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ガチのオタクに「推しにお金をかける理由」を聞いたら、推しのいる生活が羨ましくなってきた

「これは“浪費”ではなく“愛なのです”。」の言葉の意味とは。

「オタク女のリアルな生態が描かれている」とSNSで話題になっているエッセイ本、“浪費図鑑”。

Misato Nagoya / BuzzFeed

これまで、オタクについての本はたくさん出版されてきましたが、ここまでリアルな本は、未だかつて見たことがないように思います。

若手俳優、同人誌、宝塚歌劇団、東京ディズニーリゾートなど……。「浪費図鑑 ―悪友たちのないしょ話―」では、いろんな推しを持ったオタク女たちのお金や時間の使い方、推しとの向き合い方などが赤裸々に描かれています。

著者グループ「劇団雌猫」のもぐもぐさんとかんさんに、オタクと浪費の関係についてお話を伺いました。

劇団雌猫のかんさん、もぐもぐさん(左から)
Misato Nagoya / BuzzFeed

劇団雌猫のかんさん、もぐもぐさん(左から)

「浪費」をテーマに、色々なジャンルの“お金”の話を集めた

ーーオタクのリアルな毎日が綴られている「浪費図鑑」。この本のテーマは「オタク女の浪費」ということですが、なぜ浪費というテーマを選ばれたのでしょうか?

もぐもぐ:この本を書いたグループ「劇団雌猫」は、私とかんを含め女性4人なんですが、全員なにかしらのオタクをやっているんです。

4人で会うと、それぞれが推しているジャンルの話なんかをしているんですけど、たまに「やばいマジで今月使いすぎた〜!」みたいな話が出ることがあって。推しているジャンルがバラバラでも“お金”の話だけは全員に共通している話だったんです。

だからといって、各自のお給料や、貯金額、何にいくら使っているかっていう踏み込んだお金の話って、仲が良くても聞きにくいし、話しにくかったんですよね。

でもあるとき、みんなで飲みに飲んで酔っ払ったのをきっかけに、詳しいお金の話をしてみたらすごく面白かったんですよ! 共感できるところもあれば、意外なこともあって……。

よくよく考えてみれば、誰しも何かしらの趣味にお金を投じているじゃないですか。なので「お金を投じる」という括りであれば、いろんなジャンルの人たちが一緒に話ができるなと思い、この本では「浪費」をテーマにしました。

オタクとは、神様の話なのである

ーー浪費図鑑を読んで、印象的だったのは「地下声優で消費する女」です。

Cくんは紛れもない地下声優(比較的小規模なイベントや舞台の仕事をしている声優)だった。(中略)ある時Cくんは、クラウドファンディングで2万払うと良席のチケットとチェキ券がもらえるアニメイベントに出演した。……高い。良席のチケット付きでも、だ。ファン100人規模の地下アイドルと、1000円程度でチェキが撮れるこの時代に。しかし、迷いなく参加した。(浪費図鑑より引用)

推しを愛する気持ちと、お金とのせめぎ合いがリアルに描かれていて、本の帯にある「これは“浪費”ではなく“愛なのです”」という言葉を体現しているなと感じました。

もぐもぐ:本当にそうですね。グッズをたくさん積んだり、推しが出るまでガチャを回したりするには、時にはかなりのお金が必要だったりします。生活を切り詰めて頑張っている人もいると思うんですが、そうやってまでオタクでい続ける理由って、どんなに辛いときも良かったことを思い出して頑張れるからだと思うんです。

かん:わかる! オタクってすごく楽しいけど、たまに辛いこともあるし、「お金使いすぎた……!」ってなっちゃうこともあるんですよね。でも、辛い思いをしたって、お金を使いすぎたって、それで見返りがあれば「良かった!」って思えるんですよ。

もぐもぐ:なんだろうね、この感じ。宗教と同じで「自分がなにを信じるか」っていう話なんじゃないかなって思います。推しに“神様”を見出しているのかもしれません。

ーーつまり、オタクは宗教なんですか…?

もぐもぐ:好きなジャンルや推しに対してたくさんお金を使うことをオタク用語で「お布施」と言いますが、思えばこれも宗教の言葉ですよね。推しへの愛は信仰心……。

気持ちの面でも「来年の夏に好きなアニメの新作が決まったから、そこまでは頑張って生きよう!」みたいになることはよくあります。長いスパンで生きるエネルギーをもらうという意味でも「神様」って感じがします。

かん:辛いことも耐えられるよね。この前も、自宅から1時間半くらいかかる幕張メッセでライブがあって、普段の仕事でそれくらい電車に乗るのは憂鬱なのに、好きなアイドルに会うためならずっとわくわくしてました! 全然辛くない!

もぐもぐ:往復新幹線で関西まで日帰りで舞台観劇とか、興味がない人にとっては「なんで時間もお金もかけてわざわざ?」だろうけど、全然疲れずにむしろ元気になります。

イスラム教って1日5回礼拝があって、外野から見たら大変そうじゃないですか。前に読んだ本に「1日3回ごはんを食べるの大変じゃないでしょ、私たちにとって礼拝はそんな感じ」と書いてあって。確かに心を整えるためにする行動、人には理解されなくても自分には意味があるよなぁ、と思いました。

かん:うんうん、言いたいことはわかる。やっぱりひとつの「宗教」だね。

徳を積むための「入り出」

ーーオタクは宗教だとすると、本の中にある「宝塚歌劇団で浪費する女」のエピソードは、非常に信仰心の高さを感じました。

宝塚のファンには「入り出」という活動がある。入り待ち、出待ちを指すその言葉の通り、楽屋入りする贔屓(宝塚ファンのあいだでは、最も好きなその人のことをこう呼ぶ)を劇場前で待ち、お手紙を渡し、ほんの少し会話をするというシステムだ。時間にして約5分。私の贔屓は話が得意なタイプの人ではないので「おはようございます」「今日も頑張ります」という言葉と、一言二言の他愛のないことを話してくれた。(中略)でも、会話の中身は大して重要じゃなかった。お手紙を渡す瞬間しっかりと目を見て「ありがとうございます」と言ってくれることがたまらなくうれしかった。(浪費図鑑より引用)

もぐもぐ:私は宝塚も好きなんですが、「入り出」は本当に敬虔な宗教って感じで好きです。雨の日も風の日も関係ないので……。

かん:毎日ってすごいよね。雨が降ってる日は傘さしていいの?

もぐもぐ:雨の日はかっぱ! 傘をさすと、後ろの人の邪魔になったり、ぶつかったりして周りに迷惑をかけちゃうからダメ。時には冷たい雨に打たれながら1時間くらい外で待つところもあります。

でも、“入り出”の一番大変なところは、朝の早さかも!

8時に日比谷の劇場前で待つためには、7時45分くらいには既に集合しておく必要があるんですけど、いつも会社に行くときにベッドから起きる時間よりも早いんですよ! 普段家を出る時間どころか、起床時間より早くその場に着いてないと行けない……部活の朝練みたい(笑)

朝起きるのはちょっと辛いけど、入り待ちをすると心が洗われるというか、「今日も徳を積んだ!」って幸せな気持ちになれるんです。私はせいぜい週末に通うくらいですが、それこそファンの中には、毎日のように入り出をしている人もたくさんいます。愛を行動で示せるのってすごく嬉しいし、信心が満たされるんですよね。

地下鉄広告を出してでも愛を示す

ーーオタク活動となると、海外に現場があるジャンルもありますよね。浪費図鑑の中盤「EXOで消費する女」のフットワークの軽さが印象的でした。

ある日突然崖から転がり落ちるようにはまり、気が付いたらチケットを握り締め、彼のステージを求めて身一つで海外公演に足を運ぶようになった。(中略)行きたい気持ちがあって、金銭的に叶えられるなら、道なきところに道をつくり、素早く飛ぶ。ほら幸せ。資金も自分の心もアイドルも有限。全てが合わさっているなら健全!(浪費図鑑より引用)

もぐもぐ:フットワークの軽い人は本当に世界中へ行っちゃいますね。でもみんな「大変!」って感じではなくて「目的がある旅行」って感じかも。コンサートのついでに行く観光地もしっかり調べるしね。

かん:私もSEVENTEEN(通称:セブチ)っていう韓国のアイドルグループを推しているのですが、周りのセブチファンの子が韓国での公演に行ったときは、現地で聖地巡礼をしてるみたいです。推してるグループが所属している事務所の前に、プレゼントを置きに行ったり。

もぐもぐ:えっ!? 勝手に置いていいの!?

かん:なんかね、置くらしい!(笑) 事務所の前にプレゼントを置いて、ファンのみんなで写真を撮るんです。

あと、事務所の周りの周りのバス停とかに「お誕生日おめでとう!」みたいなことが書かれた推しの広告を、オタクが自費で出したりします。

もぐもぐ:確かにやってるね! 地下鉄広告とかも見たことあるよ。

かん:韓国のアイドル事務所ってスタジオを併設していることが多くて、事務所へレッスンに通うメンバーがけっこういるんです。なので、事務所の周りに広告を出せば、メンバーが見てくれるかもって!

「神様とは付き合えない」

ーー三次元のアイドルは「熱愛発覚!」みたいなニュースをよく聞きますよね。推しがニュースになっちゃったら、辛くないですか……?

もぐもぐ:三次元オタクっていうと「アイドルの恋愛スキャンダルで発狂する」みたいなイメージがあるかもしれないんですけど、そこはけっこう人によるかもしれないですね。

かん:そうそう! 確かに、アイドルのスキャンダルで傷つくガチ恋の人もいるんですけど、私は「付き合えないのになんで好きなの?」って言われると「え?神様とは付き合えないけど?」ってなっちゃいますね(笑)

もぐもぐ:現実の男性のタイプと、アイドルで好きになるタイプって違うよね?

かん:全然違う! 現実だと「安定してる人」とか「優しい人」がいいなって思うけど、神様としてのアイドルは逆のタイプがいいんですよね……!

犬派と猫派ってよくいうけど、私の場合、アイドルは絶対“猫派”! 掴み所がなくて、謎な感じが最高!

もぐもぐ:あの、浮世離れしてる雰囲気ね。

かん:そうそうそう! でも、彼氏とか旦那がそんなんだったら不安でしょうがないと思うんですよね! 浮気の心配とかあるし(笑)

でも、そういう人こそ、ステージで輝くんですよね。

推しがいる生活は、心が安定する

ーーお話を聞いていると、なんだか推しのいる生活が羨ましくなってきました。

もぐもぐ:推しがいると本当に楽しいですよ! 日本人は無宗教って言われるけど、オタクには推しという神様がいるんじゃんって思います。

かん:本当にそう! よく、女の子アイドルがおじさんに騙される話って聞くじゃないですか。なんでそういうことが起こるかっていうと、女の子に心の支えがないからだと思うんです。なので、不安定になったときに悪いおじさんを宗教にしてしまうんじゃないかなって。

そうやって考えると、オタク女はおじさんにとってかなり落としにくい存在だと思います。信じてるものがあるので! 「おじさんと遊びに行くぐらいなら現場に行く」みたいな(笑)

ーーじゃあ、やっぱりなにかしらのオタクになったほうが……?

かん:そう! 推しは絶対に作った方がいいです。

もぐもぐ:神様がいる生活、プライスレス。

かん:神様がいるとむちゃくちゃ心が安定します!

もぐもぐ:情緒不安定な人はオタクになった方がいいと思う。心が安定するから。いやでも、オタクになって情緒不安定な人もいるけど……。

かん:「推しの熱愛発覚が精神的に無理」って人もいるからね……。そういう人は熱愛発覚しない神様を信仰すると幸せになれるかもしれないですね。ミッキーとか、運慶とか、橘真琴とか!