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HPVワクチン接種者が増えて不足する事態に 自治体の個別通知が増えたのが後押しか?

HPVワクチンをうちたい人が増えていることで、不足する事態も出てきていることがわかりました。製薬会社は出荷量を増やしていますが、それでも追いつかず、厚労省は医療機関にうち方を調整するよう要請しています。

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチン。

今年に入ってから接種希望者が増加し、ワクチンが不足する事態も出てきていることがわかった。

対象者に個別にお知らせを送る自治体が増えてきた効果もあると分析されている。

厚生労働省は10月28日に都道府県に「ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチンの供給見通しについて」とする通知を出し、医療機関にうち方を調整するよう求めた。

需要が供給を上回りそうな2価ワクチン

現在、日本で承認されているHPVワクチンは、グラクソ・スミスクライン(GSK)社の2価ワクチン「サーバリックス」と、MSD社の4価ワクチン「ガーダシル」 。

ヒトパピローマウイルスは約200種類ほどあるとされている。2価ワクチンは、中でも特にがんになりやすい16型、18型への感染を防ぎ、4価ワクチンはその2種類に加えて良性のイボである尖形コンジローマの原因となる6型、11型も防ぐ。

HPVワクチンは2013年4月に小学校6年生〜高校1年生の女子を対象に公費でうてる「定期接種」となったが、接種後の体調不良を訴える声が相次ぎ、国が自治体に対し積極的に勧めるのを差し控えるよう求める通知を出した。

その結果、70%程度だった接種率は最近まで1%未満にまで落ち込んでいたが、今年に入って接種数が増えたという。

2価ワクチンについては、2019年7月〜2020年6月までと比べ、2020年7月から2021年6月までは約1.9倍の供給量となる見込みだ。

それでもこのままのペースで行けば需要が供給量を上回る勢いだ。GSKは10月28日から出荷量を抑えるため、2価ワクチンによる初回接種を控えるよう依頼を始めた。

GSK広報は、「今年に入ってから徐々に出荷が増え始めた。何が原因かは私たちもわからないが、自治体による個別の通知が増えたことや、メディアもよく取り上げてくれるようになったこと、厚労省の動きなど様々な要素が複合的に影響していそうだ」と話す。

4価ワクチンについては、同じ期間で供給量を約3倍に増やす予定で、2種類のワクチン全体では2.9倍の供給が見込まれている。

不足しそうな2価ワクチンは日本のHPVワクチンシェア全体の1割程度でもあることから、厚労省はHPVワクチン自体、日本でうてなくなる心配はないとしている。

不足の場合、2価ワクチン「サーバリックス」は1回め、2回めを既にうった人だけに

しかし、HPVワクチンは半年かけて3回うつことが必要で、同じ種類のワクチンをうち続けなければいけない。

2価ワクチンのサーバリックスは不足する見込みのため、厚労省は、医療機関に対し、初回の接種はなるべく供給に余裕がある4価のガーダシルをうち、サーバリックスは既にうった人のみにうつよう調整を求めた。

厚労省予防接種室は、「産婦人科医の先生方などHPVワクチンの接種を進めたいという人たちの活動などが接種数の増加に影響しているのかと思う。その結果、個別に対象者に周知する自治体が増えてきて、定期接種の本来あるべき姿に戻りつつあるのかなと考えている」と話す。

日本では接種率が激減していることから、本来のHPVワクチン対象者の数に比べ、供給量は極端に制限されてきた。同省によると、少なくとも定期接種になってからHPVワクチンが不足するような事態は初めてだろうという。

厚労省は2013年6月に積極的勧奨を差し控えるよう自治体に通知してから、7年以上再開していない。

しかし、対象者がワクチンの存在さえ知らずにうつチャンスを逃していることが問題視され、今年10月に自治体に個別にお知らせを送るよう通知した。今後、さらに接種希望者が増えることが見込まれる。