盲導犬の受け入れ拒否、コロナ禍でも。いつも利用していた店で「外につないでおいて」

    新型コロナウイルス感染症予防を理由に、盲導犬の入店を断ることはできません。

    新型コロナウイルスの流行で様々な感染対策が進められる中、盲導犬を連れた視覚障害者が「受け入れ拒否」を受けるケースが出ています。

    BuzzFeedは、2020年の5〜6月に盲導犬ユーザーに困っていることについて聞き取り調査をした、公益財団法人日本盲導犬協会の金井政紀さんに話を聞きました。

    行きつけの店舗による受け入れ拒否の事例も。

    調査への回答には、コロナ禍での困りごととして、ソーシャルディスタンスの標示が確認できないため、列に並ぶ位置や前の人の動きがわからない――など様々な声が上がりました。

    なかでも深刻なのが、直接的または間接的な、盲導犬受け入れ拒否の事例です。

    「例えば、普段から盲導犬と一緒に利用している地元のスーパーマーケットで、コロナ禍を理由に、『買い物中は盲導犬を外につないでおいていただけませんか』という申し出があったという事例がありました」

    言われた人は違和感を抱きつつ申し出に応じたものの、それでよかったのかと思い悩んだといいます。

    協会によるヒアリングでは、店舗側が「他のお客様から実際にあった声を気にしてこのような対応に至った」ということがわかりました。

    盲導犬は、店内で誘導するよう訓練はされておらず、盲導犬ユーザーは、多くの場合手引きなどで人に案内してもらいます。ではなぜ、外に盲導犬をつないでおくべきではないのでしょうか?

    それは、盲導犬ユーザーが盲導犬の管理をできなくなってしまうからです。

    法律では、ユーザー自身が犬の行動・衛生管理をしっかりすることが義務付けられています。

    犬の管理は、基本的にユーザーがリードを持ち、横に犬がいる状態で行われるため、犬と離れてしまっては管理ができなくなってしまうのです。

    盲導犬を連れていても、そうではない人と同じように、入場入店などのアクセス権が侵害されることはあってはならない、と説明します。

    しかし、スーパーマーケットに盲導犬を連れて行けなかったケースでは、「店側は、盲導犬に対するある程度の理解はあったものの、お客様に理解してもらえるよう適切な説明ができなかったのが原因」だといいます。

    「コロナウイルスが流行し始め、緊急事態宣言が出て間もない頃。未知の環境の中で皆がどのような対応をしたら良いのか分からなかったために起きてしまったのでは」

    犬から人への感染は確認されていない。

    2020年8月にペットの犬が新型コロナウイルスに陽性になったという報道があった際には、盲導犬を連れての外出や、自分が感染してしまった時の不安を打ち明ける盲導犬ユーザーも多かったそうです。

    しかし、現在にいたるまで、犬から人への新型コロナウイルスの感染は確認されていません

    受け入れ拒否の事例を受け、日本盲導犬協会では「新型コロナウイルス感染症予防を理由に盲導犬の入店を断ることはできません」という内容を加えたリーフレットを新たに作成。

    コロナ禍での盲導犬の受け入れに戸惑う企業や個人を対象に、オンラインセミナーも開催しました。

    また、盲導犬ユーザーに対しては、ユーザー本人やその家族が新型コロナウイルスに感染し盲導犬の世話ができなくなった場合、協会で盲導犬を預かることができると示しています。

    実は、新型コロナウイルス流行前から、半数以上の盲導犬ユーザーが受け入れ拒否を経験。

    認定NPO法人全国盲導犬施設連合会が2020年3月に発表した「盲導犬受け入れ全国調査」によると、回答者643人のうち半数を超える336人が、2019年1月から12月までの1年間に受け入れ拒否を受けたと答えました。

    なかには、1年間で6回以上受け入れ拒否にあったという回答もありました。

    拒否された理由でもっとも多かったのが、「犬や動物はダメ」という理由。次いで多かったのが「犬アレルギーや犬嫌いの人など他の人に迷惑がかかる」というものでした。

    背景には盲導犬に対する理解不足が…。

    このような受け入れ拒否が起きてしまう背景には、盲導犬に対する誤解や理解不足があるのではないかと、金井さんは説明します。

    「誤解というのは、例えば『盲導犬といえども犬は犬。ペットと同じような扱いで良い』『不衛生かもしれない』などというところから始まっています」

    そうした誤解を持つ人はいる。ただ、実際の盲導犬はそうではないといいます。

    というのも、盲導犬の管理は身体障害者補助犬法で定められていて、盲導犬はガイドラインに沿って衛生管理や行動管理がされ、社会の中で活動しているからです。

    ガイドラインでは、予防接種やノミ・ダニの駆除、毎日のブラッシングなど、規定に沿った管理が求められています。

    「視覚障害者の方は、目が見えなくてもそれぞれやり方を工夫して盲導犬の管理をしていますし、協会ではきちんと管理をできる方に盲導犬を貸与しています」

    「盲導犬は『一生懸命仕事をしてかわいそう』というイメージをどうしても持たれやすいように思いますが、幸せに暮らしている家庭犬でもあります。これらは盲導犬に対する誤解でもあるし、視覚障害者の方に対する誤解でもあります」

    金井さんは、こう呼びかけます。

    「調査後の半年間で、当初よりは新型コロナ対策について色々なことがわかってきました。お店や企業の側も、どのように対応すれば良いか分かってきたと思います。その上で、盲導犬や視覚障害者の方について、正しい情報を知り、正しく行動していただければ」

    訂正

    一部表記が誤っていたため、修正いたしました。

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