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HPVワクチン、自治体は国の勧告に従って積極的に勧奨してはいけない? 政府見解は...

HPVワクチンについて自治体が個別にお知らせする積極的勧奨を差し控えるように通知している厚労省。今、国の再開を待たずに個別に知らせる自治体が増えていますが、この国の勧告に法的拘束力はないのか問いただした衆議院議員に、政府が出した答弁の内容は?

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチン。

小学校6年生から高校1年生の女子は公費でうてる定期接種となっているが、接種後に体調不良を訴える声が相次ぎ、対象者に個別にお知らせを送る「積極的勧奨」を厚労省が中止して6年半が過ぎた。

厚労省

厚労省のこの勧告に基づいて、各自治体の積極的勧奨はストップしているが...

その国の方針を、2013年6月14日付で、実際に予防接種業務を行う地方自治体に通知したのが、厚労省健康局長名で出された「ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対応について(勧告)」だ。

この国の勧告について、衆院議員の井出庸生氏が、地方自治体に対して法的拘束力があるか質問主意書で質したところ、政府が12月3日、「勧告に従うべき法的義務を負うものではない」と答弁していたことがわかった。

現在、国による積極的勧奨再開の方針を待てずに、独自に個別にお知らせを送り始めた地方自治体が97あることがわかっているが、残りの多くの自治体は、この国の勧告に基づき差し控える判断をし、7割近くあった接種率は1%未満にまで落ち込んでいる。

答弁書では具体的な勧奨の方法については自治体に一定の裁量があることも認めており、国の勧告に従う法的義務がないことが改めて確認されたことで、予防接種の実施主体である地方自治体の姿勢も問われることとなる。

法的拘束力はなく、独自に積極的勧奨に踏み切っても不利益は被らない

HPVワクチンは2013年4月から、予防接種法に基づき、国が公衆衛生上、集団に免疫をつけることが必要と考え、本人に接種の努力義務を課すA類の「定期接種」となっている。

そして、実施主体となって予防接種を進める義務がある自治体は、住民に対してうつように勧める「勧奨」をすることになっている。

ところが、国のHPVワクチンに関する勧告では、「勧奨を行うに当たっては、市町村長は、接種の積極的な勧奨とならないよう留意すること」としており、これに基づいて、ほとんどの自治体が個別に対象者に通知を送るのを差し控えている。

Chinnapong / Getty Images

地方自治法や予防接種法では自治体にどのような権限や義務を定めているのか?

今回、質問主意書で確認された主要な項目は3点だ。

  1. 国の勧告に書かれた「積極的な勧奨とならないよう留意すること」という部分は、自治体に対して法的拘束力を持つかどうか。
  2. 市町村長が、国の勧告に反して、HPVワクチンを積極的に勧奨したとしても、国から是正の勧告や指示を受けたり、積極的勧奨を停止させられたり予算上の措置を含む何らかの不利益を与えられることはあるか。
  3. 自治体の義務である「勧奨」の内容や方法について制限はあるのか。


これに対し、内閣総理大臣の名前で出された答弁書では、

  1. 勧告を受けた普通地方公共団体の長である市町村長は、勧告に従うべき法律上の義務を負うものではないが、勧告を尊重すべき義務を負うものと考えている。
  2. 国の職員は、普通地方公共団体が国の行政機関が行った勧告に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならないとされている。
  3. 「勧奨」の具体的な方法は市町村長に一定の裁量があるが、予防接種法の趣旨を踏まえて勧奨を実施する必要がある。


とそれぞれ回答した。

つまり、国が積極的勧奨を差し控えるように勧告してもこれに従う法的な義務はなく、従わなくても予算を削られるなどの不利な扱いを受けることはない。そして、自治体の裁量で勧奨の具体的な方法は決められるということを正式に確認したことになる。

「勧告を尊重すべき義務を負う」とは?

一方、1の答弁で気になるのは、「法律上の義務は負わない」としながらも、「勧告を尊重する義務を負うものと考える」と一見、矛盾した言葉が並ぶところだ。

時事通信

厚生労働省の解釈は?

BuzzFeed Japan Medicalが厚労省の予防接種室に確認したところ、田村圭・室長補佐はこう回答した。

「予防接種は地方自治法に基づく自治業務なので、勧奨のあり方について国の勧告に従う法的な義務があるわけではなく、具体的な勧奨の仕方は地方自治体の裁量に委ねられている。一方で裁量権はあっても好きなことができるわけではなく、国が専門家の助言を得て出した勧告を尊重して決める義務を負うということだ」

この「勧告」については以下の地方自治法245条の4の条文を根拠に出しているという。

各大臣は、その担任する事務に関し、都道府県知事その他の都道府県の執行機関に対し、前項の規定による市町村に対する助言若しくは勧告又は資料の提出の求めに関し、必要な指示をすることができる。

なぜ尊重する義務があるとまで言えるのか。これについて田村室長補佐は「地方自治法の逐条(条文解説)をもとに書いている」と話す。逐条は以下の通りだ。

「助言等」については、それらを受けた地方公共団体には一般的に尊重する義務はあっても、それらに従って事務を処理しなければならない法律上の義務が発生するものではない。

答弁書では順番が前後し、ニュアンスが変わっていることがわかる。もとの解説では、法的拘束力はないということをむしろ強調している形だ。

積極的勧奨を差し控える判断をした厚労省の直近の検討会では、「積極的勧奨の再開を議論すべき時だ」と複数の委員から意見が出されていた。

だが、田村室長補佐に、厚労省は積極的勧奨を再開する新たな通知を検討しているか尋ねたところ、「審議会で議論を進めた上での対応になる」として、具体的な見通しは示さなかった。

定期接種を行う義務がある地方自治体がどう動くか

答弁書では2019年度のHPVワクチンの予防接種費用として約190億円を見込んでおり、その費用の9割を国は普通交付税として積算していることも明らかにしている。

普通交付税は使途は定められていないため、HPVワクチンの予防接種に使われなければ、自治体によって他の用途に使われている可能性がある。

11月26日には、国の対応にしびれを切らし、九都県市(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市)が、HPVワクチンの定期接種について、積極的な勧奨の再開の是非を含め、早急に結論を出すことを求める要望書を加藤勝信厚労相に提出している。

だが、国の方針を待つまでもなく、自治体の裁量で個別通知をしても何ら問題はないことを明らかにしたのが今回の答弁書だ。

国が積極的勧奨の再開に二の足を踏む中、ワクチンの存在や対象者であることさえ知らずに、公費でうてるチャンスを検討することもできていない女子のために何ができるか。地方自治体の責任も問われている。

一部表現を改めました。

UPDATE

椎名毅氏の求めにより、椎名氏のコメントは削除しました。

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