「好きなものを着られる世界に」トランスジェンダー向けの水着ブランドを立ち上げた親子
「それまでは、子どもたちが安全に自分を表現できるように、サポートしていきたい」トランスジェンダーの娘を持つ父親は語ります。
ジェイミー・アレクサンダーさんの娘はトランスジェンダーのルビーさん(13)。
親子はトランスジェンダーの女の子や、ノンバイナリーの子どもたちのための水着ブランド「ルビーズ」を立ち上げました。
「ボトムスの外側は体を自然に引き締めるスパンデックスで作られていて、内側は2層のメッシュにより、ずれないようになっています。大きなパッドなどは必要ありません」
インスタグラムには、ルビーさんが商品紹介をする動画が掲載されています。
BuzzFeedはルビーさんに許可を得てから、ジェイミーさんを取材しました。
「ルビーが女の子用の服や靴に興味を持ち始めたのは、3歳頃でした」
ジェイミーさんは、ルビーさんが幼い頃からお母さんのハイヒールを履いて踊っていたと話します。
当時ジェイミーさんは、ルビーさんの行動について、幼い子どものやることだろうと思っていました。しかし、ルビーさんが4歳になった時の夏、あることに気づきました。
「よくビーチに行きましたが、他の子どもたちが泳いだり、砂遊びをしたりしている中、ルビーはタオルをスカートに見立てて何時間もスタイリングをしていました。上手にできると、モデルのようにビーチを歩いていました」
5歳になると、ルビーさんはプリンセスに興味を持つようになりました。
「ルビーは『塔の上のラプンツェル』のシーンを再現し、彼女はラプンツェル、私は王子様のマネをしました。ルビーは頭にベッドシーツを何枚も巻き、編んでラプンツェルの長い髪に見立てていました。同じ遊びが毎日、1年も続きましたよ」
「ルビーは袖のある服ではなく、タンクトップを好んで着ていました」
「私は仕事でよく出張していたので、気づくのに時間がかかりましたが、お土産に買って帰ったTシャツを、ルビーが一度も着ないこともありました。ある時、ルビーの部屋に入ると、彼女はあげたばかりのお土産のTシャツの袖を切っていました」
小学3年生の終わりには、ルビーさんはスポーツブラやレギンス、友達から借りた服を着るようになりました。
その頃には、ルビーさんはトランスジェンダーだと自認する準備ができていたといいます。
ルビーさんは、500人の子どもから男女30人ずつ選ばれる芸術学校に合格しました。ジェイミーさんは入学時の様子を振り返ります。

「校長先生に電話をし、ルビーがトランスジェンダーだから、男女の人数に差が出てしまうことを説明しました」
「運命的だったのか、その年の試験で誤って男子31人と女子29人を取ってしまったので、校長先生はルビーがトランスジェンダーであることで男女の人数に差がなくなるのをとても喜んでいました」
ジェイミーさんによると、学校生活はルビーさんにいい影響を与えているそうです。中でも校長先生は、熱心にルビーさんをサポートしてくれています。
授業や放課後の活動で水泳や体操、ダンスなどをし始めたルビーさんは、水着やレギンス、レオタードなどが必要になりました。

この時、ルビーさんが安心して服を着られるか、ジェイミーさんは心配になったそうです。
「ルビーは、女の子の友だちのような服装をしたいだけなのです。トランスジェンダーの女の子向けの服を見つけるまで、女の子用のウエアを着るのは安全ではないように感じました」
「その後、トランスジェンダー向けの水着や下着を売るお店をいくつか見つけました。ルビーが気に入ったものもあったみたいです」
この体験からジェイミーさんは、トランスジェンダーの子ども向けの服を作ろうと思い立ちました。そして、ルビーさんと一緒に水着ブランドを立ち上げたのです。
もっと早く、ルビーさんが着たいものを着させてあげたかったと、ルビーさんは振り返ります。

ルビーさんが小学1、2年生の時、ハロウィンでプリンセスの仮装をすることに、ジェイミーさんと妻は反対したそうです。
「ルビーの安全について心配していたから、反対しました。今も心配しています。子どものことを考えると、親は難しい判断をせざるを得ない時があります」
ルビーさんと家族は、LGBTを讃えるいくつものプライドマーチに行っていました。今ではマーチの観客ではなく、参加者です。

「最近参加した2つのマーチは、とても素晴らしかったです。ルビーの性自認をオープンに肯定できて、祝福できました」
「どんな子どもでも、好きなものを着られる世界になってほしいです」とジェイミーさんは語ります。
「それまでは、子どもたちが安全に自分を表現できるように、サポートしていきたいです」
この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:アシュウェル英玲奈