コロナ禍の8月15日、終戦の日。東京都千代田区の靖国神社には例年のように、大勢の人たちの姿があった。
この日の都内の最高気温は35度を超えた。参拝まで2時間待ちの時間帯もあり、熱中症を懸念して諦める人もいた。

靖国神社の担当者によると、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今年はソーシャルディスタンスを保つように、導線を確保するなどの措置を取ったという。そのため、例年以上に長い行列ができたとみられる。
BuzzFeed Newsは2016年から毎年、終戦記念日の靖国神社を取材しているが、違いもあった。
まず、例年であれば遺族会などが全国各地から大型バスなどで団体で訪れていたが、今年はそうした人たちの姿が少なかった。
靖国神社の担当者によると、近くにある日本武道館で開かれる全国戦没者追悼式の規模が縮小されたことが影響しているとみられるという。
一方で、帰省や旅行を自粛している人たちが、都内にある靖国神社を訪問先に選んだというケースもあった。
保守団体のイベントもネット中継に

また、神社の参道では改憲運動を目指す保守団体「日本会議」などによる追悼集会やイベントが開かれていたが、今年はネット中継による開催となり、大型のテントやそこに集まる人たちの姿はなかった。
関連団体の関連書籍や物販を売る出店ブースも、例年のようには並んでいなかった。日本会議の担当者によると、新型コロナウイルス感染拡大を鑑み、主催者の判断でテントでの開催を見送ったという。
このほか、楽器などを使って戦時中の軍歌をうたう人たちの姿もなく、街宣をする人もあまりいなかった。さらに、ここ数年多く見られるようになっていた、外国人観光客の姿もなかった。
列に並んでいる参拝客も口数は多くなく、例年に比べて「静か」な終戦の日になっていたように感じられた。
参拝した人々の思いは?

仲間たちと軍服をきて、毎年参拝に訪れているという70代の男性は、BuzzFeed Newsの取材にこう話した。
「軍服を着ることで、それを見た人に少しでも当時に思いを馳せて欲しいと思って、毎年参拝している。コロナでこれないと言う仲間もいた。しかし自分はおじなどの親戚も亡くしており、この日に慰霊したいと思ってきました」
妻と娘を連れ、初めて参拝したという46歳の会社員の男性は、「コロナでどこにでかけることもできなかったので…」と語る。
「国を護るために亡くなった人たちに感謝をするとともに、平和について考えたい。娘はまだ小さくて戦争のことも知らないので、身近にあるこうした場所を通じて、しっかりと伝えようと思っています」
一方、76歳の女性は「国を思って散った若者たちのために」と毎年参拝を続けているが、今年は行列を見て、熱中症を懸念し、並ぶことは諦めたという。
また、都内の大学生(20)は、いつもであればこの時期には帰省しているが、今年はコロナで自粛となったため、以前から興味があった靖国神社を訪れた。しかし長蛇の列に並ぶのを諦め、離れたところから手を合わせたと言う。その後、近くにある千鳥ヶ淵戦没者墓苑に足を運んだ。
2時間並んで靖国神社を参拝し、そのあと千鳥ヶ淵を訪れたという横浜市の31歳の男性と27歳の女性は「以前から行きたいと思っていた。過去の歴史には、無関心ではいられませんでした」と話した。