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異性愛者のふりをして、過ごしてきた日々。「自分のあり方はこのままでいいんだ」と希望がもてる社会にするために。

性的マイノリティに対する差別を禁止する「LGBT平等法」の制定を求めて、国際署名キャンペーンが行われています。どうして“ルール”が必要なのか。一般社団法人LGBT法連合会・理事の五十嵐ゆりさんに聞きました。

2021年に延期された東京オリンピック・パラリンピックを前に、性的マイノリティに対する差別を禁止する「LGBT平等法」の制定を求める国際署名キャンペーン「Equality Act Japan」が、10月にスタートしました。

どうして日本に「LGBT平等法」が必要なのか。キャンペーンを主催している団体の一つで、これまでも法整備に向けて活動を続けてきた「一般社団法人LGBT法連合会」理事の五十嵐ゆりさんに聞きました。

性のあり方による不当な扱い

ーーどうして、日本にLGBT平等法が必要なのでしょうか。

LGBTと呼ばれるセクシュアルマイノリティの方々は、その性のあり方によって、不当な解雇、異動、退職に追いやられても、その不当さを訴える法律がありません。

トランスジェンダーであることを採用面接で伝えたら、面接が打ち切りになってしまったというケースですとか、あるいは「オカマみたいなやつに営業を任せられない」そんなことを言われて、内勤にさせられてかつ給料も下がってしまった、なんていうケースがありますね。

また、10代のLGBT当事者の方々は、いじめ被害を受けている方も少なくありません。親御さんから理解を得られずに転校を強要されたというケースも我々の耳に入ってきております。

こうした学校、職場、社会を変えていくためにも、LGBT平等法は必要ですし、その法律の存在によって泣き寝入りをせずに済むんじゃないかという風に我々は考えています。

LGBT平等法の4つの柱

【なぜ「LGBT平等法」が必要?】 日本には、LGBTの人々を差別から守るための法律がありません。LGBT平等法が必要な理由や背景について画像にまとめました。ぜひ署名と「#EqualityActJapan」「#日本にもLGBT平等法を」をつけて拡散をよろしくお願いします! 署名はこちら↓ ✍️https://t.co/oZUSiPIhB4

ーーLGBT平等法の中身は、具体的にどのようなものでしょうか。

法制度の中身としては、LGBT法連合会が提言したLGBT差別禁止法の試案をベースにしています。考え方の柱は、4つあります。

1点目が(差別の)『防止』です。職場や学校、国、地方自治体、そして民間企業において、性的指向や性自認に関する研修、それから相談窓口の設置を求めているものになります。

2点目が『禁止』。職場、国、地方自治体、そして民間企業。そうしたところにおける、性的指向・性自認に関する不利益な取り扱いを禁止することを求めています。

3点目が『合理的配慮』ですね。職場、国、地方自治体、民間企業そうした様々な場所に関して、性的指向や性自認に関しての困りごとを話し合いで調整する義務を課すというものになります。

4点目が『支援と相談窓口』です。職場や地方自治体、国もそうですよね、そして民間企業。性的指向や性自認に関する困りごとの相談窓口、そして居場所をつくることを求めています。

こうした4つの柱を主とした内容を、超党派で法律をつくっていただきたい。これが私たちの考え方です。

東京都や茨城県で条例制定

ーーこれまで性的マイノリティに対する差別を禁止する法律について、国会ではどのような動きがあったのでしょうか?法整備をめぐる議論について教えてください。

法律案の策定に向けた動きはあるんですが、なかなか議論が進まない印象があります。

野党は2018年に性的指向と性自認を指す「SOGI(Sexual Orientation Gender Identityの頭文字)」を冠した「SOGI差別解消法」という法案を国会に提出しました。しかし、制定には至っていません。

一方で、実は、私たちが求める差別禁止規定を盛り込んだ条例を制定する自治体は、増えています。東京都が2018年に、都道府県としては初めてLGBTに対する差別禁止規定を盛り込んだ条例を制定しました。

2019年には、茨城県において男女共同参画推進条例の改正案が可決され、ここに性的指向や性自認に基づいた差別を禁止する規定が盛り込まれました。

今のところは、来年には東京2020大会の開催が予定されています。オリンピック憲章の中には「性別や性的指向による差別は禁止」ということが明記されています。

この憲章を踏まえれば、大会開催にあたってLGBTに関する差別をこのまま放置してはいけないし、いち早く改善しなければいけないのではないでしょうか。その制度を整えることが開催国の責任であると我々は考えています。

「こうやって生きていくしかないんだ」

ーー五十嵐さんご自身は40代に差し掛かる頃に、レズビアンだとカミングアウトされたそうですね。

私が同性愛者である、レズビアンである…かもしれないという風に自覚したのは、中学2年生の頃だったと記憶しています。その頃からずっと隠してきて、異性愛者のふりをして、職場でも男性と付き合っているふりをして過ごしてきました。

まだ社会の無理解や偏見が強いという風に感じていましたので、仮にカミングアウトしたところで、到底受け入れてもらえないだろう、分かってくれる人は少ないだろうというような確信がありました。

その時はその選択をした方がいいだろうと、いわゆる処世術的に選んでそうしていましたけれど、本当に大変でした。自分の本当のことを言えない、嘘をずっとついている状況は、非常に罪悪感と緊張感があって…なんとも言えないですよね。

本当のことを言えていないまま人間関係を築くことってとても難しくて。人間関係ってプライベートなども含めて話しながら、少しずつ構築していくものだと思うんですけれど、それがやっぱりできなかったんですね。

「出来ないな」「しんどいな」と思っていたんですけれども、明確なルールのない時代でしたから、「仕方ない」と。「こうやって生きていくしかないんだ」という風にいわば諦めの気持ちはありました。

39歳、40歳頃になってようやくオープンにできるようになってきたんですけど、もし自分が安心できる環境を整えてくれるようなルールや法律があって、性の多様性に関する適切な教育を、自分自身も早く受けることができたら、状況はかなり違っていたのではないかと感じています。

適切な教育を多くの人が受け、同級生や先生が、あるいは職場の上司が社長がLGBTについて知っていてくれたら。「一人ひとりの性のあり方は尊重されるべきもの」「LGBTの人は身近にいる」という前提に変わっていたと思うんですよね。

そんな前提が共有されるようになったら、笑いやからかい、いじめや偏見がどんどん減っていく。より生きやすい社会になっていくんじゃないかなという風に感じています。

適切な情報の啓発等も含めて、その意識がしっかりと浸透していくことによって、若者自身が「自分のあり方はこのままでいいんだ、決しておかしくないんだ」と未来に希望が持てる、あるいはロールモデルと出会える。

法律が存在するということで、そうした非常にポジティブな動きが加速していくんじゃないかという風に考えています。

「ルールができるということは、人の意識も変えていくと思うんです」 性的マイノリティであることを理由とした不当な解雇や学校でのいじめ…。 どうして日本に「LGBT平等法」は必要なのか。自身もレズビアンで、法整備に向けて署名を呼びかけているLGBT法連合会の五十嵐ゆりさんに聞きました。

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