自民党の下村博文・都連会長は築地市場の豊洲移転問題について、小池百合子知事は「決めるにしても遅すぎる」と批判した。6月13日、BuzzFeed Newsの単独インタビューに答えた。
2016年11月に開く予定だった豊洲市場は、小池知事の「都民の安心・安全が確保できない」という判断で延期。6月13日朝の日経新聞は小池知事が「豊洲移転を前提に調整するよう指示した」と1面トップで報じていた。
小池知事の「判断ミス」と批判
インタビューで下村都連会長は、移転問題は「決められない知事としての象徴」と指摘。次のように批判した。
「開場先送りによって、新たな問題が出てきたわけでもない。時間が浪費され、無駄な税金がかかったことは、判断できなかったことのミスだ」
日経新聞の報道については「それは噂だからコメントできない」と前置きしつつ、「決めるにしても遅すぎる。先送りをした意味がなかった」と語った。
そのうえで費用面について、次のように指摘した。
「6000億円かけた豊洲の建物で、使っていないにもかかわらず毎日500万円の維持費がかかっている。すでに補償を含め100億円はかかっている。今後の損害賠償をあわせれば300億は下らないだろう」
「福祉政策、教育政策、直下型地震対策で有効活用できたのに、ドブに捨てたような状態になった。小池知事が判断を先送りにしたゆえの問題だ」
下村氏は週内にも、豊洲市場の現地視察を予定しているという。
対する「都民ファースト」は…
日経新聞は豊洲移転を前提に調整と報じたが、小池知事が代表の「都民ファーストの会」は迫る都議選を前に、立場を公にしていない。
自民・公明は移転に賛成、民進は条件付きで賛成、共産党は反対。各党が立場を明確にしているのとは対照的だ。
都民ファーストの会都議団幹事長の音喜多駿議員は、BuzzFeed Newsの単独インタビューに移転問題に関する自民からの批判にこう反論している。
「『決められない』とか『知事が混乱を招いた』と言いますが、問題はまだ議論の途上です。自分たちで問題を作っておいて、それを処理している人に対応が遅いと批判するのはおかしい」
「問題を作った」とはどういう意味か。
小池知事は、豊洲市場から環境基準以上の汚染物質が検出されたために移転を延期した。この判断は、豊洲市場を「無害化した安全な状態」にすると、2010年に都議会が付帯決議で決めたことに由来する。
この決議に賛成をしたのは、自民党と公明党、民主党(当時)などだ。
小池知事はこの「無害化」をめぐり、6月1日の都議会の所信表明演説で「いまだ約束を守れていないことを都民の皆様におわびする」と謝罪している。
音喜多幹事長は「決めたほうが絶対、楽に戦えるんですよ。早く決めないのかという批判が多いわけだから」と話す。
そこは筋を通す、というわけだ。都民ファーストと知事で「考えは一致している」と音喜多幹事長は話す。
豊洲に傾く世論、移転表明で自民の批判は力を失うのか
豊洲の地下水から環境基準を大幅に超える有害物質が検出され、豊洲は危険だというイメージを増幅する報道が相次いだ際には、世論は移転反対に傾いているように感じられた。
実際、豊洲市場から基準を超えるベンゼンが見つかった1月の朝日新聞の全国の有権者を対象とした世論調査では、移転を「やめるべきだ(43%)」が「目指すべきだ(29%)」を大きく上回った。
しかし、都議選が近づき、都内の有権者を対象に世論調査をしてみると、これとは全く違った数字が出てきた。
- 共同通信(5月27〜28日):「移転すべきだ」28%、「移転を中止し、築地市場を再整備すべきだ」が21%。
- 朝日新聞(6月3〜4日):「移転を目指すべきだ」53%、「やめるべきだ」31%。
- 日経新聞(5月末):「移転させるべきだ」50%、「移転させるべきでない」が37%。
新聞各紙は、知事が6月23日の告示前までに判断を下すと報じている。都の専門家会議が土壌汚染対策を発表したこと、さらに市場問題プロジェクトチームの報告書が出されることを受けたものだという。
日経新聞は、小池知事が「豊洲移転」の判断を決めた理由について、こう指摘している。
小池知事は追加対策を着実に実施することで、安全面での理解を得たい考えとみられる。
「決められない」との批判を受けてきた小池知事。態度を明らかにせず、争点化も避けようとしているように見えた。
しかし、ここでそもそも都民の多数派が支持する豊洲移転を表明すれば、「豊洲市場移転を決められない知事」という自民側の批判は力を失う。争点としても、自民が違いを打ち出しづらくなるのは間違いない。
BuzzFeed Newsでは都議選(6月23日告示、7月2日投開票)に向け、自民党の下村都連会長、都民ファーストの音喜多都議団幹事長らへの単独インタビューを、今後詳報します。