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「風疹を排除すると約束してください」 母たちの涙ながらの訴え 自民党厚労部会長・小泉進次郎氏らはどう動くか

風疹をなくそうの会「hand in hand」や「VPDを知って、子どもを守ろうの会」らが自民党厚生労働部会長の小泉進次郎氏らに面談し、風疹流行を食い止める政策を要望しました。

風疹の流行が止まらない。国立感染症研究所が10月21日(42週)まで集計した累積報告数は1486人と、昨年1年間の約16倍に達した。感染はさらに拡大する見込みだ。

この状況に胸を痛める「風疹をなくそうの会『hand in hand』」や「VPD(※)を知って、子どもを守ろうの会」などが11月5日、自民党厚生労働部会長の小泉進次郎氏らと面談し、流行を食い止める政策を実行するよう要望した。

※VPD(Vaccine Preventable Diseases)ワクチンで防げる病気のこと

「hand in hand」共同代表で、妊娠中の風疹感染で心臓や目や耳に障害を持って生まれた長女の妙子さんを18歳で亡くした可児佳代さんは涙を流しながら叫ぶようにこう訴えた。

「必ず排除してください。約束してください! 今、この瞬間にも不安で不安で仕方ないお母さんが何人もいると思うと、胸が締め付けられるぐらい苦しいんです。必ず排除してください」

小泉氏は、「風疹は排除できるにも関わらず、日本が実現できていないということは何かが足りないはずだ。足りないことを埋めていくために、これから政治ができることを関係のみなさんと話し合って行動に移していきたい」と話し、流行の中心となっている30〜50代男性への接種補助も含めて政府や関係各所に働きかけていくことを明言した。

「30〜50代男性のワクチン定期接種」「オリパラスタッフへの対策」 5項目を要望

今回の面談は、「風疹の流行を食い止めるには政治が動くことが必要だ」と考えた可児さんらが小泉氏側に働きかけ、実現した。

風疹は、発熱、全身の発疹などが主な症状だが、この感染症が怖いのは、妊娠初期の女性がかかると赤ちゃんの目や耳、心臓に障害が残る先天性風疹症候群(CRS)をもたらす恐れがあることだ。

2012〜13年の大流行時には、45人の赤ちゃんが障害を持って生まれた。

ワクチンを2回うてば免疫はつく。しかし、1990年4月1日以前に生まれた人は、受けていても1回のみ、1979年4月1日以前に生まれた男性は全く受ける機会がなかったため、十分免疫を持たない人が数多くいる。今回の流行でも、風疹にかかっているのはワクチン不徹底世代の30〜50代の男性がほとんどだ。

面談の冒頭、可児さんが代表して「風しん流行に関する緊急要望書」を小泉氏に手渡した。要望項目は以下の5つだ。

  1. 現在の風疹流行を可能な限り早く止め、先天性風疹症候群(CRS)の子どもや妊婦の風疹感染による人工中絶を出さないようにすること。
  2. 予防接種が不十分で流行の中心になっている30〜50代の男性を対象としたMRワクチン(麻疹風疹ワクチン)の定期接種を行うこと。
  3. 不足するワクチンを安定供給するために、国産ワクチンの増産と海外からの輸入の検討などで早急にワクチンを確保すること。
  4. 会社での健康診断に麻疹・風疹の接種歴の確認や抗体検査項目を増やし、検査費用を公費でまかなうなど職場での風疹予防体制の整備。
  5. 2020年東京オリンピック・パラリンピックを安心・安全に開催するために、運営に関わる職員やボランティアの接種歴を確認し、感染源にならないように対策を講じること。


受け取った小泉氏は冒頭、昭和56年生まれの自身も予防接種不徹底世代(昭和37〜62年生まれ)で、面談前に抗体検査を受け、風疹ウイルスに免疫があることを確認したことを明かした。

「こういった気づきを与えてもらったのは、皆さんの活動のおかげです。女性はもちろん、我々男性、妊婦さんの近くにいるような方々に対しても、少しでも気づくきっかけを作りたい、多くの人に知ってもらいたいと思ってこのような形が実現した。皆さんのご尽力、活動に対して心から敬意を表したいと思います」

こう述べると、可児さんややはり自身の娘が先天性風疹症候群で難聴を抱えた大畑茂子さんは涙を拭った。

可児さんは「この5年間は長かったんです。5年あれば風疹は排除できる。でもまさかもう1回こういった活動をしなければならない、また声を張り上げなければいけないと思っていなかったんです。とにかく同じような思いをするお母さんをなくしてあげてください」と語りかけた。

30〜50代男性の定期接種化、オリパラ関係部局への働きかけも

その後、メディアは会場から退出させ、約1時間、小泉氏ら自民党厚生労働部会の委員らに、可児さんらがこれまでの活動や風疹の状況を伝えた。その後、記者会見が行われた。

可児さんらと並んで座った小泉氏は、世界の中で日本が風疹対策の後進国になっている事実に触れ、与党としても対策に力を入れることについてこう語った。

「オーストラリアは最近、風疹の撲滅宣言をしました。アメリカは日本に対して、風疹の感染歴がない妊婦さんに対して渡航をやめるように勧告も出しています。こういったことを恥ずかしく思い、なんとか2020年までに風疹の流行をなくす日が1日も早く来るように自民党としても全力を尽くしたい」

「風疹にかかったことがあるかわからなかった方は抗体検査を受けていただきたい、そしてワクチン接種必要でしたら受けていただきたい。そのために国として制度として必要な方にワクチン摂取ができる環境を整えていかなければいけないと思います」

その上で、予算措置について問われ、30〜50代男性の定期接種については閣議決定が必要だとして、政府に働きかけていくことを明らかにした。

さらに、オリパラ関連でも「風疹対策も漏れることのないように関係部局に働きかける」とした。

最後に可児さんや大畑さんから、「必ず排除してください」と再び泣きながら要望されると、小泉氏はこう述べた。

「たぶん今まで言ってきたけれど、結果になっていない悔しさがあると思うんですね。だから僕はこの場で軽々しく約束するとは言えません。だけどその時が来るまで行動する。そのことの約束はできます。みんなで一緒になって頑張りましょう」

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