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水、食事、病気 被災地の衛生管理で気をつけるべき6つのこと

被災地での医療支援経験が豊富な医師に聞きました

河川の氾濫や土砂崩れなどの大規模な被害が出ている九州北部の豪雨災害。濁流に街が飲まれ、蒸し暑い季節に被災者が体調を崩すことも心配される。

ただでさえ、生活が不安定になった被災者は健康維持のために、どのようなことに気をつけるべきなのだろうか。中越地震、東日本大震災、熊本地震など被災地での医療支援の経験が豊富な、沖縄県立中部病院感染症内科副部長の高山義浩さんに話を聞いた。

まずは落ち着いて行動を

まず高山さんはBuzzFeed Newsに次のように指摘した。

「大規模災害に続く集団の避難生活では、しばしば感染症が大流行する可能性が報じられ、被災者は不安を募らせます。東日本大震災でも、被災直後の破傷風に始まり、インフルエンザ、ノロ、麻疹(はしか)、津波肺炎などが震災関連死を増やすのではないかと報じられ、避難生活で手一杯の被災者を不安にしていました」と指摘する。

「国際的には大規模水害の後にマラリアやレプトスピラ症などの感染症が流行することがありますが、現在の北九州で、洪水を原因とする特殊な感染症の流行をとりわけ警戒する必要はありません。落ち着いて復旧に取り組んでいただければと思います」と言う。

その上で6つの注意点を挙げてくれた。

1、 安全な水を飲用する

井戸水などは汚染されている可能性があります。水質検査で確認されるまでは飲まないようにしましょう。また、給水時点では安全な水であっても、調達や保管の方法によって汚染されてしまうことがあります。清潔な容器に入れて冷暗所に保管してください。ペットボトルのお茶や飲料水を活用するのが一番安全です。

2、 トイレ使用のルールを守る

避難所のトイレなどの数を増やし、女性や子どもでも利用しやすい環境にすることが大切です。なお、日本人はトイレを清潔にすることにこだわる傾向がありますが、被災地の限られた人員と資源でトイレの清潔を保つことは困難です。

むしろ、トイレの後に手洗いをしっかりするとか、トイレと居住空間の履物を別にするといったことで、「トイレは不潔なものだ」という認識を持つことの方が感染対策上は有効だと思います。

3、 症状がある時は、早めに医師に相談

災害の時には、皆が苦労しているということで、自分のことを後回しにしてしまう傾向があります。特に日本のお年寄りはそうですけれども、感染症については、早期に診断して、早期に治療することが有効です。

発熱、咳、嘔吐や下痢といった症状がある時は、我慢せずに申し出てください。

必要な時には、マスクを着用するなど感染を広げない対策にご協力いただくこともあります。特に避難所で生活されている方は、周囲を守るためにも、手洗いをしっかりして、自分自身の健康に気を配ってください。手を洗う水が十分ない場合には、ウェットティッシュやアルコールジェルなどを利用しましょう。

4、 破傷風の予防

日本でも、大規模災害の後に破傷風を発症する方が一定数います。これは土壌中に生息する破傷風菌が、傷口から体内に侵入することで感染し、発症するものです。被災後に手足が傷ついたまま、復旧作業に取り組まれる方がいます。洪水の後には、土壌の環境がかき回されているので破傷風菌にさらされやすい状態になっています。

特に手足に傷があるときには、傷を覆うなどの処置を受けるようにしてください。破傷風菌の曝露後でも予防できるワクチンがあります。傷口を土壌に汚染させてしまったようなときは、救護所の医師に相談されることをお勧めします。

5、 お年寄りの脱水や誤嚥性肺炎などを防ぐ

今の季節ならアデノウイルスを原因とするプール熱などいわゆる夏風邪と言われるものや、ノロウイルスなどによる急性胃腸炎が流行する可能性はあります。

しかし、実のところ、高齢化した日本で、被災者の命を奪いかねない重大な感染症とは、誤嚥性肺炎や、尿路感染症、床ずれに細菌感染が合併するといった問題です。これは、食事量を減らして体力を落としたり、脱水症状になったり、トイレを我慢したりといったことが原因で起こります。

予防のためには、被災生活の環境をしっかり整備することが何より大切です。

例えば、高齢者が避難所の床面に直に座って(あるいは寝転がって)食事をすることがないよう、避難所の中にテーブルと椅子を用意して、共同の食事スペースを設けることも有効です。

これは正しい姿勢で食事をすることによる誤嚥予防になるばかりでなく、被災者が一緒に食事をすることで心のケアにも活かされるかもしれません。

また、避難所のトイレが不足して待ち時間が長くなると、高齢者(とくに女性)は水分を取るのを控えるようになってしまいます。

トイレまでに段差があったり、屋外に設置されていたりすると、身体機能が低下している高齢者の中には、オムツの着用を受け入れてしまう人もいます。これに慣れてしまうと、身体機能の低下につながります。

誰もが利用しやすいようにトイレを整備することは、被災地の感染症対策において最も大切なことだと私は思います。

日ごろ尿とりパッドを使用しているような方が、恥ずかしがって利用を遠慮することがないよう、申し出なくとも手に入るような場所にそっと置いておくといった工夫も必要でしょう。

6、なるべく体を動かす

避難所まで歩いて避難してきたはずの高齢者が、いつしかオムツをつけられ、やがて寝たきりとなってしまうことも少なくありません。不活発になってしまう背景には、災害による心理的な要因もありますが、避難生活の環境要因が見過ごされてきたこともあるでしょう。

避難所生活では、支援によって物資が配布されるため、日常の家事や近隣への買い物などの機会が失われます。ボランティアが親切心から支援物資を枕元まで届けていると、高齢者がほとんど横たわった状態で1日を過ごすようになりかねません。

雨が止んでいる時は、できるだけ避難所の外で生活必需品を配布するようにして、歩ける方には歩いて取りに行っていただくなど、なるべく通常の生活に近い形で基本的動作の能力を維持してもらう工夫が必要です。


以上6つの注意を伝えた上で高山さんは言う。

「これは私の限られた被災地支援の経験による一般論に過ぎません。被災地の状況は刻々と変化してするものです。常に最新の状況を確認しながら、健康を守っていただきたいです」

Naoko Iwanagaに連絡する メールアドレス:naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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