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子どもにお薬を飲んでもらうためのちょっとした工夫 小児科医と先輩たちからのアドバイス

子どもの薬で気をつけた方がいいこと、薬の飲ませ方の工夫を、小児科医がお伝えします。

私たち長野県佐久地域の小児科医は、定期的に地域の保育施設を巡回して出前講座を行っています。プロジェクトの名前は「教えて!ドクタープロジェクト」です。

講座に先立って質問を募集すると、「薬を飲んでくれない」といった子どもの薬の悩みも少なくありません。

江村康子

子どもがおくすりを飲んでくれない時にどうしたらいいのでしょう?

そこで出前講座の場で薬の悩みについて聞いてみました。また、SNSで、実際に保護者の皆さんが薬を飲ませるためにお子さんにしている工夫を聞いてみると、あっという間に100件を超えるコメントが集まりました。

コメントからは、薬を飲ませるためにあの手この手を繰り出しているお母さんお父さんの姿が浮かびます。薬の飲ませ方で苦労されている保護者がこんなにいるのかと改めて感じました。

そこで今回は、こどもの薬について、特に「飲ませ方」についてよく聞かれることを中心にまとめることにしました。

薬を飲む回数(投与回数)は変えられる?

血液中のお薬の濃度が維持される時間は薬ごとに違い、回数は薬ごとに決まっています。そのため基本的に回数は変更できませんが、保育園などで日中に飲ませられない場合、昼の内服を保育園終了後の夕方、夕食後の内服分を夜にずらせる場合もあります。

一般的には、例えば1日3回の場合、最低4時間以上の間隔が空いていれば飲ませて構いません。詳しくはかかりつけ医の先生とご相談ください。

薬を飲んだ後に吐いてしまった!飲み直すべき?

これは飲んでから30分が境目となります。飲んでから30分以内に吐いた場合は、ほとんど消化されていないため飲み直してください。

飲んだ後30分以上経過している場合には、ある程度消化されていると判断し、飲み直しは不要です。

ただし、てんかんの薬や不整脈の薬、免疫抑制剤などでは、吐いた場合に飲み直すべきかどうかの判断が分かれる場合があります。こちらもあらかじめ主治医の先生と相談しておいてください。

飲ませるタイミングをどうしよう?

薬を飲ませるのは食後、と考えられていることは多いです。たしかに成人の薬は「食後」で処方される事が多いです。

しかし、子どもの場合は食後にこだわる必要はありません。食前でも食後でも「とにかく飲ませる」がクリアできればOKです。

江村康子

その理由は、子どもは食後に薬を飲むと吐いてしまったり、満腹で口を開けてくれなかったりすることもあるためです。

食前の方が失敗は少ないことが多く、薬を飲ませるのが大変だったのが、食前に切り替えただけで解決する例もあります。決められた量や回数を守れることが最優先です。

ジュースや食べ物と一緒に飲んでも大丈夫ですか?

薬は水や白湯以外で飲ませてはいけないと思っていらっしゃる保護者も少なくありませんが、そんなことはありません。以下の注意点を守ればお子さんの好きな飲食物に混ぜても大丈夫です。

【注意点1:嫌いになってはいけない食べ物に混ぜない】

ミルクや離乳食など乳幼児が摂取しなくてはいけない食べ物には混ぜないことがポイントです。

それは熱湯で溶くと薬の効果が悪くなること、なにより薬を混ぜて味が変化することでこれらの食べ物が嫌いになると、その後困るためです。

【注意点2: 抗菌薬との飲み合わせは気をつけて】

クラリスロマイシンやアジスロマイシンなどマクロライド系抗菌薬は、オレンジジュースやスポーツドリンクなどの酸性飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルトなどの酸性飲料や食品に混ぜると苦みが強くなったり効き目が悪くなったりします。

また、ミノマイシンという抗菌薬は牛乳と一緒にのませると吸収率が下がります。抗けいれん薬のカルバマゼピン(商品名:テグレトール)はグレープフルーツと一緒に摂取すると薬の効果が通常より高くなってしまいます。したがってこれらの飲食物は避ける必要があります。詳しくは医師や薬剤師にご相談ください。

飲ませ方、どうやって工夫したらいいの?

いくつかの文献をもとに、多くの保護者の皆さんが実践されている工夫を吟味し、まとめてみました。

【水薬の飲ませ方】

薬局などで売られているスポイトや注射器を使って歯茎と頬の間にゆっくりと流し込むやり方がありますが、普段使っていないスプーンやスポイトを使うと嫌がる赤ちゃんもいます。

そんな時には哺乳瓶の乳首を逆さまにしてくぼみに水薬をいれ、それを吸わせて飲ませるとうまくいく場合もあります。

【粉薬の飲ませ方】

少量の水を加えてペースト状にするか、溶かしてスポイトや注射器で与えるやりかたがあります。1歳以下では、少量の水を加えて粘土のようにし、上あごや頬の内側に塗り付けて飲み物を与える方法もあります。

江村康子

【混ぜて活用できる食品】

パンに塗るチョコレートクリーム(チョコスプレッド)
江村康子

カカオ成分は薬の苦みを分かりにくくする効果があります。これでうまくいくという方は結構多く、お勧めです。常温保存でき、チューブ式が使いやすいという声も聞きます。似たものでココアペーストに砂糖を混ぜるやり方もあります。


アイスクリーム

冷たいことで味覚を鈍くさせ、薬の味をわかりにくくします。チョコレートアイスは、味も香りも濃いチョコレートの効果との相乗効果が強力です。ただし、アイスクリームは下痢など胃腸症状があるときは要注意です。

乳製品(練乳や牛乳、ヨーグルト、乳酸菌飲料など)、ジャム 

乳製品には苦みを和らげる効果があります。ジャムも味が濃いので薬の味を分かりにくくする効果があります。ただしマクロライド系抗生物質など、薬によってはこれら酸味の強い飲食物は苦みが強くなります。

江村康子

                     また、抗生物質のミノマイシンは乳製品と一緒に飲むと効きが悪くなるので使えません。またこれらは、下痢など胃腸炎の症状があると使えません。

ハチミツ(1歳以上)

ボツリヌス中毒のリスクがあるので1歳以上という条件ですが、牛乳に溶いたり、直接混ぜたりして与えます。これも効果的な場合があります。

江村康子

ハチミツに混ぜるのも効果的ですが、必ず1歳になってから

バナナやリンゴのすりおろし

これらは離乳食初期から使うことができる果物です。特にバナナは味や香りが強く、薬の味を分かりにくくする効果は高いです。

江村康子

単シロップ

苦みを和らげる効果があり、病院で処方できます。ただし時間が経つと薬の苦み成分がシロップに溶け出してくるので注意が必要です。


江村康子

ぬるい味噌汁やポタージュスープ・のりの佃煮・ふりかけ

子どもたち皆が甘いものが好きな訳ではありません。甘みを嫌う子向けにはこういった食材が有効です。ただしスープなどは、熱いと薬の成分が変化するのでぬるい状態で混ぜてください。                    

江村康子

おくすりゼリー  

おくすりゼリーは便利ですが、あくまで子どもがそのゼリーの味を好む場合に効果があるもので万能ではありません。酸性のものと混ぜると苦くなる場合は中~弱アルカリ性の製品を使います。

その他

黒糖、黒蜜、きな粉、ピーナッツクリーム等と一緒に混ぜて与えるやりかたもあります。乳製品など食物アレルギーのあるお子さんには、焼き芋で小さなお団子を作って粉薬を練り込む(誤飲しないように柔らかく)というのもいいアイデアかと思います。

褒めて!褒めて!飲ませる!

江村康子

少し大きくなると、ごまかすのが難しくなってきます。子ども自身が薬を飲んでよくしたいという意欲を持てる工夫が大事になります。

キャラクターの薬袋やコップに入れて、「アンパンマンがくれた薬でばい菌をやっつけよう!」というストーリーを作ったり、よくなったタイミングで、「おくすり飲めたからだね」と説明したりすることは、本人も「薬を飲むことは大事なんだ」と学ぶきっかけになります。

普段使わないきれいなグラスなどに入れて特別感や高級感を出すなどの演出も効果的なことがあります。

なにより飲めた時には笑顔で大げさに褒めることをお勧めします。

お薬シールや塗り絵も効果的です。おくすりを飲めたご褒美に好きなゼリー、などのやり方も、病気で体調が優れないとき限定ならばよいと考えます。褒め倒すことはとても大切で、それで子どもが自信を持って薬が飲めるようになることも少なくありません。

お子さんが薬をうまく飲めないと、保護者の方も焦ったり、イライラしたりすることもあるかと思います。

でも、きっちり飲めないとすぐ症状が悪くなるわけではありません。少しくらい飲めなくても大丈夫。お子さんが薬を飲めない場合は、お近くの薬局や小児科に遠慮なくご相談ください。きっとお子さんに合った上手な方法が見つかると思います。

なお、一般社団法人・薬の適正使用協議会が「子どもにくすりをのませるコツ」(監修:明治薬科大学 石川洋一教授)という分かりやすいホームページを作っていますので合わせてご紹介いたします

授乳中のお母さんの内服薬について

お子さんではありませんが、授乳中のお母さんのおくすりについても、最後に少し触れておきます。

授乳中だからと言って、お母さん自身も薬が飲めないわけではありません。とにかく授乳中止、もしくはお薬を飲まない、ではなく、メリットとデメリットを考えて必要な薬を最低限使用することが大事です。

授乳と薬についての詳しい情報は以下のサイトが参考になります。心配な場合には医療機関でお問い合わせください。

ママのためのお薬情報(妊娠と薬情報センター:国立成育医療研究センター)

【参考文献】

1.上荷裕広:小児の薬の飲ませ方.小児科診療70:759-765,2007

2.木下博子:小児への服薬指導の注意点.小児科臨床60:2269-2274,2007

3.薬の適正使用協議会ウェブサイト「子どもにくすりをのませるコツ」(石川洋一監修) 

4)妊娠と薬情報センター(国立成育医療研究センター):ママのためのお薬情報

【坂本昌彦(さかもと まさひこ)】佐久総合病院佐久医療センター 小児科医長

2004年、名古屋大学医学部卒業。愛知県や福島県で勤務した後2012年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。2013年ネパールの病院で小児科医として勤務。2014年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。所属学会は日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本小児国際保健学会。小児科学会では救急委員、健やか親子21委員を務めている。資格は小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。

現在は保護者の啓発と救急外来負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務める。同プロジェクトのウェブサイトはこちら