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「月経があるのは女性だけではない」見過ごされてきた人たちとは

男女の性別にあてはまらない人々がいる。生理を巡る社会的・医学的な議論の中で、その存在が認知されていないと、適切な産婦人科医療へのアクセスは難しくなる。

子宮のある人なら誰でも、毎月の生理と付き合いすることになる。お気に入りの下着を台無しにする汚い血液、お腹を襲う痛みや子宮痙攣、不安定になる気分。月経が身体的または精神的に体とつながっていると考える人もいれば、できるだけ楽に乗り越えたい月に1度の厄介者と考える人もいる。

しかし、トランスジェンダーや、男女の性どちらにもあてはまらない「ジェンダー・ノンコンフォーミング(gender nonconforming)」の人たちの多くにとっては、その期間は、より一層不快なものになる。身体的な違和感があるからだ。

23歳のジェンダー・クィア(genderqueer:既存のジェンダー分類に当てまらない人、ジェンダー・ノンコンフォーミングの別称)で、ライターであり武道家でもあるジェシー・ディバインさんは、BuzzFeed Newsに自身の月経中のことについて、こう話した。「自分の中で変化が起こって、自分が疎外されているような感じです。他の人から話しかけられている時も、そこに実在しない女の子に話しかけられているようです」

「(自分の月経が) 間違っているような、体の一部ではないような感覚があります。自分の体の中から出てくるものではないような、自分に起きてはいけないもののような感覚です」

ディバインさんは、月経中、体の働きがジェンダーアイデンティティ(性自認)と一致しないために生じる喪失感や孤立感に苦しむ1人だ。27歳の無性別者エイミー・レヴァリントンさんも、同じような体験をしている。

「(自分の月経が) 間違っているような、どうしようもない感覚があって、体の一部ではないように感じます。まるで自分の体の中から出てくるものではないようで、自分に起きてはいけないもののような感覚です」と語る。

ジェンダー・クィアのフランク・ライさんも、月経と複雑な付き合いをしている。「葛藤を感じています。自分を自分らしくしているものでありながらも、それがなりたい自分だとはあまり思わないからです」。

半分の人間にとっては避けられない現実である月経は、長く社会ではタブーとされてきた。何十億もの人々が月経を体験するにも拘わらず、それについてオープンに話すことは良しとされないのだ。

昨年、月経の「汚名返上」に関する議論が白熱した。2015年1月に開かれた全豪オープンで、テニス選手のヘザー・ワトソンが、結果が振るわないのを生理のせいにし、「単に女性特有の現象が原因だと思う」と話した。さらにその後、2015年3月には、Instagramが女性の月経写真を削除したことが悪い意味で有名になった。その後、女性はこう返信した。「女性を蔑む社会のエゴやプライドを満足させなかったことについて、謝罪するつもりはありません」。

しかし、シスジェンダー(cisgender:身体的性別と自分の性自認が一致している)の女性が、女性の体のことについて話し始めたとはいえ、トランスジェンダーやジェンダー・ノンコンフォーミングの人々のことは、議論から抜け落ちている。

これは一般的なフェミニストの語りや、医療実践において、月経が「女性の体」や「女性の健康」と強く結びつけられていることが原因だ。トランスの人々のニーズが医療システムと一致しないため、その人たちの存在が忘れられてしまうことがよくある。そのような排除はあってはならない。


多くの医療従事者の目には、子宮がある人は女性として映る。2015年に発表されたJournal of Emergency Nursingの研究によると、医療従事者は性とジェンダーをしばしば同じように使っているという。このような混同は、医学部で学んでいる段階から始まっている可能性がある。

公認看護師でサンフランシスコのLyon-Martin Health Servicesの臨床部長のエリザベス・セケラさんは、BuzzFeed Newsに対し、医学部ではトランスの人々に対する医療の授業が選択科目として提供されていることがあるものの、実際のカリキュラムでは必須科目とはなっていないと語る。

「多くの医療従事者は、自ら学ばないのだと思います。患者を診るのが大変で、学ぶべきことの量も信じられないほどたくさんあるからです」と彼女は言う。医療従事者に必要なのは、「トランスの人々が直面している問題を理解することです」。

多くの医療従事者はトランスの問題に精通していないので、トランスやジェンダー・ノンコンフォーミングの人々は、ジェンダーのアイデンティティについて医療従事者に教える苦労を背負うことになる。

「私はいつも医者からジェンダーを間違えられます」とディバインさんは言う。「『トランスジェンダー医療』のはずのクリニックでさえも、教育がされていません。トランスジェンダー医療を提供していても、問診票に『つけて欲しい代名詞』を書く欄があったりするのです。二分法的思考に囚われているのです」。

「トランスやノンバイナリーの人の多くは特に、自分の体は健康だと感じています。問題なのは、自分の体の一般的な受け取られ方です」

特に複雑なのは、婦人科医療だ。月経のような体の働きから生じる身体的違和感の治療として、34歳のノンバイナリー(non-binary:性別を男女に特定しない人)のコウリー・Eさんは、子宮からの出血を減らす、ないし完全に止める子宮内膜の除去や、子宮摘出をしてくれる医師を探そうとした。「子宮を摘出してくれる産婦人科医を見つけようとしましたが、何の『問題』もなくやってもらえるわけではないようです」と言う。「これはジェンダー関連の理由のためだと私が説明しても、保険は適用されないので、費用は法外に高くなります」。

子宮摘出手術には、7000ドルから1万2000ドルほどかかることもしばしばだ。アメリカ産婦人科医師会議 (ACOG) によると、ほとんどの医療保険のプランはジェンダー確認手術をカバーしていないという。

このように苦闘しているのは、コウリーさんだけではない。ノンバイナリーのミーガン・ノーフさんも、子宮摘出をすることに関しては譲らない姿勢だ。「『まあ、そのうち気が変わるでしょう』といった家父長主義的な考えがあるように思います」と、ノーフさんは言う。

26歳でジェンダークィアのテリーさんも、子どもを産む意思がなく、手術をしてくれる医師を探している。「私は今でも、自分に子宮がありながらも、絶対にそれを使うことはない、と医師を説得できる方法を探しています」。

クリーブランド・クリニックの骨盤の再建外科医であるセシール・ウンガー医師は、トランスジェンダー患者に治療を行う集学的治療チームの一員だ。ウンガー医師は、20代またはそれ以下の人の子宮摘出手術を頻繁にしている。「産婦人科医が若い患者の子宮摘出手術をやりたがらない理由は、将来後悔するリスクがあるからです」と、ウンガー医師はBuzzFeed Newsに語る。

「子宮摘出手術をすれば、生物学上の自分の子どもを持てなくなることを、患者は理解する必要があります。他によく考えておくことが重要なのは、この手術が若い患者の骨の健康に影響を与える可能性があることです。エストロゲンがなくなることによる骨への悪影響を避けるためには、異性ホルモン、ビタミンD、カルシウムの投与を続ける必要があります。これらは大切な検討事項で、医療従事者は、これらの要素の重大さが理由で、手術を行いたがらないのかもしれません」

コウリーさんとノーフさんが子宮摘出手術をする医師を見つけたとしても、その医療クリニックは自宅からは何キロも離れた場所に位置する可能性もある。ウンガー医師の患者の多くは、クリーブランド・クリニックの近くには住んでいない。しかしそれでも、他では手術を断られるため、患者らは彼女のもとを訪れている。

しかし、トランスやジェンダー・ノンコンフォーミングの人の全てが、子宮に違和感を持っているわけではない。多くは、体に馴染んでいると感じている。しかし、身体的違和感を経験していない人でさえも、医療システムの課題に直面している。産婦人科となると、特にそうだ。

「身分証明書が『男性』となっていたことが理由で、パップテスト(子宮頸癌を発見するために使われる細胞診検査)の保険適用を拒否されたトランスの男性を知っています」と、ディバインさんはBuzzFeed Newsに語った。「どのような人なのかが理由で保険が拒否されるとなると、トランスの男性は一体どうやって自分の体を守ることができるのでしょう?」

「私はこれが画期的な考え方だとは思っていませんが」と彼は付け加えた。「医療は、人の体と心の両方を診なければいけません。たとえ一般的に受け入れられている基準で、この2つが『一致』していない場合であってでもです。トランスやノンバイナリーの人の多くは特に、自分の体は健康だと感じています。問題なのは、自分の体の一般的な受け取られ方です」

一般的な認識は、大きな変化を与える。トランスジェンダーの人々の信仰や精神性を専門とする団体Transfaithによると、ノンバイナリーの人の36%が、差別に遭うことを恐れて、医療を求めなかった経験があるそうだ。サンフランシスコの公認看護師セケラさんはBuzzFeed Newsに対し、患者の性別アイデンティティが理由で、医療従事者が医療の提供をあからさまに拒否したり、患者に強く迫ることが時々あると語る。

例え患者が優秀な医師を見つけることができるとしても、トランスやジェンダー・ノンコンフォーミングの人々は「それぞれの医療ニーズが保険の適用を受けられるようにするために、奮闘しなければならないこともよくある」のだと、セケラさんは話す。

例えば、トランスの人がホルモン補充療法の処方を受けるには、まず性同一性障害と診断されなければならないことが多い。トランスの多くの人は、この性同一性障害は、それぞれの性別アイデンティティ全体を、単なる身体的違和感の症状というよりも、治療が必要な病気にまで変えてしまうものだと感じている。


ジェンダーの本質主義は、医療の世界だけでなく、社会や活動家の領域にも浸透しており、この領域では、生理に対する負のイメージを取り除くことは、長くフェミニストの目標となってきた。

昨年10月、ラッパーのT.I.があるインタビューで、「感情的に決断を急いで下す」女性の傾向を理由として、ヒラリー・クリントンには投票したくないと話した。昨年8月には、共和党の討論会の後、ドナルド・トランプ氏がメジン・ケリーの厳しい質問を「目や他の場所から血が流れるほどだ」と言ってかわそうとした。

後にトランプ氏は、彼女の鼻のことを言おうとしたと述べたが、既にイメージは低下し、月経を巡る負のイメージは再び公開討論の場に現れた。しかし、我々の社会が声高に呼びかけ、やがては月経を恥とするスティグマを取り除く方へと向かって努力する中でも、その負のイメージの脱却は全ての人には広まっていない。

歴史的に見れば、フェミニズムは必ずしもトランスの人々を心から歓迎してきたわけではなく、現在でも快く思っていない人は多くいる。1970年代から1980年代にかけてのフェミニズムの第2波の時代には、グロリア・スタイネムなどの象徴的な人物が、トランスジェンダーの人々は異常で、運動に参加するには相応しくないと考えていた (ただし以後彼女はそのスタンスを変えている)。

しかし、フェミニストの多くの思想家らは、今でも断固としてトランスジェンダーに対して排他的だ。ニューヨークタイムズのオピニオン記事では、エリノア・バーケットがケイトリン・ジェンナーに対する不快感を示した。エリノアは、ケイトリンのことを、女性らしさの概念を低俗化している人と考えているのだ。

彼女は、他の多くの人と同様に、トランスの女性は、女性として生まれた体が理由で恥ずかしさを感じたり、傷つけられたりしたことがないので、フェミニストの議論には含めることはできないと考えている。トランスの女性の経験を卑しめる時、トランスに対して排他的なフェミニストは、生まれた時に女性の体を与えられ、女性としてのアイデンティティを持たないながらも、その体が理由で、シスジェンダーの女性と全く同じ程度の、また多くの場合では明らかにより多くの辱めや暴力を受けている他の人たちの経験を見過ごしている。

月経を巡る国民的議論から取り残されたこれらの人たちの経験は、ようやく少し注目を集め始めている。2014年夏には、ニューヨークに本社を置く下着会社のThinxが「月経中の女性のための下着」というタグラインを作り、多くの反発を受けた。Thinxの共同設立者のミキ・アグラワル氏はBuzzFeed Newsに対し、会社はもっと包括的になるべきだと求める人からの大量のメールを受け取ったと語る。

2015年11月には、Thinxはトランスの男性向けの月経用下着のシリーズを作った。前年の2014年には、Clueというジェンダーに区別のない月経管理アプリが発表された。また、医療機関ではまだまだ遅れているものの、ペンシルベニア大学や国内のいくつかの医学部が、LGBTの人の医療を改善するため、2014年にプログラムを立ち上げた

どのジェンダーの人でも、月経がある人なら誰でも、気分の変動や血液の流れ、疲労と上手く付き合うことができる一方、トランスやジェンダー・ノンコンフォーミングの人々は、月経に関して具体的なニーズを抱え、それはしばしば見逃されている。

明白なものであれ、人目につかないものであれ、月経によりこの人たちが経験する暴力について、他の人々の話に耳を傾けようと一歩を踏み出す時にのみ、私たちは本当の意味で一般の認識を変え始めることができるのだ。


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