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変異ウイルスで子どもの感染は拡大するの? 大人がまず率先して対策を

変異ウイルスの拡大で心配されている子どもへの感染拡大。公衆衛生の専門家はどう見ているのでしょう。まずは大人が率先して感染対策するように呼びかけます。

感染拡大が止まらず、4都府県(東京、大阪、兵庫、京都)に再び出された緊急事態宣言。

変異ウイルスの感染力の高さ、重症化リスクの不安も上乗せされ、さらに心配されているのが、感染者が増えている子どもの対策だ。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed / Via youtube.com

文部科学省制作のビデオで子どもの感染対策について話す和田耕治さん

文部科学省と共に、ビデオ「子供たちの感染状況と学校の感染対策」で子どもの対策を呼びかけた国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治さんに聞いた。

※インタビューは4月24日夜にZoomで行い、その時の情報に基づいている。

15歳未満は守られている 学校での対策は?

ーー変異ウイルスの拡大で子どもたちの感染も増えていますね。感染率や重症化率が高くなるのではないかという懸念もありましたが、現時点ではどのように見ていますか?

今のところ、感染の主体は大人であって、15歳未満の子どもたちは大人に比べると感染から守られています。子どもたちの体質や免疫の理由など諸説があって、理由ははっきりしていません。

変異ウイルスが広がる中で、子どもの感染者数は確かに増えています。厚労省のアドバイザリーボードで、国立感染症研究所から国内のデータが示されました。

それを見る限り、15歳未満の小中学生のお子さんは、変異ウイルスであっても、従来のウイルスより感染拡大しやすいことは明らかになっていません。重症化からも大人より守られています。

YouTubeでこの動画を見る

文部科学省 / Via youtube.com

やはり気をつけるべきは、20歳以上です。大学生の授業は、感染拡大地域ではオンラインも活用してもらう必要があります。飲み会や食事会なども我慢してもらう必要があります。

高校生はその間の世代で、密なところを避けてもらう必要があります。身体同士が近づく部活などは避けてもらって、学びを優先していただき、授業が終わったらすぐ帰宅してもらうのがいいでしょう。

小中学生も感染から守られているからといって、何もやらなくていいわけではありません。特に感染拡大している地域では、体調確認などはしっかりやって、密になる行事や合唱など飛沫が飛ぶような感染リスクの高い行為は小中学生でも避けてほしいです。

学校閉鎖も今のところは必要ない

ーー小中学校では学校閉鎖までは必要ないということですね。

閉めることによる様々な弊害も考えると、緊急事態宣言などの地域全体で小中学校を一斉に閉めることは必要ないと考えています。感染者が確認された場合には、一時的に学級や学年などの単位での閉鎖はあり得るとは思います。

ただし、将来、地域でもっと感染が増えて社会的なロックダウンのような極めて強い対策が必要となったり、さらに感染力の高い変異ウイルスが出てくれば、また判断は変わってくるかもしれません。

変異ウイルスで特に子どもが感染しやすくなっているわけではない

ーー4月7日のアドバイザリーボードで感染研の鈴木基先生が出していた資料を見ると、17歳未満では従来株よりも変異ウイルスの方が感染率が高くなっていました。最新のデータでは、そうでもないということですね。

厚労省アドバイザリーボード

4月7日のデータでは17歳以下は感染率が従来株より高くなっていることが示されたが...

国立感染症研究所

従来株と変異ウイルスの年齢別の累積報告率。子どもで大きい変化はない

そうですね。ただ、感染者数は子どもでも増えています。それは地域でまん延しているからです。大人の感染者も増えていますので、家庭の中で子どもも感染していることで数として増えているということです。

ーー従来株よりも変異ウイルスの方がみんな感染しやすくなっているから、それと共に大人に比較して守られている子どもの感染者数も増えたということですね。

主に子どもたちが地域で感染を広げているというわけではありません。地域に感染を拡大させているのはやはり20歳以上の大人です。しかし、当初は20歳代が多かったのですが徐々に年代が上がってきている傾向も見えています。

「学校」を一括りにしてはいけない

注意してほしいのは、「学校」と一言で表されていることがありますが、新型コロナウイルス対策を考える時は、「小中学校」「高校」「大学など高等教育」を分けてほしいということです。

「学校」という時に、どの学校を指しているのか、明確に分けて語ってもらわないと危険です。

ーー「小中学校」「高校」「大学」で具体的にはどう対策を使い分けるべきなのですか?

まず、感染者の割合で考えると、20代になると急に増えてきます。

感染する可能性は20代以降は年をとってもあまり変わらないと思われますが、20代が一番色々な人と接点を持って、活動範囲が広い。また、軽症の人も多く、それをはねのけるだけの体力もある。

だから年代としては多いのだろうと推察しています。ただ、この1年をみると時期によっては必ずしもそうではない時もありました。

大人になる一歩手前の「高校生」となると、感染者が増える途中の世代です。高校1年生と高校3年生でも少し違うと思います。まだそこまで分析はできていません。

ーーそれは高校生が活動範囲が広くなるからですか? それとも体が大人に近づいているからですか?

友達同士の接点を考えると、高校生より小中学生の方が密度は高いでしょう。しかし、高校生ぐらいから体質的に大人に近くなり感染する傾向が出てくる。かつ、行動範囲も広くなります。

一方で「小中学生」は体質的、免疫の仕組みとしてどうやら守られているようです。不思議な感染症です。

学校閉鎖のクレームはむしろ地域の大人から来る

ーー休校すべきかどうかは、感染者が増える度に話題になりますね。

昨年、安倍首相によって全国一斉休校が要請されましたから、あれが必要なのではないかという人がおられるようです。

以前もインフルエンザが流行していた時に言われていたことですが、流行した際、市役所などに「なぜこの状態で学級閉鎖をしないのか」というクレームは珍しくなかったようです。

でも、学級閉鎖になって「なぜ学級閉鎖をしたのか?」と怒るクレームは少ない。そうした気持ちが反映されているのでしょうかね。

地域の特に高齢の方は、「子どもたちが公園で遊んでいるから地域で感染が広がるのではないか」と心配しているという話がたくさんあります。私もよく聞いています。

ーーどう対応するのが正解でしょうね。

そうした電話があれば「まずは大人の私たちから感染を減らすことが大事なんですよ」と教えてあげるといいと思います。

ーー子どもは大人から感染することが多いわけですか?

大人同士が地域で回しているイメージです。もちろん多くの大人は気をつけていますが、それでも感染します。だれも好んで感染しているわけではないです。

今、地域の感染を拡大させているのは20〜50代です。この人たちはこれまで感染しても軽症だったのですが、変異ウイルスの拡大で、40代、50代でも重症化がこれまで以上に報告されています。

こうした年齢でもまずは自分を守るという意識が大事です。感染対策の主体は自分たちであることをもう一度認識しておきたいです。

学校ではどんな感染対策をすべき?

ーー学校で授業を受ける場合は、どのような感染対策をすべきですか?

これからの季節、暑くなってくるので大変ですが、特に話す場面ではマスクをして、手洗いするなど基本的な感染対策を徹底してください。そして、喉の痛み、咳、発熱、下痢などの体調不良があれば必ず休むようにしてください。

そして、休んだお子さんに対して、「コロナじゃないの?」とか、そうした差別的なことを言うことがないようにしてください。そういうことを言うと、結局損をするのは自分たちですから。

地域で感染を抑えるためには、大人の接触機会を減らすことがなによりも重要になります。それでも地域で感染拡大が止まらない時、学校も含めて休みにすることも必要となるかもしれません。いずれにしても、大人が率先して対策を取らなければなりません。

ーー子どもの場合は、感染対策も大事ですが、教育機会を守ることや、子どもたちのコミュニティーでの育ちも大事ですね。

それはそうだと思います。オンライン授業は大人ならできると思いますが、小学生は難しいですよね。

もう一つ大事なのは、小中学生は守られているけれど、先生たちは大人なので感染から守られていないということです。

先生たちを守ることは大事です。授業参観や体育祭などで保護者は先生に感染させないように気をつけてもらい、先生同士も気をつけた方がいい。

本当は最前線で働いている人として、予防接種も優先接種としてほしいです。アメリカやイギリスで教員は優先接種しています。海外では業務中の感染かどうかはわかりませんが教員が相当数亡くなっています。

子どもの心身の影響、どう対処すべき?

ーー国立成育医療研究センターが子どもや保護者に対して定期的に行なっているコロナの影響を見るアンケートでは、一定割合の子どもにうつ症状が見られているという結果が出ています。

子どもたちは影響を受けやすいと思います。100年に1回の感染症流行の中で、自分たちの身の回りで起きていることをみんなで話し合うことが大事だと思います。

大人もそうですが、新型コロナの流行で自分がどう感じているかあまり話していないように思います。自分の身の回りに起きている変化についてもっと語っていいと思います。

東日本大震災10年の時に感じましたが、それぞれが負った深い傷はすぐ口に出せるわけではありません。ある程度経って初めて言えることもあると思います。

そうだとしても、今なぜこんなことが起きて、こんなに生活が変化しているのだろうねということを、もっと言葉にした方がいい。みんな我慢して、現実を慎ましく受け止めている人が多い気がしますね。

ただ、話す時も、できるだけだれかを責めるのではなく、どうしたら良い社会になるかというポジティブな気持ちは忘れないでほしいです。子供たちが将来への夢や国や社会への期待を失わないようにしたいですね。

ーー子どもは特にまだ自分の感情や気持ちを言語化するのがなかなか難しいですね。吐き出せるように大人が配慮してあげるべきでしょうか?

それはそうだと思います。皆さん、どうしているのでしょうね。

ーー家庭では子どもに対してどのようなことに気をつけてあげたらいいでしょう。

親御さんは学校で何が起きているか、子どもの話を聞いてあげてほしいです。部活がなぜできなくなるのか、なぜ修学旅行などがキャンセルになるのか、子どもたちは身の回りの変化に納得できていないと思います。

社会の中でも何が起きているか、大人は子どもに話してあげてもいい。

家庭の中ではお互いに声をかけあって、体調の確認をしてください。症状があれば距離をあけるようにすることが大事です。高齢者が同居している場合には特にお互いに気をつけていただければと思います。

まずは、大人たちの間でしっかりと感染対策をしつつ、子供たちの学びの機会を守ってあげたいです。子供たちは私たちの宝です。子供たちへの影響は引き続きしっかりと監視しますし、悪影響があればすぐに皆さんにお伝えし、迅速に対策を打ちます。

ーーゴールデンウィークはお子さんはどう過ごしたらいいでしょう。

昨年の一斉休校の時は、全国一斉だったこともあって、無料の本の公開とか無料のコンテンツと公開がありましたね。今回はあまりそんな動きはないです。休みの間は外に出て、家族などの単位で思い切り遊んでください。

ワクチン接種が進むと、少しはまた見えてくる世界は変わってくることを期待しています。

【和田耕治(わだ・こうじ)】国際医療福祉大学国際医療協力部長、医学部公衆衛生学教授

2000年、産業医科大学卒業。2012年、北里大学医学部公衆衛生学准教授、2013年、国立国際医療研究センター国際医療協力局医師、2017年、JICAチョーライ病院向け管理運営能力強化プロジェクトチーフアドバイザーを経て、2018年より現職。専門は、公衆衛生、産業保健、健康危機管理、感染症、疫学。
『企業のための新型コロナウイルス対策マニュアル』(東洋経済新報社)を6月11日に出版。

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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