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【前編】新型コロナ、BuzzFeedはどう報じたか? クルーズ船、インフォデミック、そして緊急事態宣言

新型コロナ一色だった今年、BuzzFeedも数多くの記事を書いてきました。この1年の記事でどんな出来事があったか振り返ります。まずは上半期を中心とした前編です。

2020年は新型コロナウイルスに始まり、新型コロナウイルスと共に暮れようとしている。

残念なことに来年もこの難敵から逃れられることはなさそうだ。

藤田学園

重症となってECMOを装着された患者。数多くのスタッフで救命に当たる

BuzzFeed Japan Medicalは新型コロナウイルスについて積極的に報じ続けてきた。

この1年の記事で、日本はこの感染症とどう向き合ってきたのか振り返りたい。まずは上半期の記事を中心とした前編から。

原因不明の新型肺炎 どう報じるか?

BuzzFeed Japanの新型コロナウイルス報道は、都立駒込病院の感染症科部長、今村顕史さんが正月明けの1月8日にくれた1通のメールから始まった。

中国の武漢で発生している原因不明のウイルス性肺炎。

まだ不明なことだらけなので、もう少し待ってからと思っていましたが、急に報道が増えてきたため、現時点での情報をまとめてみました。

すぐに編集し、翌日にはこの記事を出した。

中国で発生している原因不明のウイルス性肺炎 冷静に正しい情報を(1月9日)

BuzzFeed

「過剰な不安を煽ることのないように、報道側も注意する必要があると思います」

そう最初から報道に釘を刺していたのが印象的だ。

今村さんはHIV診療の第一人者。1980年代の恐怖を煽る報道でパニックが起き、治療で元気に生きられる病になった今もHIV陽性者への偏見が残る現状を記者は繰り返し取材したことがある。

正体不明な感染症で不安や恐怖が伝染し、パニックが引き起こされることを警戒していたのだ。

その後も、第1号の死者、日本での報告第1号などが出るたびに迅速に寄稿していただいた。

中国の原因不明の肺炎で1人死亡 最新情報を冷静に分析しました(1月12日)

新型の肺炎患者が国内でも発生 過剰に恐れることはありません(1月17日)

中国の新型肺炎、急に大きくなっていく数字をどのように見るか?(1月20日)

新型コロナウイルス 「指定感染症」になるとどうなるの?(1月28日)

BuzzFeed

人から人へうつるかもまだ不明だった1月12日の段階で既に咳エチケットと手洗いの大切さを書いている。これは今も新型コロナ対策の基本だ。

BuzzFeed

一方、私が最初に書いた記事は、川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんのインタビューだった。

新型コロナウイルス どれぐらい警戒したらいいの? 感染症のスペシャリストに聞きました(1月30日)

2009年の新型インフルエンザの時は国の対策を決める委員会の副委員長も務め、WHOとのパイプも太い、国際的な新興感染症のスペシャリスト中のスペシャリスト。

正体不明な感染症が流行している時、メディアは情報を整理し、流行を食い止めるためにその時点で読者ができる対策を提示する必要がある。それが世の中の不安やパニックを防ぐ。

1万字のロングインタビューにも関わらず180万以上読まれ、「知りたいことが書いてあった」「安心した」などの反響が多かった。この後、岡部さんには繰り返しインタビューをお願いすることになる。

ダイヤモンド・プリンセス号の混乱

2月に入ると船内で集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」に注目は移る。

時事通信

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が停泊する大黒ふ頭を出る救急車=2月18日、横浜市

元々、感染予防対策がしづらいと言われるクルーズ船内で日々、感染者が増え続け、乗船した厚生労働省や検疫所の役人まで感染したというニュースが流れた。

BuzzFeed

内部の様子はほとんど明かされず、メディアもジリジリしていた2月18日深夜のことだ。突然、クルーズ船に乗船した神戸大学感染症内科教授の岩田健太郎さんがYouTubeで感染管理ができていないことを告発する動画を流し、話題になる。

すぐに連絡を取り、翌朝インタビューして記事にした。

ダイヤモンド・プリンセス号に乗船した感染症専門医 「感染しても不思議じゃない悲惨な状況」(2月19日)

内部の状況を伝える貴重な証言だったが、一方で、「現場を混乱させた」「事実ではないことも含まれている」と猛烈な批判も呼び起こす。

@ga9_h

当時厚生労働副大臣だった橋本岳さんがアップした船内の写真

当時、厚生労働副大臣だった橋本岳さんが2月20日にTwitterに船内の様子をアップして感染対策ができていることをアピールしようとした。だがその写真こそが対策の不備を表しているという、お粗末な展開もあった。

新型コロナ、副大臣がクルーズ船内の写真をアップ→「内部告発ですか?」とリプ殺到→削除(2月20日)

この時に公衆衛生の専門家として乗船していた和田耕治医師の取材をきっかけに、その後、繰り返しのインタビューが実現することになる。

ダイヤモンド・プリンセス号に乗った公衆衛生の専門家 「下船後に発症者が出るのは想定されたこと」(2月24日)

一方、クルーズ船内でPCR検査陽性となった人の下船後、どこで受け入れるかが議論になっていた時、BuzzFeedは受け入れ先をスクープした。

【独自】藤田医科大学 救急病院の開院前に新型コロナ感染者を受け入れへ(2月17日)

新型コロナ陽性で発症前の人を経過観察 藤田医科大学病院長「国の危機に貢献する使命がある」(2月17日)

BuzzFeed

全てが落ち着いた4ヶ月後、受け入れミッションがどう行われたかも取材して、改めて大変なプロジェクトだったことを知った。

ダイヤモンド・プリンセス号からの陽性者受け入れミッションをどう果たしたか? 前線に立った医師たちの奮闘(6月8日)

「アビガンは特効薬ではなさそう」 現場で患者を診てきた救急医が語るウィズコロナの時代(6月9日)

インフォデミック デマ情報のファクトチェック

この感染症の流行初期から一貫して問題になり続けているのは、デマ情報の拡散だ。TikTokやYouTube、LINE、Twitterなど、SNSを通じて短期間で一気に広がり、不安や恐怖が伝染していく。

WHO(世界保健機関)は、Information(情報)とEpidemic(流行)をかけわせた造語「Infodemic(インフォデミック)(情報の氾濫)」で、不確実な情報に惑わされないように注意を呼びかけた。

BuzzFeedでは籏智広太記者を中心とした若手記者がファクトチェックを繰り返し行ってきた。

BuzzFeed
BuzzFeed / Via buzzfeed.com

BuzzFeedでは新型コロナ以外でもファクトチェックに力を入れているので、こちらから記事を参照してほしい。

マスクが足りない 「アベノマスク」への批判

特に初期には、マスクや消毒用アルコールなどの感染対策用の物資が医療機関でも一般市民の間でも不足したことが問題になった。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

個人用防護具をフルでつけた人。ほとんどが中国や東南アジア諸国で作られ、全世界的な需要の高まりに、日本への輸入が一時激減した

使い捨てのサージカルマスクを繰り返し利用する方法が広まり、

新型コロナで拡散、マスクの「再利用」正しい方法は?リスクは?感染症対策の専門家に聞きました(3月3日)

輸入業者が窮状を訴えたりもした。

新型コロナ、マスクや手袋なしでどう立ち向かうのか? 防護具専門の販売会社が不足の実態を訴える(3月25日)

BuzzFeed

そんな中、安倍首相が全世帯に布マスク2枚ずつを配布することを表明。「アベノマスク」と名付けられ、大きな批判を受けた。

安倍首相が全世帯への「布マスク2枚」配布を表明。「エイプリルフール?」の声も(4月1日)

「布マスク2枚の予算があれば、医療従事者3ヶ月分」 マスク輸入業者、嘆く(4月6日)

その間も全世界的にマスクなどの個人用防護具の不足は続き、感染の不安に直面しながら治療を続ける医療者の悲鳴が大きくなっていく。

「手術できなくなる。早くマスク、ガウンを」医療現場の人々がTwitterで訴えたこと(4月26日)

草の根の寄付運動も行われた。

「本当に深刻、助けてください」悲鳴を上げる医療現場にマスクと優しさを。市民による草の根運動が始まった(5月5日)

専門家と政府のリスクコミュニケーション

新型コロナウイルスでは政府による国民への情報共有が弱かったことも問題になり続けている。

「同時に引き締めと励ましのメッセージを」 リスク・コミュニケーションの専門家が評価する日本の新型コロナ対応(3月26日)

政府の専門家会議(後に新型コロナウイルス感染症対策分科会として組織改変)はこのリスクコミュニケーションのあり方に危機感を抱き、自ら提言を公表していくことを決めた。

「今はまだ諦める時期じゃない」「一斉休校は議論していない」 新型コロナ専門家会議の委員が協力を呼びかけること(2月28日)

その他、それぞれ専門家がかぶる厚生労働省のクラスター対策班、コロナ専門家有志の会、厚労省のアドバイザリーボードなどが一般やメディアとのコミュニケーションに積極的に乗り出すことになった。

波紋呼んだ「対策ゼロなら40万人死亡」のデータ いま必要なコミュニケーションは単なる「情報提供」ではない(4月24日)

BuzzFeed

BuzzFeedでは現在に至るまで、1年生記者の千葉雄登記者を中心にできる限り会見に出席し、専門家の現状分析や提言を図表を用いながら詳細に伝えるようにしている。

ずっと会見を追い続けてきた記者が大事なポイントを見極め、時には1回の会見で3本書くこともある。

コロナ専門家会議の議事録、存在しないのは政府の決定。 専門家「名前を出すのは、全然問題ない」(5月30日)

最も注意すべきは家庭内感染ではない。新型コロナ分科会、尾身会長が繰り返し強調したこと。(12月24日)

BuzzFeed

「3密」の発見

厚生労働省のクラスター班による集団感染の分析や専門家会議の検討で、日本では早い段階で感染リスクの高い条件がわかったことは、感染を抑えるために有利な情報となった。

BuzzFeed

当初は密閉空間で、密接した距離、密集の3要件が重なるところが感染リスクが高いとされていた

人が大勢「密集」しているところ、「密閉」していて換気が悪いところ、近い距離で「密接」しておしゃべりをすること。この「3密」は今年の流行語大賞にもなり、多くの人に広まることになった。

新型コロナ、リスクが高い場所はどこ? 専門家に聞いてみた(3月10日)

感染リスクが高いかどうかは、3密になりやすい場面かどうかを考えれば自ずとわかる。

小池氏、選挙も「3密」避けて街頭演説の予定なし。他の候補者もSNSで「前哨戦」(6月12日)

3密になりやすい喫煙所、一緒にタバコを吸っていた人からの感染も… 専門家「感染対策は難しい」(8月25日)

エアコンで新型コロナ感染は広がるのか? 専門家「問題は3密空間が作られること」(8月26日)

医療者の奮闘、疲弊

新型コロナウイルスの正体がわからなかった初期、そして感染者がキャパシティ以上に増えた時期、感染の不安に怯えながら医療者は一人でも多くの命を救うため、奮闘してきた。

以前から知っている医師たちのやつれた姿と厳しい内容のお話に、新型コロナウイルス感染症の怖さを知ることになる。

BuzzFeed
BuzzFeed
BuzzFeed

そして、3月末から急増していった感染者を抑え込むために、政府は4月7日、初の緊急事態宣言を発出した。

まず対象を東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に絞り、10日後、全国に拡大した。

「日本では都市封鎖はしない」7都府県で緊急事態宣言へ。安倍首相の「お願い」とは(4月6日)

「緊急事態宣言」で変わること、変わらないこと。7つのポイント(4月6日)

都市機能の封鎖が生活を直撃する人への政策も打たれたが、十分とは言えず、批判も相次いだ。

東京都「新型コロナで住まいを失った人の支援に12億円」。ネットカフェで暮らす人々も対象に(4月7日)

「開店する俺の店はどうなる?」安倍首相の"個人事業主に100万円給付"に賛否両論(4月7日)

安倍首相、「現金10万円一律給付」までのプロセス。「全国民」とする対象とは?(4月17日)

BuzzFeed

一方、緊急事態宣言による人と人との接触削減の効果をシミュレーションしていた専門家からは、政府との温度差が訴えられ、国民への強い協力が呼びかけられた。

「このままでは8割減できない」 「8割おじさん」こと西浦博教授が、コロナ拡大阻止でこの数字にこだわる理由(4月11日)

「劇薬を使ったからには最大限の効果を」  緊急事態宣言に感染症のスペシャリストが賛成した理由(4月16日)

「不要不急」とされる人の声なき声

一方で、「不要不急」とされ、緊急事態宣言で活動停止を余儀なくされた人たちの苦悩もBuzzFeedではすくい上げてきた。

「問われているのは『命と経済』ではなく、『命と命』の問題」 医療人類学者が疑問を投げかける新型コロナ対策(4月5日)

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

医療人類学者の磯野真穂さん

医療人類学者の磯野真穂さんは、緊急事態宣言発出直前の取材にこう答えている。

未来が不確定な時、不安に駆られた私たちはより大きな声の統制を望みます。それは安心を与えてくれるかもしれませんが、その安心は思考停止と表裏一体です。

緊急事態宣言が明日にでも発令されるだろう今だからこそ、そしてそれを求める姿勢があるからこそ、「感染拡大を止める」という絶対的な正しさが覆い隠す事柄に目を向けるべきだと思うのです。

音楽家が新型コロナ対策について感染症の専門家に問いかけた 「みなさん行き過ぎてませんか?」(4月16日)

芸術は不要不急ではない 私たちに必要なのは「生活の余白」(10月24日)

BuzzFeed

「接待を伴う飲食店」「夜の街」は感染リスクの高いところと名指しされ、排除する空気が醸成されつつあった。

そんな中で、クラブやキャバクラ、ホストクラブなどが加盟する日本水商売協会は自ら独自の感染対策マニュアルを作成。加盟店に徹底させ、後にこうした店での集団感染は目に見えて減ることになった。

「客もスタッフもマスク着用」「一卓ずつ開けて客と座る」 水商売の業界団体が営業再開のためのガイドライン作成(5月15日)

厳しい目で見られ続ける「接待を伴う飲食店」 存続を賭けた取り組みとは?(6月3日)

マニュアル作成に協力した医師の言葉を心に置いておきたい。

「理想的なことを言えば、3週間、自宅にこもって誰ともまったく接触しなければ、流行は収まるのです。でも人は一人では生きていけない。社会的な動物ですから、社会的な生活をなしにして感染対策を考えるわけにはいかないのです」

「『不要不急』とされてしまう業界も、ある人にとっては人間として生きていくために大事な場所かもしれません。みんなで工夫しながら社会を動かしていく時期に来ていると思います」

BuzzFeed

BuzzFeedでは新型コロナウイルスの記事をまとめたページ「covid-19 新型コロナウイルス」をを作っているので、ぜひ他の記事もお読みください。

(後編に続く)


Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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