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差別を正当化するフェイクニュース その影響はFacebookだけでなく書籍にも

ロイター通信が報道しているように、ロヒンギャに関するフェイク(偽)ニュースが広がっているのはFacebook上だけではない。

ミャンマー軍が出版した新しい本は、ロヒンギャ危機の事実を曲げて伝えるために、歴史上で実在した写真を改ざんして使っている、とロイター通信が報道している。彼らは歴史を書き換えようとしているようだ。

例えば、 "ミャンマーへ侵入してきたロヒンギャのイスラム教徒" とされる記録写真は、実際にはピューリツァーを受賞した "ルワンダ大虐殺" の写真だ。

アムネスティ・インターナショナルは、ロヒンギャを、世界で迫害されている少数民族のひとつ、と説明している。昨年、国主導で何か月も続いた暴力行為で、70万ものロヒンギャのイスラム教徒が強制退去させられた。国連は、この行為を、 "ジェノサイド(集団虐殺)" と指摘している。

117ページにわたるこの書籍は、ミャンマー軍の広報・心理戦部門からこの夏の初めに出版された。西部ラカイン州におけるロヒンギャのイスラム教徒の記録写真とされている。この地域は、昨年、大量虐殺、強姦、放火に見舞われた。

だが、反転画像検索をしてみたところ、少なくとも "歴史的" とされる8枚の写真のうちの3枚は、軍が説明するものとは異なることを、ロイター通信は突き止めた。

ミャンマー軍の書籍『ミャンマー政治と国軍(原題:Myanmar Politics and the Tatmadaw: Part I)』に掲載されている写真は、 "ロヒンギャに殺害された仏教徒" と紹介されているが、実際には1971年にバングラデシュで撮影された "パキスタン軍に殺害されたバングラデシュ人" のものであることを、ロイター通信は確認している。バングラデシュでは当時、パキスタンからの分離独立を求める運動が激しくなり、軍や過激派による住民の虐殺が起きていた。

"ロヒンギャがバングラデシュからミャンマーへ入ってくる" 写真として紹介されている別のものは、実際には "ミャンマーから出て行く" 写真だ。元の写真を古く見えるように改ざんし、船の向きも逆にされていた。

この本の中では、1948年まで続いたイギリス植民地時代の終わりに、 "ロヒンギャがミャンマーに入ってくる" 写真が紹介されている。しかし、実際には、写真家のマーサ・リアルさんが1996年に『ピッツバーグ ポスト』のために撮り、ピューリツァーを受賞した "ルワンダ大虐殺から逃れる難民" の写真だ。こちらも改ざんされている。

ミャンマー最大の都市ヤンゴンの書店で販売されているこの本に掲載されている情報の殆どは、Facebook上でロヒンギャ危機に関する軍の説明を主に拡散している軍の情報部門True Newsに引用されている、とロイター通信は報道している。

8月末にBuzzFeed Newsが報じた分析では、ラカイン州の議員によるFacebook投稿の多くには、Facebookのコミュニティ規定に基づけばヘイトスピーチと定義されるものが含まれていた。

だが、2017年にロヒンギャ危機が悪化してもなお、Facebookは何ら処置を取らなかった。事実、BuzzFeed Newsが同社の広報担当者にリンクを送って初めて、投稿がいくつかようやく削除されたというのが現状だ。

8月末、国連調査団は、大虐殺の罪でミャンマー軍幹部の訴追を呼びかける厳しい内容の報告書を発行した。

また、この報告書は、「ヘイトを拡散しようとする人にとって便利な道具」として、暴力拡散に加担しているFacebookの役割を痛烈に批判している。

その後、Facebookは、軍幹部を含むミャンマーの20の組織や個人を削除し、問題の鎮静化を図っている。

3日、ミャンマー軍は異例の謝罪文を発表した。


この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan