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感染爆発が起きている沖縄県の玉城デニー知事 「旧盆の帰省、観光旅行、温かく迎えられる日まで今はどうか控えて」

過去最多の新規感染者数を記録した沖縄県。観光客や旧盆に帰省する若者たちからのさらなる感染拡大を恐れる今、伝えたいメッセージは何でしょうか? 玉城デニー知事に聞きました。

夏の観光地として人気の高い沖縄。

新型コロナウイルスの感染拡大で、新規陽性者数は過去最多の732人を記録し、人口10万人あたりの新規陽性者数は全国で最多となっている。

そんな中、観光客や、沖縄のお盆(8月20〜22日)の帰省でさらなる感染が持ち込まれることが警戒されている。

沖縄に来てほしいけれど、今は来てほしくない、帰ってきてほしいけれど、今は帰ってきてほしくないーー。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

「今は帰省や来訪を控えて」と呼びかける玉城デニー・沖縄県知事

葛藤する沖縄県の玉城デニー知事に、BuzzFeed Japan Medicalは単独インタビューし、今、呼びかけたいことを聞いた。

※インタビューは8月13日午後にZoomで行われ、その時点での情報に基づいている。

過去最多の新規陽性者数、10万人あたりでは全国最多

ーー沖縄、大変な状況になっていますね。心配しています。

危機感は持っていたのですが、特に沖縄市やうるま市など人口が多い街がある中部で感染力の強いデルタ株への置き換わりが爆発的に進んだために、中部の保健所の管轄内で感染者がたくさん出ました。

またホスピス系の病院で大きなクラスター(集団感染)が出ました。その現場での対応に非常に手がとられてしまったために、感染拡大がうまく止められなかったことがあるかもしれません。

ーー現在の感染状況を教えてください。

沖縄県では昨日12日に、過去最多となる732人の新規陽性者が確認されています。直近1週間の人口10万人あたりの新規陽性者数は255.07人で全国ワーストとなり、医療現場も逼迫してかなり深刻な状況にあります。

7月の後半から新規陽性者数や療養者数が500人、600人という規模まで膨れ上がり、昨日はついに700人を超えたわけです。

長期にわたって緊急事態措置をとっているがために、県民も自粛生活に気持ちの緩みが出ているのだろうと思います。

それからデルタ株の感染力の強さが大きい。

家庭内でウイルスが持ち込まれると、その家庭のほぼ全員が感染してしまう状況が続いています。外から家庭に持ち込まれ、今度は家庭の中で感染して、症状がまだ出ないうちに子どもたちが学校で感染を広げてしまうパターンになっています。

コロナ病床や宿泊療養施設、検査体制を拡大

ーー緊急事態宣言を延長する中で感染対策をどのように強化しているか教えてください。

沖縄県では4月1日時点では286床だったコロナ病床を、現在753床まで増やしています。軽症者用のホテル、宿泊療養施設についても、440室から702室に増室しています。

病院に入院するまでの一次待機ステーションも、20床規模で待機できるようにしてありますし、自宅療養を余儀なくされている人への見守り体制の充実もはかっています。

安価で誰でもいつでも受けられるPCR検査や、那覇の一部飲食店で働いている方には無料のPCR検査も提供しています。それらを含めると、1日あたりの検査数は9000件まで拡充しています。

それらに加えて、空港におけるサーモグラフィーの設置や希望者をはじめとした検査を実施しています。離島の空港でもPCR検査ができるように、直行便が飛んでくる空港ではそういう検査体制も敷いています。

現在までのところ、取り得るべき措置は強化している状況です。

ーーにもかかわらず感染者が増えて医療は逼迫していますが、重症者を受け入れられる病床の状況はどうですか? 一般診療への影響も含めて教えてください。

沖縄県内では、7月下旬から急激な感染拡大をして、重点医療機関でのコロナ病床が逼迫しています。特に沖縄本島地域では病床利用率が非コロナの病床でも90%以上と高い水準で推移しています。

重症者が比較的少ないのは安心材料ではあるのですが、その代わり中等症以上の医療措置が必要な方が増えていますので、どうしても病院のベッドがなかなか空かない状況になっています。

市中感染の増加によって家族がコロナに感染して、休業を余儀なくされている医療従事者も増えてきていますので、医療機関の体制はいっそう厳しい状況にあるのが現状です。

重点医療機関では、人間ドックの中止や予定していた手術や入院の一時延期、一般外来の制限を講じた上で、最大限のコロナ病床の確保をお願いしているところです。

入院調整についても8月12日時点で1日84件を数えていて、大変危機的な状況になっています。

減っていた来県者数が旅行シーズンの7月に増加に転じる

ーー今、沖縄県は全国に来訪の自粛を求め、止むを得ず来訪する場合に検査してもらい陰性証明を求めていますね。来訪者の数の推移と検査実績について教えてください。

沖縄県では特に陰性証明を求めているわけではなくて、止むを得ず来県する場合にはぜひ検査を受けてきていただきたいと呼びかけています。

また、検査の前に沖縄に来られる2週間前からのご自身による健康観察をしっかり行ってくださいということも重ねてお願いしています。

来訪者数の目安としては那覇空港の到着口のサーモグラフィーの通過者数があるのですが、昨年度末の3月に約37万人で、まん延防止措置と緊急事態措置期間に入った4月には少しその数が減少して32万人になりました。5月には約24万人、6月は約19万と減少が続いています。

ところが、7月は緊急事態措置期間が継続していたのですが、やはり夏の旅行シーズンというムードもあって、約28万人と再び増加に転じています。

デルタ株による感染の急拡大も見られたことから、沖縄県では8月1日に関係団体と連携して、「沖縄県緊急共同メッセージ」を出しました。

沖縄県など

県民に県外への移動や外出を控えるように呼びかけた沖縄県緊急共同メッセージ

県医師会、市町村、経済関係団体などと一緒にメッセージを出して、他の都道府県から沖縄に来ることも、沖縄から他に出ていくことも自粛を呼びかけました。

離島との往来などについても、お盆が近いということもあって、この期間は帰省などは遠慮してもらって、リモートや電話で元気を確認してくださいと呼びかけています。

空港における検査実績は、PCR検査を始めた2月は2159件でしたが、7月は8942件と約4倍になっています。

5月は来訪者数23万7000人でうち検査数が3740余です。6月は18万5000人の来訪に検査が5500、7月が28万の来訪に検査が8900と、来訪者の数が増えてくるとそれだけ認知度も高くなっていて、検査に協力していただける人の数も増えています。PCR検査がメインですが、抗原検査も含んでいます。

この検査の5月の陽性率は0.7%、6月は0.4%、7月は0.7%です。2月からの累計は154万4812人の来県者に対して検査数は2万7011件で、陽性者は137人で陽性率は0.5%という感じです。

輸入例(県外からの持ち込み)が感染者数の増加に大きな影響を及ぼしているという印象があるかもしれませんが、輸入例は出ているもののごく限られた件数だと読めるかもしれません。

旧暦の沖縄のお盆は20〜22日 親族が集まるのは避けて

ーーこれまでも連休期間中に度々県外からのウイルス持ち込みと感染拡大が繰り返されてきました。観光県である沖縄にとって、観光客は来てほしい一方、コロナも持ち込んでほしくないというジレンマを抱えていると思います。知事が観光客に対して抱く率直な思いをお聞かせください。

県外からのウイルスの持ち込みは観光客に目が行きがちなのですが、実は相互の帰省が大きいです。

他府県に住んでいる県民が沖縄に帰ってきた、そして沖縄で触れ合った、帰って行った。そんな時に、触れ合った方と相互に持ち運んでしまっている事例がかなり見られています。

沖縄県では夏休みの帰省の延期も含め、県民や来訪者に対しては改めて帰省の自粛を求めているのですが、今はデルタ株による感染の急拡大を抑え込まなければならない状況です。緊急事態宣言措置期間中の対策を徹底して感染拡大を抑え込んでいくことが一番だと思います。

沖縄は旅行に適する期間も長いので、今は旅行を少し控えていただいて、秋ごろ、10月、11月頃に来ていただきたい。我々も11月末までには全県民の70%ぐらいはワクチン接種が進められるように加速化をはかっています。

もう少しワクチンの接種も整った段階で旅行を計画していただくことの方が、相互の安全・安心のためには賢明な考え方ではないかと思います。

ーー沖縄は来週がお盆なんですね。

そうなんです。20日の金曜、21日土曜、22日の日曜日と、ちょうど1週間遅れです。旧暦で毎年暦は変わるのですが、今年はたまたま他府県のお盆の時期の1週間後なのですね。

この時期から今週のお盆と来週の旧暦のお盆の週末は、沖縄県内の皆さんにもできれば人との交流は避けて、実家への旧盆のお中元を届けるのも今年は電話で「ごめんね」と伝えてほしい。できるだけ実家に帰らないで元気な声だけでも届けられるようにしてくださいと呼びかけています。

ーー沖縄のお盆はどんなことをするのですか?

3日間なのですが、初日が「お迎え」という意味で「ウンケー」と言います。中日は「ナカヌヒー」ですね。3日目が「ウークイ」で「お送り」です。主にウンケーとウークイの時に、普段は別々のところに住んでいる家族が本家に集まって、仏壇にお迎えと送りの手を合わせ、線香をお供えします。

またこの3日間に沖縄県ではお中元を届ける習慣があります。どうしてもこの3日に人が同じ場所に集中してしまうのですね。

今年はお中元を届けるにしても玄関先で渡して、玄関先で手を合わせて「おじいちゃん、おばあちゃんまた来年ね」とやっていただく。または、宅配便で届けていただいて電話をかけたり、携帯で画面越しに挨拶をするとか工夫を凝らして、できるだけ人と人とが会わない、接触しないようにお気をつけいただきたい。

残念ですけれどそういう呼びかけをするしかない。去年もそうでしたが今年はどうにかできるかと思ったら、コロナウイルスは思っている以上に抑え込むのが厳しいです。

ーーお盆で親族が集まって食事もするのですね。

特にお盆のウークイの時ですね。迎えは早く、送りは遅くということがありますから、できるだけ夜遅い時間にお送りした方がいい。みんなが集まってきて、家族で夕飯を済ませてから、その後でゆっくりお送りするセレモニーをする家も多いと思います。

仏間でみんな正座してやりますから、自然と密になるのですね。どうしても油断ならない状況になりかねないと思います。

観光への打撃も深刻 沖縄の観光の魅力「人と人との触れ合い」ができない

ーー観光関連収入もコロナの影響で減っていますか?

沖縄県は観光関連産業の裾野が非常に広いので、至るところで打撃を受けています。2020年度の観光客数は258万3600人で、対前年度比で688万5600人の減少となっています。

また主な観光関連団体の調査によると、2020年度の宿泊施設の客室稼働率は26.7%で、対前年度比34.5%減です。

貸切バスは2020年度の収入額が12億4217万円で、対前年度比81.8%減です。非常に大きな落ち込みとなっています。

このような状況を受けて、2020年度の観光収入は1963億円となっており、対前年度比で5084億円の減で、率にすると72%減です。

今年度についても全国的に感染の影響が続いていますから非常に厳しい状況だろうと思われています。

ーー本当は観光客に来てほしいけど、でも今は.....ということですね。

そうですね。これはどこでもそうだと思いますが、沖縄の観光の魅力は人と人との触れ合いだと思います。

どこのお店に行っても、元気なおばちゃんやおばあたちの笑顔とかおしゃべりを楽しみながら街や観光地を回ることが旅行の楽しみだと思います。

ただ何かを見に行って、そこで食事するだけではない。例えば民謡居酒屋で三線(さんしん、沖縄の民族楽器)の演奏が始まるとみんな輪になって踊り出すので、それも沖縄の観光の醍醐味だと思います。それができないのは、本当に残念というか、悲しいです。

ワクチン接種者に特典の取り組みも 接種記録と繋いだワクチンパスポートのアプリを開発したい

ーー沖縄でも高齢者の方にはワクチン接種は進んでいるのですね。

高齢者の方々にはワクチンの接種は進んでいますし、病院でも60代以上、70代、80代の重症化が抑えられているので、陽性になった人でも重症化はワクチンによって防げているのではないかと思います。

今、10歳未満〜40代で、昨日の時点で全体の陽性者の80%ぐらいですから、そういう数字を見ても、若い人たち、アクティブな人たちが触れ合うことによって感染してしまう。しかも症状がなく行動してしまっているがために、感染を広げてしまっているのではないかという見方もあります。

ーーワクチン接種が全国的に進む中で、一部の離島で試みが始まっていると聞きますが、将来、ワクチンパスポートのような仕組みを考えていますか。

石垣市が石垣空港にブースを設けて、PCR検査か抗原検査の陰性証明を持っている人や、ワクチン接種の証明を確認できた人に「あんしん島旅プレミアムパスポート」というのを発行しています。

市内の飲食店がこのパスポートを持っている方には割引特典などを提供しているのです。

また、民間の有志の実行委員会が、「オキナワブルーパワープロジェクト」と銘打って、PCR検査の陰性確認やワクチン接種をして沖縄に来られた方々に青いゴムのリストバンドを渡して、様々な飲食店で特典を付与する取り組みを始めています。

そのほか、旅行社やホテルが独自の取り組みとしてワクチン接種をしてきていただいている人方への添乗員ツアーや各特典企画を実施しています。

こういうワクチン接種をした人を対象とした旅行者、ホテル、飲食店、施設の割引などは、沖縄観光コンベンションビューロに運営委託しているホームページ内に8月末か9月初めには掲載されます。

できれば私たち沖縄県としても、ワクチンをきちんと接種していただいた方が、名前と生年月日を入力するだけでワクチンを2回接種したということを、VRS(ワクチン接種記録システム)とつなげたアプリなどを利用して引き出せるシステムが開発できないかなと思っています。

できるだけワクチンをうった方から経済活動を動かしていきたいという考えは民間事業者、観光事業者の要望としてとても強いです。

ーーVRSを使うということは、国と連携するのですか?

これはどちらかというと市町村との連携になると思います。市町村がワクチン接種の記録を持っていますので、VRSに限らず、なんらかの登録システムを使いたい。そのシステムだけつないで、その他の個人情報とつながない仕組みを作れば安全に運用できると思います。

ーー沖縄全域で考えているのですね。

まずはどこかの市町村と県が連携して先駆的に取り組んでみて、そこから県内の市町村にも利用していただけるようになれば、かなり反応が高くなる可能性があります。

ふるさとでホッとしたいと思いますが...「温かく迎えられる時まで待っていて」

ーー最後に県外から沖縄に行きたいと願っている人にメッセージをお願いします。

県外からの来訪については、デルタ株の影響もあることから、緊急事態宣言期間中は県外の沖縄県人にも旧盆の帰省も含めて今は自粛をお願いしなければなりません。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

「温かく歓迎できる時まで待っていて」と語る玉城デニー知事

8月1日に医療界や経済団体の共同メッセージも出しました。

緊急事態宣言は今月いっぱいとなっていますので、沖縄県の対処方針に従っていただくには、自粛を求めていかなければならない状況です。

しかし、仕事などで止むを得ず沖縄に来られる方々には2週間の事前の体調管理、事前のPCR検査の陰性の確認、そして、羽田空港や成田、中部、関空、伊丹、福岡空港から沖縄や北海道に向かう便の搭乗者に関しては、国が無料の検査を実施しています。

事前に予約してPCR検査か抗原検査を受けられることになっています。ぜひその検査も利用していただきたい。

沖縄県では那覇空港や本土から直行便が就航している宮古、下地島、石垣、久米島の空港でも検査体制を整備しています。どうしても時間がなく出発地で検査が受けられなかった場合は、直行便や那覇空港を経由して来た場合にも検査が受けられます。

ぜひこういう検査をしっかり受けていただいて、安心・安全の島、沖縄をみんなで一生懸命支えるために協力していただきたいと思います。

まずは緊急事態宣言の期間中は旅行は控えていただきたいということを重ねてお願いします。

ーー知事もコロナ禍で我慢していることはありますか?

みんなふるさとに戻って、ふるさとで心がホッとしたいという思いがあると思います。特に沖縄はもともと大家族の方が多いので、家族に会うだけでコロナで疲れていた気持ちがやっとくつろげることにもなる。

でも今は声を聞かせてもらうだけでもありがたいですし、携帯で画面越しに会話をすることも可能です。

そういう風にふるさとを大切に思いながら、早く、みんなでこの状況を乗り越えられるように力を合わせていきたいと思います。

温かく迎えられる時には大歓迎しますので、それまでしばらくお待ちください。

【玉城デニー(たまき・でにー)】沖縄県知事

本名は玉城康裕。1959年、沖縄県うるま市生まれ。1981年、上智社会福祉専門学校卒業。ラジオパーソナリティやタレントとしての活動を経て、2002年9月、沖縄市議会議員選に初当選(1期)。2009年8月、衆議院議員選に初当選(4期)。2018年9月、沖縄県知事選に初当選して現在に至る。

座右の銘は「天は正論に信念と勇気を与える」。趣味は映画鑑賞、バンド活動、ドライブ、読書など。

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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