なぜ彼は通報されたのか… 12歳の少年は草刈りをしていた

    「事業を拡大したいと言っています」と少年の母親は話す。「1年中、やりたいと言っています。落ち葉を集めるのも好きですし、雪かきも好きです。全部やりたいと言っています」

    6月末、米国オハイオ州クリーブランドの南にある住宅地で、庭の草刈りをしていた若い黒人の少年などが警察に通報され、その動画がネット上に広まった。

    今年4月にはフィラデルフィアのスターバックスで黒人男性2人が何もしていないのに逮捕され、6月にはサンフランシスコでボトルに入った水を売っていた少女が白人女性に通報されてニュースになっている。

    このような人種差別がアメリカのいたるところで日常的に発生している。そんな中、この出来事は起きた。

    最新の動画を見て、多くの人が、この12歳の少年レジナルド(レジー)・フィールズさんに、たくさんの愛情ある声をかけている。

    レジーさんは、元々は飴を買おうと草刈りの仕事を始めた若き事業家で、今では「ミスター・レジーの芝刈りサービス」を、通年で対応できる造園業へと拡大しようと計画している。兄弟姉妹や従兄弟、従姉妹達を助けるためだ。

    問題の出来事は、6月23日に起きた。レジーさんが、兄弟と一緒に、1ドルショップ「ダラー・ツリー」の駐車場にいたところ、ルシール・ホルトさんの目に止まった。草刈り機を手にしていて、カートにはガス缶、熊手、箒、ゴミ袋が入っていた。そこで、ホルトさんは、庭の芝生を刈ってくれないか、とレジーさんに持ちかけた。

    「必要なものはみんな持っているレジーさんを見て、あんなに準備できていて、目に止まりました」とホルトさんはBuzzFeed Newsに話す。

    「ラブ・アウト・ラウド(Love Out Loud)」と呼ばれる支援グループを運営しているホルトさん(51歳)は、レジーさん、9歳の弟ジェロンさん、11歳の従姉妹たちにとても感心し、その働きぶりを録画して、Facebook Liveで中継した。

    「ここにいる若者たちはみな、悪いことをしているわけではありません」とホルトさんは動画の中で話している。レジーさんが草刈り機を押し、他の小さい子どもたちが手伝っている。

    ところがその数分後、警察が到着した。ホルトさんの話では、黒人の子どもたちがホルトさんの家の庭に侵入していることを心配した白人の隣人が、メープル・ハイツ警察に通報したのだ。10月に引っ越してきてから6回ほど、同じ隣人がホルトさんの家に警察を呼んでいるという。

    BuzzFeed Newsは、メープル・ハイツ警察に連絡をしたが、すぐには返事をもらえなかった。

    ホルトさん宅の敷地と隣の家の敷地には、塀や境界線を示す線がない、と同氏は話す。

    警察が近寄ってきたとき、ホルトさんは携帯電話を取りだして、Facebook Liveの動画を見せた。その出来事から1週間を少し過ぎたころには、動画の閲覧数は50万件を超えていた。

    「子どもたちが外で芝を刈っていたから、警察を呼んだのですか?」とホルトさんは動画の中で話している。

    そして、ホルトさんは、6月20日にギャング闘争に巻き込まれて亡くなったクリーブランド在住の少女サニヤ・ニコルソンさん(当時9歳)に言及した。サニヤさんは車の中に座っているときに、流れ弾に当たって亡くなった。あの銃撃事件もかんがみて、住民はもっと愛情を示す必要がある、とホルトさんは話す。

    「サニヤさんも知り合いだったんだよ」と同じく9歳のジェロンさんは言う。

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    動画には、ホルトさんの子どもたち(13歳と15歳)も映っており、歩道から芝生を掃き出すのを手伝っている。

    レジーさんの母親であるブランディー・マリー・フィールズさんは、動画に対する反響の大きさに驚いている、とBuzzFeed Newsの取材に答えている。世界中から支援の言葉が息子に届いている、とのことだ。

    「通報されるなんて12歳の少年が経験することではない、とみなさんとても支援的です」と語っている。

    レジーさんのために始まったGoFundMeには、2日の午後時点で37,000ドル以上の支援が集まっている。

    元々は、飴を買いたくて、レジーさんは草刈りを始めたのだが、すっかり気に入ってしまい、「ミスター・レジーの芝刈りサービス」を始め、兄弟や従姉妹を雇い、近所でチラシを配り始めた。みなさんからの支援を受けて、レジーさんは事業の拡大を考え始めた、と母親は話す。

    「事業を拡大したいと言っています」と母親は続ける。「1年中、やりたいと言っています。落ち葉を集めるのも好きですし、雪かきも好きです。全部やりたいと言っています」

    「部品を売るお店を開きたいと言っていました。心に決めたようです」と母親は語る。

    レジーさんは自身で運営するビジネスサイトも既に作っている。

    「コメントはすべて読んでいます。ネガティブなコメントはありません」と母親は続ける。

    「いいね、もコメントもすべて読んでいて、『ママ、もっと頑張るように、今やっていることを続けるように、みんなが応援してくれてる』と話しています」

    7月1日、レジーさんが近所の家の芝生を刈っているところに、メープル・ハイツ警察の人がきて、息子に挨拶をした、と母親は話す。警察署に支援や激励のメッセージが多く届けられていて、届けたいから家族の情報を教えて欲しい、とのことだった。

    「アメリカは進み出て、全土から愛情を示してくれました」動画に対する反応をみて、ホルトさんはそう話している。「大きな声を上げて、愛情を示してくれて、本当に感謝しています」

    とはいえ、動画がネット上で広まってから、課題にも直面している。前の晩、誰かが夜中に窓を叩き、立ち去り、家族の安全を案じている。兄弟に一緒に家にいてもらっているという。

    「自分の家の中でも、今は安心だと思えません」とホルトさんは結んだ。

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan