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Updated on 2019年12月26日. Posted on 2019年10月25日

著名人の来院写真、個人の体験談、誇大広告...... 血液クレンジング提供のクリニック 医療広告ガイドライン違反のおそれも

批判を浴びている「血液クレンジング」を提供するクリニックのウェブサイトなどが、医療法に基づく医療広告ガイドラインに違反しているおそれが明らかになった。

科学的根拠に乏しいのに、アンチエイジングや疲労回復のみならず、がんや心筋梗塞、HIV除去など適切な治療を受けなければ命にも関わる病気に効果があると宣伝し、批判を浴びている「血液クレンジング」。

グランプロクリニック銀座 / Via granpro-clinic.com

「グランプロクリニック銀座」のウェブサイトに掲載されている「ご来院情報」。血液クレンジングに限らないが、政治家の野田聖子氏、血液クレンジングをしているタレントの田中律子さんなど多数の著名人の写真を掲載し、「様々な業界で活躍するセレブリティやVIPの方々からも高い信頼をいただいております」と書いている

この療法を提供しているクリニックのウェブサイトやSNS投稿、体験談を掲載している著名人の発信を見てみると、著名人が来院していることを写真入りでアピールしたり、個人の体験談を掲載したりなどしている。

これは医療法に基づく「医療広告ガイドライン」に違反しているおそれがあることがBuzzFeed Japan Medicalの調べでわかった。

不当な広告によって、一般の人の健康や命に害が及ばないように医療機関の広告は厳しく制限されている。

医療広告を管轄する厚生労働省医政局総務課はBuzzFeed Japan Medicalの取材に対し、「具体的には個別事案を自治体が調査して判断するが、ガイドラインに違反している可能性がある」としている。

著名人の来院を強調 「比較優良広告」のおそれ

ガイドラインでは、(1)患者の受診などを誘引する意図があること(誘引性) 、(2)医業や歯科医業を提供する人の名前や医療機関名が特定可能であること(特定性)がいずれも満たされれば医療広告とみなされ、規制の対象となる。

例えば、来院した著名人の写真などを、クリニックがホームページやInstagramに載せていることなども医療広告のガイドラインに違反する可能性がある。

グランプロクリニック銀座 / Via granpro-clinic.com

「グランプロクリニック銀座」ではウェブサイトの「ご来院情報」というページで、血液クレンジングを受けているタレントの田中律子さんや、政治家の野田聖子氏(血液クレンジングを受けたかは不明)らの写真を載せ、「様々な業界で活躍するセレブリティやVIPの方々からも高い信頼をいただいております」と宣伝する。

また、タレントの山田まりやさんが血液クレンジングを受けた様子を紹介する同クリニックのInstagramには、写真と共に以下のように書いていた。

「血液クレンジングと水素点滴、栄養分析を受けられていきました!」


「カウンセリング・診察が丁寧でご自身の悩みにあった施術を提案できることにとても満足いただくことができ、今後も定期的に通院いただけるとのこと」

グランプロクリニック銀座 / Via instagram.com

これは、医療広告ガイドラインが「他の医療機関より優れていると誤解を与える」として禁止している「比較優良広告」に当たる可能性がある。

著名人との関連性を強調するなど、患者等に対して他の医療機関より著しく優れているとの誤認を与えるおそれがある表現は、患者等を不当に誘引するおそれがあることから、比較優良広告として取り扱うこと。(「医療広告ガイドライン」より)

医療広告ガイドラインを管轄する厚生労働省医政局総務課の課長補佐、山内由紀枝氏も「お話を聞く限り、比較優良広告に当たりそうですね」と話す。

厚生労働省

医療広告ガイドラインで禁じられている「比較優良広告」の具体例。「著名人も当院で治療を受けております」はアウト

個人の体験談も違反のおそれあり

「赤坂AAクリニック」では、血液クレンジングを受けた個人の体験談を、掲載している。

これも、患者の主観に基づく治療内容や効果に関する体験談を掲載するのを禁じるガイドラインに違反するおそれがある。

赤坂AAクリニック / Via a3-clinic.com

高血圧や高脂血症の患者が血液クレンジングを受けた後に改善した体験談をクリニックのウェブサイトに掲載している

個人の感想を広告してはならない理由について、ガイドラインではこう解説している。

こうした体験談については、個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがあることを踏まえ、医療に関する広告としては認められないものであること。(「医療広告ガイドライン」より)

赤坂AAクリニック / Via a3-clinic.com

赤坂AAクリニックでは、漫画家に血液クレンジングを体験してもらい、疲労回復などの効果を強調する漫画をクリニックウェブサイトに掲載している

さらに、著名人が、クリニックから自身でブログやSNSでクリニックが特定されるように治療を勧める内容の体験談を書いているものも散見されるが、もしクリニックから広告料などの便宜を受けて宣伝を依頼されて書いている場合は、違反している可能性がある。

広告料を受け取っていない場合でも無償で施術を提供されている場合はどうなのか。厚労省の山内課長補佐はこう答える。

「そこはどのようなやりとりがあったかを個別に判断する必要がありますが、明確に依頼を受けていて、利害関係が発生している場合は、直接広告料を受け取っていなくても規制の対象になる可能性はあります」

科学的根拠が乏しいのに効果を強調「誇大広告」の可能性

医療広告ガイドラインでは、国内未承認の治療や適応外で医薬品を使う自費診療の内容を広告することは原則禁じている。

ただし、医師の診療上の裁量権に配慮して、自由診療であることや、治療内容、標準的な費用、治療期間や回数などを明示していれば掲載できるとする「限定解除」という要件がある。

この点をチェックすると、副作用やリスクについてはあまり書いていないクリニックが目立つが、概ねクリアしている施設が多い。

だが、以下のような形で科学的な根拠が乏しいにも関わらず、病気への効果や効能を過大ともとれる表現でウェブサイトに書いているクリニックが目立つ。

「基本的には万病に効くと言われます」


「身体中をめぐる血液の浄化改善は、どんな不調にも良い効果を与えるのです」


「オゾンにより活性化された血液を体内に戻しいれることで、体全体の活性化を実現する若返り治療です」

各クリニックが血液クレンジングとして勧めている病名も、適切な治療を受けなければ、危険なものも多く挙げられている。

赤坂AAクリニック / Via a3-clinic.com
東海渡井クリニック

ちなみにBuzzFeed Japan Medicalが日本エイズ学会理事長で熊本大医学部教授(レトロウイルス学)の松下修三氏に、血液にオゾンを混ぜてHIVを除去できる可能性について尋ねたところ、以下のように答えた。

「ナンセンスです」

中には、「ステロイド剤や抗がん剤を利用せずに免疫力を高める」などと、標準治療を忌避させかねない表現を使うクリニックもある。

こうした広告は医療広告ガイドラインの禁じる「虚偽広告」ではないのだろうか?

これについても厚労省の山内課長補佐はこう答える。

「虚偽広告とまで言えるかどうかわからないですし、個別の事案については見ていないのでなんとも言えませんが、一般論で言うと、お話を聞く限り、一般の人が広告された内容から受ける印象や期待感と、実際に提供される医療行為に相違がある場合、誤認を与える可能性があるならば誇大広告であると考えられます」

「これは患者が明らかに誤認したという結果がないとしても、常識的な判断として誤認させ得る内容だと判断されれば、広告ガイドライン違反と認定されます。実際にどのように書かれているのか、ウェブサイトなどに表示されているもの全てを見て、総合的に判断することになります」

厚労省によると、書きぶりによっては医療機関だけでなく、学会のウェブサイトも規制の対象になる。さらに、こうした広告は、医療法だけでなく、医薬品医療機器等法(薬機法)や景品表示法でも規制を受けている。

「至らない点は改善したい」「行政の指導に従い、修正すべき点は修正する」「取材には答えられない」

グランプロクリニック銀座の出資者で広報も担当している佐々木広行氏は、BuzzFeed Japan Medicalの取材に対しこう答えた。

「広告については我々もコンプライアンス(法令遵守)を十分勉強していないところがある。広告会社に任せきりで来たので、しっかり勉強して管理していかなければいけない。不明確なところは法律に詳しい専門家にご指導いただいて改善していきたい」と話した。

ただし、国内未承認の治療法について効果・効能を書きすぎているのではないかという指摘に対しては、「理事長、院長が専門の学会で科学的根拠に基づいてやっている。科学的根拠に基づいた医療を追求していますので、誇大広告にはならないと思っています」と否定した。

しかし、効果・効能の表記については改善する必要はないということか尋ねると、「医療法が変わったと聞いていますので、しっかりうちの医師たちと話して法律的な専門家とも話して改善していきたい。どの部分が至らない点かというのを専門家を入れてきちんと検証し、至らない点は改善していきたい」と話した。

また、「赤坂AAクリニック」は広報担当者という女性が、「質問は見ましたが、今、当院でお答えできることはない。違反しているところは訂正するが、今そういった取材には答えられない。どなたさまにもそうお話ししている」と答えた。

東海渡井クリニックの渡井健男院長は、「保健所や厚労省医政局に相談して、必要な書類やエビデンスを出して一つ一つ検証し、当局に判断していただく。修正すべきは修正したい。適切な方法で当局に相談し、行政の指導には従う」と話した。

ガイドラインに違反していると感じたら「通報」を

個別の医療広告の内容を調べ、ガイドラインに違反しているのかを判断するのは、都道府県などの自治体だ。

「具体的な判断は自治体が個別事例を検討した上で判断しますが、違反している場合、改善指導を行った上で改められない場合は罰金などの罰則が加えられる可能性があります」と山内さんは話す。

厚労省は委託事業「医療機関ネットパトロール」を2017年より設置し、ガイドライン違反の可能性があるウェブサイトの情報提供を募っている。

厚生労働省

医療広告ガイドラインが広告を禁じているのは、広告に掲載していいと定められたもので、主に以下のような広告だ。

・虚偽広告(内容が虚偽の広告)


・比較優良広告(他の病院や診療所と比較して優良であるとする広告)


・誇大広告(必ずしも虚偽ではないが、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張して表現し、人を誤認させる広告)


・公序良俗に反する内容の広告


・患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告


・治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療前、治療後の写真等の広告


詳しくは「医療広告ガイドライン」や「医療広告ガイドラインに関するQ&A」を参考にしてほしい。


Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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