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食う、寝る、遊ぶ、出すはできている? 子どもが具合が悪くなった時見るべきポイント

いざという時にあわてずに、守れる命を守るために

小さい子どもは、本当によく熱を出します。

日中はお熱があっても元気そうで、このまま病院に行かなくても大丈夫そうかな、なんて思っていても、夜になると、いつもよりもぐずったり、なかなか子どもが寝付かなかったり。そして体温計を見ると、38度、39度、40度…...。

このまま上がり続けたらどうしよう? 様子を見ていいのかすぐに救急に行くべきなのか。迷いますし、とても心配になります。

こんな時にどうしたらいいのか、悩んだ親の1人として新しく親になった皆さんに伝える活動をしています。一緒に考えていきましょう。

昨日まで元気だった我が子が急変する体験

10数年前、初めての、まだ0歳の赤ちゃんを育てながら、そんな夜をいくつか過ごしていた私ですが、夜中に子どもが急変して救急車で運ばれて、意識がなくなりました。

「明日、目が覚めますか?」という私の問いに、医師が言った「それはお答えできません......」という言葉。

そのときに、こんな風に昨日まで元気だった子が、あっという間に具合が悪くなってしまうことがあるんだと驚きました。

子どもの急変は6時間あれば十分、という言葉を小児科の先生から聞いたことがありましたが、本当にその通りだなと思いました。

その日1日だけ重症であったうちの長男ですが、当時の自宅は消防署から徒歩で2~3分、大学病院までも自転車で10分かからない、という場所にありました。

その時に思ったことは、救急車がなかなか来ないとか、来ても受け入れ先がなくて出発しないとか、そのような問題が起きたり、夜間の救急外来でもなかなか診てもらえなかったりしたら、いま、この元気に成長している子はどうなっていたんだろう、ということでした。

いろんな幸運が重なって、そして医療者の方たちが、目の前の子どもの命を守りたいと懸命に治療をしてくださったからこそ、こうして元気にしているけれど、なにかひとつでも歯車が狂っていたらどうなっていたんだろう。

そんな、恐怖を感じたのでした。

子どもの医療のかかり方を伝える活動へ

そして、医療にまるで関心のない、いわゆる普通の母親であった私は、それから小児医療に関心を持つようになりました。

そして、いざという時に同じ立場の親御さんたちが怖い思いをしないようにと、医師をはじめとした医療従事者の協力を得て、現在の子どもの医療のかかり方を伝える活動をするようになりました。

そうして、知ったのです。

願っても、祈っても、その必死の思いが届かない、命がある、ということを。

ですから、防げるものを防ぎたい。守れる命を守りたい。

そう強く思うのです。

いま、私は国や都の検討会にかなりたくさん出席をしています。

それが何のためかといえば、救急搬送の問題だったり、制度の問題だったりを少しでも改善してほしいと願うからです。子どもたち、もちろん大人もですが、そういった医療的な理由ではないところで人が命を落とすようなことがないように、と思っています。

防げないものがあるからこそ、防げることをひとつ、ひとつ、増やしていく。

せめて、防げる命を減らさないようにしていく。

そんな風に思っています。

ポイントは二つ 一つ目は「食う寝る遊ぶ出す」ができるか

私が代表を務める一般社団法人「知ろう小児医療 守ろう子ども達の会」では、これまで子どもの医療のかかり方に関する講座を150回以上開催してきました。

そこで繰り返し小児科医からお聞きしたのは、子どもの病気の症状などについて詳しく知る前に、まず私たち親が知っていた方がよいことが2つあるということです。

ひとつめは、大切なのはお熱の高さではなく、全身状態を見る、ということ

全身状態を見る、ということは、つまり、いつもと同じように『食う』『寝る』『遊ぶ』『(うんち・おしっこを)出す』ができているかどうかを見る、ということです。

この4つのポイントができていれば、まずすぐに救急へ、とはならないことがほとんど。

けれども例えば、お熱がなくても、うんち・おしっこがいつもと同じように出ていないとなれば、少し注意して、受診を考えながら、見ていきます。

二つめは我が子の「いつも」を知ること

そして2つめは、我が子の「いつも」を知るということ

  • いつもの泣き方
  • いつものうんち、いつもの肌のハリ
  • いつもの頭やお腹の感じ
  • いつもの熱の出し方


ひとり、ひとり、異なります。

神経質に目を尖らせる、ということではありません。

寝かしつけのときに、抱っこのときに、

この子ってどんな感じ? とちょっと意識をしてみるだけで、その子の「いつも」

を把握できるようになると思います。

そして、私たち親が子どもの「いつも」を把握できているからこそ、いつもと違うときは、いつもと違います、と言うことができます。

小児科医は親の言う「いつもと違う」という言葉には、とても敏感になると聞きます。

「いつもとこんな風に違います」と私たち親が医療者に適切に伝えられることは、痛いところやつらいところをまだ言葉にできない子どもたちの適切な診断につながっていきます。

ぜひ、我が子の『いつも』がどんなか、意識してみてくださいね。

今日は、

  1. お熱の高さではなく、全身状態(食う、寝る、遊ぶ、出す)ができているか見ること
  2. 我が子の『いつも』を知り、いつもと違うことを医療者に伝えられるようにしておくこと


という大事なポイント二つをお伝えしました。

お熱を例にとりましたが、この二つが大切なのは、お熱のときだけではありません。子どもの具合が悪くなったら、食う、寝る、遊ぶ、出すができているか、いつもとどう違うかなという目でわが子を見守るクセをつけておくといいです。

次回は、具体的に子どもの救急の判断について、医師の監修を受けた内容をお届けいたします。

【阿真京子(あま・きょうこ)】一般社団法人「知ろう小児医療 守ろう子ども達の会」代表

1974年東京都生まれ。都内短期大学卒業後、日本語教師養成課程修了。マレーシア 国立サラワク大学にて日本語講師を務め、帰国後外務省・外郭団体である(社)日本外交協会にて国際交流・協力に携わる。

その後、夫と飲食店を経営。2007年4月、保護者に向けた小児医療の知識の普及によって、小児医療の現状をより良くしたいと「知ろう小児医療 守ろう子ども達」の会を発足させ、2012年7月に一般社団法人知ろう小児医療守ろう子ども達の会となる。

同会による講座は150回を数え、5000人以上の乳幼児の保護者へ知識の普及を行う。現在まで同会代表。東京立正短期大学幼児教育専攻(『医療と子育て』)非常勤講師。14歳、12歳、9歳3男児の母。

厚生労働省社会保障審議会医療部会委員、同省上手な医療のかかり方を広めるための懇談会構成員、総務省消防庁救急業務のあり方に関する検討会委員、東京消防庁救急業務懇話会委員、東京都救急医療対策協議会委員、内閣官房薬剤耐性(AMR)対策推進国民啓発会議委員など数多くの委員を務める。