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受動喫煙対策の面積特例は「神奈川県を参考に」 「大失敗だった」と前知事

参議院厚生労働委員会で、客室面積100平方メートル以下の飲食店は規制対象外とする経過措置を設けた健康増進法改正案に疑問の声

受動喫煙対策を強化した政府の健康増進法改正案が5日、参議院厚生労働委員会で審議され、焦点の一つとなっている飲食店の面積基準について、厳しい質問が投げかけられた。

政府案では、客室面積100平方メートル以下、資本金5000万円以下の飲食店については、経過措置として店内全面禁煙の規制外としている。

この面積による特例基準を作る際に、神奈川県などの受動喫煙防止条例が参考にされたが、条例制定時の県知事だった松沢成文議員(希望の党)がこの日の委員会で「大失敗だった」と述べ、委員らから失笑の声が漏れた。

「神奈川県や兵庫県の条例を参考に」 前知事から「大失敗」

日本維新の会の東徹議員が質問に立ち、「当初の厚生労働省案から後退したのは残念」「世界の中で日本は受動喫煙対策が遅れている」と批判したうえで、まず、飲食店での受動喫煙の実態についてただした。

厚生労働省の福田祐典健康局長は、「直近の平成28年の国民健康栄養調査では、飲食店で過去1ヶ月に受動喫煙に遭遇した非喫煙者の割合は42.2%」と答弁。

続いて、東議員が特例基準を客席面積100平方メートル以下にした理由を聞くと、福田局長は、「既存の飲食店のうち、経営規模が小さい事業者が運営するものについては直ちに喫煙専用室の設置を求めることが事業継続に影響することが考えられることから一定の猶予措置を設けることにした」とした上で、こう述べた。

「すでに受動喫煙防止のための条例が施行されている神奈川県や兵庫県の例も参考になることから客席面積100平方メートル以下という要件にした」

そこで、東議員は神奈川県の条例制定当時、知事だった希望の党の松沢成文議員に、「もしそのことについてお答えすべきことがありましたら」と促し、松沢議員はこう答えた。

委員らから失笑

「神奈川県が100平方メートル以下の飲食店を対象から外して努力義務にしてきたことを大失敗だと思っています。やはり面積規制は不平等を生みますし、一番望ましいのは全部禁煙にすることなんですね」

「100平方メートルはあまりにも広すぎる。もっと厳格に小さいところ、子供が入らないところ、そうやって区切って行かないと、受動喫煙の防止の実効性は保てない。そういう意味で神奈川県はあまりいい例ではないと思います」

委員らからは失笑が漏れた。

日本維新の会と希望の党は共同で、飲食店の敷地面積30平方メートル以下を特例の基準としている対案を出している。

同じ面積規定のスペインも「失敗例」と評価

ライターの石田雅彦氏のレポートによると、やはり受動喫煙防止策として、100平方メートル以下の飲食店を対象外としたスペインの2006年の規制は失敗例と酷評されている。対象外とした面積の店舗で、煙の濃度が規制前より高まったという報告もあるからだという。

スペインは、その反省を踏まえ、2011年に不特定多数の人が出入りする閉鎖的な施設を完全禁煙とする新たな規制法を作った。そして、日本は失敗とされた「スパニッシュモデル」や、神奈川県条例の面積規定を踏襲する法案が審議されている。