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同性愛者の女優、エレン・ペイジが自分の生き方をつかみとるまで

「自分がカミングアウトできるなんて、思ってもみませんでした」

エレン・ペイジ。映画「JUNO / ジュノ」で、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた、実力派の若手女優だ。自身が同性愛者であることを公表しているペイジだが、以前は役者としてのキャリアのために、アイデンティティーを隠すしかない、と思っていた。ペイジは、カミングアウトのきっかけにもなった出演作と、それに関わった人々との出会いについて語ってくれた。

2014年2月14日。人権団体のカンファレンスで、女優のエレン・ペイジは同性愛者だということをカミングアウトした。「私は今日、私自身が同性愛者だから、ここに立っています」と緊張した面持ちのペイジは語った。「個人的、そして社会的な責任を感じています。同時に私は、わがままだとも思います。隠すことにもう疲れたから」。この瞬間ペイジは、カミングアウトをした同性代の俳優の中で、最も著名な存在となった。

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ペイジのカミングアウト・スピーチ。5分20秒あたりで、「私は今日、私自身が同性愛者だから、ここに立っています」と話している。

現在ペイジは29歳。10歳の時から、プロの役者として演技をしてきた。2007年、予期せぬ妊娠をした16歳の少女の成長を描いた「JUNO / ジュノ」の演技で、アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされ、ハリウッド・セレブの仲間入りをした。すると、彼女のセクシュアリティについて、憶測を書き立てるメディアも出てきた。この頃、彼女はまだ同性愛者であることを公にしていなかった。

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「20か21歳のころは、自分のセクシュアリティについて、よくわかっていない部分がありました。無名の存在から、急に不特定多数に名前が知られる俳優になって、色々と書きたてられて、衝撃を受けました」

「JUNO / ジュノ」の演技でペイジの名声が最高潮に達したころ、「パルプ・フィクション」「エリン・ブロコビッチ」などのプロデューサーを務めてきたマイケル・シャンバーグとステイシー・シャーが、ペイジにアプローチした。同性カップルの権利のために戦った女性たちの姿を追ったドキュメンタリー「フリーヘルド」を、劇映画化しようとしていたからだ。シャンバーグとシャーは、ペイジに出演を依頼したのだ。

「フリーヘルド」はもともと、2007年にアカデミー賞を受賞したドキュメンタリー作品だ。米ニュージャージー州の刑事で49歳のローレル・へスターは、末期の肺ガンのため、余命半年を宣告される。彼女はパートナーのステイシー・アンドレに遺族年金を残そうと、地元自治体に申請を出すが、女性同士であるため却下される。ローレルはステイシーのために平等を求め、自治体と戦いながら最期を過ごす。そして、ステイシーの元を去る。

ペイジは、「フリーヘルド」の予告編を見て以来、心打たれていたという。だから、ステイシー役への出演依頼を受けた時、叫び出すくらい興奮した。「ただ『イエス』って言いました!」

「フリーヘルド」の監督、シンシア・ウェイドは、ペイジと電話で話した時のことを回想する。「ステイシーとローレルの関係が、社会的に不平等な扱いを受けていたことを説明したとき、エレンは泣き出したんです。なぜかは分からなかった。けれど、エレンにとって、とても意味のあることなのだろうということがはっきり分かりました」

新進気鋭の若手俳優として最も勢いがあったタイミングで、同性婚の歴史に名を残すレズビアンの女性の役をすることを決めたペイジ。彼女は、この段階ですでに、カミングアウトすることを決めていたのだろうか?

「自分がカミングアウトできるなんて、思ってもみませんでした。どうしてなのかはわからないけど、できないと強く信じていました。誰かに『いつカミングアウトするの?』と聞かれた時も『それは絶対無理』と答えていました。本当にそう思っていたんです。でも振り返ると、そう思い込んでいたことが信じられません。そんなの、どうかしている! って今は思うからです。本当に信じがたい思い込みです!」

ペイジは頭を指で指して、こう続けた。「何かが私の中に入り込んで、考え方や行動を支配してしまったようでした。そのころの私は健康な人間ではなかったと思います。本当に無理だと思い込んでいたのです!」

20代前半のペイジは、役柄を選べる立場になっていた。ハリウッド大作の「インセプション(2010)」や「X-MEN: フューチャー&パスト(2014)」と同時に、メジャー以外の作品にも出演している。

成功の一方で、自身のアイデンティティーについては深く悩んでいた。今は率直で楽観的なペイジだが、カミングアウトするまでは、みじめな気持ちで過ごしていたという。「コソコソしていた昔の自分が、恥ずかしい」とペイジは言う。「思い出すと悲しくなります。つらかったから。私とつきあってくれた人たちにも、つらい目をさせていました。いいことはひとつもなかった。不寛容だったり、人に隠れて生きることは悪循環を生み出すだけ」

付き合っていた女性に、ホテルの別の出口から出て、車で待ってもらうこともあった。「ルームサービスが来たら、バスルームに隠れて、とか。友達です、って言ったりとか。そして、公の場では何にもない風に振る舞ったり」。肩をすくめて、彼女は続けた。「罪悪感を持つようになりました。罪悪感を持つべきことをしていると思いました」

ペイジは、同性愛者であることが公になったら、演技ができなくなるのではないか、と恐れていた。「もし、もう(演技が)できなくなるとしたら……。私の人生にとって、とても重要だから」

しかし、20代半ばにさしかかった頃、ペイジの心は落ち着いてきた。気がつくと「『私にはガールフレンドがいるの』って言えるようになっていた」という。

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2008年頃から構想があった劇映画版「フリーヘルド」。2014年にジュリアン・ムーアが末期ガンを患う刑事・ローレル役に決まったことで、映画「Freeheld(原題)」として撮影が具体化することになる。

ムーアの出演を聞いた時、ペイジは嬉しくて泣きそうになったという。「だって、彼女は現役の俳優の中で、最高の役者だから。そして、同性愛者の役柄も何度も演じてきているから」

「感情が高ぶりました」とペイジ。「ようやくこの映画を作るんだ! 作るんだ! って」

ペイジはもう、自分のセクシュアリティを隠してはいられなくなった。「同性愛者であることを隠すのが嫌になりました」とペイジ。「こんな映画に出るっていうのに、カミングアウトしないなんて、ありえないって思った」。ステイシーとローレルの存在にも触発された。

ペイジとムーアは、ステイシーとローレルの役作りに慎重に取り組んだ。同時に、二人は単純に気が合った。「強い絆ができました」とペイジ。「これくらい自然な親密さを作り出せたら、と思っていたレベルの親密さを表現できたと思います。撮影の時も、そうでない時も、二人はいつも隣にいました。映画を通じて、エレンとジュリアンのパートナーシップができあがったという感じです。いつもお互いを気遣っていて、毎朝彼女に会うのが本当に楽しみでした。一緒にいると、すごく自然な感じがありました」

電話取材に応じてくれたムーアも、ペイジと同じような感想を伝えてくれた。「何もかも、二人で一緒にやったような気持ちになりました。そんな気分になることは、滅多にありません!」

ペイジとムーアの「Freeheld」は、昨年秋、アメリカで公開された。ペイジは、映画のスクリーン上で同性同士の恋愛関係を演じることができたことに、解放感を感じたという。「同性愛の人物を演じられて良かったです。私自身が同性愛者だから! 自分がきっと好きになるだろうなと思えるような人と、スクリーンの上で恋に落ちることができたのは素晴らしい経験でした」

「みんながこの映画を見てくれるのが嬉しいし、心動かされてくれるなら、もっといいなと思います。ローレルとステイシーの物語を通じて、差別の現実と、私たちの社会がどこまで変わったのか、そしてアメリカ最高裁の同性婚を認める判決の重要性を知ってほしいです」

役者としてのペイジは今後も、同性愛であるか否かに関係なく、好きな役柄を演じていくという。機会があれば、同性愛者の人物も演じるに違いない。

ペイジは、映画を観るとき、同性愛者である自分の姿が投影されている作品に巡り合う機会が、とても少ないと話す。「そのような機会は、本当に貴重です。そして、役者としては、単純に演じている役柄に、自分を投影する機会を得たいとも思います。私にとっては、同性愛の物語を伝えることが、自然なことだから」。ペイジは、プロデューサー兼出演者として関わる「Lioness(原題)」では、イラク戦争当時のレズビアンの海兵隊員を演じる。相手役はケイト・マーラで「二人の女性の間の恋の物語」になるという。

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18年を超える俳優生活を経た今、ペイジは自分がどこに向かっていきたいのか、はっきりと分かっているようだ。「カミングアウトして、今は自分の人生を歩んでいるので、自分に自信が持てるようになりました」

「私のヴィジョンは単純です。自分が伝えたいと思う物語を語ること。そして、自分が生きたいと思う人生を生きることです」

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「Freeheld」の予告編。主題歌はマイリー・サイラス。

サムネイル写真:Juan Naharro Gimenez / WireImage



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