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「HPVワクチン、男子も定期接種にして」 厚労相に要望書を提出

予防接種の推進を訴える「ワクチンパレード」が10月13日、HPVワクチンの定期接種に男性も含めることなどを訴える要望書を厚労相に提出しました。

感染症の市民団体や専門家団体ら15団体は10月13日、HPVワクチンをうちそびれた人に無料接種の再チャンスを与える「キャッチアップ接種」の接種促進や、男子も定期接種の対象とすることなどを求める要望書を加藤勝信厚生労働相に提出した。

男性も無料でうてるようにするために昨年10月から署名活動を続けている「Voice Up Japan ICU」の川上詩子さん(21)は、「男性の定期接種化を通じて、すべての人がHPVワクチンの無償接種ができるようになることを望んでいます」と訴えた。

おたふくかぜワクチン、中年男性への風しんワクチン、HPVワクチンに絞った要望書

毎年、関連団体は「ワクチンパレード」で予防接種の推進を訴えているが、雨が降ったこの日は議員会館内で集会を開き、政治家らにワクチンで守れる命を守るようそれぞれの団体の願いを訴えた。

その後、厚労省に移り、以下の3項目を掲げた要望書を大臣の代わりに対応した伊佐進一副大臣に手渡した。

おたふく風邪ワクチンは、子ども用のワクチンの中でもなかなか定期接種化されないこと、風しんワクチンやHPVワクチンのキャッチアップ接種は期限が決まっていることから、この3項目に絞った。


  1. 一生治らない難聴をはじめ重大な合併症のリスクから子どもたちを守るために、おたふくかぜを早急に予防接種法のA類疾病(※予防接種に努力義務が課される)に定めること。
  2. 2025年3月末までに第5期風しん定期接種対象者(※昭和37年4月2日から昭和54年4月1日に生まれた男性)の抗体保有率を90%まで高めるために、新型コロナワクチンと同様の接種体制確保事業に関する自治体向け説明会を実施し、職域接種を促進すること。
  3. 2025年3月末までにHPVワクチンのキャッチアップ接種世代の感染対策を図るために、効果的な情報発信および住民票と異なる居住地での接種体制の確保等による接種促進策を講じること。また男子を定期接種の対象とすること。


HPVワクチン、次はぜひ男性接種を

大学生の川上さんは、自身がHPVワクチンの定期接種の対象だった時、センセーショナルな副反応報道の影響を受けて、一度は見送った。

しかし、大学に入ってからHPVワクチンの重要性に気づき、3回で10万円かかる9価ワクチンを自費で接種した。その際、当時の交際相手に「あなたもうって」と伝えたが、費用負担の高さから彼はいまだに接種できていない。

「費用で接種をためらうことがあってはいけない」と、男性も定期接種の対象とするように署名活動をはじめ、11月にも提出する予定だ。

川上さんは「HPVワクチンという予防策があるのに知られておらず、アクセスしにくいことが原因で子宮頸がんにかかる人が増えなくなる人も多いことに危機感を抱いて、このような活動をしている」と語る。

HPVワクチンをめぐる状況は、積極的勧奨が再開され、キャッチアップ接種もスタートするなど、大きく動いている。

「一方、男性が接種するには5万円、多くて10万円と、最も必要性が高い学生には手が出せないほど高額です。大学2年生の時のパートナーにHPVワクチンを勧め、彼も接種したいと決断しましたが、金額を見て断念しました」

「男性にも大きな意義があるものですし、男女ともに接種したら子宮頸がんを日本から撲滅することも可能になるかもしれません。男女ともに定期接種が実現することによって、あらゆるジェンダー、セクシュアリティの人が接種できるようになる。次はぜひ男性接種をお願いしたい」

副大臣は、大学生がこのような活動をしていることに感謝する言葉をかけ、「男子のHPVワクチンについては必ず取り組んでいきます。必ず定期接種にしたい」と答えたという。

HPVワクチン接種を見送り、円錐切除手術を受けることになった女性医師のメール

また、HPVワクチンは、今年4月からうちそびれた9学年に対し、キャッチアップ接種が認められながらも接種率が伸び悩んでいる。

キャッチアップ接種を実現するために大学生と共に活動してきた産婦人科医の高橋幸子さんは、最近「子宮頸がんの初期の治療である、子宮頸部の円錐切除手術を受ける」というメールを受け取った、教え子の女性医師について語った。

「『ちょうど9価ワクチンをうとうと検討して病院も見つけていたところだったので、今の子達には皆打ってほしいなぁと切に思った』とメールをしてくれました。
そしてHPVワクチンをうっていたとしても、『うったから大丈夫!』的なノリで健診を受けない子がいっぱいいて悲しい、とも。予防接種をうって、健診も受けるという2つセットが最低限で当たり前の世界になってほしいと言っています」

女性医師は来月以降に手術を受けるが、「円錐切除すればほぼ大丈夫だとわかっていても、医者でも怖い。妊娠、出産もすごく心配です」と書いてきたという。

女性医師が学生時代、HPVワクチンを接種しないことを決めたのは親だった。

性交未経験者じゃないと意味がないと母が思い、本人も痛みに弱いから、という理由で見送った。そして、何年も経ってから子宮頸がんの前がん病変である「高度異形成」になった。

このメールを女性医師から受け取った高橋さんはこう訴えた。

「中高生にHPVワクチン接種を勧めるのであれば、接種対象年齢の子どもの保護者世代の人たちにHPVワクチンを知ってもらうことが必要です。親がうたない判断をした彼女は、子宮頸がんとHPVワクチンの意味を理解するようになった今、『やはりうっておきたかった』と感じているのです」