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Photograph by Bryan Aulick for BuzzFeed News; Illustration by Simone Noronha for BuzzFeed News

アメコミ界で広がる嫌がらせ「コミックスゲート」 コミックの多様化を攻撃

コミックの作者やファンは、女性やLGBT、人種的に多様なキャラクターをコミック作品で増やそうとしている。しかし、そうした人々は、敵意だらけのオンライン攻撃「コミックスゲート」に曝される。

コミック業界の多様性推進派は、作品内で女性やさまざまな人種、LGBTコミュニティを多く取り上げていこうと考えている。

ただ、こうした人々は、嫌がらせと文化的な争いをネット上で仕掛ける「コミックスゲート(#Comicsgate)」の標的になってしまう。攻撃するのは、オンライン空間で活動する人たちと、そうした連中に強い影響力を持つ焚きつけ役だ。

熱心なコミックファンやクリエイターの一部はコミックスゲートを、ゲームカルチャーに参加する女性を口汚く罵って攻撃する「ゲーマーゲート」問題の悪化版と見なしている。

コミックスゲートに加わる嫌味な人々は、自分たちが「社会正義の戦士(Social Justice Warrior:SJW)」と呼ぶ人々を、人種や性に関する差別用語と脅迫的な表現を使って恫喝する。

とりわけ、コミック業界の多様性推進派と考えられる人に対して、攻撃を仕掛ける。あからさまな内容の攻撃メッセージも見られるが、大多数は間接的だったり、コミックに明るくないと意味のよく分からない内輪ネタ的な内容だったりする。

荒らしはほとんどが匿名で、「#Comicsgate」と書いたプロフィールのアカウントでTwitterを利用したり、YouTube、掲示板Discordの非公開チャンネル、ドナルド・トランプ支持の極右派が活動する掲示板を使ったりして活動する。

そして、マーベル・コミックやDCコミックスといった大手出版社の多様性確保に向けた取り組みへ誰かが賛意を表明すると、群がってくる。彼らによると、多様性はコミックの質を下げるそうだ。

コミックスゲートの件でマーベルの広報にコメントを求めたところ、「マーベルはこれまでも今後も、常に(多様性を受容する)インクルージョンと(多様性に対する)尊重を業界で推進する」と回答してくれた。DCからのコメントは得られていない。

Twitterのある広報担当者は、BuzzFeed Newsに対し「Twitterのルールに違反していたら対処する」と述べた。YouTubeにも問い合わせを行なったが、返答はなかった。

荒らし側の言い分はこうだ。コミックスゲート活動家のなかでも特に影響力が強く目立つ人々のなかには、被害者は自分たちで、SJWがTwitterやその他ソーシャルメディアで法に触れない程度の脅迫的なメッセージを投稿してくる、と話す人がいる。強迫的なまでにポリティカルコレクトネスを信奉する者たちから、あっという間にナチスや白人至上主義者、極右などと決めつけられるという。

政治的に対立する悩ましい現在進行中の話題は、加熱して極論に走りやすく、議論を炎上させてしまう。いずれの陣営も、自分たちの見解を補強する一方のフィルターバブルから抜け出せないのだ。

一方、荒らしからコミックスゲートの被害を受けた人たちは、BuzzFeed Newsに対し、何カ月にもわたって投稿で憎しみをぶつけられ、嫌がらせを受けており、個人情報を暴露されかねない状況にある、と語った。

被害者の多くはさらなる報復を恐れ、BuzzFeed Newsの取材に名前を出さないよう求めた。そのうちの2人は、攻撃後にカウンセリングを受ける羽目になったという。

「この数カ月におよぶ(コミックスゲートへの)対応は、これまでの人生で最悪レベルのストレスを感じる体験だった。そのせいで、最悪なインターネット版PTSDを患っているよ」(BuzzFeed Newsの取材に応じた匿名希望の被害者)

史上初のコミックスゲートを特定するのは難しいものの、コミック業界関係者の多くは、作家チェルシー・ケイン氏のマーベル連載コミック「モッキンバード」が2016年10月に打ち切られた騒ぎを挙げる。フェミニズムを全面的に打ち出したこの作品は、荒らしをする人々の注目を集めていたのだ。打ち切り自体は荒らしの影響でなかったが、打ち切りのニュースで勢いづいた彼らは、ケイン氏をTwitterから追い出そうとしつこく付きまとった。

モッキンバードの最終話は人気掲示板のFunny Junkで晒し物にされ、「マーベルは、どれだけ迎合しようとしてもフェミニストとSJWにコミックを読んでもらえない、って分かり始めたんだろう」などと書かれた。現在凍結されているTwitterアカウントには、「フェミニズムの説教を1話3ドル99セントで受けたい奴なんていない」とツイートされた。

ケイン氏は、BuzzFeed Newsに対して「建設的な批評というレベルにない」と述べる。「『女には小説があるのだから、コミックなど読ませない』といった類の話に過ぎない」(同氏)

「モッキンバードは『フェミニスト色が強過ぎる』『女のヒーローなんていらない』『女の書いたコミックは買わない』といった具合だった。マーベルが連載打ち切りを発表したとき、私の名前入り祝福ツイートが大量に投稿された。私を攻撃していた荒らしたちの主張が通ってしまった」(ケイン氏)

モッキンバード最終話の表紙に書かれた「私のフェミニスト感は私に聞け」というフレーズは、これ以降コミックスゲートにまつわるミームとなり、おもちゃにされ続けている。

コミックスゲートが大々的に表面化したのは、しばらく後の2017年7月だ。コミック出版者の草分け的人物で、マーベル社員だったフロ・スタインバーグ氏の死去から5日後、当時マーベルに勤めていた女性たちが同氏の栄誉をたたえようとミルクセーキを買いに出かけたのがきっかけである。

そのとき彼女らは、誇らしげに掲げたミルクセーキとともに自撮りした笑顔の写真を、Twitterに「マーベルのミルクセーキ・チーム」として投稿したのだった。

すると、あっという間に彼女たちはTwitterで荒らしの標的にされた。コミックスゲートを支持するある人物は、シェアされた写真に対して「フェミニズムと社会正義を抜きにして、純粋に物語を出版できないものか?」と疑問を投げかけた。それから何カ月も過ぎたが、状況は変わっていない

コミックスゲート支持派は、コミック業界へある程度の影響を及ぼすことに成功してきた。例えば、作家のオーブリー・シッターソン氏はBuzzFeed Newsに、2017年7月のLGBTQプライドを記念した「G.I.ジョー」向け別バージョンの表紙と、従来と異なる容姿をしたキャラクター「サルボ」の件で、荒らしから嫌がらせを受けた、と話してくれた。彼らは、シッターソン氏が2017年に投稿した言葉足らずの911同時多発テロにまつわるツイートを、槍玉に挙げたそうだ。

この騒ぎに加わった荒らしたちは激しい怒りで興奮し、IDWのTwitterアカウントにリプライする形で繰り返しツイートした。

@aubreysitterson @TheMarySue To heck with it. #FIREAUBREY @DiversityAndCmx @douglasernst @IDWPublishing @The_Finer_Print @GeneralsJoes https://t.co/P6E75KHYX5

その結果、シッターソン氏のコミックは連載を終えた。同氏によると、IDW向けに予定されていたコミック「ストライク・フォース」の仕事もなくなったそうだ。

IDWは販売業者に対し、次のように説明した。シッターソン氏が「ソーシャルメディアの個人アカウントで表明した見解は、無神経で、対立を招く内容であり、挑発的と多くの人に認識されている。IDWは、こうした個人的見解を見過ごしたり支持したりすることなど決してなく、読者の感じるであろう痛みを理解している」

シッターソン氏は、そもそも目を付けられた本当の理由が描いたコミックの内容にあると考えており、「私や問題の本に対する実際の批判を見ると、結局サルボに行き着く」と話す。

サルボはG.I.ジョーに登場する主要キャラクターで、これまで男性だったのだが、シッターソン氏は「フィットネスのモデルとは異なる体形の有色人種女性」として描いた。

Courtesy Ilias Kyriazis, Mark Vasquez / YouTube / Via youtube.com

(左)シッターソン氏の描いたサルボ(黒いシャツを着た中央のキャラクター)、(右)1989年のアニメ版G.I.ジョーに登場したサルボ

2017年には、コミックスゲート活動家たちを喜ばす出来事があった。マーベル幹部のデイビット・ガブリエル氏が販売業者向け集会の場で「人々は多様性を求めていない」と述べ、販売の落ち込みの原因として多様性を非難したのだ。

あるコミックスゲート派のTwitterユーザーは、「みんなこの発言に激怒しているけれど、多様性とSJWの戯言を無理強いすると販売が地に墜ちる、というマーベルの見解は正しい」とツイートした。別の反SJWユーザーによる「マーベルは多様性の強制が売上に響くとやっと気付いた」というツイートもある。

最近になってコミックスゲート活動家は、コミック業界における自分たちの力を誇示する目的で、ブラックリストとハッシュタグを使うようになった。

活動家グループが2月初めに作った「ブラックリスト」には、コミックスゲート・トロールに異議を唱えるシッターソン氏やジャマル・イグル氏などのほか、多様性推進を表明しているクリエイターやその他業界関係者の情報が掲載された。

このリストで多様性推進派とされた人物としては、「従順でない」女性が監獄送りにされるディストピア的未来を描いた「ビッチ・プラネット」の作者ケリー・スー・デコニック氏や、例のミルクセーキ自撮りに写ってたヘザー・アントス氏などがいる。

コミックスゲートでもっとも議論になる部分は、コミック業界にいるある種の著名人と、被害者とのあいだに存在すると思われる。被害者の多くは、こうした著名人たちが、嫌がらせ行為に公然と賛同することと、嫌がらせを暗黙の了解で見逃すこととの中間的立場を取っている、と主張。トロールに対しては、注目と増幅によって活動が煽られている、と指摘した。

43歳のイーサン・バン・サイバー氏は、この緊張関係の真っただ中にいる。

バン・サイバー氏は、マーベルとDCで数十年のキャリアを持ち、「グリーンランタン:リバース」「New X-Men」「ウルヴァリン」といった著名作を手がけたクリエイターである。業界の関係者によると、サイバー氏はコミックスゲートの嫌がらせ活動に加担しているという。彼を信奉する荒らしたちは、彼がTwitterで異議を唱えた人物なら、それが誰であろうと群がって来るそうだ。これに対し、バン・サイバー氏はBuzzFeed Newsに、完全に自分が被害者である、と話した。

バン・サイバー氏は、匿名で騒動を先導するユーザーでない。それどころか、彼は多様性に賛同する男性や、彼とやり取りする人と交流することが多く、女性とのやり取りは限られる。そして、彼の信奉者の一部が攻撃をするのだ。バン・サイバー氏は、対話を通じて平和を実現する目的で、(ハラスメントを引き起こしがちな環境なのだが)自分のプラットフォームを使おうとしている、と主張した。結局のところ、何が皮肉なのか、何が本質なのか、何がバン・サイバー氏のアートにおけるモチーフに過ぎないのかを区別しようとする行為そのものが、コミックスゲートで起きている混乱の象徴といえる。

バン・サイバー氏は、コミックスゲートとの関係など一切ないとし、ソーシャルメディアへの投稿にコミックスゲート支持者を集める意図などなかったと主張している。自分は「カルチャー大戦争の真っただ中」にいるのだという。さらに、「これ以上の迫害と過激派の攻撃から自分と家族を守ろうとしている」と述べた。

ただし、バン・サイバー氏は極右的なメッセージを頻繁に取り上げる。具体的には、掲示板サイトRedditにある極右の親トランプ板「/r/The_Donaldからミームシェアした。また、武装した突撃歩兵コスチュームの「カエルのぺぺ」の画像に「queer(訳注:「いかがわしい」のほか、「同性愛者」や「ホモ」といった意味で使われる単語)なグローバリスト連中を一掃してやる」というコメントを付け、自分のYouTube番組に元ゲームゲート活動家と白人至上主義者を出演させた。

コミックのファンたちは、バン・サイバー氏が2007年に「My Struggle」というタイトルの短編集を出版したことから、同氏のことを繰り返し「ナチ」と呼んできた。このタイトルはアドルフ・ヒトラーの自伝的著作「我が闘争」の英題そのもので、バン・サイバー氏に似せたキャラクター「シネストロ」が主役のストーリーだ。

バン・サイバー氏はBuzzFeed Newsに対し、「My Struggleは、架空の邪悪なファシスト独裁者であるシネストロを軸にした物語だ。シネストロは(グリーンランタンの世界では)スペース・ヒトラーとして知られるキャラクターで、悪人だよ。私のアートにおける闘争もテーマにしている」と話した。「『マニフェスト』という作品は、共産主義者のプロパガンダと解釈できるようにも作った」(同氏)。さらに、同氏はFacebookでも長々と釈明した。

バン・サイバー氏は、BuzzFeed Newsとやり取りした一連のメールで、極右イデオロギーを持つ人々と共闘していたり、そうした思想に共感したりといった内容の疑惑を否定した(なお、これらのメールは、彼自身がコミック関連サイトのBounding Into Comicsに垂れ込んだらしい)。「人種差別は嘆かわしいと思う。偏見には嫌悪感を抱くし、人種差別政策や『ナチズム』にかかわったことなど一度もない。私の子どもたちはユダヤ人だ!」(同氏)

バン・サイバー氏は、「古典的自由主義者(クラシカル・リベラル)」を自称するカナダの大学教授、ジョーダン・ピーターソン氏の信奉者でもある。ピーターソン氏は、彼の多様性やジェンダー、言論の自由に対する保守的な見解から、ここに来て極右系オンライン・コミュニティと男性人権運動の両方で人気が高まっている。バン・サイバー氏は、ピーターソン氏の最新刊「12 Rules for Life」で表紙イラストを担当したのだが、同書は書評誌New York Review of Booksに「現在のロストジェネレーション層には魅惑的な神話のように響く、右翼的な祈り」と評された

この表紙の件でバン・サイバー氏にコメントを求めたが、返答はなかった。

マーベルの責任者はBuzzFeed Newsに対して、バン・サイバー氏は2003年以降マーベルと関係していないので、特に話すことはない、とした。

DCは、同社の新たな対ソーシャルメディア方針に関する声明を出した。

「当社は、従業員とフリーのクリエイターが高いプロ意識を維持すると同時に、オンライン活動する場合には理性的で礼儀正しい振る舞いをするよう期待している。中傷、名誉毀損、差別、ハラスメント、ヘイトと取られたり、暴力を扇動したりするコメントは容認できず、民事訴訟または刑事訴訟の対象となる可能性がある。さらに、侮辱、残酷、無礼、下品、卑劣と見なされかねないコメントは、当社のポリシーおよびガイドラインに反する。(すべてを受容し支える)インクルーシブかつサポーティブで安全なオンライン環境の構築に貢献することを、関係者に要求するとともに、期待する」(DC)

自分のオンライン活動がフォロワーに敵対的な心理を生じさせる可能性があることについて、バン・サイバー氏は自覚があるらしい。

コミック関係のポッドキャストを配信しているテクスター・ブッシュエテリー氏が2017年12月、コミックスゲート関連ユーザーの多くはバン・サイバー氏をフォローしているとTwitterで指摘したところ、バン・サイバー氏がブッシュエテリー氏のポッドキャスト用アカウントを引用する形でツイートし、「おい、レーダーに引っかかったぞ。俺への悪態を広げ続けてみろよ。俺の力でお前を有名人にしてやる」と反応したのだ。

ブッシュエテリー氏は予防策をとり、荒らしをする人々のアカウントを大量にブロックすることで嫌がらせを最小限に抑え込んだ。なお、ブッシュエテリー氏はバン・サイバー氏の発言を、本心をほとんど隠す気のない、ハラスメントをちらつかせる脅迫とみていた。

「リトルガーデン」の作者ダリル・アーヨ氏は、1月に起きたバン・サイバー氏との衝突を、どのようにコミックスゲート・ハラスメントが起きて増幅していくかの典型例、と考えている。

衝突の発端は、「社会正義戦士」が政治的にナチスと似ていると主張したマーベルのコミックアーティスト、ジョン・マリン氏を、アーヨ氏がツイートで批判したことだ。

X-Men are closer to Jews in SJW Hitler's Germany fighting for freedom because they see ideologues rising, silencing them, weaponizing hate, racism and socialism against the people they claim are the root of social ills. SJWs are not Nazis but Nazis are SJWs and X-MEN aren't SJWs. https://t.co/GlspfHMhLN

It doesn't matter if you like Jon Malin's comic drawings or not. If you base your politics around whether or not somebody's art appeals to you then you're going to disappoint yourself sooner than later

マリン氏は、BuzzFeed Newsに「ナチスが人種差別的な権威主義者たちであるのに対し、SJWは人種差別と男女差別を掲げる権威主義者の敗者グループであり、権力と力をさらに強めようと活動している」と話した。

このような争いは、バン・サイバー氏のようなコミックスゲート界の大物の目に留まることが多い。そして、見つけられると火に油が注がれてしまう。嫌がらせ行為が、世間の反発が切っ掛けで始まるとは限らない。ブラックリストに掲載されたり嫌われたりしている作者の新作発表や、常時監視されている人物のツイートが、言い争いを引き起こす。

マリン氏に対するアーヨ氏の反論に気付いたバン・サイバー氏は、自分のフォロワーに向けて、アーヨとマリンのディベートをバン・サイバーのYouTubeチャンネルで見たくないかい、と尋ねるツイートを投稿したのだ。

ALLRIGHT. Who wants me to take @JonMalin live on ComicArtistPro Secrets to discuss this hullabaloo right now? @darrylayo? You down?

続いて、バン・サイバー氏はアーヨ氏のツイートに直接リプライし、マリンを出演させるから「言うべきことを言うといい」と番組に招いた。

@darrylayo Darryl, come on my show right now and say what you have to say. I’m putting Jon Malin. Discussion.

アーヨ氏は番組への招待を断ったうえで、バン・サイバー氏が「明らかな八百長試合」へおびき寄せようとしているに違いない、とする一連のツイートを投稿した。バン・サイバー氏がアーヨ氏に絡むとすぐ、コミックスゲートのTwitterユーザーたちによる波状攻撃が始まった。

Good morning. So last night (or: just a couple of hours ago, really), your man Ethan van Sciver attempted to goad me into coming onto his podcast show to "debate" some ridiculous right-winger artist at Marvel.

アーヨ氏は、バン・サイバー氏のフォロワーたちが彼のやり取り相手を見ており、彼が指さすやいなや襲いかかる、と確信している。BuzzFeed NewsがTwitterアカウントを調べた範囲では、アーヨ氏に攻撃を仕掛けたユーザーの大半がバン・サイバー氏のフォロワーだった。

バン・サイバー氏がアーヨ氏に書いた最初のツイートから20分後、フォロワーの1人がバン・サイバー氏とアーヨ氏に戦うよう迫る内容の絵を投稿した。ほかのフォロワーもアーヨ氏を狙った攻撃的なツイートをし、アーヨ氏を「二流の黒ん坊」(訳注:このTwitterアカウントは凍結されている)と呼んだ。「コカイン中毒のホームレスにiPhoneを恵んでやると、@Darrylayo(ダリル・アーヨ)ができあがる」というツイートもあった。アーヨ氏は、バン・サイバー氏から絡まれる前にトロールをできるだけたくさんブロックしようとした。なかには、どうやったのかアーヨ氏と同じユーザー名を使っていたトロールもいた。

ハラスメント行為が加熱するにつれ、コミックスゲートに加担して攻撃するユーザーの多くは、自分たちこそハラスメントの被害者だと印象づけようとする。例えば、バン・サイバー氏は、アーヨ氏から公然とナチだとなじられた際のスクリーンショットを、繰り返し投稿し始めた。

@darrylayo The “creepy stunt” was inviting you onto my show for a conversation about your creepy stunt, which has been an ongoing harassment campaign against me. https://t.co/K92PAALYJ6

この騒ぎのやり取りは、コミックスゲートへの共感を示すBleeding Foolなどのサイトに注目された。コミック専門サイトBleeding Coolのパロディ版であるBleeding Foolは、アーヨ氏を「騒ぎの全責任を負う本物の悪党」と呼んだ。

荒らしたちは、アーヨ氏のような連中が金儲け目的の注目集めだったり、バン・サイバー氏などの人物を利用して自分たちを高めたりするだけの意図で行動している、と主張する手口も用いた。

YouTubeでこの動画を見る

ThatUmbrellaGuy / YouTube / Via youtube.com

コミックスゲート派ユーザーの多くは、こうしたTwitterへの投稿を1つ残らずスクリーンショットで保存し、ビデオに編集してYouTubeへ投稿する。そして、このビデオが再びツイートされ、無数の途切れない攻撃ツイートの集中砲火をアーヨ氏のような人々に浴びせ続ける。ハラスメントが新たなハラスメントを引き起こすこのループは、数週間続くこともある。リチャード・C・メイヤー氏の運営している有名コミックスゲート・アカウントのDiversity & Comicsは、最初から数週間にわたってこのやり取り紹介し続けており、そのたびに言い争いを再燃させてきた。

アーヨ氏とバン・サイバー氏のやり取りが始まって以降、トロールたちはアーヨ氏のフィードにすべて目を通し、言語道断と判断したツイートを総ざらいして、攻撃を続けるために自分たちのフォロワーへシェアしている。

そして、バン・サイバー氏が数日後、アーヨ氏への集中で注目されたことを理由にTwitter活動を一時休むと発表すると荒らしたちはアーヨ氏を非難し、ハラスメントを再開させた。

アーヨ氏はBuzzFeed Newsに対し、「イーサン・バン・サイバーは、コミック界で上層にいるため、(攻撃に加担する)こうした人々へ合法感を無条件に与えてしまう。彼が加わることでハラスメントは勢いづき、彼の書く私に関する嘘がトロールたちを煽る。私は、実生活の安全が確実に脅かされている」と述べた。

バン・サイバー氏はBuzzFeed Newsに、やり取りするまでアーヨ氏のことを知らず、アーヨ氏からナチ呼ばわりされて家族が危険にさらされた、とした。「私たちに送られてくる脅迫が恐ろしくて、移動もできなかった。どれも『ナチ』という言葉を使って攻撃してくる」(同氏)。そして、アーヨ氏に対して自分自身が「寛大である」と見せるため、番組へ招待したのだという。

コミックスゲートのブラックリストに掲載されているジャーナリストのキラン・シアック氏は、アーヨ氏と同じような体験をした、とBuzzFeed Newsに話してくれた。

シアック氏は2017年の中ごろ、バン・サイバー氏を解雇するようTwitterでDCに求めたのだ。その理由としてシアック氏は、これまでの「バン・サイバー氏の作品で見られるナチに結びつく表現」を挙げた。

シアック氏のこのツイートはBleeding Coolの記事で取り上げられ、少しだけ注目された。シアック氏はそれから数カ月間、バン・サイバー氏とDiversity & Comicsに関するツイートを投稿したが、いずれからも反応はほとんどなかった。

ところが、バン・サイバー氏とDiversity & Comicsは2017年の終わりごろになって、シアック氏のこうしたツイートを公に批判した。両者は批判を数カ月続け、非難する目的でシアック氏のツイートを散発的に拾った。

This is what I mean. I know you’re depressed, @kingimpulse but virtue signaling hate mobs to attack conservatives in comics isn’t going to make anyone buy your defunct SJW comics website. We can work together to make this business more profitable for everyone. https://t.co/Yn5aq6K4nH

Big thanks to @richjohnston @bleedingcool @kingimpulse @josephglass for helping me pass 50,000 subs

シアック氏によると、こうして公の場でバン・サイバー氏とDiversity & Comicsに言及されると、ハラスメントが毎回「確実に」増えたという。

@EthanVanSciver @EOrr321 @KingImpulse I just went to his Twitter page and I'm blocked. A Polygon soyboy using a blockbot? Imagine. Moi. Shock.

@leonidasolympia @DiversityAndCmx @richjohnston @bleedingcool @KingImpulse @josephglass

シアック氏に対する攻撃は主にTwitterで実行されていたが、アーヨ氏のときと同様、トロールたちはシアック氏のアカウントに似せたアカウントを作ろうとしたり、ときおりFacebookのメッセージとYouTubeのコメントも利用したりしたそうだ。Twitterがこうしたトロールのアカウントに対処してくれないため、シアック氏は強い不満を抱いている。

シアック氏がDiversity & Comicsの攻撃ツイートをTwitterへ報告するよう呼びかける投稿をしたところ、「このツイートに約100のリプライがあったうえ、それ以上の数のダイレクトメッセージが送られてきた」という。「報告したことを私に知らせたい人は多いのだが、呼びかけのスレッドにリプライしてDiversity & Comics側の標的にされたくなかったのだ」(同氏)

シアック氏の投稿に堂々とリプライし、Diversity & Comicsの報告を表明したある人物は、間髪を入れずに「コミック界のガン」というリストに登録された。その人はBuzzFeed Newsに、リストへ追加されたことは覚えているが、問題のアカウントは通常のオンライン攻撃を理由にすぐブロックした、と話した。

@KingImpulse Lmao some dude added me to a list of "cancer in comics" immediately after I posted this. Finally getting the notoriety I deserve.

シアック氏は、コミックスゲートの主要人物をオープンな場で批判すると、あっという間に狙われてしまう、と確信している。「私は黙らないので、それが分かる。連中はみんなを黙らせたいから、攻撃するフォロワーたちを放置している。攻撃が激しくなろうとも、私は黙るつもりなどない」(同氏)

さらにシアック氏は、Diversity & Comics制作のあるビデオに言及した。あるとき同氏は予期せぬバス代の発生で手持ちがなくなり、食事代を寄付するようツイートしたのだが、この行為がビデオであげつらわれてしまったのだ。まず、Diversity & Comicsが問題のツイートをスクリーンショットで取り上げたところ、バン・サイバー氏が「ホモ野郎は飢えさせておけ」とリプライした。このリプライは、今は削除されている。

Diversity & Comicsの運営者であるメイヤー氏は、シッターソン氏の次回作「ストライク・フォース」打ち切りを招いたハラスメント騒ぎに加担したことがあるのだが、バン・サイバー氏は、メイヤー氏の仕事を宣伝している。「#MoveTheNeedle」と「#MovingTheNeedle」というハッシュタグでメイヤー推しキャンペーンを展開し、メイヤー氏が自身のYouTubeチャンネルで紹介するコミックを買うよう「Diversity & Comicsコミュニティ」に呼びかけるのだ。こうしたコミックは、ほとんどが近代的なフェミニズムやLGBTのような問題を避けており、多様性に配慮したキャラクターをまず取り上げない。バン・サイバー氏による宣伝は、すでに効果を発揮している。

バン・サイバー氏は、メイヤー氏が「右翼の主流政策を支持しており、個人的には自分もそうだ」と述べた。「そして、フェンスを挟んだ両陣営が、お互いに嫌がらせをしている。近年、政治的な見解はあまりにも二極化していて、コミック文化はいずれの陣営にとっても有害になりつつある」という。

マーベルで働いた経験があり、現在フリーで活動するコミック書アーティストのティモシー・ドイル氏は、BuzzFeed Newsに、このようなバン・サイバー氏とメイヤー氏の関係がハラスメントのループに燃料を与えている、と話した。「(バン・サイバー氏が自分の)ソーシャルメディアで(Diversity & Comicsを)推し始めるまで、Diversity & Comicsはほとんど知られていなかった。コミック業界の友人たちがオンライで袋叩きされるのを見るのは、もううんざりだ。いじめっ子は好きじゃない」(同氏)

こうした状況の一方、ハラスメント攻撃にさらされた女性作家の一部で、コミックスゲートに対する反発が高まりつつある。コミック業界でこのように声を上げると、ハラスメントを招く行為と受け取られやすいため、反発する女性は珍しい(バン・サイバー氏に気付かれにくくしようと、投稿時にバン・サイバー氏の名前でなくイニシャルを使う人が多い)。そして、アーヨ氏とバン・サイバー氏の衝突以降、多くの人が声を上げた。

コミック作家のテス・ファウラー氏は、攻撃されそうな人に注意を呼びかけたり、嫌がらせをする人物の情報を集めたりする活動をしており、コミックスゲート被害者の保護に取り組む人物として知られるようになった。同氏は、バン・サイバー氏とメイヤー氏が友人関係であることに触れ、「彼らが友達であるため、今は業界の著名人が騒ぎへ加わる状況に対処している」とツイートした。

さらに、作家のロージー・ナイト氏もバン・サイバー氏の「使うナチ的な表現」に声を上げた。「バン・サイバーと、彼のトロールやファンは、Twitterから追い出そうと私に嫌がらせを仕掛けている」そうだが、ブロックチェーン技術を使って悪質なアカウントのフォロワーをブロックしており、今のところ追い出しは失敗に終わっている。

@DCComics EVS is an abuser, harasser and a Nazi. Harasses ppl of color, uses Nazi language and imagery, associates w Nazis. Guess what... he’s a fucking Nazi. Oh and preemptively fuck BC if they quote me in their next ‘EVS isn’t a Nazi article.’

ゲーマーゲートで標的にされた経験のあるナイト氏は、現在コミックスゲートで被害を受けている人たちに、勇気づけるアドバイスをしてくれた。

「私にとって最善の荒らし対策は、ブロックして前進を続けることだった。(イーサン・バン・サイバーと)馬鹿馬鹿しい衝突をしたけれど、どうなったと思う?私は今もここにいるし、コミックを書き続けている」(ナイト氏) ●


この記事は英語から翻訳されました。翻訳:佐藤信彦 / 編集:BuzzFeed Japan

BuzzFeed JapanNews
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Rachael Krishna is a reporter for BuzzFeed News and is based in London.

Rachael Krishnaに連絡する メールアドレス:rachael.krishna@buzzfeed.com.

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