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「朝鮮人強制連行追悼碑」の撤去は「作品の抑圧」 評論家たちが美術館に抗議

群馬県立近代美術館で展示されるはずだった白川昌生さんの作品は、展覧会の当日朝、政治的中立性を理由に撤去された。

群馬県立近代美術館の企画展に展示されるはずだった造形作品「群馬県朝鮮人強制連行追悼碑」が2017年4月、「中立ではない」という館の判断を受け、開会当日の朝になって撤去された。

この問題をめぐり、美術評論家連盟が5月31日、館側の対応は「表現の自由」を奪い、「事前検閲」にも当たるとして、美術館と県知事に対する抗議声明を発表した。

まず、大枠の経緯を振り返ろう。

撤去された作品は、前橋市のアーティスト・白川昌生さん(69)のもの。群馬県立近代美術館で4月22日から開かれる企画展「群馬の美術2017〜地域社会における現代美術の居場所」で展示される予定だった。

そもそもこの作品は、近代美術館がある公園「群馬の森」(高崎市)の敷地内に実在する「『記憶、反省、そして友好』の追悼碑」をモチーフにしたものだ。

碑をめぐっては保守団体が抗議活動を実施し、県は撤去を求める判断を下している。これを不服とする設置主体の市民団体の間で裁判が係争中だ。

こうした流れを受け、「公共の場における碑の役割」を提起するメッセージが込められたのが今回の作品だった。白川さんによると、追悼碑の是非を問うものではないという。

ただ、館側は開会前日の4月21日、「訴訟の当事者が県であり、ふさわしくはない」「一方の意見を反映したものを展示すると、バランスを欠く」ことを理由に、作品の展示を取りやめを決定。

同意した白川さんは、作品を撤去した。

「問題提起を一方的に抑圧」

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これを受け、美術評論家連盟は5月31日、抗議声明を発表した。

まず、館の対応を「作品の発表や表現の自由」「鑑賞の機会と権利」を奪っているものだと批判。展覧会開会前に撤去されたことが、事前検閲としている。

個人による作品の発表や表現の自由、市民による鑑賞の機会とその権利を奪い、加えて憲法21条2項に明記された検閲と事前抑制の禁止に抵触する同館の対応は、作家の権利と公共の利益を省みない不当な判断であると考えます。

さらに「問題提起を一方的に抑圧」し、「多様な意見の交換と議論を奪った」とも指摘。館長および県知事に説明を求めた。

白川氏が投げかけた、追悼碑をめぐる現況に対する問題提起を一方的に抑圧し、この作品を契機にした多様な意見の交換と議論の可能性を奪ったこの措置に対し強く抗議するとともに、今回の不当な判断について、美術館設置責任者である県知事と、美術館の運営責任を司る当該館長においては、我々専門家のみならず、一般市民に対しても、公式の説明責任を果たすことを求める。

作品の抑圧は、批評の抑圧

美術評論家連盟常任委員で美術批評家の沢山遼さんは、BuzzFeed Newsの取材にこう語る。

「本来であれば、撤去の理由となった政治的中立性とは何か、この作品がどういう政治性を持っているのかを含め、鑑賞者が各々検証し、議論をしていけば良いのです」

「芸術作品はそういうもの。鑑賞の機会を奪われてしまうと議論の場自体が成立しなくなってしまう」

女性器をかたどった作品展示をめぐり裁判が続いている「ろくでなし子」さんの問題でも、連盟は有志で「表現の自由を侵害する」との抗議声明を出している。

「表現の自由に関わること。基本的に憲法に抵触するような問題が出たときは、公式に声明を出すことは重要だと考えています」

「評論家連盟としても、作品の抑圧はひいては批評の抑圧につながると思っているからです。展示自体が世の中から抑圧されてしまうと、議論する場、批評的な言説の蓄積がそもそも成立しなくなってしまう。我々評論家連盟にとっても深く関わる問題だと思っています」


BuzzFeed Newsは、問題の経緯を作家本人や館側に取材し、【「朝鮮人強制連行追悼碑」は展覧会初日に撤去された 問われた「中立性」とは】という記事にまとめています。


Kota Hatachiに連絡する メールアドレス:Kota.Hatachi@buzzfeed.com.

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