10月1日、消費増税に合わせて始まった軽減税率制度。新聞が食品同様に消費税8%で据え置きの対象になったことに対し、様々な声があがっている。

今回、軽減税率の対象となったのは、定期購読契約を結び週2回以上発行する新聞だ。
つまり、契約に基づき家庭などに宅配される新聞は8%だが、駅やコンビニで買う新聞や、デジタル版は10%ということになる。
「一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載するもの」という条件があるが、スポーツ新聞や業界紙、日本語以外の新聞も対象とされている。
しかし、新聞の購読者は若年層の中で減少傾向にある。
情報白書によると、2018年の新聞閲読(平日1日)の割合は10代で2.5%、20代で5.3%。30代でも13.0%だ。40代(23.1%)50代(43.9%)60代(52.8%)と比べるとその差は歴然としている。
ネット上では「生理用品」「おむつ」などの生活必需品や水道水などの公共料金が10%であることと比べたり、雑誌や書籍などが対象となっていなかったりすることから、批判が高まっていた。
いったいなぜ日用品や雑誌、書籍ではなく「新聞」だけなのだろうか。財務省に改めて見解を聞いた。

Q / なぜ新聞だけが対象なのですか?
新聞は情報媒体として、日々の生活に直結する情報を幅広く、あまねく均質に広げるという意味合いがあります。そういう観点から対象品目として検討がなされていました。
また、新聞についても飲食用品と一緒で、低所得者ほど家計に締める負担が多い。消費税は「逆進的」と言われますが、逆進制を少しでも緩和しようというのがひとつの理由としてありました。
また、海外でもOECD35カ国中28カ国で新聞については軽減税率が適用されている。総合的に勘案した結果です。
(注* 出版広報センターによると、書籍、雑誌、新聞に軽減税率を導入しているのはフランスやドイツなど。イギリスは20%に対し0%だ)
Q / 「情報を幅広く」という意味では、雑誌や書籍も対象になるべきでは?
一部の国では書籍雑誌も対象に入っていますが、これは逆進制の部分と関わってくると思います。
必ずしも低所得者の人が買っているわけではありません。所得の割合に応じて買われていることが多く、逆進制の緩和にはつながらない。
また、有害図書の問題もあり対象にするのが難しいという議論もありました。
Q / では、なぜデジタル版の新聞は対象外なのですか?
デジタル新聞については難しい部分があって、いわゆる新聞社だけではなく、いろいろな媒体が出されています。
よくわからない情報を出されているところもある。線引きが難しいだろうというのがひとつの理由です。
Q / いまは、多くの人がインターネットで情報を得る時代です。新聞の購読者も減っています。なぜ、対象にならないのでしょうか。
特にいまの時代で言えば、たしかに通信料は、電気ガスと一緒で、日々の生活では誰もがよく使っている部分になります。
ただ、なかなか難しい部分もあると思います。料金的にも一定程度歯止めがかかっていますし、仮に定めると「ではほかのも」という話も出てくる。
インターネット通信料だけを軽減税率の対象にすると、では携帯の通話料は、ケーブルテレビの契約料金どうなるんだと、いろいろなところで似通ったサービスも対象にすべきだったのではないかと、対象範囲が際限なく広がってしまいます。
消費税は社会保障の貴重な財源です。広げすぎると税収への穴が大きくなってしまうのです。
Q / 若年層のほうが新聞の購読率は低い傾向にあります。軽減税率の恩恵にあやかれないのでは。
マクロで見た仕切り、というところは確かにあるのかなと思います。
Q / では、NHKの受信料は?「情報を幅広く、あまねく均質に広げる」媒体ではないでしょうか。
NHKも入れると、ほかのテレビ媒体の契約料はどうする、という声がでてきてしまいます。
Q / NHKは放送法に基づき、テレビなどの受信設備がある場合は受信契約が義務付けられています。ほかの媒体とは一線を画しているのでは。
諸外国でも対象とされていないケースが多く、また、代替手段との関係で対象としていません。
Q / 「なぜ新聞だけ」「生活必需品は?」「生理用品やオムツは10%なのに」の声があることはご存知ですか?
そのような声があがっていることは認識しています。
ただ、日用品と言われる部分は海外で対象にしているところは多くありません。線引きが難しくなってしまいます。
(注* NHKによると、フランスでは医薬品が軽減税率の対象に。イギリスでは子ども服の税率は0%だが、生理用品は対象外だ。AFP通信によると、オーストラリアは2019年に生理用品を課税品目から除外した)
Q / それでは、たとえば水道料金はどうでしょう?
水道料金などの公共料金は、あまり負担がかからないように定められている部分もあるので、対象にする必要はないだろうという判断がありました。
また、低所得者には利用料金の軽減措置もとられており、税収の部分の穴を広げないためにも、対象外となっています。
Q / 今後、軽減税率の対象の見直しはあるのでしょうか?
現状、見直しは考えていません。色々な要素を勘案した結果ですので、基本的にはこうやっていくんだろうと思います。

一方、日本新聞協会は10月1日、以下のような見解を発表。軽減税率の導入を歓迎した。
「私たちは報道・言論により民主主義を支え、国民に知識・教養を広く伝える公共財としての新聞の役割が認められたと受け止めています。この期待に応えられるよう、責務を果たしていきます」
そのうえで、「不確かでゆがめられたフェイクニュースがインターネットを通じて拡散」し、世論に影響を及ぼしているために、「取材に基づく新聞の正確な記事と責任ある論評の意義は一段と大きくなっています」と強調。
「知識に課税しない」とする欧州などにならい、新聞、書籍、雑誌や電子新聞の税率を軽減またはゼロすることを今後も求めていく、とした。
「批判の声もあがっていることに対する見解」を求めたが、「発表した声明以上のことでも、以下のことでもない」として取材には応じなかった。