、今回はこれを重視して投票しようと決めるのは有権者です。選び方の基準はそれぞれで決めたらいいと思います。

【畠山理仁(はたけやま・みちよし)】選挙取材20年以上のフリーライター

1973年、愛知県生まれ。早稲田大学第一文学部在学中より、取材・執筆活動を開始。日本のみならず、アメリカ、ロシア、台湾など世界中の選挙の現場を20年以上取材している。

『黙殺 報じられない”無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)で第15回開高健ノンフィクション賞を受賞。『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)、『コロナ時代の選挙漫遊記』(同)。