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2020年3月4日

新型コロナで重症化のリスクがあるがん患者 抗がん剤、がんの種類、警戒すべきものは?

新型コロナウイルスで重症化するリスクが高いとみられるがん患者。抗がん剤治療中はどんな人がどのように予防し、対応したらいいか、抗がん剤治療のスペシャリスト、腫瘍内科医の勝俣範之さんが対策をまとめました。

新型コロナウイルスで重症化するリスクが高いとみられるがん患者。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

抗がん剤治療中の患者に新型コロナウイルスへの注意を呼びかける勝俣さん

どう予防して、どう対応したらいいか、抗がん剤治療の専門家、日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之さんが患者向けと医療者向けの対策をまとめた。

抗がん剤治療中というとみんなとてもリスクが高いように思えてしまうが、がんの種類や抗がん剤の種類で警戒度は変わってくる。広く公表し、活用してほしいと願う。

「外来でも怯えている患者さんが多いです。みんなが過度に恐れる必要はないですが、自分のリスクを把握して、今だけは一般の人よりは気をつけましょうと伝えたいです」と呼びかける。

抗がん剤治療を受けている患者は重症化のリスクが高い

勝俣さんはまず、がん患者が新型コロナウイルスにかかると、重症化しやすいことがデータでも明らかになっていることを示す。

「抗がん剤を受けている患者さんは、新型コロナウイルスにかかると重症化しやすいという報道がなされています。中国CDC(疾病管理予防センター)からの報告で、がん患者さんの致死率は5.6%という報告があります(※)」

【参考】China CDC Weekly 2020 Feb 17;41(2):145-151

ただ、このがん患者の数字の中には、致死率が高い集団も含まれている。

「同じ報告書で、致死率は中国全体で2.3%、武漢以外の地域0.4%、心血管障害患者10.5%、80歳以上患者14.8%とされていますので、がん患者さんの致死率5.6%の中には、武漢在住の人、高齢者も多数含まれています。単に数字だけをうのみにして、がん患者は致死率がものすごく高いと心配しないでください」

白血球の減少、リンパ球の抑制が感染しやすくする

勝俣さんの外来には、「私、新型コロナにかかったらすぐ死んでしまうのですか」と不安を訴える患者が複数来ているという。

「一般の人と比べたら、ウイルス感染症、新型コロナウイルス感染症には気をつけた方がいいことは確かです」

そう言いながら、がんの種類や抗がん剤の種類で、リスクの高さは変わってくることに注意が必要だとも話す。

「一般の抗がん剤は、白血球を減少させるため感染を起こしやすくします。ただし、減少するのは白血球のうち主に『好中球』と呼ばれるもので、ウイルス感染症というよりも、細菌感染症を起こしやすくするのです。新型コロナより、細菌感染に気をつけなければいけません」

細菌感染の予防にも手洗いが重要で、マスクの予防効果は低い(※)。細菌感染には気をつけなければならないが、新型コロナウイルスを過度に恐れる必要はないという。

【参考】「がん化学療法中の食事制限と日常での行動制限についてのエビデンス」勝俣範之、医学書院Cancer Board Square、vo.14 no.2 p123-125, 2018年。

リスクが高いのはどんながん?治療?

一方、化学療法の中でも、特にリンパ球を減らし、細胞の免疫が弱まる抗がん剤を使う場合はウイルス感染のリスクが高くなる。リスクが高いのは以下の3つのパターンだ。

  1. アルキル化剤(シクロフォスファミド、イフォスファミドなど)
  2. ステロイド剤の長期投与
  3. 半年以上の化学療法


これに加えて、高齢患者の場合は、リスクがさらに高まる。

さらに、様々ながんの中でも、「血液がん」は、正常なリンパ球が少なくなっていることが多いので、警戒度が上がる。

抗がん剤治療中のがん患者、何に気をつけたらいい?

固形がんなどで、通常の化学療法を使用する際にも、ウイルス感染のリスクはやや高くなるのは確かだ。

結局、抗がん剤治療中のがん患者は、リスクの高低はあるが、新型コロナウイルスの感染予防対策はしっかりとしておいた方がいいと勝俣さんは言う。

それでは何に気をつけたらいいのだろう?  以下の3つを呼びかけたいという。

  1. 一般より手洗いや顔を手で触らないことを徹底してください。また、感染リスクが高そうな人が集まる場所は避けるようにし、周囲の状況によってはマスクの着用もしてください。
  2. 高齢者(60歳以上)、白血球が減少する頻度が高い化学療法をする際には、細菌感染による発熱を抑えるG-CSF(白血球を増やす薬)を使ったり、予防的にキノロンを内服したりすること(レボフロキサシン500mg1x)も主治医と相談してみてください。
  3. 化学療法中に、37.5℃以上の発熱が2日続いた場合には、まずは、現在の主治医のいる医療機関に連絡し、対応を相談してください。


2については、「G-CSFやキノロンを使用することに、コロナウイルス感染を予防するエビデンス(根拠)はありませんが、発熱した場合、細菌感染症とコロナウイルス感染症との区別をすることが難しくなるため、使っておいた方がいいと思います」

と解説する。

「抗がん剤治療中のがん患者さん全般にリスクはありますが、みんながとても危ないわけではありません。リスクの高い人は特に気をつけてください。今はやはり警戒すべき時期ですので、人混みに出かけるのはなるべく避け、普段はあまり言わないのですが、この時期にはマスクもつけておいたほうがいいと思います」

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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