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麻生太郎氏「北海道のお米は温暖化でおいしくなった」発言は誤り。農家の力を否定、実際の影響は?

自民党の麻生太郎副総裁は「平均気温気温が2度あがったおかげで、北海道のお米はおいしくなった」農家のおかげですか?農協の力ですか?違います。温度が上がったからです」と発言。温暖化について「いいこともあります」と述べていた。

10月31日に投開票される衆院選で、自民党の麻生太郎副総裁が北海道での街頭演説で行った「温暖化で北海道のお米は美味しくなった。農家のおかげではない」という趣旨の発言が、批判を集めている。

この発言は、誤りだ。北海道産米の品質が向上したのは事実だが、それには長年、道を挙げて米の品種や栽培技術の改良に取り組んだという背景があり、品質向上はその成果とするのが主な見方だ。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

時事通信

問題視されているのは、10月25日、小樽市で開かれた衆院選の自民党公認候補の演説会で麻生副総裁が発言した以下の内容だ(共同通信のYouTubeより)。

「いま北海道はいろんな意味であったかくなった。平均気温気温が2度あがったおかげで、北海道のお米はおいしくなった」

「地球温暖化って悪い話しか書いてありませんが、いいこともあります」

「昔、北海道のお米は『やっかいどう米』って言うほど売れない米だったんだ。今はその北海道が、やたら美味いお米を作るようになった。農家のおかげですか?農協の力ですか?違います。温度が上がったからです」

「温暖化だって悪い話じゃなくて、ここはいい方向に向くのも、農産物に限らず、いろんなものがよくなりつつあるんじゃないの」

この発言には農業関係者から批判の声があがった。北海道農民連盟は10月26日、大久保明義委員長名で抗議の談話を発表

「地球温暖化を肯定するような言葉を発することは、自民党の重要ポストにある副総裁の発言としては有るまじき由々しき事態」とし、以下のように強く抗議した。

「全国でも北海道米が高い評価を得ているのは、全道挙げて米の品種改良を重ね、官・民・農が一体となって協力し、“北海道ブランド米”としての地位を確立した結果であり、 今までの北海道米を作る生産者の努力と技術を蔑ろにするような発言は断じて許されない」

その後、岸田文雄首相が民放番組内で「発言は適切ではなかった。申し訳ないと思う」と陳謝した。

なお、応援された候補者本人も自身のTwitterで26日夜、麻生副総裁の発言は自らの認識と異なるとして、お詫びした。

「農業試験場の品種改良に加え、生産者の生産管理、JAをはじめ流通部門の品質管理など、多くの関係者の努力が相俟って、美味しいコメを家庭に届けることができるようになったと考えている」としている。

温暖化の影響は…

時事通信

石狩平野に広がる稲田(北海道美唄市)

前述の通り、この発言は「誤り」だ。

たしかに麻生副総裁の言う通り、北海道の米はかつて低い評価に苦しんでいた時代があった。

農業気象学会北海道開発協会の資料によると、北海道では1961年に米の作付け面積が日本一になったが味や品質の評価は低く、減反政策で大きな影響を受け、危機感が高まった。

その後、1980年から品種改良の研究が始まり、「ゆきひかり」「きらら397」「ななつぼし」などを開発。一方で肥料などを管理する栽培技術も向上し、2010年の「ゆめぴりか」誕生につながったという。

北海道庁農業振興課もBuzzFeed Newsの取材に対し、「長年にわたり品質開発に取り組んできた成果や、生産者が技術向上に取り組んできた成果などが、いまの北海道米のブランド力につながっている」との見解を示した。

また、実際に品種改良を続けてきた道立総合研究機構・中央農業試験場の担当者も取材に対し、「温暖化が注目される前の昭和50年代から品種改良を進めてきましたし、農家の方も栽培面で品質向上を続けられてきました。品質向上はその結果だと考えております」と回答した。

一方で温暖化については、2009〜10年の研究で、温暖化が進む2030年代の気候下では「良食味化が期待される」と予測しているという。これは種子が発育する「登熟期間」の気温が高くなることで、米の粘りに影響する「アミロース含有率」が下がるためだ。また、最大可能収量も「6%程度増加」と予測している。

このように温暖化の影響が今後、米の品質などに出る可能性はある。ただしこれは、10年前の時点での「予測」であり、現状については、機構として直接的な影響を比較したデータはないという。

いずれにせよ、現在にかけての北海道米の品質向上の主な要因は長年の研究や農家の技術向上の成果だ。麻生副総裁の言うような「温暖化で北海道のお米は美味しくなった。農家や農協の力ではない」という発言は、誤りであると言える。

政府も否定的な見解

時事通信

記者会見する松野博一官房長官

政府の見解はどうか。

金子原二郎農林水産相は記者から麻生副総裁の発言について26日の会見で問われ、「個々の政治家の発言について私がコメントするのは遠慮しておきましょうかね」としながら、以下のような見解を示し、事実上、麻生副総裁の発言を否定した。

「 それはもう、農家の皆さん方の努力に尽きるところが多いですよ。やっぱり農家の皆さん方が、その地域の気候に合った米を作ってきたと。そこはやっぱり、大変な努力によって、今日これだけ、日本でもいい質の米を作るようになった」

「気候どうこうっていうよりも、やっぱり、その気候に合ったものを作る努力をした結果で今日があると、私は思っています。これは別に、向こうが発言したことに対するコメントじゃないですから」

また、松野博一官房長官も同日の会見で、「政府として個々の国会議員の発言にコメントすることは差し支えたい」としながら、やはり以下のように、否定的な見解を示している。

「一般論として申し上げれば、今年10月22日に閣議決定した新たな気候変動適応計画では、米の収量は全国的に2061年から2080年ごろまでは増加傾向にあるものの、21世紀末は減少に転ずるとされているほか、すでに全国で気温の上昇による品質の低下等の影響が確認されている旨が記載をされております」

「政府としてはすでに生じている、または将来予測される気候変動の影響による被害を防止、または軽減するため、気候変動対策と気候変動への適応策に取り組んでまいりたいと考えております」

実際に政府の「気候変動適応計画」には、温暖化により、すでに品質や収穫量減少などの影響が出ていることに言及。

将来予測される影響として、収穫量が増える地域と減る地域の偏りが大きくなる可能性や、デンプンの蓄積が不十分な「乳白米」が増加し経済損失が出るリスク、さらに降雨パターンの変化、病害虫の増加などのリスクをあげ、高温に強い品種開発など、「重点的に対策に取り組む」としている。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。

UPDATE

候補者本人の発言を追記しました。


Contact Kota Hatachi at kota.hatachi@buzzfeed.com.

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