• covid19jp badge
  • medicaljp badge

高齢者から小児科クリニックに怒りの電話 コロナワクチン予約、個別接種担う開業医も混乱

高齢者で新型コロナワクチンの接種が本格化し、大規模接種会場だけでなく、個別接種を行う医療機関でも予約で混乱が起きています。先週から高齢者の問い合わせが相次いでいる小児科開業医の森戸やすみさんに聞きました。

いよいよ高齢者で本格的な接種が始まる新型コロナウイルスのワクチン。

大規模接種会場の予約申し込みと同時に、集団接種会場や個別接種に手をあげた医療機関への問い合わせや予約申し込みも始まっている。

ところが、それぞれの医師のところに十分情報が届いておらず、なかなか予約できずにイラつきが募る患者から当たられてしまうこともある。

先週から患者の問い合わせが増えたという都内の小児科開業医、森戸やすみさんにその混乱ぶりを聞いた。

「まだわからない」と答えるしかなく

東京都台東区にある森戸さんの小児科クリニックには、先週あたりから普段の患者層ではない、高齢者からの問い合わせが相次いでいる。

「台東区の広報に区内の接種可能な医療機関52か所が掲載されて送付されたようです。掲載に同意はしていたのですが、いつ頃から公表されるかは聞いていなかったので、スタッフも心の準備ができないまま対応が始まりました」

「私達は6月中旬以降に高齢者の個別接種が始まると聞いていたのです。ところが、接種希望者からの電話が来るので医師会に問い合わせると、『ワクチンを可能な限り早く開始してほしい』と急に方針転換されたのです」

区内では永寿総合病院など7か所で集団接種が行われる。

森戸さんは医師会の事前の調査で、集団接種にも参加するし、蔓延防止のために自分のクリニックでも接種すると登録していた。医師の中には両方手をあげる人もいるし、どちらかだけに参加する人もいる。

森戸さん以下、クリニックのスタッフは5月21日に2回目の接種を受ける予定で、まだ準備段階だと思っていたが、急に予約対応に追われることになった。

「わからないことだらけで、保健所や区役所に問い合わせても『私たちも聞いていない』としか答えが返ってこない。患者さんにも『まだわからないのです』と対応するしかなく、互いにストレスが募っています」

接種可能かどうかの判断基準

例えば、小児科医の森戸さんの場合、普段は診ない持病を抱え、普段は処方しない薬を飲んでいる高齢者から予約の電話が来る。

「どんな持病があって、何の薬を飲んでいる場合なら接種を控えたらいいのか、マニュアルが示されていないので、自分で勉強して受け答えするしかありません」

「基本的には『かかりつけの主治医に相談してから予約してください』と答えているのですが、かかりつけ医のところにもマニュアルがなく、万が一何かあれば接種した医師の責任になるでしょう。そもそもかかりつけ医の定義も曖昧です」

台東保健所では医師向けに1月に新型コロナウイルス感染症の勉強会を、2月にワクチンの勉強会を開き、森戸さんも参加した。厚労省の勉強会にも参加して勉強は怠らない。

「ある種の抗がん剤を使っている人は血が止まりにくくなることなどは勉強しましたが、それでも新しいワクチンですし基本しかわかっていません。中には保身のために、『持病がたくさんあるならやめておきましょう』と消極的な判断をする医師も出てくるかもしれません。本当はそういう人の方が重症化のリスクが高いのかもしれないのに」

現在、接種の順番が回ってきている人はバーコードや接種番号で接種状況を管理する「接種券」と「予診表」が送付されている。

この接種券があれば、都道府県や市区町村をまたいでも好きな医療機関で接種できる。森戸さんのところには埼玉県に住む高齢者からの問い合わせも来ている状況だ。

ワクチンが余った時にどうするか?.....わからない

困ったのは、ワクチンが余った場合の対応がいまだにわからないことだ。

予約は一元化したシステムで行っているわけではないため、予約が取りにくいことを恐れて、家族などで手分けしてあちこちに予約を試みる高齢者も想定される。

「みんなダメもとで複数の施設に電話をかけて、2か所以上の予約が取れたら時期が早い方に行くでしょう。二重予約したのをキャンセルせずに予約日に来ないことも考えられます。当日具合が悪くなって来られない人もいる。必ず余りは出るはずですが、私が学校医をしている小学校の先生などまだ接種券が配られていない若い人にうちたくても現状ではうてません」

森戸さんが台東区に尋ねたところ、余った場合の対応方針は決めていないとのことだった。

YouTubeでこの動画を見る

首相官邸 / Via youtube.com

「ワクチン接種記録システム(VRS)」について説明する河野太郎担当相

一人一人が接種したかどうかは、接種券に印刷されているバーコードを読み込むタブレット式端末で国の「ワクチン接種記録システム(VRS)」に登録し、管理する。

原則、この接種券が配布されている人が余ったワクチンを回す対象になるが、「接種券のない若い人でもうちのクリニックの電子カルテに記録しておいて、後から接種券を発行してもらって登録することもできるだろう」と森戸さんは考えていた。

保健所からは、「住民票が区内にある人の場合なら事後に接種券を出すことで対応も可能」と説明を受ける一方、「区外に住民票がある人の場合は接種券を発行できないので対応できない。国からの指示はなく私たちも困っている」と言われた。

森戸さんは柔軟に対応できないシステムに苛立ちを感じている。

「河野太郎大臣は、都道府県や市区町村をまたいでもうっていいと言いますが、このような制約があるとうちにくいです。メディアには貴重なワクチンを無駄にしたらもったいないと言われ、無駄にしないようにうったら『不公平だ』と言われます。キャンセル待ちのリストもクリニックで独自に作ることで対応しようと思います」

イラつく高齢者に対応 早く方針を決めて

「あまりにいろいろなことがわからないまま、手探りでやっています。もともとワクチン接種に慣れている小児科でさえこうなのですから、他の診療科ではどうなのでしょうか?」

台東区の下谷医師会では所属医師を4グループに分けて、毎週医師会にワクチンの必要数を発注して、翌週に受け取ることになっている。

森戸さんのグループは5月24日に最初のワクチンが届くことになっている。25日から接種をスタートするため、18日から予約を取る予定だ。

「細かいことを確認してから予約を受け付けようとしたのですが、何回も電話をかけている高齢者はスタッフが電話をとった時から怒っています。『ワクチンの予約を』と言われて、『何のワクチンですか?』と聞いたら『コロナに決まっているでしょう!』と最初から喧嘩ごしです」

「予約が始まったらクリニックのホームページに掲載すると言っても、『インターネットを使えない』と言われます。クリニックの表に今後の予定を貼り出しておくことにしました」

「少なくとも区役所や保健所が区内の方針は決めてほしい。患者も接種する医師も困っています」

厚労省「ウェブサイト参照を」「自治体ごとの管理になる」

厚労省の予防接種室は情報を求めるこうした医師に対し、「厚労省のウェブサイトにある『新型コロナワクチンの接種を行う医療機関へのお知らせ』に全て入っているので参照してほしい」と案内している。

具体的な手続きについては、このページ内にある「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する
医療機関向け手引き(2.1 版)
」(PDF)や「接種の進め方(資料)」を見てもらいたいとのことだ。

こうした情報が最前線の医師たちに届いていないことについて予防接種室の担当者は、

「自治体にはウェブサイトをその都度更新していることは伝えていますが、ウェブサイトのどこにどの情報があるかは伝えられていません。自治体に送っている通知は膨大で情報を探しにくいでしょう。ウェブサイトに全て掲載されているので、個別の問い合わせは全てここに案内しています」と言う。

「余剰ワクチンが出た場合の対応も手引きに書いてありますが、基本的には同じ優先順位の人にうってほしい。つまり接種券が発行されている人です」

「接種券がない人はどうするのかよく聞かれるのですが、接種券がない人にうつ時には、市区町村の協力が必要です。接種券は接種記録の管理や請求にも関わります。そのあたりの事務取扱は市区町村が決めることで、特別な対応をするかどうかも市区町村によって違います」

二重予約の可能性については、国で一括して登録するシステムを作っていない以上、市区町村ごとの対応に左右されるという。

「予約の取り方も、市内全域の接種会場の予約をまとめて自治体が取るところもあれば、個別の医療機関ごとに予約を取るところもあります。住民に接種会場と接種日を割り当ててしまって『変更のある人だけ連絡をください』としているところもあります」

「二重予約を防ごうとすると全員一つのシステムで管理しなければなりませんが、自治体でやれているところがあるかはわかりません。接種券に書いてある接種番号で管理することなら、市区町村レベルならできると思います」

最大1億人の国民がうつワクチン。国として全国民の予約システムをデジタルで作っておけば二重予約は防げるが、マイナンバーなど国民一人一人につけた背番号で国が管理するしかない。

「国が個人の接種状況を管理し、国が個人の接種記録を見ることができるようになります。そこは議論が分かれるところだと思いますので、新型コロナワクチンでの対応は難しいでしょう」