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「3連休、お盆は動かないで」 感染拡大を止めるために今、あなたができること

感染拡大が止まらない中、旅行や帰省が増える3連休やお盆に突入します。政府が明確なメッセージを出さない中、今、私たちが感染拡大を食い止めるためにできることを聞きました。

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。

東京都は8月5日に新規感染者数が過去最多の5042人を記録し、政府は入院を重症患者や重症化リスクが特に高い患者に絞る方針を示した。

こんな状況下で始まる3連休やお盆。感染者をこれ以上増やさないために何ができるのだろうか。

Sato / Getty Images/iStockphoto

お盆は実家に帰ろうと予定している人も多いかもしれないが......

国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治さんに聞いた。

※インタビューは8月5日夜に行い、その時点の情報に基づいている。

感染者が減る要素が足りない 感染拡大の長期化も

ーー8月4日に厚生労働省のアドバイザリーボードが開かれました。専門家は現状分析も将来予測も引き続き厳しい見方をしています。

このままでは感染者は減らないのは確かです。

ーー東京の人出は少し減少傾向にありますが、感染者を減らすにはまだまだ足りないということですね。

第46回アドバイザリーボード

東京も神奈川も少し減っていますが、この減りでは足りない。全国の実効再生産数(1人あたりの二次感染者数。1を超えると感染拡大が続く)も1.35で感染拡大が止まる気配が見られません。

ーー京都大学の西浦博先生は第1波の時の人出の減り方であっても、現在の感染拡大を抑えるのは難しいと言っています。

現状は減る要素が全然足りません。

政府は重症者や重症化リスクの高い人以外は在宅での治療を優先する方針を示しました。災害に近い状況を迎える中で、いかに感染者を減らすかという発信とともにしていただきたかったですが、それはなかった。極めて遺憾です。

感染者数が増えてくると、医療の質も担保されなくなるのは間違いない。救える人を救えなくすることにもつながりますから、1日でも早く感染者を減らすための方策を国は打つべきです。

デルタ株は増えやすく、そして減りづらいので、感染拡大の長期化が見えてきています。コロナ以外の一般診療の影響も心配です。経済への影響もさらに大きくなるのではないでしょうか。

24日からパラリンピックが開かれますが、そのときの東京の状態は相当に厳しい状況がすでに想定されます。開催するならかなりしっかりと感染者を減らす方向に舵を切ることが不可欠です。

入院ベッドは限界を迎えています。すでに都内では病院が決まらないことが現実にかなり起きています。自宅療養に患者を振り分けるなら、自衛隊に協力してもらって自宅療養の生活支援などをするなど、命や生活を守るための手を打たないといけません。

何より根本的な対策は、感染者を減らすことです。災害とみなしてより引き締めた対策を打つべきです。

まずは現行の法律でできることを徹底

ーー今、どんな手が打てますか?

確かに今、市民は聞いてくれない懸念はあります。でもそれで何もしないというのは役割を放棄している。聞いていただける方策を考えるのが、国や自治体の役割です。

例えば酒を出す飲食店が開いていても放置されているようです。必死になってそういう店に守ってもらうようにするとか、地域の力を結集して徹底した方がいい。

「オリンピックは開いているのに、なんで俺たちばかり我慢しなければいけないんだ」と言われたら、返す言葉がないですね。それでも現行の法律でできることをちゃんとやるしかない。

ロックダウンの法制化を検討するにしても、今できる手段を尽くした上で、それでもダメな段階で、それ以上の強制力を考える順序が基本だと思います。

ーーただ、厚労省が発表している最新のクラスターの数(8月2日現在)を見ても、東京都のモニタリング会議が発表しているクラスター報告を見ても、飲食店だけではないですね。むしろ東京では飲食店でのクラスターは減っています。

  • 医療機関   1266 件(前週比: +6 件)
  • 福祉施設    2505 件(同: +54 件)
  • 高齢者福祉施設 1770 件(同: +13 件)
  • 障害者福祉施設 227 件(同: +7 件)
  • 児童福祉施設 508 件(同: +34 件)
  • 飲食店 1692件(同: +62 件)
  • 運動施設等 217件(同: +9 件)
  • 学校・教育施設等 1284 件(同: +55 件)
  • 企業等 1910件(同: +70 件)
  • その他の施設(自宅での会食含む)454件(同: +14 件)

(厚生労働省のクラスター報告より)

東京都モニタリング会議 / Via bousai.metro.tokyo.lg.jp

東京都のクラスター報告。職場でのクラスターが多い

確かに日常の場での感染が増えています。前よりもだいぶ対策が改善されているのは間違いないです。しかし、きっちり下げられるところを下げることを一つ一つ徹底することが大事です。

「自分は大丈夫」という過信 中年男女の方が高い

ーーどんな行動が感染拡大の原因になっていると思いますか? コロナ疲れが原因でしょうか。

「感染した場所がわからない」という陽性者もいるのですが、よくよく聞けば、やはり日常の場で感染しています。

みなさんカフェで人と一緒にお茶を飲んで談笑しています。その横で黙々と仕事をしている人もいますが、それは空中をしばらく浮遊する「マイクロ飛沫」の感染リスクになります。

デルタ株ではマイクロ飛沫で感染しやすくなっていることが伝わっていないのでしょうし、慣れもあるのでしょうけれど「自分は大丈夫」と思い込んでいる人が多い。

和田耕治さん提供

若い人の危機感がないと批判されがちですが、アンケートで調べてみると、20代、30代は6割ぐらいが「自分は日常生活で感染するかもしれない」と思っています。特に感染者が周りにいるとその気持ちが強くなります。

ところが、40、50代の男女は「自分は日常生活で感染するかもしれない」と思っている人が少ない。むしろそう思わないという方が多かった。コロナ対策でターゲットにすべきは我々中年世代なのかもしれません。

若い世代に模範を示すという意味でもこの世代がしっかり対策することが大事です。企業もこの世代が仕切っていることが多いです。

ワクチンも40〜50代がしっかり接種しないと、子ども世代である20代、30代はうたないでしょう。中年が重症化している中で、40代、50代に届くメッセージを出して、その人たちが働く場でも模範を示し、ワクチンもしっかり接種すしないと、若い世代に対策が徹底されないと思います。

中年世代が「自分たちがしっかり守り、若い世代を守るんだ」ぐらいの意識を持っていただけることが鍵となるのではないでしょうか。

国のリーダーのメッセージが曖昧で頼りにならない中、「もう市民でなんとかするしかない」というぐらいの動きが起きてほしい。

これまで日本では感染症の危機の時に、市民が引っ張ってきた歴史があります。かつて、ポリオが日本で流行した時も、母親たちが「ワクチンをなんとか調達しろ」と厚労省の前で運動を繰り広げて、ロシアから緊急輸入させました。

今まで、国や知事のリーダーシップを期待していたのですが、市民からのリーダーシップで「みんなでなんとかしよう」という声が起きないと動かせないのかもしれません。

東京五輪の影響は?

ーー緊急事態宣言が出ているにもかかわらず、感染者はなかなか減りません。デルタ株の影響が強いと思いますが、五輪開催の影響はどう見ていますか?

オリンピックの影響といってもいろいろあります。

直接的な影響は、選手や関係者の感染者から地域に感染が広がるということですが、今のところそうした動きは明確ではありません

もう一つの直接的な影響は選手同士や感染者同士の感染拡大で、それは今から見えてくるのかもしれません。選手は自分の競技を終えるまでは感染対策に気をつけているでしょうけれど、終わった瞬間に緩む。閉会式などで密になれば、そこで感染しかねません。

間接的影響は、オリンピックを開催していることを理由に、国内の対策がおろそかになって広がるのではないかというものです。

これは学術的にもデータを取るのがなかなか難しい。オリンピックを開催している現実と、なかった場合の仮定の状況を比べることは難しい。

感染力の高いデルタ株の影響もありますし、オリンピック開催で緩んだ影響もあるし、ワクチン接種が進んで1回でも接種した人は「自分は守られている」という安心感が出ています。この接種者の気の緩みも気になります。

確かにワクチンを2回接種すると、デルタ株であっても亡くなる可能性や重症化の可能性はグッと減ります。それでもワクチンを接種していない人がたくさんいることを踏まえて行動しなければなりません。その気持ちがないと対策は他人事になります。

オリンピックの前後で感染者が増えたことは明白ですが、感染拡大にはオリンピックだけでなくて、いろいろな要因が考えられます。

しかし、対策を打ったらどうなったかという、感染拡大の引き算についてはもう少し評価はできそうです。第4波の時は飲食店でお酒を出さない対策では想定以上に感染者数が下がりました。一つ一つの対策がどれほど効いたのか検証して、次に活かすことの方が大事だと思います。

3連休、お盆、どう過ごすべきか?

ーーそして今週末は3連休があり、来週はお盆に突入します。この影響をどう見ていますか?

今、都道府県をまたぐ移動はやめてほしいと呼びかけていますが、既にチケットをとった人もいるでしょうから、もう止められないのかもしれません。


お盆にこうなるのはわかっていたでしょ?と問われたら、その通りです。1ヶ月前にはこうなるだろうことはわかっていました。

おそらくお正月の時期も厳しい。旅行も小規模分散化して、連休以外も活用してほしいとずっと呼びかけてきました。冬は特に感染拡大が厳しくなるでしょう。

お盆は厳しいからお正月に帰省しようと思っている人は、できれば今の波が収まった秋頃にサッと行って、サッと帰ってくる方がいい。みんなが動く時に一斉に動くのは止めなければいけません。

抗体も長期間は継続しないという話も出てきていますし、ワクチンをうたない人もいますから、接種がある程度進んでも気をつけなければなりません。

ーー重症化する高齢世代がワクチン接種を終えたからといって、帰省は大丈夫とはならないわけですね。

今は高齢者がほとんど接種を終え、帰省する側が接種を終えていない組み合わせが一番多いと思います。

子ども世代のお父さんは接種したけれど、お母さんの方はうっていない、または1回しかうっていない、孫世代もうっていないなど、家族内でも接種状況はばらばらであることも多いでしょう。

おじいさん、おばあさんが2回接種を完了していて、帰ってくる方の中に接種が完了していない人が混じっているのなら、リスクは下がるけれど、引き続き注意は必要です。

また、ついでにということで、地元の友達に会ったり親戚と会ったりすれば、感染を広げるリスクはある。こういう行動は今はやめてほしい。

一つ一つの行動には、前後の行動がついて回ります。コンサートもオリンピックもその最中には感染しないかもしれませんが、前後に誰かと一緒にご飯を食べたりして感染が広がる。

「接種済みのおじいさん、おばあさんに会ってはいけないのですか?」と問われたら、「おじいさん、おばあさんにしか会わないのですね?」と問い返したい。

同居している家族が温泉に行って家族だけで過ごし、温泉に入って、お部屋でご飯を食べてそのまま帰ってくるだけの旅行なら感染リスクはかなり抑えられます。県内で温泉に行って帰ってくるぐらいの旅行は止められていません。

ーー実家のおじいさん、おばあさんも、帰省する子ども世代も2回接種したという、双方が接種済みの場合はどうですか?

理論上は全員が2回接種していればかなり感染から守られています。最終的にはどれほどのリスクを引き受けるかという個人の判断になりますが、双方とも2回接種済みならばかなり許容できるレベルのリスクまで下がっているでしょう。

しかし、その前後で接種していない地元の友人と会うのはリスクです。結局、帰った先で何をするかがリスクを考える上でポイントになります。

マスに向けたメッセージが出しづらい時期

ーー「2回接種したのだから帰省OK」というところだけしか頭に残らずに、帰省先で接種していない人とリスクの高い行動を取る人がいるかもしれない可能性を恐れているのですね。

マスに向けたメッセージを作るのはすごく難しい。昨年の夏も今年のお正月も、新幹線や飛行機で遠出するような移動はやめてもらうように呼びかけました。

東京から栃木や茨城、群馬などの北関東への移動での感染の広がりは起きていました。お互い関東だから、「東京から来ないで」という意識も受ける側にもない。東北ぐらいまで離れると、「東京から来ないで」という意識が増えます。

一番伝えたいのは、ワクチンを2回接種した人はまだ全体から見ると少ないということです。自分は接種したとしても、その全体状況を踏まえて行動しなければいけません。

ーー2回接種済みの割合は、8月5日現在、日本全体で32.1%ですね。

この段階で、ワクチンを接種したからどうするかというのは、マスに向けたメッセージとして出しづらい時期です。

ーーそれは2回接種済みの人も感染する「ブレイクスルー感染」もあり得るからですか?

というよりも、正しくメッセージが伝わらないかもしれないからです。みんな自分の都合のいい解釈をしがちです。60代未満はワクチン接種を完了していない人がほとんどで、その中でワクチンをうった人ならこうできますよというメッセージは出しづらい。

いずれ接種が進めば、そういうメッセージもそう遠くない時期に出てくると思います。

ーーこれまで話したことを総合すると、3連休やお盆の旅行や帰省は慎重にというのが今の時期のメッセージですね。

この感染拡大状況で全くブレーキが効いていない状況からすると、お盆は帰省はやめてほしいというのが現段階でのメッセージです。個人のリスク判断で行く人もいるかもしれませんが、全体に対しては「行かないで」というメッセージしか出せません。

「こういう人はいいけれど、こういう人はだめです」というメッセージは出しづらい。きちんと伝わるかどうかがわからないし、大半の人が当てはまらないメッセージを出すのは難しいです。

「おじいちゃん、おばあちゃんが亡くなりそうだから会いに行ってもいいですか?」と質問されたら、自分のリスクと相手のリスクを考えて行動してくださいとしか言えません。会いに行く場合も、会う人は最低限に抑えてください。

変えられる未来を変えるために 知事と市民が団結を

ーー今対策を打てば、感染者を抑えられる可能性はありますか?

今から引き締めたとしても、今後2週間は減りません。変えられない未来です。

それでも3週後以降の未来を変えないと、本来救える命が救えなくなります。亡くなる人が増えることは目に見えています。今、危機的な状況の前夜です。そしてこれからお盆ですから、急に対策を打つと言っても時間がかかります。

地震と違って感染症の被害は2週間前から予測できます。このまま行けば必ず起こる被害です。シミュレーションでも示しているので、知らなかったとは言えません。変えられる未来を変えるために、お盆に向けて「移動しない」「できるだけ自宅で家族だけで過ごす」対策を徹底してほしい。

ーー政府にはどのようなメッセージを出してもらいたいですか?

政府のトップの認識は変わりそうもないので、都道府県知事が市民に最も近い感染対策の責任者である自覚を強めてもらいたい。

自分の自治体の市民が亡くなれば、「何をやっていたのか」と問われるのは知事です。感染症法やと特別措置法ではそれだけの権限を知事に持たせています。

政府が期待できないなら、自分が責任を持つ住民を守るためにどうしたらいいのか、知事は突き詰めて考えてほしい。知事と市民が団結するしかないと思います。

【和田耕治(わだ・こうじ)】国際医療福祉大学国際医療協力部長、医学部公衆衛生学教授

2000年、産業医科大学卒業。2012年、北里大学医学部公衆衛生学准教授、2013年、国立国際医療研究センター国際医療協力局医師、2017年、JICAチョーライ病院向け管理運営能力強化プロジェクトチーフアドバイザーを経て、2018年より現職。専門は、公衆衛生、産業保健、健康危機管理、感染症、疫学。
『企業のための新型コロナウイルス対策マニュアル』(東洋経済新報社)を昨年6月11日に出版。

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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