子宮頸がんなどを防ぐHPVワクチン。
無料接種の対象者は、来年4月からいよいよ、より効果の高い9価ワクチンを無料でうてるようになります。
来年4月まで待つべき?それとも今すぐうつべき?
そんな風に迷っている人たちのために、サッコ先生(産婦人科医の高橋幸子先生)が、医学生を中心としたHPVワクチン啓発団体「Vcan」と一緒に、わかりやすい資料を作りました。

サッコ先生は「学校の性教育や講演などでも役立ててほしい」と、広く利用してもらうよう呼びかけています。
来年4月まで9価ワクチンを待つべき?すぐうつべき?
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが性的な行為(セックス、口で舐め合うオーラルセックスなど)で感染することによって起こります。
HPVワクチンはその感染を防いで、がんの原因をもとから断つワクチンで、全部で3回うつものです。
日本では小学校6年生から高校1年生の女子は無料でうてます(定期接種と言います)。
さらに、うちそびれてしまった9学年(誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)の女子も2025年3月までは無料でうてます(キャッチアップ接種と言います)。
現在は無料でうてるのは、2種類のウイルスへの感染を防ぐ2価ワクチンと、4種類のウイルスへの感染を防ぐ4価ワクチンです。特にがんになりやすいウイルスをしっかり防ぐので、がんを予防する効果が高いことがわかっています。
来年4月からは、さらに9種類のウイルスへの感染を防ぐ「9価ワクチン」が無料でうてるようになりました。自分で払うと3回うって10万円もする高価なワクチンです。定期接種とキャッチアップ接種、両方とも無料でうてるようになります。
ただ、HPVワクチンは若いうちにうてばうつほどがんを防ぐ効果が高いこともわかっています。
来年4月まで待って9価ワクチンをうつべきか、それとも今すぐ無料でうてるワクチンをうつべきか。迷う人が増えてきました。
そんな悩みを解消しようとサッコ先生たちが作ったのが、今回の資料です。
質問に答えていくと、選択すべき答えにたどり着く
質問に答えていくと、自分がどう選択すればいいか、答えにたどり着けるようになっています。

HPVワクチンをうつか、うたないか。
うとうと思っている人は、セクシュアルデビュー(ペニスの挿入を伴うセックスやオーラルセックスなどを経験)をしたかどうか。
まだしていない人は、この1年以内にセクシュアルデビューしそうかどうか。
絶対にHPVワクチンをうち終えるまではセクシュアルデビューしないと決めている人は、来年4月まで待つという選択も勧められます。
でも、いつセクシュアルデビューするか自分でもわからないのであれば、今すぐ無料でうてるワクチンをうつか、自己負担で10万円ほど出して9価ワクチンをうつ選択肢があります。
資料はサッコ先生が元の案を作った後、学生さんたちがわかりやすいようにデザインし、見やすくしてくれました。
HPVワクチンをうちにくる女子が迷っている
サッコ先生はどうしてこんな資料を作ったのでしょうか?
「診療していると、HPVワクチンをうちにきた人が『9価ワクチン無料になるんですよね。どうしたらいいでしょう』と相談してきます。説明すると、みんな自分の状況に合わせて、それぞれ違う選択肢を選んでいるので、判断しやすくなる資料があるといいなと思ったのです」

サッコ先生が診療している、ある医学生の女性は、3ヶ月前に4価ワクチンを予約していたのに、「私はセクシュアルデビューは当分しないので、来年4月以降に9価ワクチンをうちたい。キャンセルしてください」と言ってきたそうです。
また別の医学生は、サッコ先生が産婦人科の講義でHPVワクチンの話をしたところ、保護者に「HPVワクチンをうちたい」と相談しました。
「その子はお医者さんの母親から『うつならお金は払うから9価ワクチンにして』と言われて、来年4月を待たずに自己負担で9価ワクチンをうち始めました」
さらにもう一人の別の女性は、既に1回4価ワクチンをうった後に、9価ワクチンが来年4月から無料になることを知りました。
「『来年4月までセクシュアルデビューをする見込みはないのですが、どうしたらいいですか?』と相談されました。通常の接種スケジュールとはズレるのですが、2回目以降は来年4月以降に9価ワクチンをうつ方法があるよ、と伝えました」
彼女は安心して「じゃあ2回目以降は9価ワクチンをうつことにします」と決めたそうです。
自分で納得いく選択ができるように
こうやって迷っている人が全国にたくさんいることが考えられます。
サッコ先生は、性教育の講演をする時、「早くうった方がいいよ」と伝えつつも、「もっと効果が高くて、10万円の9価ワクチンも来年4月から無料でうてるようになるよ」とも教えています。
「やはりすべての情報を伝えて、自分で最良の判断をしてほしい。後で知って『私は9価をうちたかったな。あの時、サッコ先生は言ってくれなかったな』と後悔してほしくないのです」
そして、この資料は当事者だけでなく、当事者に説明をする大人たちにも使ってほしいと言います。
「性教育の講演会でも使えるし、保健体育の授業でも、外来診療でも使えます」
サッコ先生はこう呼びかけます。
「若い人に説明を求められた時にも使ってほしい。そして、当事者の皆さんは、選択肢があることを知って、自分で一番納得いく選択肢を選ぶことができるようになってほしいです」