子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチン。

小学校6年生から高校1年生までは公費で接種できる「定期接種」となっているが、対象者に個別にお知らせを送る「積極的勧奨」を止めるよう国が自治体に通知して6年半が経ち、実質中止状態が続いている。
これについて厚生労働省の検討会が1月31日開かれ、わかりやすくリニューアルするHPVワクチンのリーフレットと共に、接種できる日時や場所など具体的な接種方法について、対象者に個別に送る方針が示され、概ね了承された。
一見、「積極的勧奨」の再開のように見えるが、厚労省が提示した資料には「情報提供に当たっては、積極的な勧奨とならないよう留意する」と注意書きが書かれている。
いったい、どういうことなのだろうか?
現状のリーフレット「うつ前」「うった後」の情報提供へ

厚労省は2018年1月に、HPVワクチンについて説明する3種類(「HPVワクチンの接種を検討している女子と保護者向け」「HPVワクチンを受ける女子と保護者向け」「医療従事者向け」)のリーフレットを作っていた。
ところが、窓口に置いたりwebに掲載したりしていない自治体が全体の70.9%あり、リーフレットを見たことがないという一般の人も 86.3%。ほとんど活用されていないことが問題になっている。
今回、一般向けについては、「接種対象者と保護者全てを対象(うつ前)とした有効性・安全性の情報提供」「HPVワクチンを接種した子どもと保護者(うった後)の注意点」に内容を整理し、専門用語を使わないようにして読みやすく、わかりやすいものにすることにした。
委員からは、
「『積極的におすすめすることを一時的にやめています』というのが行政用語でわかりにくい。勧めていないとも受け取れるので、別の表現を」
「WHO(世界保健機関)が推奨していることなど国際情勢についても伝えた方がいい」
「ぜひ、個別送付でお願いしたい」
などの意見が出された。
個別にお知らせするけれど、積極的勧奨ではない?

また、接種対象者や保護者が接種について検討して判断できるように、このリニューアルするリーフレットと共に、接種の日時や場所など具体的な接種方法を個別に送る方針案が提案された。
これまでは、国が積極的勧奨を止めているため、対象者に個別に封書やはがきでお知らせを送っていない自治体がほとんどだ。そのため、自分が対象者であることを知らずに公費でうつ機会を逃す人が多くいた。
この提案は検討会で概ね了承されたが、気になるのは資料に書かれた「情報提供に当たっては、積極的な勧奨とならないよう留意する」という文言だ。
これについてBuzzFeed Japan Medicalは、出席していた宮嵜雅則健康局長に意味を質したところ、こう答えた。
「接種してくださいと勧めているわけではないから、積極的な勧奨には当たらないという整理。情報提供が十分でないというところが今回の議論の出発点なので、まずは情報提供をしっかりやっていくということだ」
前回、2019年11月22日の副反応検討部会で委員らから「積極的勧奨再開を検討する時期だ」という意見が相次いだことについては、「あれは委員の自由意見であり、検討会としてその方向で議論するということではない」という見解を示した。
HPVワクチン薬害訴訟弁護団は「積極的な勧奨と変わらない」

一方、検討会後に会見した、HPVワクチン薬害訴訟弁護団は、「自治体から個別通知をするなら、厚労省が止めている積極的な勧奨と変わりないと考えている」と反対の声をあげた。
厚労省は、推進派と反対派の双方を刺激しないように積極的勧奨再開はしないまま、対象者にワクチンの有効性や安全性を伝えて接種を促すという玉虫色の解決策を打ち出して反応を伺っているように見える。
だが、一般には厚労省の姿勢がわかりにくいことは変わらない。