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婚約してもやめられない出会い系 4マタ中の29歳が語る現代の「交際」

女性たちに求めているのは、「おじさん」の役割

夫婦の半分はセックスレスで、著名人の「不倫」は叩きながらも、自身のパートナーとの関係に不満を抱えている人は多い。

ロマンチックな恋に落ち、互いに対する恋愛感情や性的欲望を保ちながら一生一人の人と添い遂げるという物語がなかなか信じられなくなった時代、みんなどのようなパートナーシップを築いているのだろう。

婚約者がいながら、マッチング(出会い系)アプリで新たな女性との出会いを求め続けている29歳のタカシさん(仮名)に話を聞いた。

結婚してもアットランダムな出会いが欲しい

都内の出版社で書籍編集をしているタカシさんは、待ち合わせ場所の喫茶店に、間もなく出版予定という本の表紙のデザインを入れた大きな袋を持って現れた。

タレ目気味の童顔を、長めの髪とあごひげでつつみ、ジーパンにラフな白いシャツ。大きなバッグからは何冊も本がのぞき、本や映画の話に詳しい彼は、いかにも文化系の自由人といった印象だ。

「詰めの作業に入っているので、最近は仕事ばかりだったんですよ。今日でひと段落したので、来週は二人の女性と会う約束をしています」

二人の女性とは、マッチングアプリで出会った人たち。自身のプロフィールや写真を登録して公開し、気に入った者同士が連絡を取れるようにするアプリだ。

そして彼には、昨年やはり同じアプリで出会い、交際を続ける大学院生の婚約者がいる。

「今は、彼女も含めて4人と並行して付き合っています。結婚しても、アットランダムな出会いはキープしたい。絶えず刺激を受けていたいんです」

始まりは遊び半分、冷やかし半分

きっかけは、2015年の冬休みに大学時代の男女の友人二人と出かけた旅先でのやりとりだった。夜、宿で飲んでいる時、女性の友人がスマホを取り出して、マッチングアプリの画面を見せてくれた。

「会社で暇さえあれば、これ見てるんだ。面白いよ」

友人は「社会人になってから出会いの機会がない」ことを理由に始め、すっかりハマったという。タカシさんともう一人の男性の友人も遊び半分で登録し、女性たちの顔写真やプロフィールを冷やかしてみた。

「この子かわいいな、この子はブスだなとかゲーム感覚で盛り上がって、最初は飲みの席の遊びのつもりだったんです。それより、顔写真はもちろん、実名や職業までしっかり出している子もいて、個人情報は大丈夫なのかなという意味で心に残りました」

当時、決まった彼女はおらず、複数の女性と映画や食事などの軽いデートに行く程度の付き合いをしていた。旅行の1ヶ月後、「やはり特定の相手と付き合いたい」と一人に告白して返事を保留された時、あのアプリを思い出した。

「真剣に付き合いたい人の返事を待つのが辛くて、保険をかけたくなったんです。一人に集中してしまうと心に余裕がなくなるし、振られたら立ち直れなくなる。可能性がある人が他にもいたら、こっちがだめでもあっちがいる、と落ち着ける気がしました。これを友達に言うと『どうかしてる』と呆れられるのですが」

登録していたアプリは、自分が気に入った相手に好意を表す「LIKE(好意あり)」という意思表示を送り、相手も送り返してくれれば、「マッチ(合意)」となる。そうなると、互いにメッセージを送り合うことができて、気が合えば実際に会うケースも出てくるという流れだ。

タカシさんは、自分の好みの見た目や趣味を持つ人に「LIKE」を送り続けたが、なかなかマッチにまでこぎつけられなかった。

「そのうち、自分が選んでいる場合じゃなく、選ばれないとスタート地点にも立てないと気づき、片っ端からLIKEを送るようになりました」

1ヶ月ほど経つと、マッチする人が徐々に増えた。他のアプリにも登録し、6つの出会い系アプリを使ってやりとりする女性は一時100人を超えた。その中でも最も見た目が気に入った人と映画に行く約束をした。アプリで出会った人との初めてのデートだった。

「100人マッチする人がいたら、その中で会える確率は2、3人ぐらいです。初めて会う時は、誰も来ないのではないか、もし会えたとしてもとんでもない人がくるのではないかとかなり警戒していました」

初めてのデート 予想に反して拍子抜け

待ち合わせの映画館に行くと、アプリの登録写真と同じ顔のきれいな女性がいた。後から話してわかったが、テレビや映画で売り出し中の若手女優だった。

「写真通りで全くごまかしたり、盛ったりしていなかったのも驚きでしたが、映画代もきちんと払おうとするし、言葉遣いも礼儀正しくて、『真面目じゃん!』と拍子抜けしました。自分が知らない演劇の世界を知ることができたのも面白かった。出会い系アプリのイメージがすっかり変わりました」

次に会った看護学生も「将来、手に職をつけるために勉強している」と話し、その次に会った大学生も就職活動中で、タカシさんにOB訪問の仕方やエントリーシートの書き方を相談してきた。普通の真面目な女性ばかりだった。

「女性ばかりの職場に勤めていたりして、『出会いがない』のが始めた理由だとみんな言います。僕は彼女が欲しいと思って始めましたが、気軽に様々な職業の人と出会えるのは面白いと感じるようになっていきました」

最初にマッチングアプリを教えてくれた女友達は、アプリで出会って最近結婚を決めた。前の職場の知り合いも、やはりアプリで出会った人と結婚した。

ただ、同時に出会い系アプリの危険も、会った女性たちからはよく聞いた。ある大学生の女の子は、初対面の医学生の男性に「寮に案内する」と言われ、部屋で無理やり押し倒されたという。セックス目的で登録している男性は一定数おり、危険な目に遭ったという体験談を何度も聞いた。

「通報した方がいいと勧めたのですが、出会い系アプリの世間のイメージもあって、恥ずかしくて言えないと泣き寝入りしている女性ばかりです。フェイスブックの情報で登録することを身元保証のように宣伝しているアプリが多く、若い頃からスマホを使い慣れているデジタルネイティブな世代ほど、実名や大学名、住んでいる地域まで個人情報を気軽に出してしまう。とても無防備です」

一人の人を選んだが・・・

タカシさんは、その後、4人と並行してデートを重ねるうちに、大学院生の女性のことが特に気になるようになった。

「会話がめちゃくちゃ面白かった。相手の言葉に刺激されて自分も言葉が引き出され、それにまたユーモアで返してくれる。互いに影響し合って、自分がたくさん変わっていきそうなワクワクする予感がありました」

出会い系というと性的な関係目的という印象も強いかもしれないが、タカシさんはすぐに距離を縮めるようなことはしなかった。

「この時は真面目に彼女を作るつもりだったので、順序を踏みたかった。それに、親しくないのにセックスをしてもつまらないじゃないですか。まず互いのことを知り合いたかったから、会話が中心でした」

3回目の食事デートも盛り上がり、駅の改札口で別れを惜しんでいる時、自然な流れでキスをした。

「好きだから付き合って」と告白した。

次のデートで彼女も了承してくれて、正式な交際が始まった。

彼女は止めたが、自分は止められない

正式に交際が始まり、彼女はアプリの登録を解除したが、タカシさんはこっそりと続けた。アプリをスマホのトップ画面から裏の画面に移し、彼女には続けていることを内緒にしていた。

「後ろめたさもありますし、彼女が見たら怒るだろうなという思いもありました。だけど、いろいろな人から知らない世界を教えてもらえるこんな場を手放したくないという気持ちの方が強かった」

どのような性にも属さないXジェンダーの人、テレビ局員、デザイナー、報道関係の人。これまで約20人の女性とやりとりした。昨年7月に出会ったアパレル店員の女性とは、初対面ですぐセックスもした。

漫画好きの女性で趣味の話も合い、一緒に映画を見てから飲んでいたら、終電の時間が過ぎた。家に泊め、最初は別々に寝ていたが、会話が不自然に途絶え心配になった。

(自分はそんなつもりはなかったけれど、しなきゃいけないのかな? 手を出さなかったら悲しむかな・・・)

「そっちに行っていいですか?」と敬語で話しかけると、「いいですよ」と返ってきた。無理やり自分を奮い立たせて、した。

「終わった後、猛烈に後悔しました。気分が互いに合えば性的な関係を結ぶのもありだと思いますが、気が乗らないのにするのは、相手にとっても良くない。話だけしていた時の方が楽しかったのに」

彼女とはそれきりになった。デザイナーの女性とも3回目のデートで、「ちょっとどうですか?」と相手から誘われホテルに入ったが、それきり会っていない。

「セックスしてしまうと相手に対する興味が薄れてしまう。そういう意味でセックスしても関係が終わらないのは、恋人だけです。最近セックスレス気味で不満を抱かれているようですが、彼女には恋愛感情もあるし、これからも長く一緒にいたい。そこが彼女と他の女性たちとの違いなんです」

秋からは婚約者と同棲 結婚しても出会い系をやめられない理由

彼女とはこの秋から同棲することが決まっている。同棲の前に、互いの両親に挨拶することも予定しており、「事実上の婚約ですよね」との自覚もある。

「明確にプロポーズをしたわけではないですし、自分としては恋人のままでいいのですが、経済的な面で結婚すれば便利だし、向こうが家庭を作ることを望んでいるので拒否することもない」

それでも現在、婚約者以外で付き合っているのは、保育士と、エディトリアルデザイナー、お笑いが好きな音楽大に通う女性。特定の彼女がいることは伝えているが、互いがそんな雰囲気になれば、性的な関係を結ぶこともある。

「結婚した後も、出会い系アプリはやめられない」と言うタカシさん。好きな映画監督、伊丹十三が言う「おじさん」の役割を女性たちに求めているのだ、と独特な説明をしてくれた。

「親でも先生でもなく、自分の前にふらりと現れて、無責任な立場で風穴を開けてくれる存在。それを伊丹十三はおじさんと言いました。若い女性は、現実のおじさんほど経験はないかもしれないけれど、それぞれ専門があって自分の狭い世界に刺激を与えてくれる。自分も下心がモチベーションになって、前のめりになって女性の話を聞く。すると、質問や自分の吸収も良くなる気がするんです」

若い同性からはそんな刺激は得られない。ライバル心が邪魔をして、マウンティングし合ってしまう。

「こういう経験をするようになって、僕は異性に対する性欲や下心をネガティブには考えないようになりました。相手に対する関心の強さをエネルギーにして勉強するのはいいことではないかとさえ思っています」

婚約者は大事だが、他の女性にも会わずにはいられない。「婚約者の彼女が同じことを陰でしていたら、嫌ではないのですか?」と質問すると、こんな答えが返ってきた。

「むしろどんどん他の男性と会って、自分の世界を広げてほしいぐらいです。それで他の男性に惹かれてしまったら、それはそれで仕方ない。お互い常に、互いを選び続けている関係じゃなかったら、惰性の付き合いになってしまう」

そして、婚約したから、結婚したからといって、互いを縛る生き方はしたくないと言う。

「相手が自分にとって一番の人ならば選ばれるように努力したらいいし、恋人だから、パートナーだからといって、相手を自分の思い通りに支配したり、相手に依存したりすることはしたくないし、されたくない。僕も彼女も、相手より好きな人が見つかったらそちらに行かざるを得ないという緊張感を互いに持って付き合っていきたいのです」


BuzzFeed News では、新たなふうふ(組み合わせは男女に限りません)やパートナーシップの形を模索しているカップルの取材を続けます。よろしければ情報提供をお願いします。

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