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子宮頸がんで苦しむ人がいなくなるように 専門家が情報発信に乗り出した

日本産科婦人科学会が一般向けページ「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」を公開

子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染し続けることによって、がんになる直前の前がん病変という状態からがんへと進む。その感染を元から防ぐのがHPVワクチンで、早期発見を目指すのが子宮頸がん検診だ。

日本産科婦人科学会は、3月12日に学会ウェブサイトで、「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」というページを公開した。子宮頸がんの発症の仕組みや、予防の有力な手段であるHPVワクチンの効果や安全性などについて解説している。

同学会の広報委員会と婦人科腫瘍委員会の両委員長を務める新潟大学産婦人科教授、榎本隆之さんは「子宮頸がんで苦しむ人が少しでも減ってほしい」と目的を話している。

日本産科婦人科学会

「一般のみなさまへ」という欄で公開されたページ「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」。さらに詳細な情報を知りたい人のために、「もっと知りたい方へ(Q&A、参考文献)というリンクも設けられている。

もうこれ以上、患者が悲しむことのないように

日本で毎年約1万人が新たに発症し、約2900人が亡くなる子宮頸がん。HPVワクチンは2013年4月に公費で受けられる定期接種になったものの、うった後に体調不良を訴える声が相次ぎ、国は積極的に勧めるのを中止した。

安全性への不安が広がったため、ほとんどうつ人がいなくなっている。

一方、患者、死亡者数は増加傾向にあり、特に20〜40代の子育て世代の女性がかかることから、「マザーキラー」とも呼ばれている。

子宮頸がん患者を日常的に診ている産婦人科医の学術団体として、一般の人に正確な情報を伝えて、正しく予防に取り組んでもらいたいと、婦人科腫瘍委員会のメンバーを中心に今回のページを作成した。

榎本さんは、つい最近も、長年不妊治療を行い、体外受精でようやく初めて赤ちゃんを授かったのに、同時に子宮頸がんが発覚した患者を診た。

「ギリギリまで赤ちゃんを産めるように粘ろうとしたのですが、リンパ節に転移していることがわかり、子宮と共に赤ちゃんを諦めるしか生きる道はないと判断しました。赤ちゃんを心待ちにしていたお母さんは大泣きです。こんな思いをもう患者さんにもさせたくないし、産婦人科医としてもこんな辛い手術をしないで済むようにしたいのです」

ワクチンと検診 両方で予防を

まず、性交渉の経験のある女性のうち50〜80%はHPVに感染する機会があるため、性交経験があれば誰でも発症する危険性があるがんであることを指摘。

子宮頸がん検診は、「前がん病変のうちに発見して治療を行うことでがんへの進展を防ぐ」が、

頸がんや前がん病変を有する人が検診で陽性を示す割合(感度)は50%~70%と十分に高いとは言えず、がんや前がん病変がある人でも、一定の割合で検診では異常なし(偽陰性)と判定されてしまう危険性があるのです。

として、検診には限界があることを説明している。これに対し、HPVワクチンは「HPVの感染自体を予防して前がん病変・頸がんを発生させないようにする」もので、予防に対する役割が異なることを伝え、

現在使用可能なHPVワクチンは頸がんの約6~7割を予防できると考えられています。HPVワクチンと子宮頸がん検診の両方による予防が最も効果的です。

と両方を組み合わせることの重要性を訴えている。

子宮頸がんの治療や後遺症

前がん病変やごく初期の早期がんで発見されれば、子宮頸部の一部を切り取る「円錐切除」という手術で子宮を残すことも可能だ。しかし、早産のリスクを高めるなどして、「将来の妊娠・出産に影響が出る可能性があります」と、早期発見でも後遺症が残るリスクも伝えている。

それ以上進んだ浸潤がんでは子宮や卵巣、リンパ節を広く切除し、放射線治療や抗がん剤治療も必要となる。治療成績は向上しているが、

治療により救命できたとしても、妊娠ができなくなったり、排尿障害、下肢のリンパ浮腫、ホルモン欠落症状など様々な後遺症で苦しむ患者さんも少なくありません。

と、がんになってからの治療は、助かったとしても、後遺症が重くなる可能性があることを伝えた。

HPVワクチンの効果と安全性

最後に紹介しているのは、子宮頸がんの原因となるウイルスに感染しないようにするHPVワクチンの効果と安全性だ。

日本では特に子宮頸がんに進みやすいHPVの16型と18型への感染を防ぐ2種類のワクチンが承認されており、「初めての性交渉を経験する前に接種することが最も有効です」と説明する。

効果については、国のプログラムとしていち早く取り入れたオーストラリアやイギリス、米国、北欧の国々で、HPV感染や前がん病変の発症が減ったことを紹介。

国内でも、新潟県、大阪府の研究で、ワクチン接種者でHPV感染率が低くなっている結果が示されていることを伝えている。秋田県や宮城県でも、うっている人はうっていない人と比べ、検診で異常な細胞が見つかる割合が少なかった。

安全性についても、

WHOが世界中の最新データを継続的に解析し、HPVワクチンは極めて安全であるとの結論を発表しています。

とし、国内でも厚生労働省の専門部会が以下のように、ワクチンの成分とは無関係だと結論づけていることを紹介。

慢性疼痛や運動障害などHPVワクチン接種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されておらず、これらは機能性身体症状と考えられるとの見解が発表されています。

厚生労働省研究班の調査の結果、HPVワクチンの接種歴のない女性でも、HPVワクチン接種歴のある女性に報告されている症状と同様の「多様な症状」がみられる人が一定数いた、というデータも示している。

さらに接種後の痛み治療の研究を行なっている厚生労働省研究班では、症状を追跡できた女性156人のうち、115人(73.7%)は症状が消えるか軽くなったかし、32人(20.5%)は変わらなかった、9人(5.8%)は悪化したと伝えた。

そして、

今後も複数の診療科の専門家が連携して治療にあたるとともに、社会全体でこのような症状で苦しんでいる若い女性をしっかり支えていくことが重要です。今後も私どもは、HPVワクチンの接種の有無にかかわらず、こうした症状を呈する若年者の診療体制の整備に、他の分野の専門家と協力して真摯に取り組んでまいります。

と実際に苦しんでいる女性への支援の重要性を書き、救済制度があることにも触れている。

子宮頸がんの予防と撲滅を

最後に、HPVワクチンについての学会の考え方として、

先進国の中で我が国に於いてのみ将来多くの女性が子宮頸がんで子宮を失ったり命を落としたりするという不利益が生じないためには、科学的見地に立ってHPVワクチン接種は必要と考え、HPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を国に対して強く求める声明を4回にわたり発表してきました。

と、積極的に勧めるのを再開するよう国に強く求めていることを示し、

これからも子宮頸がんとHPVワクチンに関する科学的根拠に基づく正しい知識と最新の情報を常に国民に向けて発信するとともに、子宮頸がんの予防およびこの病気の撲滅を皆様と共に目指していくべきと考えております。

と訴えている。

詳細版では21ページに渡り、「子宮頸がんと体がんの違い」や「すべての子宮頸がんの原因はHPV感染なのですか?」などの質問に答える形で、データやグラフも使って詳しく説明をした。ワクチンの安全性や効果の研究もさらに詳細に伝え、参考文献リストもつけた。

今後、新しい研究報告やイラストなどを追加していき、さらにわかりやすく、さらに最新の情報が伝わるように順次、改定していく予定だ。

榎本さんは、「海外の学会では『子宮頸がんは撲滅の可能性が見えてきた』と宣言されているのに、先進国の中で日本だけがワクチンをうつ人がほとんどおらず、検診受診率も低いままで、頸がんになる人が放置されている状況です。頸がんを治療する専門家としては、予防できるがんで苦しむ人を診るのが悔しくてたまらない。どうか、あなたの命や将来の赤ちゃんの命を守るために、このサイトを見てください」と呼びかけている。

Naoko Iwanagaに連絡する メールアドレス:naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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