食べ物を落とした時の「5秒ルール」、本当に問題ないのか調べてみた

    食べ物を床に落としても、5秒以内なら食べても問題ないという「5秒ルール」。だが、本当に問題ないのだろうか。

    最後のチョコチップクッキーを土の上に落としてしまった。フライドポテトがテーブルの上に落ちた。クマちゃんグミの袋を開けたら中身がこぼれてしまった。

    「これ、まだ食べられるかな」と悩んだ経験は、誰しも必ずあるはずだ。

    「5秒ルール」のほか、「10秒ルール」「20秒ルール」など、秒数の規定は無数にあるが、巷に広まるこのルールの大まかな前提は、一定の時間内なら、落とした食品はバクテリアに侵されない、というものだ。

    これが本当かどうかを分析したいと考えた場合、まずは、汚染のリスクについて理解する必要がある。

    一般家庭に存在する可能性のある最も有害なバクテリアのひとつが、「ネズミチフス菌」だ。

    サルモネラ属の特に厄介な菌で、世界中で動物の消化管や排せつ物の中に見られ、われわれの食べ物に入り込む可能性がある。

    このバクテリアは、生の食品や、加熱が不十分な食品を通して摂取され、バクテリアの数が多いと吐き気を引き起こすことがある。

    多くのバクテリアが胃酸で死ぬが、生き残ったバクテリアは小腸に移動して繁殖を始め、炎症を起こし、腹痛、下痢、嘔吐を引き起こす。

    つまり、厳密に言えば、胃の病ではなく腸の病だ。

    加熱が不十分な食品は食べないようにしている、という人でも、ネズミチフス菌は、家の中の乾いたものの上で最長で4週間生存できるから要注意だ(つまり、キッチンはもっと頻繁に掃除すべしということだ!)。

    ほかのバクテリアにも同様の生存率が見られ、こうした研究に対して興味深い結果を提供している。

    5秒ルールを検証した研究は、ネズミチフス菌に汚染されたいくつかの表面の上に、ボローニャソーセージを落として行われた。

    具体的には「タイル」「カーペット」「木材」という3種類の床の上だ。

    タイルの上にボローニャソーセージを落とすと、5秒間でほぼ99%のバクテリアが食品に付着した。

    一方カーペットでは、バクテリアはほとんど付着せず(0~5%)、木の床では、付着したバクテリアの量はさまざまだった(5~68%)。

    つまり、キッチンにカーペットを敷くというのは、それほど悪いアイデアではないようなのだ。

    別の研究では、パストラミ(香辛料で調味した肉の燻製食品)のように水分を多く含む食品は、クラッカーのような乾いた食品よりも、床のバクテリアがずっと多く付着することがわかった。

    2秒と6秒でテストしても、こうした結果に変わりはなかった。

    それにより、最も大切なのは時間の長さではなく、食品がどれだけ水分を含んでいるかであることが伺える。

    最後に紹介するのは、「日常的な環境」を代表する大学のキャンパスを利用した実験だ。

    研究者たちは、学生が食事をとるさまざまな場所で、リンゴのスライスと、「スキットルズ」(ソフトキャンディ)を床の上に落とし、食品がサルモネラ菌に汚染されるにはどれくらいの時間がかかるかを調べた。

    驚いたことに、床に放置された5秒、10秒、あるいは30秒という時間に関係なく、サルモネラ菌は、落とした食品に付着しなかったという結果が出た。

    これは、こうした公共の場所の床には、サルモネラ菌がほとんど存在しなかったということを意味している。

    とはいえ、ほかのバクテリアにも範囲を広げた別の研究では、わずか2秒接触しただけで汚染が見られたという。

    5秒ルールは意味がなかった。

    つまり、5秒ルールは、たくさんの不確定要素によって変わってくる。

    まずは、どんなバクテリアが存在するか、どんな食品を落とすのか(水分がどれくらい含まれているか)、そして、どんな種類の床に落ちるかということが重要になる。

    簡単に言うと、汚染という観点からすれば、5秒ルールは意味がない。

    バクテリアは一瞬で食品に移動してしまうからだ。

    だが、具合が悪くなるかならないかは、さまざまな要素が絡んでくる。

    この記事はScribe出版のハードカバー本「Asap SCIENCE: answers to the world's weirdest questions, most persistent rumours, and unexplained phenomena」から抜粋したものです。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:浅野美抄子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan