朝8時から始まる1限目の授業を進んで取りたい大学生はあまりいないだろうが、授業を駐車場で受けることもそうそうない。
そもそも感染症のパンデミック自体、本来の日常ではない。
8月の終わり、米テキサス州立大学サンマルコ校の学生がTwitterに投稿した1枚の写真が拡散した。駐車場に間隔を空けて椅子が並べられ、そこで授業をしている風景を撮ったものだ。

投稿したのはケイド・Tさん(本人の希望で姓は伏せている)。音楽教育を専攻する4年生だ。将来は音楽教師を目指しており、いろいろな楽器の演奏を学んでいる。
「室内で管楽器を吹くのはかなり(感染の)リスクが高いため、外で授業をしたのです」とケイドさんは説明する。
「クラス全員が対人距離のガイドラインを守って座れるような場所がないので、この授業は屋外でやるしかありませんでした」
写真には次のようなコメントをつけた。「テキサス州立大に2万5000ドル(約260万円)の学費を払った結果がいまここ!朝8時のクラス最高😊」リツイートは1万7000件、「いいね」は12万8000件に上った。
This is what my $25,000 tuition buys me at Texas State! Loving my 8am class😊
ケイドさんのツイート。
しかしケイドさんは、この写真を見て誤解しないでほしい、学校のプログラムが批判されることは望まない、という。コロナ禍で制限がある中、教授も学部もできる限りの手を尽くしてくれていると考えているからだ。
「州では間違いなくトップで、おそらく国内でも最高レベルの音楽学部なのに、リソース面はものすごく遅れているのが本当に残念です」
「いま起きている問題はもっと上のほう、大学そのものに原因があります」
ケイドさんが履修するコースで使っている建物は、元はレクリエーションセンターだったという。ソーシャルディスタンスを確保しながら授業ができる十分なスペースはなく、管楽器ではとりわけ難しい。
「授業に必要な、十分な広さのスペースがありません。だから外でやったんです。それがいちばん安全なので」
テキサス州立大学はBuzzFeed Newsに宛てた文書で、今回の授業は音楽学部で音楽教育を教えるジョン・デニス助教授のクラスだったと述べた。
「空気中に浮遊する飛沫で新型コロナウイルスに感染する可能性があり、空調を使っているとそのリスクが上がることを知り、デニス助教授は科学的な情報にあたって、学生の安全をできる限り守りながら教育の機会を確保できるよう対策を探りました」と大学側は説明する。
「場所を屋外にし、楽器を演奏できる仕様のマスクをつけることで、卒業後音楽教師を目指す学生たちが、現状でできる限り安全に学べる環境を提供しています」
ケイドさんによると、感染拡大の影響で完全にオンラインへ移行した授業もあれば、オンラインと対面を組み合わせている授業もある。周囲もマスク着用のルールを忠実に守っているため、ケイドさん自身は基本的に安全だと感じているそうだ。
とはいえ、屋外での授業に不思議な感覚を覚えたという。通りがかかった学生が何事かと見ていたり、近くを通る車の音が気になったりもした。
「当然ですが、高い授業料を払っていながら外に座っているのはいい気分ではないです。でも今は、僕は僕ができるベストを尽くしているし、先生たちもできるだけのことをしてくれている、そう思うようにしています」
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:石垣賀子 / 編集:BuzzFeed Japan