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大学がカジノ推進のシンポジウム 「#立教はカジノに魂を売るな」と学内外から批判の声

立教大学が7月6日にマカオ大学と共催で、カジノ経営者が複数登壇する国際シンポジウムを開催する。大学内外からも「立教はカジノに魂を売るな」と批判の声が上がる中、大学からの承認手続きがいい加減だったのではないかとする疑惑も指摘されている。

日本にカジノを作るための法律「カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法」が2018年7月に成立したが、ギャンブル依存症や治安の悪化への不安から、反対の声も依然、根強い。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

ハッシュタグ「#立教はカジノに魂を売るな」を掲げる稲葉剛さん

そんな中、立教大学が7月6日にマカオ大学との共催で国際シンポジウム「ビジネスモデルとしての日本型IR」を開くことを決め、学内外から批判の声が高まっている。

特別講演として、マカオの「新世代カジノ王」と呼ばれるローレンス・ホー氏をはじめとする3人のカジノ経営者を海外から招き、基調講演は観光庁審議官。カジノを推進する布陣一色だ。

大学がカジノを推進しているとも見える内容に、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授で、ギャンブル依存症に苦しむ人も多いホームレス支援を長年行ってきた稲葉剛さんはTwitterでハッシュタグ「#立教はカジノに魂を売るな」を作り、反対の声を広げている。

また、大学の運営組織にシンポジウムの内容をはかる際に、別の研究者が登壇するかのように説明をして承認を受けていたといい、承認後に登壇者を差し替えた疑惑も浮かんでいる。

いったい何が起きているのか。

どんなシンポジウムなのか? カジノ推進一色

このシンポジウムは、立教大学が7月5日から7日までの3日間で開く、グローバルリーダーシップ育成プログラム 国際統合型リゾート経営管理学 第7回:「日本統合型リゾート~健全社会のIRを目指して」の一環として行われるもの。

立教大学

登壇者がカジノ経営者ら全てカジノ推進派。マカオ大学と立教大学の共催で、豊島区が後援に名を連ねている。

3日間のプログラムはカジノ経営に関心のあるビジネスマン向けで、受講料も15万円と高額だが、今回問題となっている一般向けの国際シンポジウム「ビジネスモデルとしての日本型IR」だけは入場料2000円で、学生は無料としている。

プレスリリースでは、「本シンポジウムでは日本型IRにおけるビジネスモデルについて、観光教育の実績を持つ本学として学術的側面を中心に議論する場を提供します」と説明している。

講演に招かれたのは、マカオのカジノ運営会社会長兼CEOのローレンス・ホー氏を初め、香港、アメリカに本社を置くカジノリゾートの経営者3人と、観光庁審議官の秡川直也氏だ。

パネリストとしてもカジノの運営に関する情報を発信するサイトの編集長、リゾート運営会社、海外旅行会社の経営者が加わり、全ての登壇者がカジノを推進する立場をとる。

「大学はいつカジノ推進を決めたのか?」 若者のホームレスはギャンブル依存症が多い

これに、最初に批判の声をあげたのが、長年ホームレスや貧困支援を行い、立教大でも特任准教授として貧困問題について講義をしている稲葉剛さんだ。

「日本は海外に比べてギャンブル依存症の発症割合が高いですし、ホームレス支援に取り組んでいると、特に若い世代でギャンブル依存症が多いのです。パチンコから始まり、闇カジノで身を持ち崩した体験を話してくれた人は一人や二人ではない」

少し古い調査だが、2010年12月にビッグイシュー基金で若者のホームレス50人に聞き取り調査をした結果、50人中14人がギャンブル依存症の傾向があった。

特定非営利活動法人ビッグイシュー基金

「若者ホームレス白書」より。依存症的傾向のある18人のうち、14人がギャンブル依存症だった

「それなのに、若者を教育する大学でなぜ、ギャンブルを推進するようなイベントを開いてしまうのでしょうか? 学生を無料で参加させて、どんなメッセージを学生が受け取ると思っているのか」

「よく、『生活保護受給者はパチンコに依存してけしからん』という人がいますが、ギャンブル依存症も他の依存症と同じく、いったん脳の快楽回路ができてしまうと、治すことは難しい。お金が尽きるまでやってしまうので、とにかく環境要因が大きい。誘惑する環境に触れさせないようにすることが大事だと言われているのに、なぜ、大学が依存症対策に逆行することをやるのでしょうか」

立教大学は1874年にキリスト教宣教師が設立した私塾が前身で、欧米に追いつくために実利主義的な教育が盛んだった風潮と一線を画したリベラルアーツ(教養教育)を推し進めてきたとHPでうたう

「経済活性化、地域活性化の名の下に、キリスト教系の大学のリベラルで清廉なイメージを、カジノの宣伝戦略に利用されるのはいかがなものか。大学がギャンブルで人生を破綻させた人を顧みず、貧困の拡大に加担することがあってはならないはずです」

ハッシュタグ「#立教はカジノに魂を売るな」

稲葉さんは6月16日、Twitterでハッシュタグ「#立教はカジノに魂を売るな」を作り、RTは1200件を超えた。

立教大学の教員の一人として、立教がカジノを推進することに反対します。賛同してくださる方は、 #立教はカジノに魂を売るな のハッシュタグでツイートをお願いします。 【マカオ大学主催・立教大学共催】国際シンポジウム 7/6 開催「ビジネスモデルとしての日本型IR」https://t.co/ZOOz9btXKO

@inabatsuyoshi

稲葉さんは言う。

「再考してほしいですし、少なくとも大学としてのスタンスを明らかにしてほしい。立教大学はカジノを推進する大学なのかどうかを」

大学の意思決定手続きに不透明な部分も

さらに、このシンポジウムを決めた大学の意思決定の手続きにも疑問の声が上がっている。

別の同大学教授によると、このシンポジウムは4月25日に開かれた大学の意思決定組織である学部長会で承認されたが、その学部長会ではかられた提案書に書かれた人とは別の登壇者になっているというのだ。

「部長会にかけられた提案書では、登壇者はマカオ大学の教授3人とカジノコンサルタントとなっていたのです。大学が学内で行う学術シンポジウムは、多様な論点に目を配る学問のルールに則って行わなければならないはずです」

「研究者が登壇するのであれば、『学術的な側面を中心に議論する』という趣旨にも合っていたでしょう。けれども、承認されそうな研究者の名前を並べておいて、承認後に、カジノ運営者ばかりという偏った登壇者に変えたなら問題です。カジノ推進のプロパガンダと批判されても仕方ない内容です。大学は然るべき手続きを踏んで、この差し替えを承認したのでしょうか?」

学部長会では一部の学部長から、ギャンブル依存症問題などの指摘があり、デメリットも慎重に精査するよう求める発言もあったという。

このシンポジウムの問題は、学内の教職員組合の組合ニュースでも取り上げられている。

不透明な手続きでカジノを推進する立場の当事者が、カジノを宣伝する内容になっていることを批判し、こう指摘している。

このような「国際シンポジウム」を共催し、会場を提供することは、あたかも立教大学がカジノを推進しているようにみられてしまう。このことに重大な危惧を覚える。(中略)


大学の場で「学術的側面」から議論するというのであれば、少なくともこうした多様な論点・視点(地域社会への悪影響や依存症患者を生み出すことへの懸念)を俎上にあげ、議論することが必要ではないのか。本シンポジウムがこうした視点もなく、手続き上の大きな疑問を残したまま開催されるのは甚だ疑問である。

「学生たちをギャンブル依存症から守って」

この問題については、BuzzFeedの取材に対し、ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんが以下のようなコメントを寄せた。

現在、大学生のギャンブル依存症による中退は大問題になっています。


私たちが、2017年度にまとめた森田展彰准教授らとの共同研究「家族支援団体のサービスを用いている家族の抱える困難やニーズの調査」でも、「学校を中退した原因にギャンブル問題が影響していたか?」という質問に対して、中退者を抱える家族52人のうち、実に82.6%の38人が「関係していた」と答えています。


大学でのギャンブル依存症予防教育が一向に進まぬ中、完全カジノ推進派のみで行うセミナーが開催され、カジノが魅力的に語られてしまえば、ギャンブル依存症リスクを高めてしまう危険があります。


日本にカジノがまだない現在でも、すでに大学生がオンラインカジノやインカジ、時には闇カジノににはまっています。大学側はその現実を把握しているのでしょうか?


また、国立精神・神経医療研究センターの薬物依存研究部部長、松本俊彦先生らとの共同研究で、ギャンブルを愛好家として楽しめる人と、ギャンブル依存症者の差を調査したところ、ギャンブル開始年齢の平均が愛好家は30.6歳、依存症者は18.1歳と大きな開きが見られました。


10代、20代という若い世代は、ギャンブルに近づかない方が賢明なのです。


現状、日本の大学はカジノの魅力を伝えるよりも、ギャンブル依存症のリスクを伝えることのほうがよほど急務です。しかもそれはギャンブル産業側からの予防やリスク教育であってはなりません。これらの予防教育は逆にギャンブル推進となっていることが往々にしてあるからです。


慎重に検討して頂ければすぐにお分かりになるはずですが、確かにカジノでは「レスポンシブルゲーミング(責任あるゲーミング)」といって、ギャンブル依存症対策が産業側に義務付けられています。


けれども、まだ10代の学生たちが在籍する大学で、しかも予防教育が何もなされていない日本の現状を考えずに、カジノの魅力を発信しようと試みるようなオペレーターは本当に「レスポンシブルゲーミング」を実践する気があると言えるのでしょうか?


今回の立教大学の決定には、懸念しかありません。大学側は、貴校に在籍される日本の優秀な学生たちをギャンブル依存症から守るためにも、開催中止の措置を英断されることを望みます。


くれぐれもカジノ推進派に名門立教大学の名を利用されることのないよう、最高学府としての公共的役割、社会責任を果たし、ギャンブル産業とは中立性を保たれることを願います。

BuzzFeed Japan Medicalは立教大学にも経緯の説明と批判に対する見解を求める質問状を送ったが、6月22日現在回答はない。回答が届き次第、追記する。

【参考】病的ギャンブラーとギャンブル愛好家を峻別するものは何か

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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