• medicaljp badge
Updated on 2020年6月11日. Posted on 2020年6月4日

刻々と変わる新型コロナの課題 最前線から見える、今必要な支援とは?

新型コロナの拡大を防ぐために専門家有志が設立した基金の寄付が、国内のクラウドファンディングで過去最高の5億4000万円に到達しました。専門家や助成団体代表が、現在必要な支援を語り合うシンポジウムが開かれました。

新型コロナの感染拡大を食い止めようと医療や福祉の専門家有志が設立した「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」(発起人代表・小坂健・東北大学国際歯科保健学分野教授)。

この55日間に集まった金額が、国内のクラウドファンディング史上最高の5億4000万円(6月4日現在)に到達した。

第1波が収まったのも束の間、第2波の足音も聞こえ、流行が長期化する中、新型コロナの課題は刻々と変わりつつある。

現在、どんな支援が必要とされているのか、基金の運営者と助成団体とで考えるオンラインシンポジウム「新型コロナウイルス最前線、今必要な支援とは」が5月28日夜に開かれた。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

助成団体代表と今、必要な支援について語り合った

クラウドファンディング史上最高額に 26団体に助成

クラファンサイトREADYFOR代表取締役でモデレーターを務めた米良はるかさんは、開始してから55日間で基金に寄せられた寄付が国内史上最高額の5億3000万円(28日現在)に到達したことを報告。

新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金

この基金で大事にしているのは「スピードと透明性」だと語り、開始2週間で1期の助成として10団体に4600万円を渡すことができたという。

10団体がその資金で活動を始めたことで、100万枚のマスクや、5つのシェルターの設置、200世帯の子どもの支援などにつながった。

新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金

2期目の助成先も既に決まり、今度は16団体に約7300万円が贈られる。

5月26日段階で、全国から応募のあった団体が申請した491件の金額は26億円に上り、寄付は7月2日まで募っていく。

情報の届かないところからほころび

まず、基金を運営する専門家たちのセッションから始まった。

基金代表の小坂健さんは現状認識として、緊急事態宣言が解除されても決して安心してはいけない状況だと強調した。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

基金を運営する専門家たち。基金代表の小坂健さん(左上)、原田奈穂子さん(右上)、佐々木淳さん(左下)、米良はるかさん(右下)

「これからが逆に本番だと思っているところです。韓国でもクラスターが起き、優等生のシンガポールでも外国人労働者の中から大きなクラスターが起きました。日本でも北九州市などで経路不明な感染者が出ている。東京も感染者数が落ちきっているわけではない。そういうところで心配しています」

「一方で、経済を回していかないといけない。ウィズコロナ(コロナと共に生きる時代)は思ったより長く続いていく可能性があることを見据えて、自分自身が考えて、できる範囲の行動を取ることが必要なのでしょう」

「新しい生活様式」が広がり始めているが、それがなかなか実行できない脆弱な人たちから再流行のほころびが生まれると指摘した。

「対策を取っている限りでは再流行は起きない。そうできないところでほころび、情報が伝わらないグループから流行が起きてしまうのではないか。そこに、いかに情報や支援を届けるかも課題だと思っています」

一方で、コロナ対策には、プラスの要素もあると語った。

「この機会をチャンスと捉えて新しいビジネスを始める人もいるだろうし、学生さんはオンラインで勉強をやっていて以前よりも楽しいという人もいる。新しいウィズコロナの時代に、前向きな形で社会を変えるためにやっていく。オンライン会議が進んだり、チャンスとして前向きに考えることも大事かなと思います」

元に戻るのではなく、経験を踏まえてより良い社会を

主に高齢者の訪問診療を行っている医療法人悠翔会理事長の医師、佐々木淳さんは、新型コロナ医療の最前線は、重症者を診る急性期病院だけではなく、地域医療やハイリスクの高齢者などをケアする施設や弱った高齢者のいる自宅でもあると指摘した。

「急性期病院は最前線ではなく、最後の砦。最前線は地域であると考えて、地域で新型コロナの感染を予防できること、拡大を防止できること、自宅や地域でしっかりとケアする体制を作ることが必要です」

「第2波が来るまでの間に必要なところにマスクなどの必要な資材が届く環境を作ることが大事ですし、コロナのリスクと、社会から隔離されること、外に出ないこと、リハビリしないこと、ケアを受けないことのリスクを理解して、正しく恐れながら上手に付き合っていくことも大事で、啓発していかなければいけない」

宮崎大学医学部精神看護学領域教授の原田奈穂子さんは、社会的な弱者へのサポートに力を入れることの大事さを強調した。

「コロナは一つの災害なので、配慮する人を考えた方がいい。基金は、子どもや女性、外国人やLGBTQIと呼ばれる人へのサポートも行なっています。外国人に対しての情報発信など、今までと違う方向の支援も必要になるのではないか」

そして、「元の生活にいつになったら戻れるのだろうか」と不安を抱えている人に対して、こんな提案をした。

「私たちは元の生活に戻ることをあまり考えない方がいい。災害の時、よく『復旧』という言葉を使う。これは元に戻すということですが、元に戻すことが今の社会で本当にいいことなのでしょうか?」

「災害でビルド・バック・ベター(Build Back Better、良い復興)という言葉があります。元の状態に戻すのではなくて、今回の経験を踏まえて、より良い社会をどう作っていくか。そのビジョンを持つために、若い人のアイディアやテクノロジーで補完し合えるのかというようなことについても、基金が果たす役割はあるのではないかと考えます」

「ステイホーム」できない人に 個室シェルターの確保 

続く第2部では、助成を受けた団体の代表3人が、新型コロナの課題や活動について語り合った。

一般社団法人つくろい東京ファンド」の代表理事、稲葉剛さん、「一般社団法人SPSラボ若年認知症サポートセンターきずなや」代表理事の若野達也さん、「認定NPO法人フローレンス 」こども宅食事業部の山崎岳さんが話した。

住まいを失った人を支援する「つくろい東京ファンド」の稲葉さんは、緊急事態宣言が発令された時からメール相談を解説したところ、1ヶ月半で170件の相談があったことを報告した。

Naoko Iwanaga / buzzFeed

家がない人への支援を続けている「つくろい東京ファンド」の稲葉剛さん

「ほとんどの人が既に料金が払えないため携帯電話も止められていて、フリーwi-fiのあるところから連絡してきました。そこに私たちが駆けつけて、緊急の宿泊費を渡したり、公的支援につないでいる」と話した。

3月からは一時的に宿泊する個室シェルターの確保に取り組み、基金からの243万円の助成金を、アパート3室分の初期費用や家賃、家電、布団購入費などに充てた。20代の男女と40代の男性が入り、3ヶ月間の滞在をめどに生活を再建しているという。

今後、コロナの影響が長引く中で、さらなる個室シェルターの確保、シェルターから賃貸住宅への移行などの新たな課題に直面している。

「携帯電話がないと物件も借りられない。無料通話のアプリを開発中です」

「ステイホームできない方々が今後も増えかねない状況の中で、安心してそこで暮らせる個室シェルターを今後も整備していきたいと思っています」

コロナで若年性認知症の患者にも不安、物資不足

やはり助成を受けた団体の一つ、「一般社団法人SPSラボ若年認知症サポートセンターきずなや」代表理事の若野達也さんは、新型コロナの流行で、若年性認知症の患者も自粛生活の不安や面会制限の不安などの影響が出ていることを紹介した。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

認知症のある人の世帯や事業所への支援を行なっている「きずなや」の若野達也さん

若野さんらは助成を受けて、「凪の絆プロジェクト」という新しい支援策を立ち上げ、認知症の人がいる家族や小規模事業所に不足している物資を届け、オンラインでつながってストレス解消につながることを目指している。

若野さんは「物資どうですか?と聞いたところ、大きい事業所は定期的に支援があって大丈夫だったのですが、小さな事業所には情報も届いていませんでした」と現状を明かす。

この支援で、200事業所、100世帯にマスクなどの物資を届けてきたという。

コロナでさらに困窮するひとり親家庭を支援

「認定NPO法人フローレンス」こども宅食事業部サブマネジャーの山崎岳さんは、ひとり親家庭の支援に助成金を使っていることを報告した。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

新型コロナの流行で生活が困窮しているひとり親家庭に支援を行なっているフローレンスの山崎岳さん

具体的に行なっているのは、ひとり親家庭のニーズを調査し、必要な物品や食品、保育を提供することだ。

収入が減り、保育園や学校の休園・休校で、自宅で子どもをみてくれるサービスを探すのに困っている現状があることが調査で浮き彫りになった。

全国の901世帯に緊急食料支援を行なった他、企業から支援を受けた日用品を配送するなどもしている。

山崎さんはひとり親家庭へのコロナの影響についてこう説明する。

「もともとひとり親家庭の半数はコロナの前から貧困状態ということがありました。それがコロナによって54%の方が収入がなくなった、減っているという調査もあります。コロナでさらに困窮している状況になっています」

あぶり出された女性の貧困

助成を受けた団体は、いずれも行政のセーフティーネットからこぼれ落ちる人たちに、支援をしている民間団体だ。

稲葉さんは、「今、特別定額給付金が給付されていますが、住民票があることが前提なので、現在、路上にいる人やネットカフェにいる人は住民票がないことが多い。そのままでは受け取ることができない」とシェルターを提供し、受け取るための支援をしていると説明する。

新型コロナでさらに、これまでは見られなかった層が困窮しているケースも目立つという。ネットカフェを追い出された人の2割が女性で、特に若年女性が多いこともわかってきた。

「お話を聞くと、もともと実家でDVや虐待の問題があって、ネットカフェを避難場所として使っていた。キャバクラや性風俗店で働いている人が多い。女性の貧困は見えない貧困と言われますが、コロナによってあぶり出されてきたと言えます」

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

若年性認知症の患者も、普段の居場所がなくなり、生活リズムが乱れることで、認知症が進むのではないかという不安を抱えているという。

若野さんは、「もしも感染した時にどうやって生活するのかという不安もある。家族からは、本人がマスクを着用できなかったり、自粛を理解できなかったり、手を洗えなかったりということもあり、地域の目もあって、本人と日々喧嘩してしまう、疲れてしまうという声も聞く」と話す。

ひとり親世帯の調査に取り組んだ山崎さんは、82.6%が困っているという回答があったことを示し、その中でもなかなかあげられない声があることを示した。

「例えば、看護資格の勉強をしたいのだけれども、保育園が休園になって子供を相手にするのにストレスがあるとか、派遣社員で在宅勤務ができないという声を聞きます。お子さんが発達障害がある家庭でうちで二人きりで対応しなければいけなくて精神的に参っているという声もいただいています」

前向きな活動につなげたい

最後に基金代表の小坂さんは、「『支援をしている人の支援』はとても大事で、行政も電話の窓口などで罵声を浴びても切ることができないようなところでトラウマを背負ってしまいます。目に見えないコロナによるトラウマ、障害、困ったことはもっとあるのでしょう。この基金は、そういうところに迅速に届ける素晴らしいシステムだと思います」と話す。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

そして、今後の運用について、こう期待を述べた。

「今後はウィズコロナの時代に、みんなが繋がって、共感するような、新しい仕組みを作れたら。若い人が新しいことを考えて、いろんなところを繋げて、新しいチャレンジングな話も出てくるといい。そんな前向きな動きを実現できればすごくいいなと思います」

寄付はこちらから:新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

Got a confidential tip? Submit it here