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【詳報】厚労省の大麻検討会 委員たちはどんな意見を最後に述べた?「厳罰化だけでは解決しない」

最終報告が取りまとめられた大麻検討会。各委員はどんな思いで会議に臨んできたのでしょう。詳報します。

厚生労働省の「大麻等の薬物対策のあり方検討会」(座長=鈴木勉・湘南医療大学薬学部設置準備室特任教授)は6月11日、最終回の第8回目の会合を開き、報告書を取りまとめた。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

取りまとめをした大麻等の薬物対策のあり方検討会

焦点の一つとなっていた大麻取締法の「使用罪」創設については、「罰則を科すことが必要であるという意見が多かった」と書かれる一方、反対意見も詳細に明記された。

また、大麻取締法の大麻草の部位による規制は成分に基づく規制に変えることや、大麻から作られた医薬品の使用にも道を開くことも提言された。

この日、とりまとめ案に意見を述べたのは1人だけで、最後に委員たちは1人ずつこの検討会について考えてきたことを語った。詳報する。

法学者のみが厳しく使用罪反対意見に反論

今回、使用罪創設については、「罰則を科すことが必要であるという意見が多かった」と書かれる一方「3名の委員より反対意見があった」として、以下の反対内容も詳細に書き込まれた。

  • 国際的には薬物乱用者に対する回復支援に力点が置かれている中で、その流れに逆行する
  • 使用罪の導入が大麻使用の抑制につながるという論拠が乏しい
  • 大麻事犯の検挙者数の増加に伴い、国内において、暴力事件や交通事故、大麻使用関連の精神障害者が増加しているという事実は確認されておらず、大麻の使用が社会的な弊害を生じさせているとはいえないことから、使用罪を制定する立法事実がない
  • 大麻を使用した者を刑罰により罰することは、大麻を使用した者が一層周囲の者に相談しづらくなり、孤立を深め、スティグマ(偏見)を助長するおそれがある

反対意見を表明したのは、以下の3人だ。

  • 「川崎ダルク支援会」理事長 岡﨑重人氏
  • 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部 心理社会研究室室長 嶋根卓也氏
  • 国立精神・神経医療研究センター
    精神保健研究所 薬物依存研究部部長 松本俊彦氏

この日出された取りまとめの文書に意見を述べたのは、前回、途中で席を外して意見を述べられなかった太田達也・慶應義塾大学法学部教授のみだった。

上記の「使用罪」への反対意見について、太田氏はこう反論した。

「規制部位の所持が犯罪とされて刑事処罰の対象とされているのを忘れるべきではない。大麻の規制部位を持っていることさえ禁止され処罰されることからすると、使用が規制されていないのはおかしな話」

「使用の前には所持か譲り受けという行為があり、所持や譲り受けが犯罪として禁止されているなら、使用も事実上禁止されているに等しい。大麻の使用が法的に許されているという理解の方が危険で、誤っていると言っても過言ではない」

「あえて使用罪を設けない場合、あたかも所持までもが許された行為だという間違ったメッセージを国民に与える」

また、処罰することでスティグマ(負のレッテル)が増すという懸念については、「所持で逮捕や有罪とされた場合も同様のはずだ。スティグマやレッテルが貼られるからダメだというのであれば、所持罪も廃止すべきということになる。スティグマを避けるために違法な行為を合法にしろというのは本末転倒」と厳しく批判した。

さらに、刑罰よりも回復支援が国際的な潮流になっているという主張については、「正鵠を射たものではない」と反論。「海外も規制薬物に対する刑事規制や処罰を全て取っ払っているわけではない」とした。

「大麻を万能薬のように報じるな」監麻課長

とりまとめの文書が一通り朗読された後、事務局の田中徹・監視指導・麻薬対策課長が、大麻医薬品の利用への道が開けるからといって、過剰に期待を煽るなと報道に釘を刺した。

大麻ががんやリウマチや睡眠障害に効果があると報じる週刊誌を見て危機感を強めたといい、日本で使う場合は正式な承認審査で認められてからになると説明。

「大麻が万能薬みたいな書かれ方をする記事を見て本当に驚いた。大麻由来医薬品を認めることがエビデンスのないものに、噛み砕いて言えば『キノコでがんが治る』というような胡散臭い話と一緒にされる」と懸念を示した。

「そもそも大麻云々以前に、特定製品についてがんの治療に効果があるかのような販売の広告を行うことは薬機法(医薬品医療機器等法)68条の『承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止』に該当するので法律違反」とし、「まずは海外で承認されている医薬品が日本でも上市されるように、エビデンスに基づく正しい発信をお願いしたい」と呼びかけた。

各委員はどんな意見を述べた?「一次予防に力を」「厳罰化だけでは解決しない」

次に、各委員が検討会の議論に参加して考えてきたことをそれぞれ述べた。以下、詳報する。

慶應義塾大学法学部教授・太田達也氏

医療だけで解決できるものでもなく司法だけで解決できるものではなく、医療、福祉、教育など様々な領域が連携して対応することで効果的な対応ができる。

【川崎ダルク支援会理事長・岡﨑重人氏】

色々な方にお話を聞かせていただく中で、他にももっと呼べる方がいたのかなという感覚があった。医療用大麻の情報や知識を有する方、難治性てんかんを診ていらっしゃる先生、支援をしている当事者。委員として私はいたが、それ以外の方は現場で依存症の支援でどういうことに困っているか発表していただく機会があったら嬉しかったなと思う。

私自身、依存症という病気を持っていて、薬物をやめ続けて生活している。病気になった人にしかわからない部分は感じている。生涯経験率が日本は低いので使用者も少ないが、少ないからこそ声が届かない。今回、違った病気だが、難治性てんかんが治験に向かっていくのは喜ばしい。

今後議論がどうなっていくかはわからないが、世界的にも嗜好用の大麻が認められる国が増えていく中で、若さ故に好奇心を持って情報を集めたり、楽しさ、快楽を求める人はいると思う。正確な情報提供が、今までのような形でない形であったらと思う。

【読売新聞東京本本社論説委員 ・小林篤子氏】

結論ありきではなく、それぞれの立場から本音でぶつかり合った意義のある検討会だったのではないか。

最初の会合の時に、日本が薬物の生涯経験率が欧米に比べて極めて低く、今後も守っていきたいという立場から参加したいと発言した。その思いは今も変わっていない。

海外で嗜好品が解禁されて、「そういう流れにあるなら、大麻は使っても大丈夫なんだ」という誤った情報に踊らされて、若者が好奇心から安易に手を出してしまうことがないように、今後も一次予防に力を入れるべきだと思っている。

その一方で、この検討会では、検挙された後に多くの人が放置されている現状も浮き彫りになった。「ダメ。ゼッタイ。」 に続く、新たなスローガンや社会復帰に向けた支援が必要なのではないかと思いを強くした。取締り一辺倒ではなく教育、啓発も刑事司法も巻き込んだ国を挙げての薬物対策が求められると思う。

【国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部心理社会研究室室長・嶋根卓也氏】

規制を強化するだけでは、厳罰化するだけでは、薬物問題の根本的な解決にはならない。とりまとめの最後にも、具体的な検討作業を速やかに進めていくと書いてある。

特に、再乱用防止に関して総論的には誰も反対しない内容。大麻事犯者に多い保護観察のつかない執行猶予者や起訴猶予者にも治療や支援が届くようにすべきであるということには大賛成だ。

でも問題は誰がどうやるのか。そこをしっかり詰めていくことが今後求められる。その時には当事者の意見もたくさん聞いて、より良い対策を練っていただきたい。協力もしていきたい。

依存症の支援という観点から考えた上に、アルコールにはアルコール健康障害基本法があり、ギャンブル依存症にはギャンブル等依存症対策基本法がある。我が国は薬物依存症に対する対策基本法はない。そういう法律を今後作ることが必要ではないかと思っている。

「罪人にするのではなく、治療や環境改善を」「ダメ。ゼッタイ。誤解があるなら正せ」

【麻薬製造業者関係者】

大麻系医薬品が医療用として用いられて、1日も早くこういう薬を待ち望んでいる患者さんの手元に届けばいいなと期待している。大麻系医薬品使用のためには大麻部位規制から成分規制に変えることが大事だし、麻薬及び向精神薬取締法で規制していただくことでクリアできていくと思う。

もう一つ踏み込んで、麻向法で管理されるデメリット、社会的影響も踏み込んで議論されればよかった。

また、大麻系医薬品を麻向法で規制する中で、国内で製造販売するためには、THC濃度をどこまで規制して管理するかが必要になる。1パーセント以下だと家庭用麻薬と言われ、医療用麻薬の取り扱いではなくなる。大麻由来製品ではどうか、今後議論が必要ではないか。

使用罪の創設で議論があったが、大事なことは薬物乱用した方を罪人にすることではなく、その方によって必要な治療、社会復帰のための更生の道を開けるように、その方を取り巻く環境の改善などに力を注ぐべきだと思う。

【麻薬・覚せい剤乱用防止センター理事長・ 藤野彰氏】

振り返って思い起こすことが3点ある。

第1に、最近の国際的な潮流云々という発言も見られたが、世界に200近い国と地域があって、どこの国々を指すのかと常々疑問に思っていた。日本以外のほとんどの国でという意味で使うなら、現状からかけ離れている。もし大麻の嗜好目的での使用を合法化した少数の国を指すのであれば、2ヵ国のみだ。一次予防が機能しなくなって、どうしようもなくなった少数の国のやり方に日本が追随しなければならない理由はない。

第2に、もし国際的潮流が一時予防に加えて、早期発見・治療、教育、アフターサービス、社会復帰に到る各国での様々な創意工夫の取り組みの様々を指すのであれば、何も新しいことではない。1972年に国際社会が麻薬条約を改正してまで目指したことだ。

我が国の一次予防が他の国と比較して効果を上げてきたとしても、努力を怠るわけにはいかない。一方、不幸にして薬物乱用を始めた人には社会復帰に至るまでの手を差し伸べないといけない。巷では「人間は薬物を使用するものだから、薬物のない社会は実現不可能だ」という声もあった。しかし、犯罪が世の中からなくならないからといって、犯罪防止の努力を止めようという考えは出てこない。薬物問題も同じ。密造・密輸、乱用を限りなくゼロに近づける必要があり、努力を続けなければいけない。

第3に、「ダメ。ゼッタイ。」だが、これは35年、40年前の「覚せい剤やめますか?それとも人間やめますか?」という不幸にして乱用を始めてしまった人たちに向けた呼びかけの延長ではない。乱用していない人に向けて生まれた初めての呼びかけだった。当事者は乱用を始めていない人だ。

もし誤解、曲解があるなら正すのが筋。患者のみならず、一般の人が誤解・曲解しているなら正す必要がある。不幸にして乱用を始めてしまった人たちも、社会復帰を果たした後に、共に呼びかける標語であると考えている。

「THCの濃度、慎重な議論を」「乱用を防止する手立てを」

【国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 薬物依存研究部 依存性薬物研究室室長・舩田正彦氏】

大麻について医療用に使う可能性があるものは、適正な対応ができるような施策を構築していくことは重要だ。エピディオレックスのような実際に医薬品として認められているものは、治験も含めて患者さんに早く届くようにするのは重要だと改めて感じている。

米国で認可されているような大麻関連医薬品は、特定の疾患に他にいい治療薬がない中で、適正に使用することで効果が期待できる。ルール作りも含めて推進していただきたい。

そういうシステムを考える中で、成分の中に含まれている精神作用を示すTHCの扱いをどうするかは非常に重要な問題になってくる。THC の濃度をどう考えるかは慎重に議論する必要がある。

精神作用物質が多く含まれているようなものが栽培されることのならないように、麻農家が安心して栽培できる環境づくりを考えるためにも、やはり含まれているTHCについては慎重な検討が必要になる。

【森・濱田松本法律事務所弁護士・堀尾貴将氏】

歴史が深くて、他の薬物関連法と比べてもアウトオブデート(時代遅れ)になっている部分があった大麻取締法だが、制定後に明らかになった事象とか、昨今の医薬品の状況とか、他の薬物関連法との整合性、様々な観点から整理をしなおして、現在の状況に合ったものに変えていくという方向性が示されたことについて、大変意義深いと考えている。

植物の部位規制という形になっていた規制を、T H Cの有害作用が明らかになっていることや大麻に関する取締りの実態を踏まえて、他の薬物関連法同様、THCという成分に注目した規制にしたところがまず重要な点だ。

また、現行法では承認もできないし、製造販売もできない状況にある大麻由来の医薬品について、海外での承認や使用状況、国内での開発状況を踏まえて、適切に適切に承認販売、施用できるようにするのは重要だと思う。

もちろんTHCを乱用することの有害性については、検討会で示された資料からも明らかだ。大麻由来の医薬品についても、麻薬製剤や向精神薬と同様に適切な流通管理を行う必要があるし、医療機関での診断に基づく適切な施用以外の乱用的なTHCの使用については、防止する手立てをしっかり講じる必要がある。

逆にTHC の乱用につながらない大麻の栽培や産業用利用は規制を合理化して、過度な規制を及ぼさないように運用の見直しも含めて検討するのも重要。

「健康被害と逮捕の害が見合わない」

【国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長・ 松本 俊彦氏】

使用罪に反対と申し上げているが、大麻由来の医薬品については研究が進むことを期待している。

使用罪について多くの議論が費やされた。振り返って残念に思うのは、薬物の問題を抱えている方の治療や回復支援に直接携わっている人たちの声をもう少し聞くべきだったのではないかということ。数字の話、法律の話、制度の話ばかりで、大麻を使っている人がどんな人たちで、どういう状況なのか、リアリティを共有しながら議論することができなかったように思う。

長いこと依存症の治療の現場にいて、たくさんの薬物依存症の患者と出会ってきたにもかかわらず、大麻の問題を抱えている人は少ない。一番経験されている薬物は大麻が多いと思うが、医療の現場に来る人は少ない。他の薬物の影響の方が強いのだろうなという人や、元々、別の精神疾患がある人が多い。初犯で逮捕されて、公判までに病院にくる人は多くなった。ピュアな大麻ユーザーに出会うことも増えている。

(その場合)特に害が見当たらない。あえて害を言えば、捕まったこと。つまり健康被害より、刑罰の害が上回っている状況。法律なら仕方ないという考え方もあるが、他の暴力や性犯罪では被害者と示談することで不起訴になることも多い。薬物は示談をすべき相手が明確ではない。回復プログラムを受けたからといって、不起訴にもならない。

優れた実績や職業、専門資格を持っている人もいる。この人を失うのは大きな社会的損失という人もいる。1回捕まって前科がつくと、執行猶予が終わった後も仕事が高度であればあるほど戻れない。専門資格の場合は、インターネット上に逮捕情報が残って、職を探すにも必ず検索される。

どの犯罪にもスティグマはあるという人がいたが、大麻を使う犯罪の重みと、スティグマのバランスをどう考えたらいいのか考え続けてほしい。根拠が明確にならないと、使用罪が単なるブラック校則のようになってしまうし、さらに研究や知見の蓄積でどういう害があって、どんな人たちにリスクが出やすいかを突き止めていかないと、保健衛生上の目的を明確にすることもなし得ないのではないか。

2016年以降、医療機関で治療を受ける薬物依存症の患者が増えている。薬物問題が深刻化しているわけではない。1年以内に使ったことがある患者はずっと横ばい。つまり医療につながって、なんとかやめている人が増えている。年々、逮捕経験のない違法薬物の問題を抱えている人たちも増えている。逮捕前に助けを求める人が増えている。刑罰よりも治療、助けてくれる場所があるよということが少しずつ社会に行き渡っている一つの兆しなのではないかと思う。

健康によろしくないものを国が全く使わないようにするために、犯罪化することによって少数の人を見せしめにしたり、生贄にしたりしてみんな使ってはだめだよというのも一つのやり方かもしれない。だが、私としては問題を抱えた方が安心して、安全を保ちながら助けを求め、相談して、治療できる社会になってほしい。出来るだけ薬物関連の犯罪は、必要最小限にすべきだと思う。

最後に予防について、毎回「ダメ。ゼッタイ 。」に文句を言い続けている。もちろん作った側には、必ずしも悪意がなかったのは理解している。

一つのヘルスプロモーションのキャッチコピーで、30 年間、同じものが使われ続けるのは異常。製作者の意図を離れて、勝手に広まって、勝手なイメージが付与される。じゃあ代わりのキャッチコピーは何だと言われるが、確かにあのインパクトに匹敵するコピーはそうそう思いつかない。逆に、インパクトがあることのデメリットも考えないといけない。

副題のキャッチコピー「愛する自分を大切に」。ちなみに十代で違法薬物を使う人と十代で自殺行動をとる人は共通している。どちらも自分を大切にできない人たちだ。自殺予防教育は本来、ヘルスエデュケーションでなければいけないのに、「命を大切に」「自分を大事に」という生命尊重教育、道徳教育にすり替えて行われていた。

これは自殺予防の専門家から一番まずいタイプの教育と言われている。つまり自殺リスクの高い人は大事にされてこなかった人たち。自分を大事にと言われても、どうしたらいいの?ということになる。

実際、薬物乱用防止教育で、「薬物は危険だ、死んじゃう奴もいる」と聞いて、好奇心が出てやるという話は結構ある。一次予防は、リスクの高い人も含めて集団全体のリスクを減らすのがヘルスプロモーション。リスクの低い人たちのリスクをさらに下げて、リスクの高い子たちを分断するヘルスプロモーションではダメ。啓発のキャッチコピーについて、厚労科研の研究班でも立てて、いかなる啓発が必要なのかもっと言葉を尽くして検討することが必要だと思う。

「今後はダイバージョン(刑事施策から外す手続き)を」

【自治体関係者】

大きな改正になると思うので、法改正にあたっても、各都道府県の意見を可能な限り反映することをお願いする。

薬物5法がある。各法令で条文も規制内容も違う。こういう薬物法規を一つにまとめて、国際的な規制に合わせていくこともご検討いただけると思っている。

【埼玉県立精神医療センター依存症治療研究部顧問、昭和大学薬学部基礎医療薬学(毒物学部門)客員教授・和田清氏】

「世界の潮流」という言葉が出てくると、世界ってどこなんだとずっと思っていた。そもそも薬物、麻薬に関する考え方は、日本とヨーロッパで根本的に違うというのが私の見方。ヨーロッパは個人の自由が全てに先駆け、尊重される。イギリスを中心とする個人の自由は、違法薬物と言えども使うのは個人の自由だということが脈々と続いている。

ところが日本はそうでははない。日本が国家として麻薬問題を取り扱ったのは、アヘン戦争から。乱用ダメだよというのが出発点。この違いは絶大だと思っている。生涯経験率が桁違いに少ない。これはアヘン戦争の学びが各時代の政策となって今日まで生きていると思っている。一朝一夕でこんな風にはできない。他の国がここまで経験率を下げようと思ったら、100年以上かかるだろうと個人的に思っている。これを維持するのはものすごく重要だ。

考え方の基本は、一次予防、二次予防、さらに社会復帰を三次予防と呼ぶかは別として、順番を間違えることなく着実にやっていくこと。同時に、日本の場合には二次予防が弱かったのは事実だ。今後、それをどうしていくかという議論がこの場とは別に必要になってくる。

薬物依存症に対する回復支援は世界の潮流になってもらいたい。ただ、もう一つ、世界の潮流だと思うが、「捕まる薬物から、捕まらない薬物へ」というものがある。

日本では危険ドラッグ問題があったが、法の網を掻い潜る手法が世界的に起きている。まさに捕まる薬物から捕まらない薬物へのシフト、その流れに大麻も入っているのではないか。大麻は明らかに害作用はある。THCの有害性は明らかに発表されている。だけど、覚せい剤やヘロインに比べたら圧倒的に危険度が低いと認めざるを得ない。

低いからこそゲートウェイ。使った人は「なんだこんなものか」と心理的垣根を下げる。だから次の薬物に行きやすくなる。ゲートウェイドラッグは害作用が低い。だからゲートウェイ。大麻は、欧米では捕まらない薬物の一つで、その流れに浮上している。

検討された方向性は、概ね間違いではないだろう。長い日本の歴史で、低い生涯使用率を維持する方法かと思う。

世界的に捕まらない薬物にシフトしていることは頭に置く必要がある。医薬品でリタリンの問題もあった。これも捕まらない。危険ドラッグも捕まらなかった。要するに何らかの規制をかけないと、こういうものがどんどん出てくる。世界の流れだと思う。世界的潮流はなんだという話になるが、私は捕まる薬物から捕まらない薬物にシフトしているということだと思う。アメリカのオピオイドクライシスは、今後、日本でも出てくる。医薬品の(乱用の)問題はこれまで以上に大事な問題になると危惧している。

嬉しかったのは、麻薬中毒者制度を廃止するということが明確に打ち出されたこと。長い歴史を持っているが、現状にそぐわなくなっている。

日本を考えた時に、ヨーロッパとは出発点が違う。日本の実績は一朝一夕でできたわけではない。大切なのは世界の動向を把握すること。一次予防、二次予防という順番を間違えることなく、今後は「ダイバージョン(刑事手続から外す施策)」を考えていくことになると思う。

隠密な検討会のあり方 担当課長「オープンな議論だと思っている」

この検討会は、報道機関のみに傍聴が限られ、傍聴を希望する報道機関は、申し込み時に、「録音禁止」「発言者の特定禁止」という「留意事項」に同意のチェックを入れる必要があった。

発言者の特定禁止、録音禁止、時代に逆行する「大麻使用罪」創設の議論、なぜ過剰な厳戒態勢?(4月23日)

報道陣が録音するのは、発言を正確に記録して報じるためであり、禁止する理由がはっきりしない。「発言者の特定を行わない」という点も、国民の知る権利や報道の自由の観点から納得できるものではない。

BuzzFeedが疑問を投げかけると、事務局の監視指導・麻薬対策課は、

「発言者氏名を公にすることで、発言者等に対し外部からの圧力、干渉、危害が及ぶおそれが生じることから、発言者氏名を除いた議事録を公開することとしている」「薬物の関係はセンシティブな問題で、発言者に圧力がかかることも実際に起こっている」としていた。

実際には、「外部からの圧力、干渉、危害」というのは、「(構成員に)要請書や電話が来ていると耳にした」「初回に会場のビルの外でデモのようなものが起こった」「会場のビルの管理者からこのまま続くなら会場として使わせないと言われた」という内容だった。

厚生労働省

大麻等の薬物対策のあり方検討会の傍聴申し込み用紙

デモを行うことや要請書を渡すこと、電話で意見を伝えることは、社会通念上認められる頻度や内容である限り、「圧力、干渉、危害」とは言えない。

筆者は毎回、「担当者との事前協議により、上記の内容を読んだという意味でチェックする」という内容の但書を入れて傍聴申込書にチェックしてきた。報道内容を縛られたくなかったからだ。

最終回の今回、刑罰の範囲を拡大するという、国民の権利を一時的に剥奪し、強制的に自由を奪う可能性がある重大な問題を議論する中で、どの委員がどういうスタンスで検討会に臨んだかを示すために、委員の名前を明記の上、BuzzFeedは報じる。

会議にも規制をかけながら、ベールがかかった方法で運営したことについて、BuzzFeed Japan Medicalが事務局の田中徹・監視指導・麻薬対策課に理由を質したところ、こう答えた。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

報道機関に限定し、発言者の名前の特定や録音も禁止した会議運営について「オープンな議論だと思っている」と話す田中徹課長

「他の会議でも録音は禁止している。委員名に関しては、僕は全て公表していいと思っていたが、委員が自分の名前を出してくれるなという人もいたわけだから、その方のご意見を尊重することは事務局として当然だと思っている」

人の自由に制限を加えるような議論はオープンに行われるべきだとしてBuzzFeedが報道の自由や国民の知る権利よりも委員の意見を優先したのか質したところ、

「(人物の特定禁止と録音禁止でも)僕はオープンな議論をしていると思っている。みなさんどう思われるかわかりませんが」と答えた。

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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