カナダのブリティッシュ・コロンビア州アボッツフォードに住むサバンナ・クープさん(25)と、米ワシントン州ベリンハムに住むライアン・ハミルトンさん(26)のカップル。
新型コロナウイルスの影響で外出自粛が求められる今、婚約中の2人が会える唯一の場所は、2メートルほど離れた国境付近だ。
国境付近の街では、マッチングアプリで近隣国に住む人と繋がることもしばしば。この2人の場合もそうだった。
BuzzFeed Newsに対し、ハミルトンさんはこのように語っている。
「僕の住む地域では、マッチングアプリを使うと、周辺に住む自分に合いそうな人が多く表示されます」
「結局、この辺りに住む多くの人は、カナダ人とマッチングしてますね」
また国境付近に住む人々にとっては、通勤や用事のため国境を毎日のように越えるのも、よくある話だ。
この2人の場合は、それがデートだった。
昨年の7月、2人はすぐに恋に落ち、冬には結婚指輪も選び始めた。今年の3月1日にはハミルトンさんが結婚を申しこんだ。
そして2人は、家族や友人からのサポートを受け、小さな挙式から、ハネムーンでのヨーロッパ旅行も計画していた。
「最悪なことが起きました。単純に理解できませんでした」ハミルトンさんはそのように言う。
3月8日には結婚式が挙行される予定だったが、新型コロナウイルスの影響により、他のイベント同様、挙式も延期された。
「国境が30日ほど封鎖されると聞いた時、挙式はできないと気づきました」と、クープは言う。
国境の封鎖は、挙式の延期だけにとどまらなかった。2人はそれぞれ、カナダとアメリカで暮らしているため、会えなくなってしまったのだ。
「必要不可欠な理由無しには、国境を越えることはできません」
医者や看護師であること、または自宅で処方箋を受け取れない場合を除き、国境を越えることはできない。
2人が調べたところ、挙式や婚約者との面会も例外ではなかった。
そこで、クープさんはあるアイデアを思いついた。国境付近でのデートだ。
2人の家の間にある道には、壁やフェンスが無い。また道路はアメリカ側のみで、国境に沿って平行になっている。
不思議に感じるかもしれないが、カナダとアメリカにはフェンスや壁が一切無い、世界一長い国境線がある。
「(国境に関しては)ただ単に、間に排水溝があるみたいなものです。陸橋のようなものがある場所もありますよ」
「(国境に壁やフェンスが無いことから)アメリカ人とカナダ人は国境に対する意識がしっかりしていて、お互いに信頼があるのがよくわかります」と、クープさんは言う。
2人は夕方にデートをした。その距離は約2メートル。
クープは折りたたみ式の椅子を、ハミルトンは下に敷くブランケットを持参する。お菓子やコーヒーもかかせない。
時折、車の音のせいで大声を出さなければいけないが、なんとか上手くいっているようだ。
2人は決して孤独ではない。国境付近には多くの監視カメラがあり、パトロール中の国境警備隊員がいる。
警備隊員から手を振られ、何をしているのかを尋ねられることもしょっちゅうだ。
「何人かの警備隊員は、私たちのことをよく知っています。ただ手を降って、通り過ぎていきますね」
「以前、警備隊員がその場に座って私たちをずっと見ている中で、デートしたなんてこともありました」と、クープさんは言う。
またハミルトンさんは「楽しくてワクワクするようなデートを心がけていますが、変な感じもしますね」と語っている。
クープさんは、デートの様子をTikTokに投稿した。
「私はカナダにいますが、婚約者はアメリカに住んでいます。2週間後に結婚する予定でしたが、新型コロナの影響でできなくなってしまいました。だから替わりに、国境でデートすることにしました」と、動画内でクープさんは説明している。
ただの楽しみとして載せた動画は、40万回以上も再生された。クープさんは驚いたようだ。
コメントをくれた人の中には、2人のデートを目撃したと言う人や、デートを目撃した人が撮影した2人の写真を見たという人もいた。
「まるで『きみに読む物語』みたい❤️😍」といったコメントもあった。
「あるカップルを見かけた。アメリカとカナダの国境を挟んで、向かい合って座っていた」と書かれたこのTikTokの動画は、通りかかった投稿者が2人の様子を撮影したものだ。
お互いの顔を見られるのは嬉しいことだが、近くにいるのに遠い存在であることに変わりはない。
「ライアンの手をもう一度握られたら、どれだけ幸せでしょうか」。クープさんはそう言った。
「多くの人が、私たちよりも大変な状況に置かれています。お互いこうして会える距離に住んでいることには、感謝しています」
「それでも、少しじれったく感じて辛いです。毎回『じゃあね』と言わなきゃいけませんから」
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:吉谷麟