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「トランスジェンダーにやさしい」CMが称賛されたスタバ、従業員からは異論の声が

スターバックスで働くトランスジェンダーの従業員らは、トランスジェンダーであることを勝手に公表される、手術費用に被用者保険を適用しにくい、などの問題に直面していると語る。

英国のスターバックスUKは2月上旬、新しいCMを発表した。トランスジェンダーの青年が、コーヒーを受け取る際に、自分が選んだ男性名を使うことができる、という内容だ。

このCMは、英国のトランスジェンダー団体への支援のため制作された。自分が認識する性別のものではない名前で呼ばれ続けて傷ついた主人公が、スターバックスでやっと自分が望む名前で呼んでもらえる。

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スターバックスUKのCM

このCMが伝えるメッセージには多くの称賛が集まっているものの、トランスジェンダーのスターバックス従業員からは、同社が公表している価値観は、自分たちが社内で受けた待遇とは必ずしも一致していないとする声が上がっている。

元従業員や現従業員はBuzzFeed Newsに対し、数々の経験を話した。

  • トランスジェンダーであることを他の従業員に勝手に公表された。
  • 違う性別で扱われた。
  • 自分が認識する性別の名前を社内ソフトウェアで使えない。
  • スターバックスの被用者保険を性別適合治療になかなか適用できない。

タッカー・ジェイス・ウェブさんの場合、スターバックス・パートナー(同社では従業員をこう呼んでいる)として働きたいと思ったそもそもの理由は、同社では2013年以降、性別適合手術に被用者保険が適用されるようになったからだった。

ウェブさんは2018年1月、テキサス州デントンの店舗で働き始めたが、すぐに問題に直面したという。

Courtesy of Tucker Jace Webb

タッカー・ジェイス・ウェブさん

まず、新規スタッフ用のソフトウェアで自分の名前を入力できたものの、そのログイン・システムの立ち上がり画面には、自分が認識する性別とは違う、昔の名前が表示された。

会社側に伝えたが、法的に名前を変えない限り変更できないと言われたという。

仕事を始めて4カ月後、ウェブさんは、自分がトランスジェンダーであることを職位の高い従業員に勝手に公表された。その事実を、シフト・スーパーバイザーの1人から聞かされた。

「面接で、誰にも知られたくないと話したのに」とウェブさんはBuzzFeed Newsに語った。

この出来事を、自分の地域を担当するディストリクト・マネージャーに報告したところ、ウェブさんは別の店舗へ異動することになった。

しかしその後、新たな店舗で、同じことが再び起こった。ある従業員が同僚と会話中、「人のアイデンティティを尊重する」という話題になり、その例としてウェブさんがトランスジェンダーであることを引き合いに出したのだ。

「私の意思をまったく無視して公表しただけでなく、政治的に私を利用した」

ウェブさんはどちらの出来事も本社に報告したが、何の反応もなかったと話す。しかし今週、こうした問題を書き記したウェブさんのツイートが拡散されると、会社側が連絡してきたという。

starbucks wouldn’t let me change my name on my login unless i legally changed it. they have also denied multiple trans employee’s request for gender confirming surgery. i have been outed by every manager about my trans identity without my consent. https://t.co/VawEUiWERJ

スターバックスUKのツイート:「スターバックスでは、カップにお客様の名前を書き、その名前でお呼びすることで、温かい歓迎を表しています。スターバックスは、あなたが誰であれ歓迎いたします」

これを引用したウェブさんのツイート:「スターバックスは、私が法的に改名しない限り、ログイン時の名前を変えてくれない。トランスジェンダーの従業員複数人が性別適合手術のリクエストを出したのにそれも拒否した。私がトランスジェンダーだということは、私の意思に反してすべてのマネージャーに勝手に公表された」

ウェブさんによると、スターバックスの広報担当者は同社の失態を謝罪し、原因を調査すると約束したという。ウェブさんはこの努力には感謝するとしつつ、こう指摘する。

「もう何カ月もこの状態で、私が問題をツイートするまで誰も何も言わなかった」

ウェブさんはスターバックスについて、企業レベルではトランスジェンダーに合うしっかりした方針があるように思われるが、実際のところ店舗レベルでは、そうした方針がうまく実施できていないようだと指摘する。

「何らかのトレーニングを義務付ける必要があるのでは」とウェブさんは話す。

スターバックスの広報担当者は、本件に関する個別の主張に対するコメントは差し控えるとしたが、ウェブさんのように英国のCMに不満をツイートしている人全員に同社が連絡していると説明した。

「当社は、温かく居心地の良い環境をすべての人に提供することを誇りにしており、意図的に違う性別で扱うという行為は許されるものではない」と、広報担当者はBuzzFeed Newsに述べた。

「そのようなことは、当社の企業理念や価値観にも、ハラスメントや差別に関する当社の雇用方針にもそぐわない」

広報担当者はまた、スターバックスは「職場での性別移行ガイドライン」を10年以上も前から取り入れており、同社の保険は性別適合手術にも適用できると説明した。

しかしウェブさんは、結局この保険を使えなかったそうだ。両親の健康保険に再び入れてもらい、12月に手術を受けた。回復し次第、またスターバックスに戻る予定だ。

ジェイミソン・シュワルツさんは、2018年7月にスターバックスで働き始めた。同社が、性別適合治療における保険適用範囲を拡大すると発表した直後だ。

「すごくいいと思った。本当にワクワクした」とシュワルツさんはBuzzFeed Newsに話した。

胸部手術を受けたいと思っていたところだったので、スターバックスでの仕事は理想的だった。

Courtesy of Jamison Schwartz

ジェイミソン・シュワルツさん

シュワルツさんによると、従業員はみんな敬意を示してくれたが、いざ胸部手術を保険で賄おうとしたところで、問題が発生した。

スターバックス従業員の保険利用を支援する社員に協力してもらったにもかかわらず、そしてガイドラインに沿っていたにもかかわらず、シュワルツさんは3度、保険適用を却下された。

「あの頃は本当にイライラして、仕事に行くのがあまり楽しくないと思うようになった」とシュワルツさんは話した。

「過去1〜2年のうちに導入したばかりの非常に新しい保険だったので、従業員からどれだけ需要があるかを会社は分かっていなかったんだと思う」

トランスジェンダーの従業員を支援したいというスターバックスの意向は全面的に肯定する。しかし、それでもまだ不十分だとシュワルツさんは話す。

シュワルツさんは結局、2019年7月にスターバックスを退職した。

イレイン・ツァオさんの場合、性別適合手術をスターバックスの保険で賄うために、法的措置を取ると同社に通告せざるを得なかった。ツァオさんは、トランスジェンダーの従業員に関するスターバックスの方針を聞き、2017年9月にミズーリ州セントルイスにある店舗で働き始めた。

ウェブさん同様ツァオさんも、トランスジェンダーであることをマネージャーに勝手に公表されたという。

「悪意はなかったと思う。これをしちゃいけない、みたいなトレーニングを十分受けていなかっただけであって」。方針があるとしても、マネージャーやバリスタがきちんと目を通したかは定かではないとツァオさんは話す。

Courtesy of Elaine Cao

イレイン・ツァオさん

また、スーパーバイザーから意図的に違う性別で扱われたこともあったという。ツァオさんは本社に苦情を申し立て、スーパーバイザーは注意を受けた。

「そうしたらこのスーパーバイザーは激怒して電話してきて、『本社に言ったなんて信じられない』(と言われた)」とツァオさんは振り返る。

「彼には2度と会いたくない。会社はもっときちんとフォローアップする責任があったと思う」

ツァオさんによると、このスーパーバイザーは会社側からこれ以上の措置を受けることなく、結局退職したという。

性別適合手術については、ツァオさんは運良く銀行からローンを取り付け、手術費用を前払いできた。

スターバックスの保険から補填を受けようとしたところ、ツァオさんによると「意味のない細かい理由」で却下され続けたという。例えば、書類が足りないと言われたが、そもそも当初はそのような書類の提出を求められてはいなかった。

「保険会社は適当に言い訳を作り、『支払えない』と言っていた」とツァオさんは話す。

「保険を適用してもらうためには、提訴するって保険会社を脅さなければならなかった」

ツァオさんもまた、スターバックスはトランスジェンダーの従業員に手を差し伸べてはいるが、十分ではないと話す。

「トランスジェンダー向けの保険を提供していると言うのなら、合理的に適用できる方法で提供する必要がある」

この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:松丸さとみ / 編集:BuzzFeed Japan