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「対象年齢を過ぎても、HPVワクチンを無料でうてるようにして」 医療関係者有志が署名活動をスタート

国が積極的に勧めるのを差し控えるようにして7年経ち、実質中止状態になっているHPVワクチン。医療関係者有志の会が、うち逃した女子に今からでも無料でうてるよう求める署名活動を始めました。

国内で毎年約1万人が発症し、約3000人が命を落とす子宮頸がん。

だが、このがんは発症さえも防ぐことができる。子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を予防する「HPVワクチン」があるからだ。

小学校6年生から高校1年生の女子は公費でうてる定期接種となっているが、国が積極的に勧めるのを差し控え、自治体から対象者にお知らせが届かなくなってから7年が経った。

医療関係者有志の会「HPVワクチンfor Me」は、不安で接種を見送ったり、自分が対象者であることさえ知らずにチャンスを逃したりして無料の対象年齢をすぎた女子に、接種の再チャンス(キャッチアップ接種)を与えるよう求める署名活動を始めた。

署名は「HPVワクチン(子宮頸がん等予防)を打つ機会を奪われた若者たちが無料で接種するチャンスをください」から行える。

大学生の切実な声「費用が高くてうつことができない」

HPVワクチンは2013年4月から定期接種となったが、体調不良を訴える声が相次ぎ、メディアがセンセーショナルな報道を繰り返したことから、接種者が激減。

国は同年6月に積極的に勧めるのを差し控えるように自治体に通知し、現在、接種率は1%未満にまで落ち込んでいる。

その後、ワクチンをうっていない女子でも同様の症状が見られることが国内外の研究で確認され、ワクチンと接種後に報告されている体調不良は関係ないという結論が名古屋市7万人の女子を対象にした「名古屋スタディ」でも示されている。

日本のように接種の姿勢を変えることがなかった海外では、男子も公費接種の対象になっている国が多い。HPVは子宮頸がんだけでなく、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなど男子もかかるがんの原因となり、性的な接触でうつしあうからだ。

接種率の高いオーストラリアでは、子宮頸がんの撲滅も視野に入ってきた

一方、日本では、公費でうてる対象年齢を超えると自費でうたなければならず、現在、日本で承認されている2種類のHPVワクチンは3回の接種で約5万円。間もなく承認される9価ワクチンは約10万円かかる。若い女性にとっては大金だ。

どうしたらこのワクチンを日本でもうちやすくできるか考える「HPVワクチンfor Me」はメディアや医療者向けに勉強会を開き、うつ機会を逃した大学生たちの悲痛な声を紹介した。

「自費診療となると約5万円もすることを知り、なぜ無料期間にワクチンを打てなかったのか、母を責める気持ちになった」(19歳、大学生)

「5万円は大金で、奨学金を借りて大学に通っている私は、そのお金があれば学費に回してしまう」(19歳、大学生)

「HPVワクチンをもっと手軽に受けられるようにしてほしい」(21歳、大学生)

そこで、対象年齢を過ぎた女子も公費でうてるようにするための署名活動を始めた。

共に活動している東洋大学の「DAISY」や女子栄養大学の「たんぽぽ」などの学生サークルのほか、日本小児科医会会長や日本産婦人科医会副会長、日本小児科医会予防接種等担当理事らが賛同している。

権利を奪われた若者たちを守ることは大人たちの責任

HPVワクチンfor Me」の産婦人科医、高橋幸子さんは、子宮頸部の細胞診で異常が出た女子高校生2人をたて続けに診察した。二人はHPVワクチンを受けていなかった。

「彼女たちは、HPVワクチンの存在すら知りませんでした。小学6年から高1の間にワクチンをうっていれば、こんな思いをしなくて済んだかもしれないのに。『今からでもうてる。でも3回で5万円かかる』と知って、落胆した彼女たちの顔が頭を離れません」

そして、うち逃した後に、HPVワクチンのことを初めて知った女子は多い。

「HPVワクチンのことを学んだ大学生からも、『うちたかった!』とたくさんの声が届いています。まず大人がHPVワクチンの果たす役割の意味を知ってほしいです。HPVワクチンについて知る権利を奪われた若者たちを守ること、これは大人たちの責任です」と高橋さんは訴えている。

署名は厚生労働大臣の他、予防接種の実施主体である自治体に声を届けるべく、全国市長会・全国町村会に提出する予定だ。

「HPVワクチン(子宮頸がん等予防)を打つ機会を奪われた若者たちが無料で接種するチャンスをください」