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コロナ流行で恋人と会えない。バイト以外は家で引きこもる。 社会から厳しい目で見られ続けている大学生のリアル

感染しても軽症になることが多いため、知らないうちに感染を広げる存在として社会から厳しい目で見られる若者たち。しかし、当事者は大きな不安を抱き、感染対策も気をつけています。首都圏に住む大学生にコロナ時代の日常を聞きました。

「若いアクティブな世代が活動してしまい、感染を媒介してしまう」

「若い世代にも感染が広がっているから、今は外出を控えて」

「若者は後遺症も怖いですよ」

新型コロナウイルスが流行し始めてから1年半以上、そんな呼びかけを何度も耳にしたことがあるだろう。私も書いてきた。

しかし当事者である若者の多くは、学校、友人や恋人との外出や食事を控え、かなり我慢を続けている。

緊急事態宣言が出されている首都圏に住む18歳の大学生、ともきさん(仮名)もそうだ。高校2年の終わりから受験期、そして大学1年生の今まで、ほとんどコロナの影響を受けて過ごしてきた。

夏休みに入った今は、アルバイト以外はほとんど家の中で誰とも会わずに過ごし、「親から病んでいると言われた」と言う。

10代の目に新型コロナ以降の世界はどう映るのか。若者のリアルを聞いた。

※インタビューは8月16日に行い、その時の情報に基づいている。

先輩の卒業式に出られないと知った時から自分のコロナ禍が始まった

ともきさんが新型コロナの影響を感じ始めたのは、2020年の2月、高校2年生の時、1つ上の先輩の卒業式に出られないと知った時だ。

「正直、先輩の式だから出なくてラッキーだとも思ったけれど、1個上の先輩は合宿に一緒に行ったり部活でも関わりが深いから、式の後に話したかった。気づいたらいなくなってたんです。別れたと言う実感がなく、何も感じることができなかった」

ともきさんが住む自治体でもまだ感染者は出ていなかった頃だ。

「コロナは遠い話だったのが、急に近くなったと感じました」

その直後、前の安倍晋三首相が小中高の一斉休校を要請した。

「その時も学年末のテストがなくなってラッキーぐらいな感じ。流行ってもインフルエンザぐらいで、そのうち終わるだろうと思ってました」

高校3年生となり、クラス替えもあったが、登校は始業式1日だけで5月まで休校になった。6月からはクラス番号の奇数、偶数が交替で授業に出た。7月にようやく通常の通学が復活した。

「塾もあるから勉強が遅れることはないけれど、仲のいい人と顔を見ながらコミュニケーションできないストレスはたまりました。人は目や表情を観察して話題を選ぶ。それまで気づかなかったけど、社会の中で生きる上で大事なことだったんだとわかった気がします」

友達とLINEのグループ通話で話しても、小さな画面越しの会話では心の距離感が埋め切れないと感じた。

ともきさんの趣味はアニメ鑑賞だ。毎年夏と冬に有明の東京ビッグサイトで開かれるコミケで、同人誌やグッズを買うのが楽しみだった。それも2020年から開かれなくなった。

「オンラインで同人誌を販売し合うイベントはあったけれど、つまらない。やっぱり現地に行って、描いた人本人に会って、その人から渡してもらうのが大事だし、仲間と情報交換するのも楽しい。ああいう場がなくなったのは寂しいです」

「若者が感染を広げる」という圧力の中で 友達と黙って電車旅

最初の緊急事態宣言が明けてからも、行動制限を緩めるきっかけはつかめなかった。

「過度に怖がっていたかもしれませんが、遊んで感染して他の誰かに感染させるのが一番怖かった。3世帯で暮らしている友達もいたから、下手すると自分が原因でその子の祖父母に感染を広げて間接的に殺してしまう可能性もある。それだけは後悔すると思いました」

無症状や軽症の若者が行動することで感染を広げているーー。こんな言い方で感染拡大の原因のような目を世間から向けられていることに強い圧力を感じていた。

「感染したら、何を言われるかわからないのが怖い。無症状の若者が知らない間に広げてしまうということは間違っていないのかもしれないけれど、若者の責任をそこまで強調する必要があるのかな、とも思いました」

受験生の頃は周りの友達もほとんど遊んでいなかったと感じている。

「風邪やインフルエンザですら感染するのは嫌だから、塾以外はほとんど外出もしていません。でもそれはコロナ前の受験生も同じなのでは? 受験会場も『マスクが必須』というところしか変わったことはありませんでした」

学校と塾以外はほとんど外出できない日々が続く中、受験期の平日昼間に、一度友達と電車で首都圏をぐるぐる回る遊びをした。ほとんど喋らず、空いた車内で離れて座る。

「午前中に学校が終わり、昼から千葉県、茨城、栃木、埼玉、東京、神奈川と電車で回りました。単純にバカなことをしたかった」

受験が終わった3月には、高校の下校時間に青春18切符を使って、友達7人で上越線の群馬県の土合駅や新潟県の土樽駅に降りるだけの旅をした。

「土合は上りと下りの高低差が400段以上ある駅なんですが、まず4人がそこで降りて、あとの3人は1駅先の土樽で降りる。下校で関東を出るのって面白いでしょう? 滞在時間9分で、すぐにまた上りに乗って4人を土合で拾って一緒に終電ギリギリで帰ってきました」

友達と一緒に外食をしたら危ないことぐらい、散々言われ続けてわかっている。駅弁をそれぞれ買って、離れた席に座り、自分が食べたい時にバラバラで食べた。それでも楽しかった。

「受験が終わったから、これぐらいは許してくれと思いました。でも逆に遊びに行ったのはそれぐらいです。何も考えずに行ったわけではなくて、平日で人のいない時間を見計らってです。さすがにこれぐらいの息抜きをしないと壊れると思いました」

大学に入ってからは一度、ディズニーリゾートラインを1日中ぐるぐる回る電車旅をした。

「冷房が効いているし、椅子はあるし、都心より人が少ない。友達は50周ぐらいした(笑)。ずっと我慢が続いていて、時々爆発しそうな何かがあったから、そんなバカバカしいことをやってガス抜きしないとヤバい。そう自分の行動を正当化していたところはあります」

大学は対面だが... サークルはオンライン バイトに制限も

志望大学に合格して、無事入学した。入学式に親は出席できず、式の様子はYouTubeで配信された。

サークルの説明会は分散して開かれ、写真サークルに入った。と言っても、毎月オンラインのミーティングがあるだけで、撮影会やプリントの講習が開かれたことはない。

ともきさんが通う大学は授業をほとんど対面で行っている。学食もアクリルパネルで仕切りが設けられて、ずっと開かれている。昼ごはんはほとんど一人で食べる。

「距離は取ってねと言われているけれど、コロナだから友達ができないということもない。大学内でクラスターが起きたこともないから、感染対策は今のところ成功しているのかなと思います」

大学に入ってから、家電量販店でレジ打ちのアルバイトも始めた。

「もちろん感染対策はしていて、お客さんとの間に透明なビニールが貼られていて、時々消毒はする。接客する側からすると、あのビニールのカバーはすごく安心感がある」

困ったのは、コロナ対策で店の閉店時間が早まって、バイト代が思うように稼げないことだ。

「時給1000円で週15時間入って4週間だから月6万円前後です。閉店時間が通常通りだったら、さらに1万2000円稼げるはずだから、大学生にとってはすごく大きい。バイクの運転免許の講習代とバイクの購入資金を貯めているけど、なかなか貯まらないです」

若者に世間が向ける厳しい視線とは関係なく、この1年半、コロナに対しては常に慎重に行動してきた。

「薬がないのがすごく怖い。バイト以外はほとんど家にいて、出かけるのはコンビニぐらい。電車にもほとんど乗らないです」

コロナ情報の収集 政府や専門家への疑問も

コロナ情報は主にTwitterとYouTubeのニュースで収集している。

「あとはAbemaとかYahoo!ニュース。Twitterは一番信憑性が薄いとみています」

最近、見てよかったなと思ったのは、8月6日にAbemaTVで放送された「ひろゆき×6人の医師〝コロナ最前線〟からの訴え...デルタ株の怖さとは?」だ。

「出演していた在宅医療のお医者さんは、『私たちの周りは高齢者もスタッフもほとんどワクチンをうっているから安心だ』と言っていました。あれを見て、ワクチンを一定数以上うつと効果があるのかなとは思えました」

ひろゆき氏の考えに全て賛同しているわけではないが、専門家にツッコミを入れてくれる伝え方を好ましく感じている。

「この番組は長いけど全部見ました。面白かった。ひろゆきさんは偉い人が適当なことを言うと、データで指摘する。芸能人は専門家の言うことをただ聞いているだけだけど、ひろゆきさんは日本のテレビに干されてもいい人だから、ああいう存在が遠慮なくツッコミを入れてくれると情報を受け取りやすくなる」

ワイドショーはほとんど見ない。

「たまに見るとしても真に受けないし、あくまでもバラエティー。情報源としては考えていない。あくまで楽しむためだけ。あれを情報収集の場としたら危ないのかなと思う」

菅義偉首相の会見は、流れてきたとたん消している。

「胡散臭いし、信用していない。どうせまた自粛のお願いだろうなと見る前からわかるし、その割に自分たちはオリンピックを自粛しないんだと不信感が強くある。国がそんな勝手な判断するなら、自分らも多少何かやってもいいよねという気持ちはあります」

もちろん感染対策を怠ったら、自分が損をすることはわかっている。

政府の分科会の尾身茂会長ら専門家の分析は信用しているが、発言がブレていると感じることもある。

「医療の専門家は医療に集中して判断して、経済のことを考慮した発言をしてほしくない。経済のことは経済の専門家や政府など別の人が考えればいい。医療と経済と両方の意見を聞いて、決めるのは政府。尾身さんは経済に配慮し過ぎて、時々ブレている感じがしてしまう」

「それに専門家が何を言っても、政府がそれを尊重して動いている気配が見えない。専門家がいるのにもったいないし、機能していないと思っています」

ワクチン接種 考えたメリットは行動制限が緩むこと

大学で「希望者はワクチンを接種できる」と知らせが来たのは6月の半ばぐらいだ。

7月1日に1回目、29日に2回目をうった。1回目は腕が痛いだけだったが、2回目は38.6度の熱が出た。キツかったが、風邪と違って食欲や元気はあり、副反応はいずれも2日でおさまった。

ワクチンは全く怖くなかった。

「ニュースで見るぐらいしか知識はないけれど、医学系の学部の院生がほぼ100%接種したと聞いて、医学の知識がある人がうっているならメリットが大きいのだろうなと思いました」

しかし、最大の決め手となったのは、ワクチンを接種した事実が、今後の行動に有利に働くと思ったことだ。

「ワクチンの安全性や効果は正直言うとどうでもよくて、接種したらレストランに入っていいですよとか、イベントに入れますよとなるメリットを考えました。その時に自分が行動制限されたくない。正直、ワクチンが効こうが効かなかろうが関係ない。うったという事実が欲しかった」

「早くワクチンパスポートを出してくれたら、うった甲斐があったと思うでしょう。仮にコミケが再開された時に、『接種した人だけしか入場できません』と言われたら後悔したくない。うっていた方が有利なのは間違いない。それだけです」

「重症化を防ぐとか、感染防止効果があるとか言われているけれど、それもきっとどこまで言っても個人差がある。でもイベントに参加できる、レストランに入れるかどうかは個人差がない。絶対的に利益が分かれます」

ワクチンを2回うって2週間が経ったからといって、感染対策は緩めていない。安心感も全くない。

「ワクチンは感染対策として絶対じゃない。特に医学に100%はない。うっても感染する人はいるし、デルタ株は感染力が強いのはわかっています。ワクチンは特効薬じゃなく、あくまで感染しづらくして、重症化しづらくするだけでしょう? 接種したからといって遊びに行くつもりはないし、夏休みはバイトだけで済ませます」

7月末に感染爆発し始めた頃から、友達の遊びの誘いも全て断っている。

「今はさすがに外出すべきじゃない。実際の感染者は報告されている数より多いはずですし、オリンピック開催でみんな緩んでしまったから、今は外出して感染する可能性が高くなっていると思います」

コロナ流行と交際期間がほぼ重なる彼女 会えない

夏休みに入ってからは、バイトに行く時以外はほとんど家で寝ている。

「だって夢の中の方が会いたい人と直接会えるし、めっちゃ騒げるし、マスクしなくていい。夢の中では自由だから」

家族の中でワクチンをうったのは大学でうった自分と、職域接種でうった父親だけだ。家族で会話するのも正直怖い。

自分の部屋に閉じこもって家族と顔も合わせようとしない自分を、母親は「ちょっと病んでるよ」とすごく心配している。

「ゲームすらやる気が起きない。起きている時間の8割はスマホでYouTubeとかを見て、いつの間にか寝落ちしています。親にも『それ、鬱だよ』と言われるし、鬱っぽくなっているなという自覚は自分でもあります」

コロナの流行が始まる直前の高校2年生生から付き合っている彼女とは、受験後に1回デートしてからはほとんど会えていない。

彼女はまだワクチンをうっていない。この6月に1回、電車の乗り換え駅で待ち合わせて20分だけ話した。

「今はそれだけしかできないから仕方ない。会いたい気持ちをコロナが冷まし、会わない生活に慣れてしまった気がします。付き合っている期間、ほとんどコロナが流行っていたから」

「毎晩LINE通話で顔を見ながら話はするけれど、会いたいし、直接顔を見て話をしたい。寝落ちするまでずっと喋るしかできない。切ないです」

彼女もワクチンをうち、この流行が収まったら、気をつけながら少し会えるようになるかもしれない。そんな小さな希望を持って毎日我慢する。

今の波が収まっても、感染対策は緩めない

長引く流行中に、周りで遊んでいる人、駅前の居酒屋で飲んでいる人も見かけるが、仕方ないと思っている。

「友達だったら『今はやめときな』ぐらい言うかもしれないけれど、その人もリスクと楽しみを天秤にかけてやっていることだから止めることはできない。日本はあくまで自粛要請であって、強制力のあるロックダウンはできません。その人たちの行動をどうするかは、飲食店の補償も含めて政府が考えるべきことです」

様々な情報をみている限り、将来もコロナはインフルエンザのように時々流行する感染症として残り続けるのかなと感じている。

「ゼロにはできないし、いつか自分もかかるのかなと思う。でもその時には特効薬ができていると願いたい」

「若い人に後遺症が出るという話も、怖いと思ったからといってその症状がなくなるわけじゃない。怖いと思うなら外出しなければいいし、ワクチンをうてばいい。みんな怖いと言うのに、遊びに行くし、ワクチンうたないのがよくわからないです」

ともきさんは、今の波が収まっても、感染対策は緩めないつもりだ。

「みんなそこで緩めるから、また流行するわけでしょう? 自分の我慢と薬の開発との勝負だと思う。またはワクチン接種が進んで集団免疫ができるまでの勝負。それまでは、コロナとうまく付き合って生きていくしかないと思っています」