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災害医療センターの臨床工学技士が勤務中に飲酒、治験の研究費で美顔器など購入

国立病院機構「災害医療センター」で臨床工学技士が勤務時間中に飲酒し、治験の研究費で美顔器や高級掃除機などの私物を買っていたことがわかりました。飲酒は処分されましたが、研究費の私的利用は購入した物品を返却してお咎めなしです。

災害医療の総本山、国立病院機構「災害医療センター」(土井庄三郎院長)の臨床工学技士が、勤務中に飲酒したり、治験の研究費で美顔器などの私物を買っていたりしていたことがBuzzFeed Japan Medicalの取材でわかった。

管轄する国立病院機構関東信越グループは飲酒などをしていた臨床工学技士2人を懲戒処分(戒告)にし、当時の院長と統括診療部長を口頭厳重注意処分とした。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

勤務中の飲酒や治験の研究費を私物購入に充てるなどの不正行為があった災害医療センター

同グループの山田直樹・参事(人事担当)は、「国民の信頼を著しく失墜させる行為で遺憾である。今後このような不祥事が起きることのないよう再発防止に努めたい」と話している。

勤務中に飲酒 人工心肺を動かす臨床工学技士 1人オンコール状態が1年9ヶ月も

臨床工学技士は、心臓手術などの際に一時的に心臓と肺の機能を代行する医療機器「人工心肺」を操作したり、人工呼吸器や人工透析などの医療機器の調整を行ったりする専門職。

同グループによると、2020年9月、外部の弁護士事務所に設けてある相談窓口に寄せられた内部告発により不正行為が発覚した。

告発を受けて、同グループが同年10月、当時災害医療センターに所属していた臨床工学技士8人全員に聞き取り調査をした。

その結果、勤務時間中の2020年1月9日午後7時頃、主任(40代)を含む3人が職場でハイボールを1缶ずつ飲んだことがわかった。主任らは午後7時半まで残業時間をつけていた。

国立病院機構の職員就業規則第16条5号では勤務時間中であろうがなかろうが、「職員は、職場において、みだりに飲酒してはならない。」と定められている。

さらに当時、人工心肺などの体外循環装置を操作する能力を認定する「体外循環技術認定士」の資格を持つのは飲酒した主任の職員だけだった。

人工心肺が必要な手術がある場合は主任と、周辺の機器を管理するもう1人で対応していたが、飲酒した状態で操作する可能性があった。

山田参事は「患者の命を預かる医療機関としては適切ではなかったと認識している」と話している。

関係者によると、この職員は時折、二日酔いの状態で出勤してくることがあった。

「二日酔いになるぐらいの量の飲酒中に緊急手術の呼び出しがかかったら、酩酊状態で人工心肺を動かしていた可能性もある。患者の命がかかっていることを考えると危険な勤務体制が放置されてきた」とこの関係者は話す。

同センターでは月に2〜4回、緊急手術で人工心肺を動かすためにこの職員を呼び出すことがあり、1人で24時間常に待機する状態が2018年6月から1年9ヶ月続いていた。

この間、1人の人間がずっと24時間オンコール(待機)勤務をせざるを得なかったことになり、組織として労務管理上の問題も抱えていたことになる。今はもう1人資格を持つ者が増えて解消された。

この労務管理上の問題について山田参事は、「この主任の上司だった臨床工学技士が亡くなり、それ以降は主任1人で対応していたようだ。2018年10月からずっと募集はかけていたが、臨床工学技士の絶対数も少なく、なかなか補充できなかった」と話す。

他にも、勤務時間を付け替えて申告する行為が見られた。ただしそれにより給料を水増しすることはなかったという。

国立病院機構関東信越グループ

懲戒処分のリリース。勤務中の飲酒については書かれていない

勤務中の飲酒と勤務時間の不適切な申告に対する処分として、同グループは3月22日付で、主任を含む臨床工学技士2人を懲戒処分(戒告)に、管理者2人を口頭厳重注意処分にした。

美顔器、高級掃除機、パソコンなどを治験の研究費で購入→自宅で使用

このほか、当時勤務していた8人の臨床工学技士のうち6人が、製薬会社の循環器系の治験の研究費で購入した物品を自宅で使用していたことが同グループの調査でわかった。

院外で使用していたのは以下の物品だ。

ノートパソコン19万9980円

iPad1台 7万8980円

iPadキーボード 1万9580円

iPadカバー 8800円

ビデオカメラ1台 11万5500円

ビデオカメラバッテリー 1万5400円

三脚 8250円

ダイソンの掃除機 6万500円

スチーマーナノケア(美顔器) 3万8500円

これらについては全て返却させ、注意指導したとして、国立病院機構関東信越グループが処分を見送っていたこともわかった。

山田参事はその理由について「センターの財産である意識も薄く、持ち帰ってはいけないという認識も少なかった。聞き取り調査に対して、『掃除機が壊れていたので一時的に借りた』『パソコンのセットアップをするために持ち帰った』という職員もいた。私物として買ったのか、一時的に持ち帰って使用していたのかはわからない」と研究費流用の事実が確認できなかったと話す。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

災害医療センターを管轄する国立病院機構関東信越グループの入る建物

ただ、循環器系の治験に美顔器が必要なのか質したところ、「研究目的で買っていたのか疑問に思う点はある。私物として買ったと疑われても仕方はないと思う」とも話したが「横領とまでは判断していない」とも言う。

治験担当の事務職員も、研究費の使い道について一つ一つの物品をチェックしていなかった。

パソコンやタブレットを業務で使うとしたら、その中には機密情報や個人情報が含まれる可能性も出てくる。

これについても「簡単には持ち帰ることはできない。どれぐらいの期間持ち帰っていたのかもわからない」と答え、組織として利用状況を把握していないことも明らかにした。

また、今回の不正に気づいて告発した人は、不正行為の証拠を押さえるために、臨床工学技士の待機部屋に小型カメラを仕掛けていた。グループ側はこれを「盗撮行為に当たる」として、訓告処分とした。

この件について当時の院長と現院長も、告発した人物の管理監督者として口頭厳重注意の処分が下された。

告発の証拠を得るための行為を処分の対象にしたことについて、「カメラを仕掛けたのは執務室兼休憩室で、そこで着替えをする可能性もある」と山田参事は理由を述べた。

ただ、関係者によると、カメラが設置されたのは施錠されていない院内スタッフや業者が出入りする部屋。院内に別に更衣室はあるため、着替えが写ることは考えにくいという。

再発防止策は?

こうして発覚した複数の不祥事。再発防止策をどうとっているのか。

同グループは昨年11月下旬、全職員に宛てた院内メールで「業務上必要で購入した物品は家に持ち帰らないように」と注意喚起したという。また、勤務時間の適切な深刻の徹底も昨年12月上旬の院内メールで全職員に注意喚起した。

研究費の使い道については、この問題発覚後、治験担当の事務方がチェックするようにしているという。

さらに2021年4月から、国立病院機構本部に所属する臨床工学技士の専門職を月に1回災害医療センターに派遣して、業務管理の指導や支援をしている。

「これまで主任しかおらず、部下の指導、管理や教育ができていなかった」という。

今回の問題発覚から、別の年度や他の部署で同様の問題が起きていないかの調査はしていない。

「告発をもとにした調査なので、告発内容だけを確認した」と話している。

災害医療センターをめぐっては、救命救急科の医師が当直勤務中に院内の当直室で看護師に性行為を繰り返していたとして、医師を停職3ヶ月の懲戒処分(その後、本人が辞職)、院長を懲戒戒告処分、事務部長、看護部長、管理課長、副看護部長を厳重注意処分にした事件があった。

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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