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【解散総選挙】安倍首相が会見で答えた5つの疑問と、残った疑問

なぜ、解散することになったのか。

安倍晋三首相は9月25日、28日に開会する臨時国会冒頭に衆議院を解散し、10月に総選挙をする方針を明らかにした。

深刻化する少子高齢化に対応するために、2019年10月に10%に引き上げられる消費税の増収分を教育無償化などにあてることを表明。核開発や弾道ミサイルなど、北朝鮮の脅威への対応の信任も問うとし、「国難突破解散」と名付けた。

9月中旬から突如として吹き始めた「解散風」。会見では、記者からはどんな質問が出て、安倍首相はそれぞれに対しどう答えたのか。

Q1「解散にあたって大義がない」

『大義がない』『北朝鮮情勢が混乱している中で解散するのか』という野党などの批判について、どう考えているか。臨時国会の召集に事実上応じていない中での解散ではとの指摘について、どう考えているか。

最初の質問を受け、安倍首相は「我が国が直面する最大の課題は少子高齢化」と強調。「時間の猶予はない、待った無しであります」と答え、冒頭30分間の演説で述べたことを繰り返した。

「子育て世代への投資を拡充するため、これまでお約束していた消費税の使い道を思い切って大きく変えるという決断をいたしました」

「税こそ民主主義であり、国民生活に大きな影響を及ぼす、税制にわたって使い道を見直す大きな決断をする以上、国民の皆様に真意を問う、その判断をあおがなければならない。そう決心しました」

また、野党時代から一貫して「税に関する大きな変更、国民生活に関わる大きな変更をする以上、国民に真意を問うべき」と主張してきた、とした。

一方、森友学園問題や加計学園問題など、山積する「疑惑」や問題に対し、憲法に基づいて野党が開会を求めていた臨時国会についてはどうか。

3ヶ月が経ってようやく開会が決まった直後に、「冒頭解散」の方針が決まったことに対し、「疑惑隠し」との批判もある。

これについて安倍首相は、予算編成や北朝鮮情勢が緊張するなかでの外交日程などを理由にあげ、「内外の諸課題について総合的に判断した。憲法上の問題はない」と述べるにとどめた。

また、6月の会見で「国民に丁寧に説明したい」と話していた森友・加計学園の問題などについては、こう説明した。

「必要に応じて衆参あわせて15回審査を行った。衆参の予算委に私自身も出席するなど、丁寧な説明を積み重ねてきた。今後もこの姿勢には変わりありません。批判も受け止めながら、国民の皆様に対しご説明しながら選挙を行う」

一方、北朝鮮情勢については「選挙戦が独裁体制の北の脅かしによって影響を受けることがあってはならないと判断」したと強調。危機管理には万全を喫するとした。

Q2)「なぜ他の財源を削らないのか」

消費税の使い道を変更すると、2020年の財政収支(プライマリーバランス)黒字化健全目標が困難になるというが、なぜ他の財源を削らないのか。幼児教育の無償化には所得制限を設けるべきではないのか。高等教育無償化の線引きはどうするのか。

まず、他の財源削減による捻出について、安倍首相は「削減も大事だが、これだけ大きな予算は他の予算を削るだけででてくるのか」とした。

「他を削って充当しようとすると、改革の規模は非常に小さくなる可能性もある。私たちは、無駄遣いをなくせば2兆円でてくると無責任なことをいうわけにはいかない」

その上で、「社会保障費の伸びを抑える」ことに「多くの努力をしている」ことを強調。こう語った。

「これだけ大きな改革をしているので、安定財源を改めてお示ししなければならない。目処もないのに、他の予算を削って2兆円を出しますと無責任なことをいうべきではない」

一方、幼児教育の無償化については、「若い子育て世代を応援し、全世代型へ抜本的に変えるために一気に進めていくべき」とした。

「3~5歳の保育所については全面無償化をし、0〜2歳児についても所得の低い世帯について無償化を行うことを考えています」

また、高等教育無償化の線引きについては「真に必要な子どもたちへの支援を線引きすることは考えていない」と語り、大学改革など「詳細な制度設計は政府与党で詰めていきたい」と語った。

Q3)「ロケットマン発言の影響は」

トランプ米大統領が金正恩氏をロケットマンと呼び、北朝鮮を破壊すると述べたことは、日本の安全にどう影響すると考えているか。

国連総会の演説でトランプ大統領の口から飛び出した北朝鮮批判について、日本への影響を問うた外国人特派員の質問だ。

安倍首相は、「大統領の個々の発言についてのコメントは控えたい」としたが、その姿勢を後押しするという立場を改めて示した。

「日本はすべての選択肢がテーブルの上にあるという米国の立場を一貫して支持しています。国連総会の機会にトランプ大統領と日米韓、日米首脳会談を行い、日米は100%共にあることを確認しました」

「今後とも、北朝鮮に対しその政策を変えるまで、日米、国際社会としっかり連携しながら圧力をかけ続けたいと思います」

Q4)「希望の党の影響は」

小池知事が代表に就く「希望の党」は選挙戦にどういう影響を与えるのか。

同じ日の午後に会見を開き、新党「希望の党」を立ち上げ、自ら代表に就任すると明らかにした小池百合子東京都知事。

この判断について、安倍首相は「希望というのは良い響きだと思います」と語り、小池知事をこう持ち上げた。

「小池知事は第一次安倍政権では安全保障担当補佐官や初の防衛大臣も務めた。つまり、安全保障、基本的な理念は同じ」

「都知事である小池知事とは、東京オリンピック・パラリンピックを成功させるという共通の目標があり、選挙戦はフェアに戦いたいなあと思っています」

また、「この選挙においては様々な政党がしっかりとその政策を全面に打ち出しながら、建設的な議論を行うことによって、国民の期待に応えていきたいと思います」とも語った。

Q5)「勝敗ラインとさらなる負担増は」

選挙戦の勝敗ラインはどこにあるのか。消費税増税分の2兆円だけは足りない場合は、さらなる国民や企業への負担増があるのか。

まず、勝敗ラインについては「常に目標は与党で過半数」とし、こうも述べた。

「定数が10議席削減されたので、自公連立で233。これが、勝敗ラインといっても良いと思います。同時に自民党総裁でありますから、全候補の当選を期して一丸となって全力を尽くしていきたい」

また、「さらなる負担増」については、年金、医療、介護などの社会保険に、新たに「こども保険」を加えるという自民若手が考えている構想に言及しながら、こう語った。

「党において『こども保険』の議論もある。保険ということになれば、企業の負担もでてくるということかもしれませんが、党内においてそういうことも含めて議論していく」

これが、会見で出た5つの質問とその答えだ。

そもそも安倍首相は、9月12日の日経新聞の単独インタビューで、解散について「まったく考えていない」と答えていた。

ただ、9月10日の麻生太郎副総理との会談で進言を受け、解散を決めたとの報道もある。今後の政治日程や支持率、さらには離党者が相次いだ民進党など野党の態勢を見ての判断、ということだ。

一方、臨時国会冒頭の解散には、7月の内閣支持率急落に繋がった各種疑惑の追及を避けるため、との見方もある。

いずれにしても、なぜ「まったく考えていない」はずだった解散が突如として浮上し、「国難突破解散」という名前になったのか。なぜ、任期があと1年残る今なのか。「国難」を迎えているのなら、本当に解散総選挙があって良いのか。

衆議院の総選挙には、約600億円の税金がかかるという。根本的な疑問に対する答えがないまま、総選挙が始まる。


BuzzFeed Newsでは【安倍首相の「冒頭解散」 なぜ問題視されているのか?】という記事も掲載しています。