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新型コロナワクチンって痛くないの? 予防接種に詳しい医師二人に聞いた8つの疑問

「筋肉注射」という方法でうつ新型コロナウイルスのワクチン。それって痛いの? どうやってうつの? 効果は? 子どもにはうてるの? 気になる8つの疑問を予防接種に詳しい小児科医二人に聞きました。

日本でも接種が始まった新型コロナウイルスのワクチン。「筋肉注射(筋肉内接種)」でうつ注射だとご存じでしたか?

日本の予防接種は「皮下注射」でうつことが多く、筋肉注射に慣れていない医師が多いと言います。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

小児科医として筋肉注射を多くうってきた細部千晴さん

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

小児感染症医として、新型コロナの小児患者を診療し、ワクチンの安全性評価にも関わってきた紙谷聡さん

「筋肉注射は痛いの?」「子どもにはうてないの?」などと、気になる疑問がたくさんあります。

ワクチンをうち慣れている細部小児科クリニック院長の細部千晴さん、アメリカのエモリー大学小児感染症科で子どものコロナ患者を診る傍ら、ワクチンの安全性評価にも関わっている紙谷聡さんに気になる8つのポイントを聞きました。

1.「筋肉注射」ってどんなうち方?

まず「筋肉注射」とはそもそもどのようにうつ注射なのでしょう。

新型コロナワクチンではありませんが、細部さんがHPVワクチンを筋肉注射でうつ動画を見てみましょう。接種を受けているのは細部さんの義理の娘さんです。

「うつ場所は上腕三角筋という二の腕の上の方にある筋肉の真ん中あたり。肩と腕の境目から指を横にして3本分ぐらい下の場所とされています」

日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会 / Via jpeds.or.jp

上腕三角筋の真ん中にうつことが推奨されている

「そこに皮膚に対して垂直、90度の角度で筋肉に達するぐらいまで刺します。最短距離で筋肉に針先を届かせるためです」

一方、皮下注射は皮膚のすぐ下の脂肪組織にうつので、針先が浅いところにとどまるよう、皮膚の表面に対して30〜45度とかなり角度を狭める形でうちます。

日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会 / Via jpeds.or.jp

筋肉注射と皮下注射の違い

「日本では欧米人よりも女性や高齢者は華奢な人が多いので、新型コロナワクチンで指定されている25ミリ(2.5センチ)の針を刺すと、骨まで達してしまうのではないかと心配されています」

「ですからうつ時は三角筋の部分を触って、その人の脂肪がどれぐらいの厚みなのか確認しながらうつ深さを決めます。医療者の慣れや勘に左右されるかもしれません。もし骨に達しても少し針を引いてから内筒を押せば問題はありません」

「薬液は早く注入し過ぎても組織が壊れてしまうので、程々にゆっくりうちます。それでも新型コロナワクチンの薬液は0.3ミリリットルと少ないですから時間もかかりません。うち終わっても揉まないでください」

YouTubeでこの動画を見る

日本プライマリ・ケア連合学会 ワクチンチーム監修 / Via youtube.com

『新型コロナワクチン 筋肉注射の方法とコツ』日本プライマリ・ケア連合学会 ワクチンチーム監修

2.どんなワクチンで筋肉注射をするの?

日本では新型コロナワクチン以外にどのようなワクチンが筋肉注射でうたれているのでしょうか?

「日本ではHPVワクチンや髄膜炎球菌ワクチン、狂犬病ワクチン以外はほとんど全て皮下注射でうっています」と細部さんは説明します。

日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会 / Via jpeds.or.jp

筋肉注射で必ずうつように言われているのは新型コロナ以外に、HPVワクチン、髄膜炎菌ワクチン、狂犬病ワクチン。ここに挙げられているもの以外の多くは、経口のロタウイルスワクチンや皮膚にはんこのようにうつBCG以外はほとんど皮下注射でうたれている

アメリカで予防接種に関わっている紙谷さんは、「海外では、基本的には生きた病原体が入った生ワクチンが皮下注射になっていて、(病原体を殺して感染性を失わせた)不活化ワクチンはほとんどが筋肉注射になっています」と話します。

なぜ種類によってうち方を変えるのでしょうか。

「生ワクチンは病原体が生きているので免疫を活性化する作用が強いのですが、不活化ワクチンは生ワクチンに比べて弱い。だから不活化ワクチンにはワクチンの効果を高めるアジュバント (補助剤)という成分を入れることが多いです。ただアジュバントによる刺激により、ワクチンをうった場所に強い反応が出やすくなります」

そして、皮下注射の時に薬液が入る皮下の脂肪は血流が少なく、成分がそこに留まりやすい特徴があると言います。

「アジュバントの入ったワクチンを皮下に入れると、痛みや腫れが出やすくなります。だから深めに刺して血流が豊富な筋肉に入れることがCDCでも推奨されています。成分をどんどん循環させて、免疫細胞に見つけてもらうことで反応が進む一方、筋肉には知覚神経も少ないのでうった場所の痛みや腫れは少なくなると言われています」

「mRNAワクチン」という新しい技術を使った新型コロナウイルスのワクチンはアジュバントは入っていません。それでも筋肉注射でうつのはなぜなのでしょう。

「mRNAのワクチンは不安定ですぐ壊れてしまうので、皮下の脂肪内に長く留まると抗体を作らないうちにワクチンが分解されてなくなってしまう恐れがあります。筋肉内には血流が多く免疫細胞もより多く存在しています」

mRNAワクチンは、タンパク質の設計図を筋肉の細胞に取り込ませて、筋肉の細胞のタンパク質工場を使って新型コロナ特有のスパイクタンパク質というものを作ります。それを体の中にいる免疫細胞が見つけて、抵抗する反応が起きるという仕組みです。

「そういう作用が起きやすいのが筋肉内です。皮下にある脂肪は血の流れが筋肉ほど多くないので、そういう反応が起きにくいのです。だから新型コロナワクチンは筋肉注射でということになっています」

実は効果の面だけ考えると、生ワクチンも筋肉注射でという議論も起きていると言います。

「生ワクチンは、アジュバントを使わないので局所の反応も少なく、脂肪で留まってもそこで生きて増えることができます。皮下注射でも効果が減らないので、慣例通り皮下注射ということになっています」

「ただ、最近、生ワクチンも筋肉注射でいいのではないかと比較する研究が行われ、効き目も変わらないし、局所の反応も同じぐらいという結果が出ています。まだ研究は始まったばかりですが、今後、生ワクチンにおいても筋肉注射が選択肢の一つになっていく可能性もあります」

このように世界では、多くの予防接種が筋肉注射に移行する流れがある中、日本は今も皮下注射が主流です。

細部さんは、「日本のお医者さんは筋肉注射に慣れていない人が多いです。でも効果が高く世界で標準になっているのは筋肉注射なので、私たちはワクチンのセミナーでも、『限りなく筋肉内接種に近い皮下接種で』と、45度で深めにうつように伝えています」

3.筋肉注射は痛いの? 理論的には痛みは少ないが......

前章でも触れましたが、「筋肉注射は痛い」という噂がずっとあります。HPVワクチンも「筋肉注射だから痛い」という声がよく聞かれました。実際はどうなのでしょう?

細部さんは逆に筋肉注射の方が痛みは少ないと説明します。

「筋肉内は痛み刺激を感じる知覚神経は少ないので、皮膚を針で突き刺した時のチクッとした痛みしかありません。最近では先端がすごくキレのいい針ばかり使われているので、皮膚をプツっと刺す時の痛みも感じないほどになっています」

「むしろ知覚神経は皮膚の近くに集まっており、皮下注射の方が腫れや痛みを起こしやすいとされています。わかりやすいのは皮膚の表面知覚に注射するツベルクリン反応を見る注射ですね。すごく痛いです」

「ただ、痛みの感覚には個人差があります。『垂直に深いところにうつ』というイメージで心理的に強いストレスを感じる人もいますので、『筋肉注射の方が痛くないよ』とは断言できないのですね」

紙谷さんも筋肉内の方が痛みを感じる知覚神経が少なく鈍痛になり、「皮膚に近ければ近いほど痛みはつねったように鋭さとなる」と説明する。「筋肉注射が痛い」と考える人は、痛みの種類を混同しているのではないかと指摘します。

「痛みの出方には、注射を刺して液体を入れることによる痛みと、ワクチンの成分が作用することで出てくる痛みと2種類あります。HPVワクチンもアジュバントを使っているので、その成分の刺激で痛みが強くなるのですが、それが『筋肉注射だから痛い』と誤解を受けているのだと思います」

「結局、痛みの強さは入れる成分や量にも左右されるのです。ペニシリンという抗菌薬をお尻の筋肉に筋肉注射すると結構痛いです。いわゆる中性ではない液体を大量に入れると痛い。ただワクチンに関しては体液に近いpHで、入れる量も0.3から0.5mlという少ない量です」

「新型コロナワクチンは薬液の成分で痛いというよりも、免疫の反応が起こり出して、その反応で痛くなることが多いと思います。知覚神経を刺激する鋭いつねったような痛みというよりは、鈍痛になるのはそのためです」

まとめると、「筋肉注射は痛い」という噂には、主に3つの要素が絡んでいると紙谷さんは考えます。

  1. 抗菌薬など他の薬剤で痛かった経験
  2. アジュバントという成分の刺激による痛みを筋肉注射の痛みと勘違い
  3. 血液の逆流を確認する動作で痛くなる

紙谷さんは既に12月と1月にこのワクチンをうちました。

「うったらあれ?と拍子抜けすると思いますよ。これで終わり?という感じです。僕はうった数時間後に少し鈍痛とだるさがありましたが、翌日にはほとんど消えていました。ただ、だるさなどは強く出ている人もいるようですね」

「こうした痛みなどの局所反応や熱などの全身反応の頻度は、若い人に比べると高齢者の方が少ないことがわかっています。抗体はどちらもよくつくので、若い方に比べると高齢者はその点で得ですね」

4.血液の逆流を確認しなくていいの?

厚労省提供

国内で初めて新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける国立病院機構東京医療センターの新木一弘院長(左)=2月17日、東京都目黒区(代表撮影)

2月17日に日本で初めて新型コロナワクチンの接種が始まった時、第1号の注射をうつ様子に、SNS上では多くの医師から「角度が直角じゃない」などの指摘が相次ぎました。

もう一つ多くの医師が指摘していたのが、「注射器の内筒(中の筒)をいったん引かなくてもいいのに」ということです。確かに公開された動画では、針を皮膚に刺した後、1回注射器の内筒を少し引くような仕草が見られました。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

新型コロナワクチンの一つの瓶から6回分取れるシリンジ。針の長さは25ミリ

細部さんは日本では皮下注射で多くやられている動作だと指摘します。

「針の先が血管に入るのを防ぐため、一度注射器の内筒を引いて血液が逆流しないか目で確認します。筋肉内には大きな血管はないので、筋肉内接種では逆流を確認する必要はないのです」

「日本医師会のオンライン説明会では、『血管に入っていないことを確認し、注入する』と言っていたそうです。だから、みんな少し混乱しています。でも小児科学会も筋肉注射で逆流を確認する必要はないと言っています」

「逆に注射器の内筒を引くと陰圧がかかり、痛みは強くなります。日本の医師たちはこれまでのやり方に慣れ親しんでいるので、ついやってしまうのですね。一般の人の接種が始まる前に、勉強会などで事前に打ち方を周知して頂けると良いですね」

紙谷さんは、「海外ではワクチンにおいては皮下注射でもやらなくてよいとされている。CDCやWHOでもワクチンでの逆血の確認は推奨していません」と話します。

「ワクチンではなくて治療薬などの場合は逆血の確認が必要であることがありますので、それぞれの投与方法の推奨に従う必要があります。」

「ワクチンは薬液の量も少ないので問題ないですし、筋肉注射はそもそも太い血管がない場所にうちます。逆流を確認すると痛みが強くなるデメリットも報告されています

5,アナフィラキシーが起きても大丈夫?

痛みや腫れ、頭痛など、よく起きる副反応の他に、まれな副反応として「アナフィラキシー(重いアレルギー反応)」があります。アメリカの副反応報告システムでは新型コロナワクチンで100万人に5人程度起きたと報告されていますが、この頻度がどれほどのものなのかいまいちよくわかりません。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

子どもがうてるようになってから接種担当医として手をあげようか考えているという細部さん

「私は医師になって33年になりますが、予防接種でのアナフィラキシーは研修医の時に遭ったことがあるぐらいです。開業してからは1人もありません。食物アレルギーでのアナフィラキシーはありますが、血圧低下や意識障害が出るほど重症な全身性のアナフィラキシーショックはほぼありません」

もちろん、万が一の時の準備はいつも整えていると言います。アナフィラキシーは接種後15分〜30分以内に起きることがほとんどなので、必ずその時間はその場で様子を見てもらいます。

「予防接種をうつ時にはスタッフを必ず付き添わせます。何かあった時にボスミンという注射をうったり、酸素吸入をしたり、救急車を呼んだりできるように準備しておくことは、インフルエンザワクチンの時も必ずやることです」

「何かあった時に救命できる医師が接種担当医になっていますので、安心して受けてください。新型コロナのワクチンもこれから手あげ方式で接種担当医が任命されます。町医者でもインフルエンザワクチンの経験があるなら、万が一の対応は必ずできます」

6.子どもはうてないの?

今回、新型コロナワクチンの治験は、16歳未満が対象外だったため、安全性も有効性も16歳以上でしか確認されていません。日本での接種もこの治験の結果に基づいて、16歳未満は対象外となっています。

子どもはいつまでもうてないのでしょうか?

紙谷さんは「ファイザーもモデルナも今、12歳までの子どもの治験を始めています。この年齢層で安全性と効果が認められたら、次は9歳から12歳までやるとか、徐々に年齢を下げて検証していきます。最終的には乳児まで下げていく予定です。今年中には結果がでてほしいですね」と話します。

「ヤンセンファーマは新生児まで含む治験をやる予定だと発表しています。我々の大学のグループは小児科医として昨年から『大人で安全が確認され次第、並行して早めに子どもの治験にとりかかるべきだ』と声をあげていたのですが、『子どもは後でよい』という声が強かった。ようやく動き出しました」

子どもは新型コロナで感染リスクも重症化リスクも大人よりも低いことがわかっています。だから急がなくていいという判断が働いたのでしょうか?

「そういう判断だったのでしょうけれど、最前線で子どものコロナ患者を診ている者からしたら、アメリカほど感染者の母数が増えると重症な子どもも出てくると訴えたい。特に抗がん剤治療中など免疫が下がっているお子さんは重症化しやすいです」

「また、『多系統炎症性症候群』といって子どもがコロナにかかった1ヶ月後ぐらいに川崎病のような症状が出てくることがあります。日本での報告は幸いまだ少ないですが、これがすごく厄介で、今アメリカではとても多いです。全米で現在2600人以上出て、うちの病院だけでも100人以診ています。集中治療が必要になる重症のケースが多いです」

「確かに大人に比べたら少ないですが、既にアメリカでは例年のインフルエンザよりも多くの子どもがコロナで亡くなりました。コロナで学校に行けないとか、遊びに行けないという心身への影響も考えると、『大人より軽症だから子どもへのワクチンは後でいい』という考えではなく、子ども達もワクチンでコロナからしっかりと守る必要があると思います」

厚生労働省 / Via mhlw.go.jp

新型コロナウイルスワクチンの予診票。『被接種者は6歳未満である』というチェック項目がある

細部さんも小児科医として子どもへの接種が始まるのを待っているが、厚労省が公表した予診票を見て子どもの接種も視野に入っているのだろうと感じている。

「『被接種者は6歳未満である』というチェック項目があります。これは将来、子ども達が接種対象になることを想定して作ったのではないかと思います」

「子どものリスクの低さを考えると、対象にすべきかどうかは議論があるでしょう。それでも、子どもが感染して無症状で同居の高齢者にうつすリスクはずっと指摘されています」

「事情があってうてない人にも予防効果が広がる集団免疫を作るためにも、治験の結果を見ながら子どもにも接種を広げていかなければならないと思います。インフルエンザと同時接種できれば理想的ですが、今年の秋に間に合うかどうかはわからないですね」

7.不安で迷っている場合はどうしたらいい?

日本でも医療者4万人で先行接種が始まり、うち2万人が健康観察に協力しています。このデータの解析もそのうち出てくるでしょう。

4月以降に高齢者から一般の接種が始まりますが、迷っている人はどうしたらいいでしょう? 予防接種の不安に答えてきた細部さんはこう話します。

「お化けって怖いですよね。でもその正体がシーツを被った人なんだとわかれば怖くなくなりますね。だから相手がどんなものなのか正確に知ることが大事です。自分で調べられない人はかかりつけ医に聞くのが一番いいのです」

「予防接種を啓発する『VPDを知って、子どもを守ろうの会』が昨年5月に実施したアンケートでも、予防接種の情報源として最も信頼がおけるのはかかっているお医者さんという結果が出ていました。自分の信頼できる先生に相談してみてください」

「その先生がワクチン反対の先生なら仕方ないです。本当はメディアに頑張ってもらいたいですね。厚労省政府などの公的な情報、信頼できる医師たちが新型コロナについて発信している『こびナビ』なども参考にしてみてください」

うつことを決めたら、針を刺すところを見ない、というのも不安を和らげるためのアドバイスです。

「針入部(接種する場所)を見ないというも大切です。よく子供の目を付き添いの母親の手で隠してあげているのはいい方法だと思ってます。大人も緊張しないためには反対側を見てうってもらうと良いと思っています」

【参考】日本プライマリ・ケア連合学会の新型コロナワクチンの教育動画

YouTubeでこの動画を見る

日本プライマリ・ケア連合学会 / Via youtube.com

8.日本でも出た死亡例。大丈夫?

日本でも3月2日に60代の女性が接種後に死亡したことが厚労省によって発表されました。2月26日に接種し、3日後の3月1日に死亡した例で、くも膜下出血が原因ではないかとされています。ワクチンとの因果関係は不明です。

紙谷さんはCDCとも連携しながら、新型コロナワクチンの接種が始まった後の安全性の評価にも関わっています。これについてはどのように評価できるでしょうか?

Naoko Iwanaga / BuzzzFeed

「個別のの死亡例や接種後の症状を見て、『ワクチンは危険』と考えるのは早計です」と話す紙谷さん

「僕らが安全性の評価をする時には、自然感染の時にどうなるかということを考えることも大事です。血管の異常でいえば、血の塊がつまる肺塞栓や脳梗塞などは自然感染でも起きており、CDCの予防接種安全性監視システムでは、こうした血管の異常がワクチン接種後にも起きないかどうかを優先的に調べることにしています」

それを踏まえての紙谷さんの答えはこうです。

「因果関係は調査中とのことですが、これまでの米国の調査を踏まえるとワクチンが原因とは考えづらいです」

「くも膜下出血の原因の多くは、長い年月をかけて血管のこぶができてある日それが破裂することです。そのメカニズム的に見ても考えづらいかと思います」

「ただ個別の例をいくら調べても、因果関係がわからないこともあります。ワクチンとの因果関係を調べるには、全体の数を見て、ワクチンをうっていない人と比べてうった人でその症状が増えているかを見る方法が有効です」

「CDCの監視システムでは、くも膜下出血も含むこうした脳血管系の異常がワクチンをうっていない人よりうった人の方が多いかどうかを調べていますが、今のところその兆候はありません」

「日本では国として因果関係を体系的に調べるシステムを持っていないので心配しています。こうした質の高いデータ解析も海外のものに頼らなくてはいけないのが残念でなりません」

その意味で、1例1例の死亡を大きく捉え、不安を煽る報道は意味がないと言います。

「ワクチンは不老不死の薬ではないので、接種後にワクチンとは関係のない持病で亡くなることもあるし、病気になることもあります。それをどういう風に一般の方に伝えるべきか、報道のプロの方もぜひ考慮していただきたい」

報告があるのは、因果関係があろうがなかろうが、接種後に起こったあらゆる望ましくない症状全てです。これを「有害事象」と言います。稀な副反応でも見逃さないようにするために幅広く症状を拾い集め、特定の症状がワクチンをうっていない人よりもうった人で明らかに多く出ているという因果関係がわかった時点で「副反応」と認定されます。

「1人の症状で『ああワクチンは怖い』と考えてしまうのは早計です。一息深呼吸して、『これは国がきちんと調べていく最初の段階であって、ワクチンのせいで起こったというには程遠い段階だ』と理解していただけたらとおもいます」

【細部千晴(ほそべ・ちはる)】細部小児科クリニック院長

1987年、藤田学園保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業。名古屋市立大学病院・NICU(新生児集中治療室)、日本医科大学病院などを経て、2000年、東京都文京区で開業、細部小児科クリニック院長。ワクチンで防げる病気(VPD)を啓発する「ワクチンパレード」、HPVワクチンをうち逃した女子にチャンスを与えるための医療者有志の活動「HPV Vaccine for Me」など、ワクチンの大切さを伝える活動を熱心に続けている。

【紙谷聡(かみだに・さとし)】日本・米国小児科専門医。

富山大学医学部卒。立川相互病院、国立成育医療研究センターなどを経て渡米。現在、エモリー大学小児感染症科に所属し小児感染症診療に携わる傍ら、米国立アレルギー感染症研究所が主導するワクチン治療評価部門共同研究者として新型コロナウイルスワクチンなどの臨床試験や安全性評価に従事。さらに米国疾病予防管理センター(CDC)とも連携して認可後のワクチンの安全性評価も行っている。※個人としての発言であり組織を代表するものではありません。

紙谷さんがヤフー個人で書いている新型コロナウイルスに関する連載はこちら。


Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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