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「スマホ育児」そんなに悪いのか? 小児科医の森戸やすみさんが真っ向から反論

育児中のスマホ使用については、「子供の発達に良くない」と非難されがちです。そんな意見に真っ向から反対し、スマホを使いながら子育てする保護者を応援する小児科医、森戸やすみさんの講演を詳報します。

今や日常生活と切り離せない道具となったスマートフォン。

ところが育児の現場では、「親がスマホを使っていると子供の発達に問題が生じる」「スマホ育児は害悪」などの非難がまかり通っています。

それは間違っていないのか。親を追い詰めることにならないか。

第30回日本外来小児科学会提供

シンポジウム「スマホ・デジタルメディアとの付き合い方」で講演する小児科医の森戸やすみさん

8月21、22日と京都市で開かれた第30回日本外来小児科学会のシンポジウム「スマホ・デジタルメディアとの付き合い方」で、小児科医の森戸やすみさんは「スマホが豊かにする子育て」というタイトルの講演をしました。

森戸やすみさん提供

スマホの悪影響を強調する医師たちにも苦言を呈する攻めた内容。BuzzFeed Japan Medicalは、座長と森戸やすみさんの了承を得て講演内容を詳報します。

2008年からブログで発信スタート 本、ウェブサイトに寄稿も

まず自己紹介から始めます。私は1996年に私立大学の医学部を卒業しました。そのまま大学病院の小児科に入局して、色々な病院を経た後に、昨年、東京都台東区で開業しました。

森戸やすみさん提供

そして、2008年、次女が2歳になった時にブログ「Jasmine Cafe」を始めました。「森戸やすみ」というのはペンネームなのですが、「休みの日の名前」という意味でつけました。

森戸やすみさん提供

その後、ソーシャルメディアを始めました。ブログやSNSには日常診療でよく尋ねられることを書いていました。それを見た編集者さんから「本を書きませんか?」と声をかけてもらいました。

以来、単著、共著、監修を含めると11冊の本が出ています。

それを見た朝日新聞の人から「コラムを書きませんか?」という話をいただきまして、朝日新聞デジタルのアピタルで連載「小児科医ママの大丈夫!子育て」を持たせてもらっています。

参考:スマホは育児の命綱

それ以外にもウェブサイト(BuzzFeed Japan Medicalでの寄稿)や紙の雑誌に寄稿したり、ママサイト、パパサイトの監修をしたり、オンラインサロンを開設したりしています。

子育て情報はどこから? 時代と共に変化

みなさん、子育て情報はどこから得ているのでしょうか。

今までは自分の親や身近な親戚などに教えてもらっていました。またご近所さんのようなコミュニティからも得たり、育児書も流行ったり、育児雑誌を読んだりする人もいました。

森戸やすみさん提供

また、テレビではNHKなどが育児番組をやっています。

森戸やすみ

現在はこういったものからも情報を得ることができます。

最初に保育園を入れた理由は、1990年代から共働き世帯と専業主婦世帯の数が拮抗し始めて、現在は共働き世帯が専業主婦世帯の倍になっているからです。

森戸やすみさん提供

共働き世帯ではお子さんがほとんど保育園に行っていますから、保護者たちは保育園の先生から情報を得たり、お父さんお母さん仲間から育児情報を得たりしています。

ソーシャルメディアでの子育て情報のやりとりも増加

次に子育て情報がよくやりとりされるソーシャルメディアを挙げましたが、LINEは1対1やグループで主に文字情報を交換します。LINEは検索には不向きなアプリで、ただ流れてくる会話を見たり、自分も書いたりします。

森戸やすみさん提供

Instagramは通常は写真や動画をシェアするアプリですが、検索機能によって評判を調べることができます。例えば子育て商品の評判や子供連れで行けるイベント、お店の口コミなどを調べることができます。口コミ重視のアプリです。

Facebookは特定の意見を持つ人が集まりやすいので注意が必要です。Qアノン(右派の陰謀論)とか、アンチワクチンなど、エコーチェンバー効果(閉鎖された空間で似た意見の人が情報交換することで、その意見が検証されないまま強化されていくこと)の高いSNSです。

Twitterは一般的にはツイートをしたり、人のツイートを読んだり、トレンドになっているものを読んだりすることが多いのですが、ハッシュタグ検索で同じ年齢、同じ月齢のお子さんの親同士でつながることができます。

YouTubeは数分間、数十分間で知りたい情報を動画で見ることができます。

けれどもこれも一つ見ると、類似した動画がどんどん出てくるので、エコーチェンバー効果やフィルターバブル(泡の中に包まれたように自分の見たい情報にしか触れなくなること)効果が大きいです。

ブログやママサイト、パパサイトは適切?

文章で読みたい人はブログがヒットします。個人ブログは下火ですが、今もアメーバブログとかライブドアブログは有名人にお金を払って書いてもらっています。ブログは怪しい商売が多かったり、トンデモ育児情報が多かったりするのが特徴です。

次にオンラインサロンですが、月額数千円払って、Facebook上で有名人とやりとりができることを売りにしています。主宰している有名人や専門家と言われる人と直接会話することもありますし、参加者同士の会話が盛り上がることもあります。

質問サイトは、一般の人が質問してきたことに一般の詳しい人が各自返すものです。

ママサイト、パパサイトはライターが記事をいろんなところで取材して書くものです。

2016年にWELQ事件が起きました。これは医療情報を全く知らない素人ライターが色々なところからコピー&ペーストをして、いい加減な医療情報を広めていた事件です。

ママサイト、パパサイトもそういうものが多くて、素人ライターがいい加減な育児情報を広めているのが問題です。しかし、現在、医師や本物の専門家が監修したりして、少しずついいページも増えています。

参考:その母乳情報、大丈夫ですか? ママサイトにはご用心

また、ニュースサイトは、YahooニュースやNewsPicksなどはインターネット上に散らばるニュースをまとめて見ることができます。特にYahooニュースに取り上げられると話題になって、提供した会社の元記事も読まれます。

ニュースを提供しているのは新聞社、雑誌社、テレビ局などです。ニュースアプリで育児情報や子供に関する話題を見たり、検索したりする人もいます。

ネットリテラシー(情報を見極める力)のある人は厚生労働省や小児科学会や医師会などの情報を見ると思います。残念ながら多くの人はその存在を知らないので、利用者は少ないです。

スマホ一つで全ての情報につながる

ここまでご紹介した全ての情報はスマホで見られます。

どこから何を使ってそのページにたどり着いたか経路を調べることができるのですが、私のアピタルの連載は9割がスマホからのアクセスです。今はパソコンで記事を読む人は少ないのです。

森戸やすみさん提供

そればかりか、従来の子育て情報を得る手段もスマホです。

例えば自分の親とは文章でやりとりしたり、テレビ電話アプリで顔を見ながら話をしたりします。

コミュニティも幼稚園や保育園や小学校のクラスごとにLINEグループができています。保育園によっては連絡帳がそもそもスマホアプリになっています。

育児書もKindleなど電子書籍アプリを使って読めますし、育児雑誌もサブスクリプションサービス(定額制のサービス)で読めます。

テレビの視聴もアプリでできます。

スマホは今やインフラ

他にも子供のワクチンスケジュールを管理したり、身長・体重などの成長の記録をつけたりできます。

森戸やすみさん提供

もちろんスマホでできることは子供に関することだけではありません。夜中でもネットスーパーで買い物ができます。銀行や郵便局に行かなくても振り込みができます。仕事の連絡ももちろんスマホでできますし、お店では電子マネーでお金を支払います。定期券もスマホに入っています。

また、初めての場所に行く時、地図アプリで最短の経路を調べます。電車がいいのかバスがいいのか。電車だったら何両目の何番目がいいのか、何番出口に出たらいいのかまでわかります。小さいお子さんのいる人はエレベーターのある道順を調べると思います。

森戸やすみさん提供

つまり、スマホは今やインフラです。

東日本大震災の時にスマホのありがたさを再認識した人も多いです。3.11の時よりもさらに今、スマホは生活必需品になっています。

スマホに育児はできません

一方、「スマホ育児」という言葉があります。

森戸やすみさん提供

子供がスマホを使うことや妊婦さんや親がスマホを使うことをこう言います。

「スマホに育児をさせないで」という言葉がありますが、実はスマホにできる育児はほとんどありません。

スマホは授乳してくれませんし、おむつを替えてもくれません。

育児はやることが膨大にある中で、ちょっとの時間、子供に「静かにしてて」と言って動画などを見せるために渡すのが一番よくある使い方ではないかと思います。

それをもって「スマホに育児を丸投げしている」とは言わないと思います。

「妊婦さんがスマホを見ると、お腹が張って流産や早産の原因になる」というデマもありますし、小児科の待合室で子供が転んだりすると、「スマホが悪いんじゃないか」と言われます。

でも小児科の壁に貼ってある掲示物を見ていても子供が転ぶことはあります。親が持っているのがスマホだと、ことさら親の行動が良くなかったからだと言われます。

子供にとってのスマホの利点

子供にとってのスマホの利点で、よく思い浮かべるのは、エンターテインメントの側面です。

森戸やすみさん提供

スマホは楽しいゲームやテレビの役割をします。

コロナ禍で遠く離れた家族やお友達と顔を見ながら話すことができますし、勉強アプリでは語彙が増えたり、計算能力が上がったりします。

そして、何かを創るという創造のハードルが下がります。

音楽を聴くばかりでなく、音楽を創る。絵を見るだけでなく、絵を描く。プログラミングをすることもできるようになります。

また、限られた文字数や時間で誤解なく言いたいことを伝える能力が上がります。

スマホを使うとコミュニケーション能力が下がるのではないか、という人もいますが、実は逆です。

スタンプや動画を送れば非言語的コミュニケーション能力も上がると思います。

炎上せずに話題になることはとても難しいことです。

子供にとってのスマホの問題点

子供にとってのスマホの問題点は、なんといっても長時間見ることによって視力が悪化する危険性があることです。

森戸やすみさん提供

体を動かす機会の損失もあります。

「スマホの時間、わたしは何を失うか」という日本小児科医会のポスターがあります。

日本医師会、日本小児科医会

「体を動かさないと、骨も筋肉も育ちません」というのは、何もスマホばかりが原因ではありません。

個人情報の流出や依存症の危険性はよく言われていて、必要以上に恐れられていると思います。

例えば、子供が階段から落ちたら、階段の使用を禁止するでしょうか?

安全な上り下りの方法を子供に教えるのではないかと思います。

スマホは階段と違って、個人情報の問題や依存症の危険がありますから、階段を自分で上り下りできるようになるまで親が付き添うように、初めは親が使い方を見てあげたり、ルールを決めたりする必要があると思います。

親が子供のスマホを制限する方法 参考になる本

親がスマホを制限する方法ですが、参考にできる本があります。

森戸やすみさん提供

『賢い子はスマホで何をしているのか』という石戸奈々子先生の本は、慶應大学の教授をしながら、メディアラボを主宰した人が書いた本です。

  • 使用時間を制限する。
  • 課金を制限する。
  • ソーシャルメディアを制限する。
  • 子供に適さないコンテンツをフィルタリングする。


という方法があります。

もう一つは『ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち: 子どもが社会から孤立しないために』です。吉川徹先生という児童精神科医の先生の書いた本です。

これによると、ヨーロッパで学童を対象とした研究で、長時間ゲームをしていてもメンタルヘルスの問題は増えず、友達との関係の問題は減るという結果が紹介されています。

また、1時間未満のゲームをしていた方が進学実績が良い、という調査についても触れられています。

自分で決めたルールを守るということが大事なようです。

(続く)

【森戸やすみ(もりと・やすみ)】 小児科専門医

1971年、東京生まれ。1996年、私立大学医学部卒。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、どうかん山こどもクリニックを開業。主な著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(同)、共著に『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』(同)など。ツイッターはこちら

BuzzFeedへの寄稿はこちらで読める。

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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