「学校に行くことは、義務じゃない」いじめに悩む子ども達に、経験者は語りかける

    子どもの自殺は、9月1日に突出する

    9月1日は、子どもの自死リスクが、1年で一番高まる日だ。夏休み明け、いじめなどに悩む子ども達は、学校が始まるプレッシャーで追い詰められやすい。

    「学校に行きたくない」。そう悩む相手に少しでも手を差し伸べようと、自らもいじめられ、不登校になった経験を持つ子たちが、ビデオメッセージを作った。

    動画は、こう、語りかける。

    「そんな風に思うあなたは、おかしくなんかないんだよ」

    東京シューレ / Via youtube.com

    「私もずっと、つらかった」

    ビデオを作成したのは、フリースクール「東京シューレ」に通う高校生世代以上の子どもたち。「学校に行くことは義務じゃない」と題されたビデオを通じ、自分たちの経験をもとに考えた文言を、男女5人が呼びかける。

    「自分がいづらいと感じる場所に、無理にいつづけなくていいよ」

    「もし学校に行くのが怖くなったりしたら、まずは休んでみてほしい」

    「あなたと同じ考えを持つ人は、目に見えないようで、実はたくさんいるんだ」

    BuzzFeed Newsは動画の出演者たちに取材した。

    「見た人が聞きやすい、受け止めやすい、スッと心に入ってくるような文言を考えました」。そう語るのは角田匠さん(17)。自らも中学時代、同級生や先輩にいじめられ、不登校になった経験がある。

    「そういうことで悩んでいる人は、たくさんいます。選択肢は学校に行くこと、一つだけじゃない。同じ人もいるんだよと、ほかの方法もあるんだよと、伝えたかった」

    同じように動画でメッセージを読み上げた木下わか菜さん(19)も「一人でも多くの人に届けばいいな」と言う。自身は小学校2年生からからかわれたり、避けられたりするいじめを受け、小学校卒業を機にシューレが運営する学校に移った。

    「私もずっと学校に行きたくなくて、つらかった。動画を見た人が、心が軽くなって、同じような思いをした人がいるんだなって分かってもらえれば」

    9月1日に突出する子どもの自死

    動画が公開されたのは8月18日。このタイミングにしたのには、理由がある。夏休み明けは、子ども達の自死リスクが、1年で一番高まるからだ。

    昨年、内閣府が発表した「自殺対策白書」。過去約40年間の18歳以下の自殺者数を日別に見たデータによると、9月1日が131人と突出している。年平均(49.4人)の3倍近い。

    内閣府 / Via www8.cao.go.jp

    白書は、その理由を次のように指摘する。

    長期休業の休み明けの直後は、児童生徒にとって生活環境等が大きくかわる契機になりやすく、大きなプレッシャーや精神的動揺が生じやすい

    実際、動画の撮影に携わった鶴岡直さん(16)は「夏休み明けは、いつも以上に学校に行く気になれない。気持ちも重くなって」と話す。

    「久々に会ったとか、宿題が終わっていないとか、ちっちゃい理由だけでいじめられる。みんなのテンションが上がっているから、その輪に入るだけで標的になるんです」

    小中学校にかけ、暴言暴力を振るわれ、中学2年生からシューレに通うようになった経験があるからこそ、わかることだ。

    取材に応じた3人=Kota Hatachi / BuzzFeed

    より苦しい思いをする「夏休み明け」

    30年前から活動を続ける東京シューレには、東京と千葉の3カ所で6〜20歳の約160人が在籍。長年、そうした子どもたちや保護者と携わってきた、シューレ事務局長・理事の中村国生さんは、BuzzFeed Newsにこう語る。

    「夏休み明けは、休んでいた子も『頑張ろう、これからは学校に行けるかもしれない』という気持ちが強まる。でも、いじめなどの状況は変わっていないために、より苦しい思いをしてしまうんです」

    「そういう子ども達や保護者の話を聞いていたからこそ、以前から休み明けに自死が多いことには注目していました。しかし、ここまで突出していたことが分かったのは、極めてショッキングでした」

    何か、対策ができないか。そう考えていたさなかの7月、子ども達がミーティングで自ら発案したのが、このビデオメッセージだった。シューレを卒業したOBなどの手伝いもあって、8月末に完成した。

    動画で子ども達に呼びかける中村さんたちシューレのメンバー=東京シューレ / Via youtube.com

    保護者が「休むことを認めること」

    動画には、シューレに通う子の保護者が呼びかける「不登校の子をもつ親から親へ」もある。これも子ども達の発案だ。

    なぜ、保護者なのか。中村さんは「親が期待をかけてしまうと、それは負担になる。背中を押すことは、より子ども達を追い詰めることになってしまいます」と説明する。

    「でも、子どもはなかなか苦しいとは言えない。親がいかにその側に立って理解するかが大切です。保護者の方は、とにかくしんどかったり、つらかったりした子ども達に、積極的に休むことを認めてあげてください」

    シューレでは、この動画の発信のほかに、3カ所のフリースクールで8月29日から「開放居場所」を設けた。誰でも気軽に訪れる場、「学校に行く以外の選択肢」があることを、知らせるためだ。

    「学校に行くことは、命と交換するほど大事なことじゃない。無理しなくていいんです」


    動画は、子ども達がこう訴えて終わる。

    「学校にいかない。その選択肢を、あなたは持っている。学校に行くことは義務じゃないんだ」

    「もっと過ごしたい場所、生きたいという場所を選ぶことは、あなたが生まれた時から持っている権利なんだ。あなたはそれを、自由に使っていいんだ」

    YouTubeでこの動画を見る

    youtube.com

    シューレなど、約90の団体が加盟する「フリースクール全国ネットワーク」では、「夏休み明け【学校がつらくてもココがあるよ!プロジェクト】」に、電話相談に応じる連絡先をまとめている。

    Contact Kota Hatachi at kota.hatachi@buzzfeed.com.

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