• covid19jp badge
  • medicaljp badge

子どものワクチンめぐり謎のデマ文書。全国の小児科医、保護者へ「組織的に送っているのかも」

3月から5〜11歳に対するコロナワクチンの接種が始まるのを前に、小児科医や保護者に対し、不正確な情報の入った文書やチラシが送られています。小児科医や厚労省は注意を呼びかけています。

3月から5〜11歳にも新型コロナワクチンの接種が始まるのを前に、全国の小児科医に対してワクチン接種を止めるよう求める文書が相次いで届いている。

子どもへのワクチンは危険だとするデマを書き連ね、何か起きた場合は接種した医師が損害賠償を負うと脅すような内容だ。

BuzzFeed Japan Medicalは、3月1日から5〜11歳のワクチン接種の予約を受け付ける小児科医の森戸やすみさんに話を聞いた。

森戸さんは、「小児科医は惑わされないと思いますが、一般の人がこのようなビラを見たら不安になるかもしれません。迷ったら、かかりつけの小児科医に相談したり、厚生労働省の新型コロナワクチンQ&Aなど正確な情報を見たりするようにしてほしい」と注意を呼びかけている。

小児科医に接種を止めるよう求める文書

森戸さんが最初にこうした文書を受け取ったのは昨年12月の終わり頃。

「緊急停止措置命令」と題された文書で、「人道に反するジェノサイド(集団殺戮行為)および犯罪を直ちに停止するよう求めます」とし、コロナワクチンや PCR検査、マスク着用や検疫・隔離などを止めるよう求める内容だ。

5〜11歳のワクチン接種が公費で認められた2月になると、森戸さんのクリニックだけでなく、横浜、名古屋など全国の小児科医仲間から、同様の文書が届いたと情報が寄せられるようになった。

「1通あたり少なくとも84円の切手代やコピー代、封筒代がかかるので、それなりの費用がかかっているはずです。組織的に送っているのかもしれません」と頭を抱える。

根拠のないワクチン影響、「損害賠償責任」で脅す

一部の文書には共通した内容が書かれている。

「5歳以上のワクチン接種スタートに疑問を感じています」という書き出しで、「コロナワクチンの十分な情報を提供する義務を怠ったまま、有害事象が発生した場合、医師が全損害賠償責任を負うことがあります」と脅すような内容だ。

ちなみに「有害事象」とはワクチンとの因果関係は問わず、接種後に生じた問題ある事象全てを指す用語だ。ワクチンと因果関係がある「副反応」とイコールではない。

そして、「考えられる有害事象」として、以下の内容が挙げられている。

  • 短期 心筋炎
  • 中期 抗体依存性感染増強(ADE)
  • 長期 不妊、自己免疫疾患、癌


心筋炎は確かにコロナワクチンで稀に起きることが報告され、注意も促されている。しかし、実際に感染したときの合併症として心筋炎が起こるほうが、頻度は高い

一方、ADEや不妊、自己免疫疾患、がんがワクチンの副反応で起きるとは確認されておらず、科学的根拠はない。

そして、「親の同意があっても、憲法32条の訴える権利により、訴訟可能です。損害賠償は、死亡の場合、数千万円以上です」という内容まで共通している。

実際には、公費で接種する「臨時接種」と定められたワクチンは、ワクチンと接種後の症状との因果関係が認められた場合、国が補償する。原則、接種医は賠償責任を負わないので、これも間違った情報に基づく。

工夫されたデザインでデマを紹介

一部のチラシは、イラスト入りでデザインも工夫された作りになっており、「実験的なワクチン」「接種した人は未接種より感染しやすくなる」「何が起きても国は責任を取らない」と明らかに間違った情報を読みやすく紹介している。

ワクチン接種後に亡くなった人がいても、ワクチンのせいだとは限らない。それをあたかもワクチンのせいのように紹介しているのも悪質だ。

また、「保護者のみなさまへ」と保護者に呼びかける文章も書かれており、保護者にも配っているチラシであることがうかがえる。

こうした文書が小児科医に盛んに送られていることについて、森戸さんは「文書を流す人は、『大人は自己責任でも、子どもに強制するのは問題だ』という考えで動いており、『小児科医は悪の手先』ぐらいに受け止めているようだ」と話す。

「文面が似ていることを見ると、コピペのように不安を抱く人に広がっている言説なのでしょう。普通の小児科医であればまともには受け取らないでしょうけれども、小児科医のメーリングリストなどを見ていると、一部の医師が信じてしまっているのが怖い」

そして「これから接種券などが送られる時期なので、保護者にこうしたチラシが送りつけられたら不安に思うでしょう。それも心配です」と影響を懸念する。

かかりつけ医へ相談するか、厚労省など信頼できる情報源を

背景には、新型コロナで重症化しにくい5〜11歳の子どもの場合、ワクチンをうつメリット(発症予防、重症化予防)とデメリット(発熱などの副反応)の差が小さく、小児科医の間でも見解が分かれていることがある。

「どうしても歯切れの悪い説明になるので、保護者は『じゃあうちの、この子はどうしたらいいの?』と不安になるのだと思います」

森戸さん自身、説明を尽くした上でも納得されず、「先生のお子さんだったらどうしますか?」と聞かれることがある。

「第6波では肺炎を起こす人は少ないものの短期間でも熱が高くてつらいし、同居のおじいちゃんやおばあちゃんや保育園・学校などで人にうつす可能性もあるから、うちの子だったらうちますと答えています」

「重症化しない、というと軽い状態を思い浮かべる人が多いですが、40度ぐらいの熱が続いたり、痛みや咳でずっと寝られなかったりする子もいる。それでも軽症なんです」

「『新しいワクチンだから長期的な影響がわからない』と不安がる親御さんもいるのですが、この感染症自体も新しいので、感染した場合の長期的な影響もわかりません。うちのクリニックでは100人も陽性者を診ていないのに、味覚がなくなった人が既に2人もいます。子どもは後遺症自体、気づけないかもしれません」

もし、このような文書や情報が回ってきた場合、保護者はどのように判断したらいいだろうか?

厚労省の新型コロナワクチンQ&Aは正確な情報がとてもわかりやすく網羅されていますので、まずはこれを読んでみてください。それでも不安が解消されなかったら、いつも診てもらっているかかりつけの先生に相談してみてください」

厚労省は現時点では9月30日まで子どものワクチンを確保するとしている。

「どうしても不安なら、もう少し多くの人がうつまで様子見をしてもいいと思います。ほとんどの子どもが問題なくうつと思いますから、その様子をみてから接種するという判断でもいいでしょう」

厚労省リーフレットQ&A

厚労省予防接種室の担当者は、このような文書やチラシが出回っていることについて、「そういう動きがあるということは把握している」と話す。

その上で、「子どものコロナワクチンについては、ご家庭ごとにご判断いただく形にしているが、厚労省としては厚労省リーフレットやQ&Aで正確な情報を発信している。そちらを見てぜひご判断いただきたい」と呼びかけている。